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子供の神様 (39) by.アイニス

(39)

「待たせて悪かったな」
「……うあ」
 緊張を隠して素っ気なく祐輔に声をかけた。伍良の姿を見た祐輔は、立ち尽くしたまま言葉を発しない。目を丸くしてじっと伍良を見ていた。
「な、何か言えよ」
 沈黙に耐えられなくなって、伍良は怒ったような顔で催促した。無言で体を観察されている。特に胸と股間に熱い視線を感じた。三角布で覆われた股間は、何の突起物もなく平面だ。友人に見られていると男だった頃を思い出して身悶えしそうになった。
「女神が降臨したかと思って言葉を失っていた」
「大袈裟だなぁ。でも、祐輔も日焼けして男ぶりが上がっているとは思うよ」
 連日のサッカーの練習で、祐輔の肌は褐色に焼けていた。筋肉の厚みが増して逞しくなっている。腹筋を触ってみるとまるで鉄のようだった。
「硬くて羨ましいな。練習が厳しいのがよくわかる」
「そんなに撫でられるとくすぐったいって」
 強靭な筋肉の感触が好ましくて、伍良は祐輔の腹を触りまくっていた。伍良も女性にしては力がある方だが、見た目にはそんなに筋肉は発達してない。スポーツマンだったので逞しい肉体には憧れがあるのだ。
「伍良もいい体をしていると思うけどなぁ」
「内側の筋肉はあると思うけど、表面はプニプニだぞ。試しに触ってみろよ」
「じゃ、じゃぁちょっとだけ。うわぁ、すべすべで柔らかい」
「だろう。あまり肉がつかない体質なのかなぁ」
 遠慮がちに祐輔の大きな手が伍良の腹を撫でている。円を描くように男の手がゆっくりと動いていた。くすぐったくて、変な気分になる。腹だけでなく全身を撫でられたくなった。
「んっ、あははっ、くすぐったくて笑ってしまうな」
「あ、あぁ、悪い。手が離れなくなっていた」
 伍良は大きな笑い声を出して、危ない気分になったのを誤魔化した。夢から覚めたような顔で慌てて祐輔が手を放す。伍良の腹にはまだ男の手の感触が残って汗ばんでいた。男の体温が体の中にまで浸透して、子宮に悩ましい熱を与えている気がする。伍良は気づかれないように熱くなった息を吐き出した。
「準備運動をして早く海に入ろうぜ」
「お、おう、そうだな」
 股間が湿っぽくなった気がして、伍良は証拠隠滅を図ろうとした。もっとも、祐輔の股間は明らかに盛り上がっている。祐輔はうろたえていたが、水着なので隠しようがない。醜態を晒さずに済んで、伍良は女であることを感謝していた。祐輔の恋愛感情は嬉しく思うが、伍良の想いは気づかれたくない。
「うわぁ、海の水が冷たくて気持ちいい」
 体をほぐし終わって足元を海水に浸けるだけで、伍良は溢れんばかりの笑顔を弾けさせた。津波が押し寄せてきて、飛沫が伍良の白い足に飛ぶ。海水が引くと砂浜に伍良の足跡が残された。それが再度押し寄せた波ですぐに消される。それだけで楽しい。小物や雑貨を作るのは好きだが、ずっと家に閉じこもるのは辛いのだ。
「太陽の光を全身に浴びると生き返る気がするよ」
 伍良は波打ち際でちゃぷちゃぷと水音を立ててはしゃいでいた。その姿を鼻の下を伸ばして祐輔が眺めている。
「目に焼き付けるだけじゃもったいないなぁ。写真も欲しくなるね」
「うりゃぁ、変なことを考えている顔をしているから頭を冷やしてやる。俺ばかり見てないでもっと遊ぶぞ」
 伍良は祐輔に駆け寄ると、押し寄せてきた波をすくった。砂の混じった冷たい海水を浴びて、砂まみれになった祐輔がぽかんとした顔になる。
「そんなに欲しければあとで一枚くらいは撮らせてやるからさ。今は海を堪能しようぜ」
「そうだな、伍良の水着姿があまりに色っぽいからついつい見てしまったよ。そら、お返しだ」
 祐輔も海水をすくうと思いっきり伍良に浴びせてきた。容赦なく海水が降り注ぐ。一気にびしょ濡れになってしまった。
「ぺっ、ぺっ、やったなぁ」
 口に入った砂を吐き出して、髪を濡らした伍良が負けん気の強い顔になる。膝まで海水に浸かってしばらく水の掛け合いに興じていた。
「俺ばっかり海水を浴びていた気がするぞ。少しは女の子に手加減しろよ」
「手を抜いたら伍良に失礼だと思ってさ」
「……そうだな。次は負けないぞ」
 体格と腕力に差がありすぎて、伍良ばかり海水を浴びていた。正面からだと打ち負けてしまう。あまりに不利な気がして、無意識に女としての甘えが出ていた。
「今度は水泳で勝負しよう」
「ハンデをつけようか?」
「いるわけないだろ」
 祐輔の申し出を伍良は唇を尖らせて断った。対等な条件で勝ってこそ満足できるのだ。久しぶりの真剣勝負に伍良の顔が引き締める。男だった頃を彷彿とさせる勇ましい顔つきになっていた。
「スタート!」
 伍良の合図で二人は一斉に泳ぎ出す。まずは伍良がリードした。懸命に腕と足を動かして、全速力で海原を切り裂いていく。しばらく伍良はリードを保っていたが、目的地点まであと半分のところで失速してきた。
(くっ、手足が重い)
 体力配分を考えないで全力を出したので、急激に疲労が襲ってくる。後ろから徐々に水音が近づいて祐輔が迫ってきた。
(負けられるかよ!)
 本来の体ならスタミナ切れは起こさなかったはずだが、それを言い訳にはしたくない。伍良は体力を振り絞って必死になって泳いだ。祐輔も疲れているはずだが、泳ぎに衰えは見られなかった。
「はぁ、はぁ、俺の負けか」
 半身ほどの差で伍良は敗れた。へろへろになって海から上がる。全身が鉛と化していてなかなか息が整わない。激しい泳ぎでビキニのブラがずれて乳首が露出していた。それを正す気力すらない。遊ぶのに適したビーチから離れてしまったので、人がいないのが幸いだった。
「あと少しで負けるところだったよ。さすがは伍良だ」
 互角の勝負だったように祐輔が言ったが、足元はしっかりしていて余力が残っているのが窺える。すぐに呼吸も整っていた。伍良は荒い息をするのが精一杯で喋る余裕なんてない。大きく息をするたびに豊かな胸が上下に揺れる。それを困ったような顔で祐輔は見ていた。
「ふうぅぅ、完全に俺の負けだったな。焼きそばくらいは奢るから海の家まで戻ろうぜ。それとも他のものがいいか?」
 やっと息が整ってきてビキニのブラを直す。砂浜は小石が多くなっていて、素足で歩くと痛い。人がいないのも当然だ。休憩には適した場所ではなかった。
「その前に話があるんだ。焼きそばもいいけど、もっと違うものが欲しい」
「俺の負けだったからな。出来る範囲で引き受けるぞ」
 伍良の乳首を見て照れていた祐輔が急に真剣な顔になる。雰囲気の変化を怪訝に思いながら、伍良は祐輔の欲しいものを聞いてみた。
「伍良が欲しいんだ。付き合って欲しい」
「……えっ、待て待て。俺の聞き違いか。もう一度言ってくれ」
 ストレートな欲求に伍良の頭は混乱した。耳鳴りがして地面が揺れているように思える。祐輔の気持ちは知っていたが、半信半疑なところもあったのだ。それに急に言われるとは思わなかったので心の準備ができていない。
「何度でも言うよ。恋人になって欲しいんだ」
「うっ、うぅ、祐輔の気持ちは嬉しいが、気の迷いじゃないのか。身近な女性は俺だけだからさ」
「そんなことはない。伍良には言わなかったけど、女子からラブレターを貰ったことは何度もある。全部断っているけど」
「そ、そうなのか」
 考えてみれば、伍良のいないサッカー部において祐輔はエースだ。顔も精悍で勇ましい。女の子が放っておくはずがなかった。伍良は他の女子の行動に少し嫉妬すると同時に、一途な祐輔に女心を刺激されていた。
「ほ、本当にいいのか。俺はこんな喋り方だしかなりの男勝りだぞ」
「そのさっぱりとした性格も好きなんだ」
「うぁ、よくそんな恥ずかしいことを連続で言えるなぁ」
「伍良を好きな気持ちに偽りはないからね」
「わ、わかった。もうこれ以上言われると俺が蒸発しそうだ」
 正面から告白の嵐を浴びて、伍良は茹でた蟹のように真っ赤だった。頭が沸騰して思考が停止しそうになる。祐輔の勢いに負けて頷きそうになった。どうにか心の片隅にある男の心が警告を発して、僅かばかりの理性を取り戻す。
(男らしい真っ直ぐな告白じゃなぁ。妾は好感が持てるぞ。伍良も祐輔を好いているようじゃし、そのまま女として生きるのも悪くはあるまい)
 瑞穂の言う通り、祐輔とは気心が知れていて、一緒にいるのは楽しい。男としても頼りがいがあるだろう。伍良が男に戻れる可能性は僅かなのだ。このまま女として生きる選択肢もありだとは思ってしまう。それでも、まだ伍良にはためらいがあった。少し前まで男として生きてきたのだ。簡単には割り切れない。
「じょ、条件がある。俺に祐輔の恰好いいところを見せて欲しい。もし地区大会で優勝できたら、祐輔の彼女になることを決めるよ」
 プロのサッカー選手になりたいという夢があった。その夢を託せるくらいに祐輔にはサッカーで活躍して欲しい。それなら伍良も女になる覚悟が定まるというものだ。
「わかった。伍良に相応しい男であることを証明してみせる。元から目指しているのは優勝だからね。これでますます燃えてきた」
 伍良の出した条件に怯むどころか、祐輔は全身からやる気を漲らせていた。闘志を燃やした勇ましい祐輔の顔を見て、伍良は惚れ惚れとしている。乙女心がキュンと疼く。伍良の事情で結論を先延ばししたのが申し訳なかった。
「楽しみにしているよ。ちょっとしゃがんでくれ」
「何かな?」
 伍良の頼みを聞いて、祐輔が地面に片膝をつく。伍良は頬を火照らせながら、祐輔の額に軽く口づけをしていた。

39.jpg
挿絵:菓子之助

(ほほぅ、やるのぉ)
「しょ、勝利を祈っているからな。俺にとっての一番は祐輔だ」
 照れと恥ずかしさで伍良は耳まで真っ赤になっている。悶絶しそうだったが、全身が陶酔感に包まれていた。
「お、おぅ、何にも増してやる気が出たよ。女神の加護があるなら負けない」
「その意気だ。試合の時には応援に行くから」
 海の家まで引き返す時には、男女は手を自然に握っていた。男の力強い手が頼もしい。伍良は女の子としての幸せを感じていた。

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