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子供の神様 (28) by.アイニス

(28)

 放課後はバイトだ。部活との兼ね合いがあるので、週三回喫茶店で働くことになった。
「伍良ちゃんがいるから助かるよ」
「肉体労働なら任せてください」
 客足が途切れずに来るので、伍良は忙しく働いていた。仕事を熱心に行っていると、メイドっぽい制服を恥ずかしく思う余裕はない。接客だけではなく皿洗いもしていた。人数が二人なのでやるべき仕事は多い。
「可愛いバイトを雇ったね。これから贔屓にさせてもらうよ」
「見えそうで見えないスカートがいいなぁ」
 客の色々な声が聞こえてきても、伍良は笑顔を絶やさなかった。多少は思うところはあるが、学校以外のところで女の魅力を試したかったのだ。
「また来てくださいね」
 客が帰る時に優しく声をかけて可憐な笑顔を振りまくと、男性客の誰もがデレデレとした笑顔になる。破壊力は抜群で、自分の容姿が可愛いという実感が強まった。
「今日の伍良ちゃんはノリノリだね」
 伍良が微笑みながら働いていると、マスターのテンションも上がるらしい。料理の腕前が冴え渡っていた。どの料理も美味しそうで、瑞穂の不満の声がうるさい。困った腹ぺこの神様だ。
「伍良ちゃんがいるだけで店の雰囲気が明るくなる。客の入りも違ったね」
「マスターの腕がいいからですよ」
 可憐な笑顔でマスターを褒めると、店が終わった後のまかないが豪華になった。山のように並べられた料理を見ると疲れも吹っ飛ぶ。伍良の隣では部活を終えた祐輔が一緒に夕飯を食べていた。
「やけにニコニコして愛想がいいな。声がキャピキャピして気味が悪い」
 可愛い女の子を演じていたら、祐輔から酷評された。長い付き合いの友人にとっては、伍良が女っぽく振る舞おうとすると違和感があるようだ。
「うぐっ、酷い言い草だな。客商売をしていたから、そのノリが残っているだけさ」
「その男勝りの口調の方が安心する」
「ひでぇ。俺だってそうしたいけど、事情があるんだよ」
 祐輔と話していると美少女の仮面が剥がれて、乱暴な口調になってしまった。親友相手だと以前の調子に戻ってしまう。もっとも、気楽に喋れるので楽ではあった。たわいない雑談をしていると、気持ちがほぐれてリラックスしてくる。
「マスター、御馳走様。今度は土曜日ですね」
「悪いけど、午前中から頼むよ」
「わかりました」
 週末に一日中働くのは大変そうだが、給料と食事のことを考えると頑張ろうという気になる。軽くマスターと打ち合わせをしてから、伍良は帰ろうとした。
「送ってくよ」
「一人で帰れるけどなぁ」
「夜道を一人で歩くのは危険だから」
「それを言うなら、祐輔の帰りも同じだけどさ」
 祐輔の手間を増やしたくないのだが、伍良を一人で帰らせるのは不安らしい。女子供扱いされるのは好きじゃないが、うまく断る理由が見つからなかった。
 夜道を二人で歩く。気が置けない友人と喋りながらだと自宅までの距離が短かった。

 翌日から伍良は暇を見つけて瑞穂のことを調べた。放課後は部活やバイトがあるので、利用できる時間は限られている。神社で不貞腐れていた今と違って、昔の瑞穂はもっと活動的だったようだ。思った以上に記録が残されていた。
「ありがちな恵みの雨を降らせたという話もあるけど、失敗談も多いなぁ。人に化けて村々の見回りをしていたら、腹が減ってフラフラと入った店で無銭飲食をしちゃったとか」
(そんなことまで書いてあったのか。すっかり忘れておったぞ)
「事実なのか。昔から食い意地が張っているのは変わらないな。村人に化けて祭りに参加したはいいが、大食い競争に参加して正体がばれたこともあるのか」
(その時は新米が美味くて一俵分の米を平らげたら妖怪かと怪しまれたぞ。正体を現さなければ化け狸かと思われて危うく袋叩きにされるところだったわ)
「神様っぽくねぇ」
 瑞穂が地域の発展に尽くしてきたのは確かだが、笑い話のような逸話も多いので素直には感心できない。
「事績や逸話をまとめて発表しても、それで敬ってくれる人が出るか疑問だなぁ。徒労に思えてきた」
(そうかのぉ。昔の妾は慕われておったぞ。よく子供たちから遊びに誘われて、野山を駆け回ったものじゃ)
「それって子供っぽいってことだろ……」
 奉納物に玩具が多かったのは、瑞穂の性格に由来してそうだ。昔から今と同じように子供みたいな姿だと思えてきた。
(誰が子供じゃ。妾を描いた絵もあったではないか)
「神様だからって美化しすぎだと思うな」
 瑞穂を描いた水墨画の写真が掲載されていたが、艶やかな美人として描かれている。とても今の姿とは似ていなかった。

 約束したからには守らないといけない。放課後の部活で伍良はミサンガを作ろうとしていた。
「またミサンガを作るの?」
 糸を用意していた伍良を見て、水咲が怪訝な顔をしていた。他のことも教えようと思っていたようだ。
「サッカー部の連中に頼まれて、応援だと思って作ることにしたのさ」
「それならあたしも手伝おうか?」
 水咲の申し出に心が揺れて楽な方に流れたくなる。とはいえ、水咲が作ったものをサッカー部員に渡すのは裏切りのような気がした。
「俺が頼まれたことだから、一人でやるよ。でも、そのまま作るんじゃ芸がないから、模様を編みこむやり方を教えて欲しいな」
 変化をつけて編まないと飽きがくるのが早そうだ。同じものを作っても面白くない。
「わかった。それじゃ手本を見せるね。でも、伍良君は他に作りたいものはないの?」
「そうだなぁ。俺でも出来そうなものといえば、お手玉とか」
 直さなければならない奉納品を思い浮かべて、手間が少なそうなものを取り上げてみた。
「初心者用の題材としてはいいかもしれないね。伍良君、縫うのはできそう?」
「自信がないな。針に糸を通すだけでも苦労しそうだ」
「それじゃミサンガ作りと並行しながら、教えるよ」
 簡単だと思っていたミサンガでも模様を入れるとなると奥が深い。水咲でも全てを把握できないほど色々な種類の模様があるようだ。多少は慣れてきたつもりだったが、菱形模様のミサンガを作るのは時間がかかった。
「とりあえず二本か。サッカー部員の人数を考えると気が遠くなる」
「かなり上達しているから大丈夫。伍良君にはセンスがあるよ。この調子で裁縫の腕も磨いていこう」
「そ、そうかな。ミサキチに褒められると俺に才能がある気がしてくるよ」
 余った時間で布を縫う練習もする。細かい作業には苦手意識があったが、水咲に励まされると自信が出てきてやる気になれた。それに自らの手で小物を作るのは思ったよりも楽しい。小物を作っていく過程には、サッカーとは違う充実感があった。
「あとは中身の小豆を入れて入口を縫えばお手玉の完成かな」
「俺でもそれっぽい形に作れたな。やればできるもんだ」
 縫い目が安定してなくてジグザグなところもあったが、ちゃんとお手玉っぽい形になっていた。今まで手芸とは縁がなかった伍良には信じられない気分だ。人から技術を教わっても、身につかない可能性が高いと思っていた。実際にやってみると手が作り方を覚えていく。
「奉納品の修理ができる日もそう遠くないかもしれないな」
(妾の言う通りにして正解じゃったろう。もっとも、伍良が作っているのを見ると妾もやりたくなるのが困った点じゃ)
 伍良の頭で暇を持て余している瑞穂は、作業中ずっとうずうずとしていた。お手玉は作ったことがあるらしい。伍良が縫い方に失敗すると助言じみたことを言ってくるので、参考にはなるがうるさかった。

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