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子供の神様 (45) by.アイニス

(45)

 伍良が自由研究を発表してから、学校の話題は瑞穂で独占されていた。休み時間になると瑞穂の話を聞こうと学年を問わず人がやってくる。
「まさか部室にまで人が来るとは思わなかったなぁ」
 手では文化祭用の作品を作りながら、伍良の口は瑞穂のことを喋っていた。瑞穂の話をもっと聞こうと、手芸部の部室にまで人が押しかけてきたのだ。最初は数人だったので問題なかったが、今は部室が狭く感じるくらいに人が集まっている。部員に申し訳なかった。
「人が集まっても迷惑にならない場所を探してくるよ」
「私も先輩の話を聞くのは好きですから、そのままで構いません」
 騒がしくするわけではないが、部外者の存在は目障りだろう。伍良は部室から移動しようと思っていたのだが、後輩に引き止められて驚いた。寡黙な子で伍良とはあまり喋ったことがなかったからだ。
「文化祭の前なのにみんな集中できないだろ」
「問題ないですよ」
「先輩の話を聞くのも好きですけど、作品を作っているところも近くで見たいですから」
 判断に迷った伍良が困惑気味に尋ねてみると、部員の誰もが好意的な返事をしてくれた。
「あたしも瑞穂の神様について聞くのは好きだからね。それに瑞穂ちゃんとの関係も気になるなぁ」
 水咲も賛成に回ってくれた。伍良の話と一緒に手芸部の活動を見て、入部希望者が増えたことも理由の一つだろう。だが、瑞穂神社と瑞穂の関係について聞かれて、伍良はドキッとしていた。瑞穂のことを知る水咲が、同じ名前の神様と関連があると思うのは当然だった。自由研究の発表や文化祭の準備で頭がいっぱいで、つい水咲のことを失念していた。
「ミサキチが会ったこともある瑞穂は、瑞穂神社に関わりのある子だよ。今の瑞穂神社は寂れてしまったからさ。それで生活が苦しかったみたいだ」
「なるほどね。神社の家の子だったんだ。古風な喋り方をすると思ったよ」
 嘘にはならないぎりぎりのところだろう。まさか神様本人だと明かすわけにもいかない。深く事情を詮索されてら、伍良も困ってしまう。瑞穂との関係には女になった事情が含まれるからだ。男だったと知られるのは恐怖だ。同情も敬遠もされたくない。
「少しでも瑞穂神社のことを知る人が増えれば、瑞穂の家も家運が上向くかなと思っているんだ」
「瑞穂ちゃんの為になるならあたしも協力するよ。文化祭の時に作品を展示するだけじゃなくて、瑞穂神社について紹介するのもいいと思う。スペースは余っているからね」
(水咲は相変わらず優しいわ。直接会って礼を言いたくなるぞ)
「……頼むから出てくれるなよ」
 今にも瑞穂が体から出てきそうで、焦った伍良は小声で引き止めた。うまく水咲を誤魔化せたのだ。ここで瑞穂が現れたら、話が滅茶苦茶になってしまう。
 準備が増えるのは大変だが、文化祭には学校を解放して色々な人が訪れる。校外の人にも瑞穂のことを知ってもらう機会が得られるのは好都合だった。
(心配せんでもわかっておる。水咲と会う機会が欲しいとは思うがなぁ)
 水咲の顔をほぼ毎日見ていても、会話ができない瑞穂は面白くないらしい。拗ねた声には寂しさも混じっていた。

 喫茶店のバイトが終わって用意された食事がなかなか食べ進められなかった。マスターの腕が落ちたというわけではない。人よりもやや多いくらいの分量で満腹になってしまったのだ。
「伍良ちゃんは体調でも悪いの?」
「そ、そんなことはないですよ。マスターの料理も美味しいですし」
「無理することはないからね」
 残すのも悪いと思ってハンバーグを頑張って一切れ食べたが、それでもう限界だった。胃が逆流しそうな気がする。
「伍良が無理そうなら代わりに食べるよ」
「う、うん、食いかけで悪いな」
 伍良が無理そうなのを見て、隣にいた祐輔が助け舟を出してくれた。祐輔もかなり食べていたはずだが、伍良の残した料理を嬉々として食べている。運動部だけあって見事な食べっぷりだ。
「あっ、俺のナイフとフォーク……」
 祐輔は伍良が使っていた食器でハンバーグを食べていた。間接キスになってしまったので、ちょっと恥ずかしい。ニヤニヤしながらマスターは伍良の様子を見ていた。

「ここのところあまり俺が食べられなくなっているけど、瑞穂の調子でも悪いのか?」
 朝も夜も今までと比べるとそんなに食べられなかった。マスターだけでなく両親も伍良の体調を心配していた。
 大食いの瑞穂に問題が生じたのではないかと不安になってしまう。ここ最近は何もかも順調だと思える毎日だったので、瑞穂の異変が気がかりだった。
(むしろ逆じゃ。食事で力を補わなくても、存在に必要な力が入ってきておる。伍良が毎日のように妾のことを語っているからな。妾に興味を持つ人間が増えたのじゃ)
「ああ、そういうことか。驚かすなよ」
 理由がわかって伍良は安心した。瑞穂の力はどんどん回復しているようだ。常に空腹に悩まされる状況から解放されれば助かる面が大きい。女の子が大食いというのも、世間一般では聞こえが悪いだろう。
「……俺を男に戻せるくらいの力はあるのか?」
(それはまだ無理じゃ。消滅を覚悟の上で行ったとしても分が悪いのぉ。むしろ混乱を引き起こすことになりかねん)
「聞いただけだからさ。瑞穂に無理をさせる気はないよ」
 瑞穂の力が回復していても、男に戻れないと知って伍良は安堵の部分が大きかった。もっと可能性が高かったら、瑞穂について語るのをやめたかもしれない。一瞬だけ悪いことを考えていた。
「今男に戻ったとしても、練習が足りないから試合に出るわけにはいかないからなぁ」
 伍良は半ば無意識に男に戻らない理由を自分に言い聞かせていた。-

 九月中旬になって、文化祭が開催された。部室は手芸部の作品が展示され、木製のボードには瑞穂神社の歴史が貼られている。バイトもあるので伍良の準備はぎりぎりだったが、水咲も手伝ってくれたので無事に間に合うことができた。
 一段と目立つのは伍良の作品だった。何しろ大きい。幼稚園児ほどもある。子供の瑞穂をモチーフとしたぬいぐるみだ。ちゃんと手縫いの浴衣も着せている。生意気なところもある本人と比べると、ぬいぐるみの表情はかなり愛らしい。
「どうぞご覧ください」
 まばらではあるが、来場客が部室を訪れる。割合としてはやはり女性客が多い。
 展示物の紹介は部員が交代して行うことになっていた。今は伍良と水咲の番だ。
「瑞穂神社に興味を持ってくれる人もそれなりにいるみたいだね」
「頑張って作った甲斐があったよ」
 自由にお持ちくださいと書いて、瑞穂の逸話について印刷した紙を置いてある。手芸とは関係ないことだが、来場客の半分くらいは手に取ってくれた。
「熱心に見てくれた人もいたからな」
「伍良君に質問をした年配の方だよね? どこかで見た覚えがあるよ。誰だったかなぁ」
 年配客に瑞穂神社について質問されて、伍良はかなり詳しく説明したのだ。何しろ暇な時間の方が多い。喋っている方が退屈をしのげた。
「うーん、他人の空似だったのかな」
 水咲は年配客に見覚えがあったようで、しきりに首を傾げていた。
「少し早かったかな」
 交代時間がそろそろというところで、祐輔が部室に伍良を迎えに来た。待ち合わせは違う場所だが様子を見に来たらしい。
「後輩がもうしばらくしたら来ると思う」
 水咲にはともかく、祐輔と一緒にいるところを後輩に見られるのは何となく恥ずかしい。
「交代まであと僅かだからね。あたし一人で大丈夫」
「すまないな」
 伍良が困った顔をしていると、水咲が助けてくれた。本当に水咲には頭が上がらない。
「それじゃ行こう」
 祐輔の手を引っ張って部室を出る。その直後に後輩が部室に戻ってきた。現場を見られたらあとで冷やかされそうなので間一髪だった。

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