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「おれのみがわり」  第1話 by.おもちばこ

「いょっしぁああああああああああああ!」
部屋の電灯の紐がゆれるほどの声を俺はあげた。
それは少し日がよく乾いた日のことであった、俺は彼女へのデートの誘いのOKをもらって非常に浮かれていた。ようやくカップルらしいことが出来る。そう思っていた。
それに水を指すように、玄関のチャイムが鳴ったのである。
俺は専用の受話器をとる、
「チョウゴ運輸です」
宅配便が来た、何だろうか。
「印鑑お願いいたします」
はいな、やけにでっかいダンボールだな、それを運ぶなんてさすがプロだ。
「ありがとうございました」
宅配のお兄さんに渡されてみたら意外と軽かった、衣料品か何かかな。
宛先には、俺の名前、桃川喜助の名前と住所は入っていたが、送り主の箇所は、雨にでもぬれたのか、読めなくなっていた。

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キャライラスト:シガハナコ http://l-wing.amaretto.jp/

「うげ、気持ち悪い……」
ダンボールの中身を見た感想だ。
中に入っていたのは人間丸ごと皮を剥いたようなものだった。
それ以外には何も入っていなかった。
頭部には髪の毛をかたどったらしき、銀色の糸が幾本も生えている。長さ的に肩まで伸びているだろうか。
人間の……それも女性のものだ。どこで女性だと判断したかは想像に任せる。
「誰かのいたずらかな」
十分ありえることだ、僕に彼女ができたことは誰かしら知っている。彼女を狙っていた誰かが、分かれさせるために誰かがやったとも考えられる。
また、送りつけて高額の料金を請求する詐欺も耳にしたことがある。
「なんだろうなあ」
疑問なことが多すぎでいまいち俺の頭では整理しきれないでいた。



人間の生皮なのか、それとも作り物なのか、俺にはわからない。
「どうやって使うんだ」
綿を詰めてカカシとして使うには精巧に出来すぎているなぁ。
どうせ使うんだったらこう華奢な体じゃなくて迫力のあるほうが。
「キグルミとしてつかうのかな」
ぬいぐるみとして使うのなら、わざわざ綿と別個にしておく意味がない。中身はあらかじめ入れておくはずだ。とすると、このすこし特殊な人間の女性の皮はキグルミとして使う線が濃厚である。しかし、サイズとしては俺には小さすぎるような、おや、ファスナーがついている。
どうやらそこから内側に手を入れられるようだ。
「ためしにやってみるか」
俺はこの皮をきぐるみとして使ってみることにした、右手をするするっと入れてみて、この皮の右手をかたどっているところに手袋をはめるように入れてみる。
「いててて」
やはり、この皮は華奢で、俺には小さめのサイズなようだ。次第に痛みがおさまっていく。
「あれ?」
俺はおかしいと思った、こんなに早く痛みが引くなんてありえない。
「まさか、俺の身体そのものになったとでも言うのか」
俺が身体を入れていない部分と比べてはっきりと人間の手だと認識できる。
キメ細やかな白い肌、よく引き締まった腕、細い指先。
俺とは明らかに別の腕だ。
「これは別の人間になれる……やつ?ということなのか」
こんなことが現実にありえるのだろうか、いや、現実に起きているからすぐに痛みが引き、手だけのダイエットに成功している状態である。



「いたたあ」
「ぎぎぎ」
「ぐうう」
「げえぇえ」
俺は好奇心を抑えられず、全身をこの何か、皮のようなものに身を包んでいた。
手と同じように、インフルエンザにかかったかのごとく関節に痛みを伴ったが。
痛みは即座に引き、俺の身体はその皮に収まってしまった。俺は部屋に備え付けてある姿見に映す。
「かわいぃあ!」
声まで変わっていることに気づき、俺は噛んでしまった。
「胸、ある」
女性のものを触ったことはないが触られるとこんな感じなのだろうか。かといって彼女に聞くわけにも行かないが。
「尻、ある」
この男をひきつけるむっちりとしたおしり、1点のシワも黒子もない。彼女もこんな感じだったらいいなぁ。
「股、ない」
この部分を収めるのには激しい激痛を伴ったが、どこかに言ってしまったようだ。これでは彼女を貫けない。
容姿は、彼女には悪いが、彼女以上ではないか。銀髪が肩まで伸びており、虹彩の色は赤く染まっている。どう見ても人間のものではない。俗に言う2次元から嫁が出てくるとこんな感じなのか。
それに化粧や変装で姿は変えられるが感覚を根本から変えることは普通は出来ない。だがこの皮はそれを実現して見せている。
しかし、男である俺にはこの皮によって得られたものが女の感覚というものだという仮説から抜き出せない。それを実証するには女性に…………彼女に着てもらって試してみるほかないのか。
俺は鼻の下を掻きながら考えていた。姿見の彼女も左右対称の行動をとっておりなんだか滑稽である。笑ってしまった、彼女も同時に笑った。



俺は一通り楽しんだところで呼び鈴が鳴った。
名残惜しそうに俺は専用の受話器をとる。
「チョウゴ運輸です」
扉をそろりと開けると黒くて細くて長いものがドアの隙間から勢いよく入ってきた。
その物体がこめかみに当たったところでドアの向こうから声がした。
「……あなた誰?」
そう言うと彼女は黒い塊を胸にしまった。
「え……え?」
まさかこめかみにうちつけられていたのって……拳銃!?
「桃川喜助さん?」
「はい」
あ、やべ、返事しちまった。
「あなたはどう見ても別人ね」
扉を開けたところ、真っ黒のケープコートに身を包み、ショートの金髪碧眼の女性であった。
「中に入りましょうか、あなた凍えそうよ」
俺は自分が裸であることを思い出した。
「ご、ごめんなさい」



俺はそこらへんに落ちていた男物のセーターとジーンズ、つまり俺の服を彼女に背中のファスナーを見せないように着た、当たり前のようだが若干ぶかぶかだ。
「要するに、あなたは桃川さんの命を狙っていると」
「そうだ、今回のターゲットはこの家の住人なのだ」
「な、何でそんな?」
「どうした、お前には関係ないはずだが」
まずい、ごまかさないと……。
「実はわたしも依頼されてて」
違う違う違う、ややこしくなるだろうが!
「そうか、えらく丸腰なんだな、お前は私とは違ったアプローチをするようだ」
ほっ
「スマホも財布も鍵も実印もあるな、やつはそう遠くへは行っていないはずだ、ここで待ち伏せしていれば時機に殺れる」
さ、さすがプロ。
「わ、わたしもいていいかな」
「別に」
何で自分の家にいるのに許可取んなくちゃなんないんだよ。
「とりあえず、落ち着きましょ」
「ほう、無意識で部屋の電気をつけるとはここの住人みたいだ」
ぎくぅううう!
「まあ、たまたまよ」
俺は以後目で見て確認するようになった。不審に思われていなければいいが。
「服とかお茶とかもらっちゃっていいんですかね」
「構わんだろ」
俺の物だし俺の家だぞおおおおお!という心を抑えてくつろぐことにした。



「コートは脱いだほうがいいんじゃない?」
「いつやつが現れるかわからんからな、遠慮しておく」
ははは。
俺を殺そうとしている理由については、不審に思われかねないのでこれ以上詮索するのはやめた。
「今、彼がどこにいるかわかったりするの」
「私は主に視覚と嗅覚でターゲットを判断する。すこしでもその片鱗を見せようものなら脳味噌に2発の鉛弾を撃ち込むと決めているのだ」
金髪の彼女は黒い物体を再び取り出しそう説明してくれた。
彼女の言葉が本当なら、この皮は俺の匂いも隠せているようだ。この皮は思った以上に高性能なようだ。
「1発だと助かってしまう可能性があるからな、2発と決めているのだ」
これは非常にまずい、まずい。
ふと俺が着た謎の皮を脱いだら目の前の彼女に殺される、脱がないと俺の付き合っている彼女との関係、俺の人生が終わる!
どうする!


つづく

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突拍子もないかんじの話の流れだけど、それがいい味だしてて、続きが楽しみです

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