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投稿陵辱小説第116番 ウツロナココロノイレモノ(1)<21禁>

作.luci

 漆黒の闇の中で、呻き声が聞こえていた。もしここに少しでも光が当たっていたら、コンクリートが剥き出しの冷え冷えした壁に囲まれたベッドの上に、一人いる事が解っただろう。しかし実際には鼻を摘まれてもわからないような闇だった。
(う、なんだ? 俺、どうして……)
 混沌とした意識が次第に覚醒してくる。便宜上「彼」としておこう、ベッドに横たわった彼は、ゆっくりと目を開いていく。しかし何も見えない。真っ暗な闇しかそこには無かった。瞳をうろうろと動かし、どこかに光はないかと見回すけれど何も無い。いや、あるのかも知れないが見えなかった。
(ん、どこだ? ここ……な?)
 身体を起す為に腕を突っ張ろうとしたが、腕が動かない。長い間身体の下に入れていたのか、血流が途切れて感覚が無かった。それでも彼は懸命に腕を前に回そうとする。けれど、何かに手首をがっちり掴まれているかのように、彼の二本の腕は前に来ようとはしなかった。
 徐々に腕の感覚が戻ってくると、ぴりぴりと痺れてくる。くすぐったいようなその感覚を我慢しながら、もう一度腕に力を入れた。
(?! 拘束されてる? なんで? ここは一体)
 寝ている間にどこかに連れて来られて、しかも拘束されている。目を見開いても何も見えず、その空間には自分が動く音しか存在していない。こんな状況ではパニックになっても仕方が無い。しかし彼は迫り来る未知の恐怖に怯えながらも、ここにいる以前の事を思い出そうとしていた。それが今の状況を打破するきっかけになれば、と。
(俺は、昨日……あ、あれ? 昨日何して……。一昨日は、な、なんで? 何も思い出せないっ? 俺は、俺の名前は、工藤俊二。日本人だよな? 俺は、何してるんだ? どうして解らないっ!)
 嫌な汗がじっとりと工藤の肌を覆っていく。薄着なのかその汗に衣服が張り付いて来るようだった。それはまるで工藤を雁字搦めにしながら、闇の奥深くへと鎮めていく「何か」のようだ。
 自分と言うものの名称しか解らない。工藤はその恐怖に、そして目の前の闇に悪寒が走っていた。呼吸が速く浅くなり過呼吸気味になっている。
(なんで、何も見えないんだっ! 俺は、見えてた筈だろ? まさか、まさか目がっ?!)
 右を向いても左を向いても、何も見えない。激しく身体を揺さぶる度に胸がふるふると揺れるけれど、パニックになっている工藤には、まだ解らなかった。
 見開いても見開いても見えない、目が見えない、目が見えなくなる恐怖に、工藤は吐き気がしてきた。そしてついに。
「だっだれかあああっ。助けてくっ、あ、ああ?!」
 冷たいコンクリートから跳ね返る声は、工藤が記憶していた「自分」の声ではなかった。細く高い。そう、女の声に、彼は驚愕の叫びを上げていた。
(なんだ? 女の声? 嘘だろっ俺、男じゃないか。俺は工藤俊二、男だろ?)
 考えれば考える程、自分は誰なのか自信が持てなくなる。彼の記憶にある鏡に映った自分は男だ。男の筈だ。それなのに、今の声は女の声だったのだ。自己が崩壊しそうな衝撃に、彼は見舞われていた。
 もう一度声を出して確認しようとするけれど、もしまた女の声だったらと思うと、躊躇してしまう。しかし確かめないと次に進めない気にもなっていた。意を決してもう一度叫ぶ。
「あー、あー……ぅわあああああっ。なんだっ、これはなんだよ! 誰が悪戯してやがるっ」
 悪戯。出来ればそう思いたかった。誰かがボイスチェンジャーを使ってからかっていると。しかしベッドの上で拘束され不自由な身体をばたばたと動かした瞬間、男には無い異質な胸の重みを感じて動きを止めていた。
(なん、だよ、これ……俺はデブじゃないぞ……胸? そんな、筈無いだろ?)
 右に身体を倒すと胸の部分が右に、左に身体を倒すと左に、大きな柔らかいものが流れる。しかしそれは身体にくっ付いてけして取れる事は無かった。
「う?!」
 それまでの闇から、一転して真っ白な世界に放り込まれる。その眩しさに一瞬何が起こったのか工藤は理解出来なかった。瞬時に目を閉じる。漸く部屋の明かりが点いたと思ったのは、網膜が光に焼けた青緑の痕を瞼の裏に感じた時だった。
(良かった、目は、見えるのか)
 瞼にオレンジ色を感じ、横を向いて薄目を開けていく。瞼に明るさを感じるのだから見える筈なのだ。工藤は少しだけ安堵していた。
 目を開ききると、また眩しかった。しかしそれよりも自分の状態を確かめる方へと、工藤の意識は動いていた。
 コンクリートの壁から自分の身体へと視線を移していく。と、果たして、やはり薄着だった。白いスモックだけしか着ていない。腕の様子は解らなかったが、拘束されている事だけは確かだった。しかしそれよりも問題なのは、目の前にある二つの盛り上がりだった。
(ちょちょっと待てよっ。俺は男の筈だろ? 何でこんなのが付いてるんだよ! これってまるで……)
 どうしても胸があるとは思いたく無かった。パニックに陥り身体を捻る度に胸が揺れている。それを見て工藤は顔面が蒼白になっていた。
(し、下は? あるよな。俺は男なんだっ絶対あるっ!)
 なんの確信もない。その根拠は自分が男だったと思っている記憶だけだ。しかし彼にはそこにしか自己を見つめる術が無かった。
 もじもじと腿を合わせるけれど、何の突起も無いように感じてしまう。しかしいつもあるソレに慣れすぎて触覚が発達していないからだと、無理矢理自分を納得させてみた。
(あ、うつ伏せになれば)
 直接股間を感じられる。肘を上手く使い、ベッドから転げ落ちないように注意してうつ伏せになる。しかしこの体勢は、もう一つ、いや二つの事も彼に認知させる事になった。
 ふにゃっとひしゃげる二つの胸。それが潰れると明らかに自分の身体だと理解出来てしまう。それを敢えて無視してぐいぐいと下半身をベッドに擦り付けていく。けれど、こちらには何も感触が無かった。
「うそだあっ、誰か特殊メイクでからかってんだろ? 今なら許してやるぞ! 出て来いっふざけんなああっ!」
 可愛らしい女の声で誰だか解らない相手を罵っていた。しかし返答は全くない。
「ちくしょう! 俺は男じゃねぇかっ。ふざけた事しやがって。くそぉ……誰でもいいっ助けてくれよお。これ、なんなんだよ……」
 起きたら自分の身体が違うモノへと変化していた。そんな状況に工藤は泣きそうになっていた。一体誰がこんな目に会わせるのか、何が目的なのか、今現在の記憶と自分の名前しか思い出せない彼には解ろう筈も無かった。ただ、明りが点いた事で、自分の変化ははっきりと認識させられていた。
「あ?」
 不意に明りが消え、また元の闇の中へ戻っていく。真っ暗な海に放り出されたように、不安が重く圧し掛かってきた。
「電気つけてくれっ。頼むっ誰かっ助けてくれ! 戻してくれええっ!」
 頭蓋骨を通して鼓膜を震えさせたながら、コンクリートに反響して戻ってくる声。鬱陶しい程では無いにしろ、女の声に耳を塞ぎたかった。
(うぅ、なんだって、俺がこんな目に……。何かしたのか? 女にされる程酷い事でもしたのか? ……俺は、罪人なのか?)
 明りを失った部屋の中で、工藤は自問自答していた。拘束され苦しみを与えられる、そんな人物は罪人位しか考えられない。しかし自分が何の罪を犯したと言うのだろう。過去を思い出せない工藤には答えなど用意出来なかった。
 一旦頭を切り替えてみる。どうにかして脱出出来ないかと。明りが点いていた時の部屋の様子を一つ一つ思い出してみた。コンクリートの壁と天井があった。覚えている限り窓は無かった。ドアも無かった。もしかしたら自分の頭側にはあったのかも知れない。出入り口の状況が解らなければ脱出出来るかどうかも考えられない。工藤はパニックになった自分に対して軽く舌打ちをしていた。
(あの明りは、もしかしたら俺に変わった事を見せ付ける為か? ん、なんだ?)
 様々な疑念が沸きあがって来たが、ふと、何か異臭を感じて鼻をヒクヒクと動かしていた。クラッとしたと思った時には睡魔に襲われていた。

つづきはこちら

コメント

こんばんは、るしぃさん。
ウツロナココロノイレモノは、いまだに少しずつですが、票を伸ばしており、平均評価も高くご好評を頂いてます。わたしも、なるべく多くの人に読んで頂けるようにがんばりますね。

ご挨拶

お読みいただきありがとうございます。
細々とTSFのお話を書いています。

■とてもよい
1. エーローイー!続きが早く読みたいです
 ありがとございます。続き、どうでしたでしょう? 楽しめましたでしょうか。

2. 完全にストライクゾーンです、続きも頑張ってください。
 ストライクゾーンで良かったです。暗いですけど、TSっぽさがでてればいいのですが。

3. 完結おめでとうございます。
 ありがとうございます。無事完結できました。わたしとしては短めのお話でした。

4. ラストがよかったです。おもしろかった。
 ラストに向け、一応男は誰なんだろう、という事が解るような伏線は入れたのですが、機能してないかもです。楽しんでいただけて嬉しいです。

5. 最高、何度読み直してもいい
 何度も読み返していただいてとても嬉しいです。次回作も読み返していただけるものになっていれば良いのですが。

■よい
1. 個人的には、もうちょっと愛が欲しかったです
 お読みいただきありがとうございます。テーマ的には究極の自己愛、なんです。ただ、女性である自分に対する愛が、ねじ曲がり過ぎているきらいもありますね。

2. 求む後日談
 お読みいただきありがとうございます。後日談、ですか? えっと、まだ何も考えて無くて……。少し無い頭を捻ってみますね。

■まあまあ
 お読みいただきありがとうございます。ばちっと趣味性にはまらない作品ですみません。もっと精進します。

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    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

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