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子供の神様 (43) by.アイニス

(43)

 夏休み中は、宿題、バイト、創作に明け暮れた。宿題の大半は祐輔と協力して夏休みの前半に終わらせたのだが、自由研究を終わらせるのに時間がかかった。瑞穂神社について調べたわけだが、神社の歴史を紐解くとなると地域の歴史にも触れることになる。思ったよりも大変な作業になってしまった。
「これが俺のまとめた瑞穂神社についてです。なるべく正確に調べたつもりですが、昔のことですから誤って伝えられたこともあるかもしれません」
 夏休みの終わりになって、ようやく完成した自由研究のコピーを瑞樹に渡した。瑞樹神社の歴史にも多く触れているからだ。
「これを読むと昔のことが思い出されますね。よくまとめてあります。資料として使わせて頂きますね」
「資料なんてそんな大げさなものじゃないですよ。でも、何かの役に立つなら使ってください」
 世話になった恩を少しでも返せたなら嬉しい。瑞樹からは木工細工だけではなく、様々な技術を教わることができた。
「それでは作業場を使わせてもらいます」
「あと少しですね」
 木工細工の技術が上達したので、伍良は奉納物の和人形や木製の玩具の修理を進めていた。それもほとんどが終了している。あとは細かな作業を残すだけだ。
「よし、最後まで気合を入れていこう」
「妾も作業を見ていよう。まさか伍良が奉納品の修理をやり遂げるとは思わなかった。途中で投げ出すものだと思っていたぞ」
「俺も最初は長続きしないかもと思っていたけどさ。やり始めてみると面白かったよ」
 伍良は細筆で人形の顔を描いていた。手先が全くぶれていない。マジックで人形の顔を描こうとした時とはまるで別人のようだ。瑞穂は息を潜めて人形の顔を見詰めていた。
「ふうぅ、あとは乾くのを待とう」
 人形の顔を描いた伍良は筆を下ろすと緊張を解く。手が僅かに震えていた。
「気品が感じられるぞ。魂が宿っておるわ」
「瑞穂がそう言うなら安心するよ」
 太鼓判を押されて、伍良は軽く笑った。乾くのを待ってから作業を続ける。
「これで完成!」
 時間の流れを忘れて作業に没頭する。外が暗くなる頃になって、古色を残しながらも新たな息吹を得た和人形が置かれていた。
「今まで御苦労じゃったな。これで奉納品の修理も終わりじゃ」
「やり遂げたって感じがするよ」
 伍良は大の字になって床に倒れた。瑞穂の力の回復は僅かだろうが、これで解放されたという気分になる。木工細工も奥が深いとは思ったが、布と糸で創作する方が向いていた。これで心置きなく好きなことができる。
「思ったより力は回復したようじゃ。伍良が真剣に取り組んでいたということがよくわかる。感謝するぞ」
「いいって」
 普段と違って神妙な顔で瑞穂に礼を言われると照れ臭くなる。
「力が回復したなら、俺から離れることもできそうか?」
「完調には遠いからのぉ。伍良の近くなら姿を現すこともできるといったところだ」
 さすがに伍良を男に戻すような力は回復していないようだ。少し残念に思ったが、安堵の方が大きい。これで迷うことなく女でいられるからだ。
「神社を再建して信仰を取り戻さないことには力の回復は難しいか」
「馬に蹴られるつもりはないから、伍良が生き方を決めれば妾は出ていくぞ。それまでは一緒にいたいところじゃが」
「それは構わないけど、秋が終わるまでには結論を出すつもりだよ。その頃にはサッカーの地区大会も終わっているはずだ」
 今年のサッカー部の戦力は充実している。主力選手である祐輔も闘志に燃えていることだろう。伍良は地区大会の優勝を疑っていなかった。

 楽しくて忙しい夏休みが終わると、日常の学校生活が戻ってきた。勉強はそんなに好きではないが、同級生と会えるのは楽しい。それに九月中旬には文化祭が行われる。手芸部はそれぞれの部員が作品を展示することになっている。文化祭までの期間はそんなにないが、伍良は新しい作品を作ろうと思っていた。
「伍良君、夏休み中にかなり練習したみたいだね」
 部室で布を縫っていると、水咲が伍良の手元を覗いて感心した声を出した。
「あたしより上手いかもしれない」
「そんなことない、まだまだだよ。手芸や工作が得意な知り合いがいて教えてもらったんだ」
 芸術の神様に教えてもらったとは言えないので、名前に関してははぐらかした。
「へぇ、いいなぁ。凄く縫い方が正確になっているよ。それに楽しそうだね」
「懸念材料の一つが解消されたからかな。昔の玩具を修理する羽目になったんだけど、それが全部終わったんだ。それで気が楽になったと思う」
 奉納品の修理が終わって、それらは全て瑞穂の社に納められた。これで責務から解放されたので、表情が明るくなっていたのだろう。
「そんなことがあったんだ。でも、伍良君の機嫌がいいのは、別の理由もあると思う。夏休み前と違って祐輔君と仲が良さそうだもの」
「うえぇ、そ、そうかな?」
 伍良の声が上擦った。そんなに特別なことをしてないつもりだったので、水咲に心を読まれたかと思った。
「夏休み前も仲が良かったけど、それは友達としてでしょ。今は明らかに祐輔君を見る伍良君の目が違っている。男子ならともかく女子なら気づくよ。恋する乙女の顔になっていた」
「……そんな顔していたかなぁ」
 火照った頬を撫でて、伍良は戸惑っていた。そんな目をしていた自覚はない。水咲に乙女なんて言われると、やけに気恥ずかしかった。
「登下校や昼休みはいつも一緒だし、祐輔君のお弁当まで用意しているじゃん。バレバレだよ」
「夏休みの宿題を手伝ってもらったお礼のつもりだったけど……」
 水咲に言われてみると、わかりやすい行動をしていたとは思う。それでも、伍良にとっては正式な恋人関係ではないつもりだったのだ。友人以上恋人未満だと思っている。
「あたしは伍良君の恋を応援しているからね。手伝えることがあれば手を貸すよ」
「その時はミサキチを頼らせてもらうよ」
「任せておいて。親友の為には一肌脱ぐから」
 女の子として歳月の浅い伍良には、女としての知識や感性に欠けるところがある。全面的に協力してくれる味方がいるのは心強かった。

 夏休みが終わって数日後。伍良は担任から職員室に呼び出された。心当たりは全くない。宿題はきちんと提出したはずだ。授業中に騒いだ覚えもない。
「説教されるような覚えはないぞ。わからないなぁ」
 まさか祐輔との関係を問いただすつもりだろうか。うちの学校は生徒の恋愛には寛容だったはずだ。伍良は首を傾げながら職員室に入った。
「何か用でしょうか?」
 伍良が担任に話しかけると、周りの教師からも注目されている気がした。どうも居心地が悪い。
「夏休みの自由課題を見せてもらったよ」
「はい」
 瑞穂については荒唐無稽な逸話もある。神様らしからぬ失敗談も多い。まさかふざけて書いたと思われたのだろうか。伍良の顔が緊張で強張った。
「自由研究とは思えぬ出来だった。瑞穂神社と地域の歴史についてよくまとめてある。素晴らしかったよ」
「……ありがとうございます」
 伍良は軽く頭を下げた。サッカー以外のことで教師に褒められたことはないので驚いている。担任は歴史について教えているので、伍良の研究が気に入ったらしい。
「それで我が校の生徒にも自らの街について知ってもらおうと思ってね。伍良には全校生徒の前で発表してもらうことになった。よろしく頼むよ」
「……神様とは思えない間抜けな話も入っていますが、それでもいいのですか?」
(そう強調するものではないわ)
 伍良に貶されて瑞穂が不機嫌な声を出す。
 褒められるだけではなく、全校生徒の前で発表しろと言われるとは思わなかった。もはや決定事項らしい。肝が太い伍良でも慌ててしまった。
「神様には失敗談がつきものだからね。何もおかしくはないし面白いよ。校長先生にも話は通してある。他の先生方も褒めていたよ」
「わ、わかりました」
 どうやら伍良の学年の先生と校長はもう自由研究の中身を見ていたらしい。発表の件は担任だけが決めた話ではなかったようだ。自由研究を認められるのは嬉しいが、プレッシャーも大きかった。

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