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子供の神様 (46) by.アイニス

(46)

「文化祭の最中は楽しもうぜ」
 二回戦も無事に祐輔のチームは勝ち上がっていた。祐輔は一得点して勝利に貢献している。週末にも試合はあるが、文化祭では気を抜いてもいいだろう。
「そうだね。喫茶店をやっている教室で息抜きをしよう」
「喉が渇いているからちょうどいいな」
 伍良は文化祭の準備に追われて、出店のチェックをろくにしてない。祐輔に誘われるまま、生徒が出している喫茶店に向かった。
「ここがそうか」
 教室の前の飾りつけに変わったところはない。平凡な喫茶店だと思って入ったのだが、注文を取りに来たウェイトレスの姿を見て驚いた。
「何を注文しますか?」
 丁寧だが野太い声だ。体格のいい男子生徒がウェイトレスの姿で給仕をしていた。どうやら女装喫茶らしい。ギャップによるウケ狙いのようだ。ウェイトレスをしているのは運動部が多い。サッカー部の連中も混じっていた。
「笑える恰好だよなぁ。うちの喫茶店の制服を参考にしたみたいだ」
「そ、そうか」
 筋肉質な男子生徒のちぐはぐな格好を見て祐輔は面白がっている。周りの客もそれなりに楽しんでいるようだ。もっとも、伍良は笑えなかった。
(俺も似たようなものじゃないか)
 外見が女になっているだけで、伍良の心は本物の女性とは違う。真似をしているだけという気がした。女としては贋物だ。男子生徒のウェイトレスと何ら違わない。バイトをしている喫茶店の制服に似せてあるので、伍良はウェイトレスに男だった頃の姿を重ねていた。日常的に目にしたら気味の悪い格好だと思う。
「伍良の口に合わなかったのか。文化祭で出すケーキなんて出来合いのものだからなぁ」
「砂糖が多そうだと思って。最近ダイエットを意識しているからさ」
 注文したケーキが届いても、伍良は一口食べただけだ。気分がもやもやして吐き気がしていた。祐輔の皿は空になっている。気遣ってくれる祐輔に伍良は女の子っぽい言い訳をした。ここのところ食が減っている言い訳にもなるだろう。
「伍良は太ってないと思うけどなぁ。それにどんな姿でも嫌いにはならないよ」
「……そんなことないだろ」
 思わず口の中で小さく呟く。男のままだったら、祐輔が伍良を好きになることはない。祐輔との仲が深まるにつれて、騙しているような罪悪感が大きくなっていた。
「何か言った?」
「いや、何でもない。悪いけど祐輔が食べてくれよ」
 伍良の呟きは祐輔に届く前に消えていた。祐輔は不思議そうな顔で伍良を見ている。伍良は軽く首を振って、ケーキを祐輔の前に差し出した。
 女装喫茶を出ても暗い感情は残ったままだ。祐輔と一緒に文化祭を回っても、素直に楽しめなかった。

 文化祭が終わると、伍良はサッカー部の応援に専念した。伍良が必死に応援したのは、後ろめたさを隠したかったかもしれない。サッカー部は順調に勝ち進んで、準決勝にまで駒を進めていた。
「夏休みが終わってから瑞樹神社に顔を出してないなぁ。サッカー部の勝利を祈りに行くかな」
(わかっておると思うが、祈っても効果はないぞ。そもそも信仰の分野が違うわ)
「気分の問題だよ」
 瑞樹神社のある山は紅葉で赤く染まっていた。そろそろ肌寒い季節だ。
「山に入ると寒いな。寒さがこれから厳しくなってくるし、祐輔に手袋とマフラーでも編んでやるかな」
 手編みの品をプレゼントできるなんて、下手な女よりも女らしいはずだ。祐輔が喜ぶ姿を思い浮かべると、外は寒くても心は温かくなってくる。
「秋らしくなってきたのぉ」
「瑞穂の格好は秋とは縁遠いけどね」
 瑞樹神社の石段に到着すると、瑞穂が伍良の体から出てきた。秋だというのに浴衣姿なので寒々しく思える。
「ならばこれでよかろう」
 瑞穂が手を振ると、浴衣が赤い着物に変わっていた。紅葉にマッチした衣装だ。
「それなりに力は回復したから、これくらいは容易いぞ」
「ふぅん、神様っぽいな」
「神様じゃからな」
 瑞穂の姿は童女のまま変わらないが、神々しさが漂っていた。微かに体が光っているような気がする。瑞穂だとわかっていても、崇めたくなる品格があった。
「よくいらっしゃいました」
 石段を登ったところで、瑞樹が微笑みながら出迎えてくれた。
「今日はいい報告に来たんですよ」
「奇遇ですね。私からもいい知らせがあります」
 伍良には聞いてもらいたい話題があったのだが、瑞樹も同じだったらしい。顔から喜びが溢れていた。かなりいいニュースのようで、伍良も話を聞くのが楽しみになる。
「まずは伍良さんの話から聞かせてください」
 瑞樹がお茶を淹れたところで伍良に話を促してきた。
「先日の自由研究が認められて、賞が取れましたよ。色んな人が瑞穂のことを知ってくれたわけです」
 伍良は真新しい賞状を机に広げた。高校生になってから表彰されたのは初めてだ。しかも、学問的なことで認められるとは思わなかった。瑞穂のことを調べるのは大変だったが、その成果が認められて嬉しい。
「おめでとうございます。私も我が事のように嬉しいですよ」
 姉に関連したことでもあるので、瑞樹は心から喜んでくれた。
「姉上様のことを知るということは、私を知ることにも繋がりますからね。ここのところ私に対する信仰も上昇しているようです」
 夏休み中よりも瑞樹の顔色が輝いている気がする。少しは教えてもらった恩も返せたようだ。
「それでは瑞樹の話も聞かせてもらうとしよう。話したくてたまらない様子じゃからなぁ」
「さすが姉上様。見抜かれてしまいましたか」
 瑞穂に指摘されて、瑞樹が恥ずかしそうに笑う。喜びを抑えかねているようだ。
「まだ本決まりではないのですが」
 前置きをしてから、瑞樹が話し始める。伍良は楽しみにしながら耳を傾けた。瑞樹の様子を見る限り、素晴らしいニュースなのだろう。
「姉上様の神社が再建される見込みがついたのです」
 興奮した様子で瑞樹が喋り始める。だが、伍良は氷の刃を心臓に突きつけられた気分になった。これで男に戻れる可能性が強くなったのだ。
「ほぅ、喜ばしいことだが、すぐには信じられぬ。どういった事情なのじゃ」
 神社が再建されると聞いても、瑞穂は冷静な様子で聞き返していた。伍良の事情がわかっているので、瑞穂も素直に喜ばなかったのだろう。喜びを共有しない二人に瑞樹は戸惑ったようだ。
「は、はい。実はずっと再建の為の寄付を募っていたのです。それで先日、かなり大口の寄付を頂いたのですよ」
「名を忘れ去られようとしている神に寄付するとは、奇特な人間がいたものじゃ」
 話を聞いて、瑞穂は不思議そうな顔をしている。伍良は顔を青ざめていた。気温がいきなり下がった気がする。なんで今寄付したのかと相手を責めたくなった。あと一か月も違えば事情は異なっていたはずだ。
「寄付したのはラーメン店を運営している瑞鳳(ずいほう)という会社ですね」
「知らん名前じゃ」
「元々の名前は大鳳といったようです。改名したようですね」
「……その名前には聞き覚えがある」
 瑞穂は知らなかったが、大鳳という名前に伍良は聞き覚えがあった。確か地元のラーメン屋で瑞穂と一緒に食べに行ったところだ。
「おうおう、あの店か。覚えておるぞ。また行きたいものじゃ」
 それを話すと瑞穂も思い出したようだ。ラーメンの味を思い出して、相好を崩している。
「大繁盛しているラーメン店のようですよ。支店も出して一気に拡大したようです」
「それだけの腕はあったからのぉ」
「噂によると、子供の姿をした神様が訪れた店ということですよ。その神様にあやかって、店の名前も変更したようです。姉上様に心当たりはありますよね?」
「あるにはあるが、妾はささやかな加護を与えただけじゃ。店が繁盛したのは店主の努力が実ったからだと思うぞ」
 意外なところからの寄付で瑞穂は驚いていた。伍良もまさか一度だけ訪れたラーメン店が関わってくるとは思わない。完全に意表を突かれていた。

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男として生きるのか、女として生きるのか
いよいよクライマックスも間近に見えてきましたね

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