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子供の神様 (44) by.アイニス

(44)

 抜けるような青空で日差しが強かった。秋に入ったとはいえ、夏の気配が残っている。じっとしていても汗ばんできそうだ。
「伍良君を応援するとは言ったけどね」
 空は澄み切っているというのに、伍良の隣にいる水咲は釈然としない顔だった。
「まさか本当に応援することになるとは思わなかったよ」
「今度パフェでも奢るからさ」
 伍良と水咲は青いチアガール姿だった。目の前のグラウンドではサッカーの地区大会が行われようとしている。伍良の学校には応援団はないので、自主的にユニフォームを用意して駆けつけたのだ。微力でも祐輔とサッカー部の力になりたかった。
「サッカー部が地区大会で優勝したら、祐輔君と付き合うことになるんだっけ。別にそんな条件はいらないと思うけど」
「恰好いいところを見てもっと好きになりたいからな」
「はいはい、御馳走様。伍良君の恋路を助けると思って、精一杯サッカー部を応援するよ」
 水咲は顔に苦笑いを滲ませながらも、伍良の為にやる気はあるようだ。一人でチアガール姿になるのは恥ずかしかったので、水咲の存在はありがたい。女になってからずっと助けられていると思う。
「伍良君は祐輔君をずっと見ているね」
「試合用のユニフォームを着るとますます男前に見えると思って」
「……こりゃ重病だ」
 サッカー部の面々は気合の入った表情をしていた。チアガールの存在には気づいているだろうが、表情を緩めることはない。祐輔が一割増しで凛々しく見えた。
「フレーッ、フレーッ!」
 試合が開始すると伍良は声を張り上げて応援した。即席のチアガールなので、他校の見様見真似でポンポンを振る。伍良が大きく足を上げると、ミニスカートが翻って健康そうな太股が躍動した。

44.jpg
挿絵:菓子之助

 試合は一方的な展開だった。初戦の相手はあまり強くないこともあって、母校のサッカー部は有利な試合運びだった。
「やった、やった!」
「凄い、生で見ると迫力が違うね」
 初得点を決めたのはフォワードの祐輔だった。興奮した伍良は飛び上がって水咲に抱きつく。体が痺れて熱くなっていた。
「俺もサッカーがしたくなるなぁ」
 祐輔の活躍を心から喜んでいたが、伍良もフィールドに立ちたくなった。本来なら祐輔のポジションに伍良がいただろう。試合を見ると血が騒いで、サッカー部だった頃の気持ちが蘇っていた。
「勝ったね」
「ここで負けたら話にならないからな」
 危なげなく祐輔のいるサッカー部は勝利を収めていた。祐輔は二本シュートを決めて、三点差をつけて第一試合は終わった。実力が伯仲した試合ではなかったが、伍良はサッカーがしたくてたまらない気持ちになった。チアガールで思いっきり汗を流したのに、今からでもサッカーがやれそうだ。
「あたしは先に帰るからね。伍良君は祐輔君と帰ればいいと思うよ」
「悪い」
 水咲は一足早く家に帰った。気遣ってくれた水咲の友情に伍良は感謝する。
「応援してくれてありがとう。励みになったよ」
 試合が終わってから祐輔が伍良のところに来た。申し分ない活躍をしたので、満面の笑顔を浮かべている。
「まずまずだったじゃないか」
 意地っ張りな部分が出て、手放しで褒めるのが少し恥ずかしい。それにサッカー少年だった嫉妬も混じっている。微妙な心情だったのだ。
「伍良の見ている前で恥ずかしい姿は晒せないからな」
 日焼けした顔で爽やかに笑う祐輔は凛々しかった。内心の複雑な心境を忘れて、伍良は惚れ惚れしそうになる。祐輔の湿った髪から漂う汗の匂いが好ましい。
「俺が応援しているんだから当然だ」
「頑張るよ。伍良のチアガール姿なんて貴重だからね。気合が入った」
 外でミニスカートを穿くのは恥ずかしかったが、祐輔の活力になるなら今後もやろうという気になる。試合会場となったグラウンドからは歩いて帰れる距離なので、伍良は祐輔と手を繋いで帰り道を歩いた。サッカーの余熱が残った祐輔の手は、大きくて温かかった。

 サッカーの応援と文化祭の準備で忙しいというのに、自由研究の発表でやることが増えたのは大変だった。瑞穂神社の歴史は長いので、そのまま発表すると時間が足りない。簡潔にまとめる必要があった。
「瑞穂のことをみんなに知ってもらえば、多少は力が回復するだろうから頑張るか」
(信仰の始まりはまず名を知ってもらうことじゃからな)
 退屈な話にならないように笑い話に近いものを中心にして原稿を作った。瑞穂神社の歴史はかなり簡略化している。
(まるで妾が食いしん坊のようではないか)
「事実だろ」
 瑞穂から文句が飛んだが、発表中に寝てしまう生徒もいるのだ。話の内容が偏ることになっても、興味を引く話題を話す必要があった。

「緊張するなぁ」
 出番を待って控えている伍良は緊張で身震いした。いよいよ全校生徒の前で自由研究の発表だ。サッカーの試合とは別種の緊張感だった。入念に準備をしてきたのに不安が去らない。
「我々の住んでいる地域のことをもっと知ってもらおうと、伍良さんの自由研究を発表してもらうことになりました。では、よろしくお願いします」
「は、はい」
 担任の合図で伍良は体育館の壇上に向かった。全校生徒の目が伍良に注がれている。手足が凍ったように強張っていた。まさか在学中に全校生徒の前で喋ることになるとは思ってなかった。
「手元にある用紙をご覧ください。今日は昔から私たちの住む地域で信仰されていた土地神である瑞穂について話したいと思います」
 伍良の声がマイクで増幅されて体育館に響き渡った。最初の一声で喉がからからになった気がする。視界には全校生徒がずらっと並んでいる。なかなか壮観な眺めだ。伍良のクラスに目を向けると祐輔と視線が交わった気がした。元気づけられた気がして、体から余計な力が抜けた。
「今は住宅地となっていますが、昔は盛んに農業が行われていました。この地域を守護し、五穀豊穣を司っていたのが瑞穂という神です」
 透き通るような声が滑らかに流れていく。伍良は適度な緊張感を維持して喋っていた。
「瑞穂は災害から作物を守り、人々の暮らしを豊かにしていました。とても美人で立派な神様だったのですが、面白いところも多々ありました」
 瑞穂のことを美人と説明したので、内心では笑いたくなった。瑞樹と瓜二つなら美人のはずだが、今の童女の姿からはそうは思えない。
「子供たちとも遊んでくれる気の良い神様だったのですが、非常に負けず嫌いなところもありました。川釣りで負けそうになったところで、瑞穂は大物を引っかけたことがあります。川の主とも言われる大きな鯉で、瑞穂は逆に川に引きずり込まれました」
 伍良の声の調子に引き込まれて、全校生徒は話に聞き入っていた。
「いつまで経っても瑞穂は戻りません。村人は大慌てです。必死に呼びかけていると、夕方になって泥塗れになった瑞穂が戻ってきました。神様とは思えない姿でしたが、子供たちの前で瑞穂は大威張り。その腕には銀色に輝く大きな鯉が抱えられていたのです」
 一つ目の逸話を終えると小さな笑い声が漏れた。体育館の空気が温まっている。まずまずの反応を得られて、伍良の声が一段と伸びやかになった。
 正月に餅食い競争になって、餅を詰まらせた瑞穂がひっくり返った話をした時には、笑い声が一層大きくなった。話に熱が入った伍良は、与えられた時間が過ぎても喋り続けていた。
「伍良さん、そろそろ……」
「あっ、すいません。もし興味を持った方がいれば、私のところに来てください。瑞穂の逸話はまだありますので。どうもありがとうございました」
 担任に注意を促されて、伍良は体育館の時計を見た。予定時間をかなり過ぎている。伍良は焦っておたおたしながら、壇上から立ち去ろうとした。その瞬間、体育館が大きな拍手で包まれる。無数の花火が炸裂したような音だ。伍良が立ち去っても拍手は続いている。大きな満足と感動が伍良の心を満たしていた。

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