カウンター
[PR] 広島 美容外科 オフィス家具 買取 あむぁいおかし製作所 子供の神様 (34) by.アイニス
FC2ブログ

Latest Entries

子供の神様 (34) by.アイニス

(34)

 夏休み前になって奉納品のうち、半分は修理することができた。瑞穂が伍良から離れられるほど力が回復したわけではないが、頭に聞こえる声がはっきりした気はする。
「置く場所に困ってきたなぁ」
 修理した奉納品は部屋に飾ってあるので、室内が狭くなってきた。このままでは足の踏み場にも困ってしまう。
「倉庫が欲しくなってくるよ。でも、手元で管理しないと不安だからなぁ」
 伍良の目が届かない場所で壊れるような事態は避けたい。奉納品の修理には少なくない金銭と労力がかかっているのだ。奉納品が作られた当時と同じような素材を求めたら思ったよりも高くついた。神様に捧げるものなので、高品質なものが多かったらしい。
(……この家から少し離れておるが、倉庫にするのに向いた建物があるにはある)
 伍良が置き場所に悩んでいると、瑞穂から珍しく解決策を提案してきた。瑞穂が世の中に及ぼせる事柄なんてないと思っていたので意外な感じだ。
「うーん、折角瑞穂が教えてくれたけど、近くで管理できないのは不安だなぁ」
(……その場所には妾の知り合いがおる。それについて心配は無用じゃ)
 やや瑞穂の歯切れは悪かったが、問題ない場所のようだ。まだこれからも奉納品を修理しなくてはならないので、作業に向いた部屋の面積は確保しておきたい。
「その知り合いってやっぱり神様?」
(……そうなるのぉ)
「それなら俺が持っているより安心だ。瑞穂以外にも身近なところで神様っているんだな」
 神様が管理してくれるなら心置きなく預けることができる。それに瑞穂以外の神様から話を聞きたかった。もしかしたら男に戻る手段が見つかるかもしれない。二か月近くを女として過ごしていると、生まれた時から女だったような錯覚に陥ることがある。このままでは女であることに疑問を感じなくなりそうだ。
「それじゃ箱に梱包してそこまで持っていくか」
 奉納品を一つずつ衝撃で壊れないよう丁寧に布で包んで木箱に入れた。木箱を大きな段ボールに詰めて風呂敷で包む。それを自転車の荷台に紐で固定した。
「それじゃ場所を案内してくれよ」
(あの山に向かえばいい)
 瑞穂が指図した方角に向かって自転車を走らせた。山に近づくについて道の傾斜が険しくなってくる。整備されているとはいえ、車が一台通るのがやっとの道だ。
「ふぅ、ふぅ、このところ手芸に夢中だったから、ちょっと運動不足気味だな」
 サッカーをしなくても気にしなくなっていた。サッカーは好きなままだが、今は手芸で様々な創作をするのが楽しい。伍良の優先順位がサッカーより手芸に傾いていた。
(あとはこの石段を登った先じゃ)
「うわっ、まだ登るのかよ。俺の中にいるから瑞穂は動かなくて楽でいいよなぁ」
(それなら一緒に登るとしよう)
 何を言ってんだと思った瞬間、体が浮くような感じがして眩暈がした。頭の中が軽くなった気がする。ぶれていた視界が回復すると、悪戯っぽく笑った童女が隣に立っていた。姿が消えた時と同じく浴衣のままの姿だ。
「久しぶりに自らの足で地面を踏みしめるのはいいものじゃのぉ」
 空気を介して瑞穂の声が聞こえていた。飽きるほど聞いた声なのに新鮮に思える。瑞穂の姿を見ると喜びで体が震えた。面倒な神様ではあるが、伍良は瑞穂に妹のような親しみを持っていた。
「ほ、本当に瑞穂だよな。俺の見ている幻覚とかじゃなく」
「それなら触ってみればはっきりするではないか」
 心の衝動の赴くままに伍良は瑞穂を抱き締めていた。小さくはあったがちゃんとした体だ。温もりも感じられる。瑞穂の息遣いが首筋を掠めた。
「……良かった。俺の努力は無駄じゃなかったんだ」
 伍良が奉納品を直しても瑞穂の力が回復しないのではと疑っていた。回復しても微々たるもので、もう二度と瑞穂が姿を現すことはないと覚悟していた。希望が全く見えなくて、最近では女として生きていくことも考えていたのだ。
「心配をかけたのぉ。もうここは神の住まう神域じゃからな。妾の今の力でも出現できるというわけじゃ。もちろん伍良が丁寧に修理してくれたことも大きい」
「それじゃここから離れたらまだ駄目なのか」
「残念なことじゃがなぁ」
「それでも少し希望が見えただけいいよ」
 瑞穂が今にも消えそうな気がして、手を繋ぎながら石段を登った。疲れなんて完全に吹き飛んで、荷物を背負っていても重さを感じない。石段を登った先には広大な敷地が広がっていた。
「立派な神社だなぁ。ここに瑞穂の知り合いの神様がいるのか」
 山の上に建てられた神社は古くて荘厳な雰囲気があった。毎日きちんと掃除されているのだろう。広い敷地ではあるが、ゴミが転がっていることもない。神主がきちんと管理しているのだろう。
「それじゃ神社を訪ねてみるか」
「……いや、まずは奉納品を置くとしよう。伍良もそのままでは大変じゃからな」
 神社を見た瑞穂の表情は冴えなかった。知り合いとは言ったが、怖がっているようでもある。神社が立派なことから考えると、格の高い神様だろうか。
「やっぱり格の高い神様と会うとなると、自由気ままな瑞穂でも気詰まりするのか」
「……そんなことはない。同格じゃぞ」
「神社が立派だから同格に思えないなぁ」
「綺麗に整備されているからわからぬとは思うが、妾が住んでいた神社と造りはさほど変わらぬ」
「ううん、確かに見覚えのあるような気がする。でも、受ける印象が全く違うよ」
 じっくりと神社を観察してみると、瑞穂のいた神社と造りは似ていた。造られた年代がほぼ同じなのだろう。人の手が入らなくなるだけで、印象がまるで違った。
「ここがその場所じゃ。この倉庫、いや、社に奉納品を入れればよい」
 瑞穂が案内した場所には三メートル四方ほどの建物があった。作られて間もないようで木目が新しい。小さな賽銭箱が置かれていなければ、社ではなく倉庫に思えただろう。
「瑞穂の知り合いといっても、先に許可を取った方が良かった気もするなぁ」
「気にすることはないわ。ここに本来住むのは妾じゃからな」
 不機嫌そうな顔で瑞穂は吐き捨てたが、伍良には意味がわからない。
「えっ、どういうことだ?」
「合祀、つまり神の住む場所を移転させたわけじゃ。ここに住む神の尽力で、妾は完全な取り潰しは免れた。それには感謝しておるが、こんな狭いところに住もうとは思わん」
 社の戸を開いて中を覗くと、伍良の部屋よりも狭い。天井もあまり高くなかった。圧迫感があって好んで人が住みたい場所ではない。
「土地だけは広く取ってあるがのぉ。もっとも、広い土地にぽつんと小さな社があるというのも情けない話じゃ。こんな有様では参拝する人もおるまい」
 瑞穂は貯金箱のような大きさの賽銭箱を逆さに引っくり返した。五円玉が一枚落ちて、地面に澄んだ音を奏でる。思ったよりも大きな音がした。
「それでも少しは参拝する人がおるのか。誰もいなければ、妾も表に出られなかったからのぉ」
 地面に落ちた硬貨を見て瑞穂は寂しそうな顔をした。
「こらっ、見ていましたよ。悪戯をしてはいけません!」
 瑞穂が五円玉を拾おうとしたところで、境内に女性の怒った声が響いた。そんなに大きな声ではないが、凛として威厳がある。声に打たれて伍良はびくっと体を震わせた。
「うぁ……」
 女性の顔を見た瑞穂は体を震わせて泣きそうな顔をしていた。怖がっているようだが、それだけではなさそうだ。伍良は神社に仕える巫女かと思ったが、服装は真っ白で平安貴族のような格好だった。
「巫女でなければ神主なのか?」
 見た印象では身分の高い神職に思えた。女性の年齢ははっきりしない。若いようにも年長者にも思える。不思議な雰囲気の女性だ。
「ここは瑞穂の神を祀ってあるのです。悪戯は許しません」
「うぎゃっ!」
 女性は瑞穂を腕に抱えると尻を平手で叩いた。空気を切り裂く鋭い音が鳴って、近くで聞いている伍良は震え上がる。尻を叩かれた瑞穂は涙目になっていた。女性はもう一度手を高く上げると、勢いよく振り落す。
「ふぎゃっ!」
 悲鳴を発した瑞穂の顔が真っ赤になる。涙で目が潤んでいたが、怒りで眉毛が釣り上がっていた。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://okashi.blog6.fc2.com/tb.php/16865-99710b89

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

DMMさんの宣伝

 

初めての人はこちら

ts_novel.jpg

 

性の揺らぎに関する作品でお勧めのもの

ts_syouhin_20090318225626.jpg

 

性の揺らぎに関する作品(一般)

ts_syouhinもと

 

ブログ内検索

 

最近のコメント

プロフィール

あむぁい

  • Author:あむぁい
  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

全記事表示リンク

ブロとも申請フォーム

月別アーカイブ

 

最近の記事

 

ブロとも一覧


■ ブログ名:M物語(TSF小説)

 

カテゴリー

新メールフォーム

イラスト企画ご案内

20080810semini.jpg

 

リンク

RSSフィード

2017-08