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投稿TS小説第117番 秘密のバスオイル(8)

もともと曇り空だったが、それから2時間後、雨が降り始めた。
最初は小雨で気にならない程度だったが、次第に雨足が強くなる。
振り出して、10分もしない内に前が見えないほどの豪雨になってしまった。
「参ったな、こりゃ」
今走ってるのは、河川敷沿いの道。
仕方なく雨宿りの場所として、河川敷に降り、橋の下に逃げ込む。
「はぁ……」
羽織っていたシャツとTシャツを絞って、身体を拭く。
いくら夏とはいえ、風邪をひきそうだ。




そのままぼーっと勢いの増した川面を見つめる。
安藤、濡れてなきゃいいけど。
「はぁ……」
この日何度目かのため息をついたとき、砂利を踏む音が聞こえた。
はっとして、そちらを向く。
安藤が立っていた。
コンビニのビニール傘を手に、俺を見ている。
「よぉ、お前は濡れてなかったんだな。安心したよ」
「…………」
「俺はこのざまだけどな」
「……偽善者っ」
「ああ、そうだな」
俺と安藤の間には、雨のカーテンがかかっている。
こうやって、安藤と正面向き合って話し合うのは、久しぶりだ。
悪くない。
「俺をこんなにして、なのに何でそんなになってまで、俺を探すの!?」
「お前が心配で、たまらなかったからだ。あと、謝りたかった」
「っ、そんな嘘……つかないでよ」
「嘘?」
「笑いたかったんでしょ!?俺が女になって、言動まで女の子みたいになって!お前を好きになって!それ、笑いたかったんでしょ!?」
ヒステリックに叫ぶ。
はは、ホント、女の子みたいだ。
「笑うために、この大雨の中、走り続けるかよ、ばか」
「ばかって、言うな……」
「お前さ、俺が夜中にうなされてるって、起こしてくれたよな」
「え?うん」
「あの時だって、俺はお前にしたことの罪悪感でいっぱいだったんだぞ」
息を呑む安藤。
想像もしてなかったのか、目を大きく見開いている。
そこまで驚かれるのも、何だかなぁ。
俺ってそんなに酷いヤツだと思われてたのか。
「ま、そんなことはどうでもいい」
「そんなことって……」
自分にとっては大事なことだと、目で訴えてくる。
気持ちはわからないでもないが。
「で、だ」
「?」
小首を傾げるな、可愛いから。
ついでに、さっきまで怒ってたくせにすっかり警戒を解いている。
きっと尻尾が付いてたら、すごい勢いで振られてるんだろう。
「コレを買ってきた」
「何、それ?入浴剤?」
「お前を女にしたのは、これの類似品だ」
ああ、やっぱり黙った。
薄れた警戒心が、強くなるのが分かる。
しかし、ここで引くわけに行かない。
「お前が酔いつぶれた日の風呂に、それが入ってたんだ。本気にしてなかった俺は、遊び半分で入浴剤を入れた。いくら謝っても済む話じゃないけど、悪かった」
「…………」
「それでこれは、男になるやつだ。さっき、買ってきた」
「これを、俺に使えって?」
俺が突きつけた袋に、安藤がてこてこと近寄ってくる。
恐る恐る手を伸ばして……叩き落とした。
そのまま弧を描いた袋は、濁流に飲み込まれていった。
「!?」
何してんだ、と安藤に詰め寄ろうとして、今度は俺が息を呑まされた。
安藤の大きな瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちている。
どうやら俺は、また何か失敗したらしい。
「あ、その……安藤?」
「なんでっ!!」
「え?な、何が?」
その華奢な身体からは想像できないほどの大声に、つい怯んでしまう。
大の男が、中学生にしか見えない女の子にだ。
それほどに安藤は真剣だった。
俺も俺なりに本気のつもりでいたが、気圧されてしまった。
「俺は!お前が好きなの!」
「だ、だから、男に戻ればそれも……」
「ばかっ、ばかばか!ばかぁああ!」
ぶんっと音がして、傘が飛んできた。
いくらなんでも、それはないだろ……。
怒鳴ろうと思ったが、できなかった。
へたり込んでいる女の子に、何を言えるっていうんだ。
幸いなことに、今は雨が止んでいる。
傘を差し出す必要はない。
だけど、手を差し伸べたいのに、差し伸べられない。
何もしてやれずに時間が過ぎた。
やがて、落ち着いたのか、ぽつりぽつりと安藤が語り始めた。
「どうして、分かってくれないの……?こんなに悲しくて、切なくて、それなのにぽかぽかして、胸がきゅーってなって……そんな初めての気持ち、なくしたくない!男に戻ってこの思いが消えるなら、俺は、私は男になんて戻りたくない!」
ああ……。
俺は愚かだ。
言動まで女の子になっただとか言っておきながら、結局のところ俺は何もわかってなかったんだ。
安藤が男に戻れば、以前の日常が戻ってくると勘違いしていた。
そんなはずはなかったのに。
リセットできると思ってしまっていた。
俺にだって、『恋』の経験はある。
好きという気持ちが勝手に大きくなって、一人歩きして。
多少の障害なんて、気にしなくなる。
たしかに牧原さんが乙女の勘、がどうのと言っていた。
その時はバカにしたけど、当たってたんだ。
「ごめん、安藤」
「っ!?」
その小さな体を抱き寄せ、抱きしめる。
いっつも背中や腕に張り付いていたけど、俺からそうしてやるのは初めてで。
最初は強張っていた身体が、次第に柔らかくなっていく。
「俺がバカだったよ。二度と男に戻れなんて言わない」
俺だって、いつの間にかこいつを好きになってたんだ。
男に戻られたら困るし、女のままでいてくれるのは素直に嬉しい。
「俺がお前のこと気づけなかったみたいに、俺が惹かれてたなんて、知らなかったろ?」
「し、知るわけないよ!」
「だから、嬉しいんだ。ありがとうな、安藤。大好きだよ」
更に強く抱きしめる。
俺の告白を聞いて、しゃくりをあげながら、安藤が何度も頷いている。
悪ふざけが原因で始まったにしては、悪くない結末だ。
「それじゃ、帰ろうぜ、安藤」
「うんっ!」

つづきはこちら

テーマ:官能小説 - ジャンル:アダルト

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