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アスランとナタリー ~策謀の秩序~ by.黒い枕&針子 〈2-10〉

〈10〉

「なっ!馬鹿な!?」
特殊な魔術様式に模様替えした王座の間で、エルフの魔術師から驚嘆の声が漏れた。
「おい。どうした?」
魔術師の知識はないものの、魔術師の声から不味い事態を悟った現国王であるクリフォードは苛立ち気味に問いかけた。
「王女の方はもう十分だろう!こっちを手伝え!」
「わ、分かりました!」
「しかし、信じられません!」
「こ、答えろ!どうしたと言うんだ!」
「……陛下、どうやら勇者様への洗脳が失敗しそうな状態です」
「な、なんだって!?」
クリフォードの疑問に応えたのは、エルフの密偵のリーダーである少年だ。
少年とは言っても、エルフなので彼よりも年上なのには違いない。
それだけの重圧感を感じられた。
「しかし、アスランに対しては事前に細工をしていたのだろう?」
「ええ、まあ。確かに……だからこそ信じられないんですよ。あれだけたっぷり強力な媚薬を呑ませたと言うのに」
「ああ!くそ!まずいじゃないか!」
「陛下。まだ大丈夫です……落ち着いてください」
折角、メイドや妹専属の近衛兵たちも催眠術で操り、エルフが持参した媚薬飲ませて、今はナタリーの体にいるアスランを完全に洗脳する筈だった。
自身が『勇者の子供を産む王女ナタリー』であると信じさせようとしたのだ。
(……エルフの女王陛下が言っていた、アスランが一番精神的に強いと言う話は本当だったのだな。ええい、しかし……そのために用意した薬が効かないとは大誤算だ。……ん?)
魔術的な手伝いが出来ないクリフォードは、しかし、湧き上がる焦燥感にグルグルと王座の間を歩き回っていた。
すると、足に何かが当たった。ゆっくりと下に目を向ける。すると……。
「すーっ、すーっ」
「んごっ、んんっ……ごおお!」
意識を無くした双子の姉妹が、寝っ転がっていた。
「……こうして見ると、普通の娘なのだが……」
魔封じの枷で両手を拘束されながら眠る魔術師の姉と、猿轡を口に埋め込まれ、ロープではなく鎖でぐるぐる巻きに拘束している格闘家の妹。
気のせいか、妹の方の顔が若干歪んでいるようにもクリフォードには見えた。
「……なにもそこまでしなくてもよかったんじゃないですか?彼女、そんなに脅威になるとは思えないのですが……」
「キミは知らないから、そう言えるんだ。この王都に住んでいるものなら誰もが言っているぞ。『真紅の猛犬』――ナナミ!闘技場で彼女の戦いを見たものは一生忘れることは出来ないだろう、と。彼女は……兎に角、危険なんだ」
「は、はぁ……」
「実際に私も……見たからな。あれは……酷かった」
今でも思い起こすだけで、体が震えてしまう。
実家から――家出した理由までは知らないが――飛び出し、王都に辿り着いた彼女は無謀とも思える闘技場への挑戦を行ったのだ。
女性参戦者などそうそういなく、また容姿の可憐さから戦う前から注目されていた。
だが、彼女が本当の意味で注目を集めるのは闘技場で猛者たちを叩き伏せる姿を晒してからだった。
的確に相手の急所を責め、目にも止まらない連撃で相手を血だらけにし、完全勝利を収める女武術家。
3年無敗のチャンプを僅か1分で倒した頃には、あまりの情け容赦のない戦い方と相手の血でより真紅の色合いを強める赤毛から『真紅の猛犬』と畏怖されているのだ。
そして、姉は姉で天才と言うに相応しい魔術師なのだから、恐ろしい姉妹である。
今は大人しくさせることに成功しているとは言え、処置を誤れば王国に対する脅威に成りえるのだ。
「頼むから!頼むから彼女たちの洗脳も完璧にしてくれよ!この際、新しい『アスラン』の第二夫人、第三夫人でもいいから!彼女たちを敵に回すのは恐ろしいからな!!」
王国にとって最善の策――目の前に眠る双子姉妹を敵に回さない――を、ルートに指示する。
「……ええ、分かっています。幸い、彼女たちは元々アスランに好意を抱いていますから。……きっと私たちの『アスラン』も好きになって頂けますよ」
ルートは始終穏やかな雰囲気で話し続けた。まるでクリフォードの不安を和らげるかのように。
「そ、そうか……」
取り敢えず、安心の一息をひとつ。――しかし。
「くうう!済みません。ルート様……もう術が持ちません!勇者が――アスラン様が目覚めます!」
彼らの予想を超えて、今まさにアスランが目覚めようとしていた。
「な、なにィ!?」
「……落ち着いて下さい。まだ……大丈夫です。……正気に戻ったのは……”彼だけなのですから”!」
クリフォードは驚き飛び上がる。しかし、ルートはやはり落ち着いていた。
まるでまだ策があるかのように、冷たい眼差しでアスランの観察をし続ける。
「――う、うああああ!!」
そして、可憐な遠吠えが、王座の間に轟いた。
「あ、ああ!」
「……本当に洗脳が失敗するとは……恐ろしい精神力ですね」
『流石、勇者に選ばれた中身と言うべきですか』とルートが囁く中、四人のエルフが囲っていた魔法陣から、豊満な王女の肉体がむくりっ、と起き上がる。
(しかし――もう何もかもが手遅れですよ。元勇者様……あなたは絶対に『ナタリー』になる運命なのですから……くすッ)
顔を上気させて、息を詰まらせているかのように荒い呼吸を繰り返すアスランを見下ろしつつ、ルートは彼の運命を確定づけているのだった。

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