FC2ブログ

Latest Entries

星の海で(8) 「Natal」   (6)確然

(6)確然------------------------------------------------------

 午後、アリシアはフランチェスカの手配してくれた携帯端末を、慣れない手つきで操作して、エミリアの居室へと辿り着いていた。
 尋ねるにしても、どういった理由で尋ねればよいのか悩んでいると、部屋のドアが開いた。

「あら? 確か……」
「あ、あの、すみません。エミリアさん……でしたっけ? 夕べの、あの……」
「メイフィールドさん、だったかしら? 何か御用ですか?」
「は、はい……あの、サーティン、じゃなかった。昨日の、あの、女の子に、会いたくて」
「エルザに?」

 アリシアはしまったと思った。会ったばかりの、しかも仕事とは全く関係の無いラヴァーズの部屋を訪ねて、縁もゆかりも無いはずの少女に会いたい、などという理由について、どう説明したらよいのか、考えていなかった。
 返答に困っていると、エミリアはふっと微笑んで、中に入るように促した。

「エルザ、昨日のお姉さんが来たわよ」
「まま?」
「こ、こんにちは、エルザ、ちゃん」
「エルザ、“まま”じゃないでしょ。すみません、メイフィールドさん」
「いえ、エルザ、ちゃん? 私ってそんなにあなたのお母さんに似ているの?」
「やっぱり、“まま”じゃないの?」
「私には、子供はいないのよ。だから人違い」

 悲しそうな顔をするエルザの頭をなでながら、アリシアは言った。

「そうよ、エルザ。あなた、本当はもう大人になっている歳なんだから、こんなに若いお姉さんがママじゃ、おかしいでしょ?」

 エミリアの言葉に引っかかったアリシアは、直ぐに聞き返した。

「あの、本当は大人になっている歳って、どういう? それに、失礼ですが、エルザちゃんはエミリアさんのご親戚か、なにかだと」
「ええと、話せば長くなるんですけど。私とエルザはコールドスリープの影響で、15年ほど眠っていたんです」
「じゅ、15年!? ど、どこでコールドスリープに……」
「トイブルク星系で。私たち、今は消滅してしまった、トイブルク5の生き残りなんです」

 エミリアは、辛い思い出を悲しむように目を伏せた。

「トイブルク、5……? (条件が揃いすぎる。この子は“対象”に、間違いない)」

 アリシアは血の気が引いていくのが自分でも分かった。

「どうかされました? お顔の色が」
「あ、いえ。長旅で、ちょっと疲れているのかも」
「それはいけませんね。もしよろしければ医務室までご案内しましょうか?」
「い、いえ、大丈夫です。自室に戻ります」
「そうですか、お大事に」
「すみません、突然お邪魔しておきながら……」
「ばいばい、“まま”」

 アリシアは、挨拶もそこそこに、自室へ戻った。
 ベッドに倒れこむようにして横になると、すうっと涙がひとすじあふれた。

「やっぱりあの子はサーティン。生きていたなんて……、でも、よかった……」

 アリシアはそうつぶやくとうつぶせになり、枕に顔を押し付けた。
 しばらくそうしていたが、やがて気を取り直して、起き上がった。

「今度こそ、絶対に守らなくちゃ」
 
 自分に言い聞かせるように独り言をつぶやくと、借り物の端末から監察官に連絡を取った。

 
*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


 連絡を受けた監察官は、直ぐに人払いをして、監察官執務室にアリシアを呼んだ。

「ロックウェル中佐。あの子はサーティン、“対象”に間違いありませんでした」

 監察官は持っていたペンを取り落とした。

「何か、確証を得たのかね?」
「エミリアというラヴァーズと、あの少女はトイブルク5の生存者で、コールドスリープで15年間眠っていたそうです」
「なんだと! 冷凍睡眠? そんな話は聞いていないが……だがやはり、事前情報のとおりだったと、言うわけだな。見かけ上の年齢は違ってはいたが」
「どうしましょう……」
「事前情報どおり、“対象”が生きていたとなると、15年前の我々の失策ということになる。これは由々しき事態だ」
「私たち、どうなるんですか?」
「“対象”を速やかに処分するしかない。そのエミリアとかいうラヴァーズもだ」
「しょ、処分ですって? そ、そんな! 連れて帰るんじゃなかったんですか?」
「対象は見かけ上未成年で、しかも保護観察者も既に存在している。我々が連れて行くにしても、相応の理由が必要だ」
「サーティンが言うとおり、実は私の子供だということにしては? DNAチェックで、血縁関係は証明できる筈です」
「対象のDNAは100%君と一致している。双子であるというなら、まだしもだがな。対象の肉体年齢は10歳前後。しかしそれは15年前の話だ。本来ならば25歳にはなっていておかしくない……。ん? そうだ、メイフィールド君、君の肉体年齢は?」
「個人識別カード上では、24歳ということになっています」

 アリシアがこの世で生きてきた年数と、肉体の年齢は大きく異なっていた。
 だがその理由については、本人を含めてごく一部の人間以外には秘匿されていた。
 そのため、肉体の年齢である24歳が公式の年齢となっていた。

「それならば、生き別れの双子だとか何とか、理由はこじつけられそうだな」
「それじゃ、死なせずに済みますね」
「それは、なんとも言えんが……。私はこれから方策を練る。君はその二人の動向に常に注意を払うように、いつでも連れ出せるようにしておいてくれ」
「は、はい……」

 監察官のいう“処分”という言葉が、アリシアに重くのしかかっていた。
 トイブルク5のあの地獄のような惨劇は、アリシア自身もその目で目撃していた。
 あの二人が助かったのは、本当に奇跡としか思えなかった。

「今度こそ、守らなきゃ……」
「ん? 何かいったかね。メイフィールド君」
「いえ、何でもありません」

 アリシアは長い虹色の髪をぎゅっと握り締めた。
 15年前の忌まわしく、恐ろしい事件。
 その悲劇の原因の一端が、自分にもあることに、深く胸を痛めていた。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://okashi.blog6.fc2.com/tb.php/15344-4af4459d

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

DMMさんの宣伝

 

初めての人はこちら

ts_novel.jpg

 

性の揺らぎに関する作品でお勧めのもの

ts_syouhin_20090318225626.jpg

 

性の揺らぎに関する作品(一般)

ts_syouhinもと

 

ブログ内検索

 

最近のコメント

プロフィール

あむぁい

  • Author:あむぁい
  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

全記事表示リンク

ブロとも申請フォーム

月別アーカイブ

 

最近の記事

 

ブロとも一覧


■ ブログ名:M物語(TSF小説)

 

カテゴリー

新メールフォーム

イラスト企画ご案内

20080810semini.jpg

 

リンク

RSSフィード

2019-11