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子供の神様 (47) by.アイニス

(47)

「もちろん瑞鳳からの寄付金だけで神社の再建が決まったわけではありません。伍良さんの研究成果を使って、私も地道に姉上様のことを広めていました」
 瑞樹によるとお年寄りはまだ瑞穂神社のことを覚えている人が多かったようだ。そこから影響力を広げることで、役所にまで話を持っていくことができたらしい。役所から僅かではあるが助成金も出るという話だった。
「一度市長さんが視察でこちらを訪れましたよ。巫女の振りをして話をしたら、姉上様にかなり関心をお持ちのようでした」
 市長も乗り気なようなら、神社の再建はほぼ間違いないだろう。その時に撮ったという写真を見せてもらうと市長の顔に伍良は見覚えがあった。年配で物腰が柔らかそうな人だ。
「あれ、この人って」
 確か伍良が文化祭で瑞穂神社について説明した人だ。伍良の自由研究のことを知って、わざわざ顔を見に来たのだろう。賞状を見返すと市長の名前が書かれていた。
「神社の再建が叶ったのは、伍良さんの努力が実ったからです。これで男に戻れますよ」
「う、うん、そうですね……」
 伍良は歯切れの悪い返事を返した。半年前なら大喜びだったのに、今は心に大きな黒雲が広がっている。瑞樹は伍良の様子を怪訝な顔で見ていた。

 神社からの帰り道、伍良は浮かない顔で石段を下りていた。考えがうまくまとまらない。
「妾の神力が回復したとしても、伍良は男に戻らなくてもよいのだぞ」
 瑞穂が伍良にかけた声は優しかった。
「わかっている、わかってはいるけど、俺が後ろめたいんだよ。元に戻れるのに女のままでいたいなんて変じゃないか」
「男を好きになったからには仕方あるまい。それに祐輔との約束を破る気はないのだろう」
「そうだけど……」
 サッカー部が地区優勝したら、祐輔と恋人になるという約束をしている。それを裏切る気にはなれない。
「ならば悩むこともあるまい。今は応援に専念すればいいではないか」
「う、うん」
 伍良の返事は煮え切らなかった。男だったのを偽って祐輔を騙している気がする。男に戻れるというならなおさらだ。結局は答えが見つからず、結論を先延ばしにするしかなかった。

 サッカーの準決勝。母校のサッカー部は前半に得点して、終始リードのまま試合を進めた。試合前は不安な顔をしていた伍良だが、祐輔がシュートを決めると元気になった。グラウンドで活躍する祐輔は見惚れるような恰好良さだ。女でなくても目を奪われると思う。
「おめでとう、あと一試合だな」
 準決勝に勝利した祐輔が戻ってくると伍良は笑顔で出迎えた。この調子のままならサッカー部は優勝するだろう。約束を守るということで、伍良は女でいられるはずだ。
「おいおい、まだ全国があるよ。次の試合で一区切りだけどさ」
「そうだったな、頑張れよ」
 地区優勝が決まれば、そこがゴールのような気がしていた。目標が小さくなっていることに気づいて、伍良は少し赤面する。全国優勝という大きな目標を掲げる祐輔が男前に思えた。

 伍良にとっては決勝戦が始まるまでの一週間がやけに長く感じられた。授業にも部活にも身が入らない。手芸部で作品を作っていても、心が入っていなかった。
「決勝戦が終わるまで伍良君は使い物になりそうにないね」
 つまらない失敗を繰り返す伍良を見て、水咲がしょうがないなぁという顔をしていた。
「そりゃ優勝できるのが一番だろうけど、仮に破れたとしても伍良君が振られるわけじゃないでしょ。そこまで深刻にならなくてもいいじゃん」
「そうだけどさ……」
 水咲の言い分はもっともだと思う。勝とうが負けようが祐輔と恋人になればいい。それだけの話だが、伍良の方から祐輔と付き合うとなると、男だったという過去が暗い影を落とすのだ。
 もしサッカー部が破れたとしたら、伍良が男に復帰して来年チャンスを掴むということもできる。むしろそれが正しいかもしれない。
「駄目だ。祐輔を諦めるのは辛い」
 伍良としてはサッカー部が優勝して、自動的に祐輔と恋人になれれば楽だった。それならサッカーの世界で活躍するという夢を託して、伍良は女の子のままでいられる。週末が訪れるまで、伍良は繰り返し溜息を吐いていた。

 そろそろ冬が間近に迫ってきて、ミニスカートでは寒い季節だ。いよいよ決勝戦。空は青く澄み切っていたが、やや風がある。伍良の隣でチアガール姿の水咲が手を擦り合わせていた。
「絶対に負けるなよ」
「大丈夫。勝ってくるさ」
 試合前日、伍良は蒼白な顔で祐輔に何度も訴えた。祐輔は力強く請け負ってくれたが、伍良の不安は去らない。サッカー部の面々よりも緊張した面持ちだった。
「頑張れ、頑張れ! 負けるな、負けるな!」
 決勝戦ともなるとお互いの母校の生徒と父兄が応援に駆け付けていた。応援合戦でグラウンドに大声が響き渡る。試合が始まると、さらに声が大きくなった。
 伍良も水咲も全身を動かして声を枯らして応援した。
 相手チームも決勝戦に残った強豪だ。それでも僅かなチャンスを繋いで祐輔にボールが渡る。
「惜しい!」
 祐輔のシュートはゴールポストに跳ね返された。伍良が悔しそうに呻く。
「俺なら決められたのに……」
 ゴールを守るのはキーパーしかいない状況だった。それを外すなんて許せないと思ってしまう。
「外から見ているだけなら幾らでも言えるよ」
「うっ、そうだな。ごめん、変に熱くなっていた」
 伍良の独り言を聞いて、水咲が険しい顔をする。その通りだ。スポーツに絶対はない。苛立ちのあまり、つまらないことを口走っていた。
「あたしたちは応援に力を入れよう」
「おうっ、精一杯声を出すぜ」
 伍良は一心不乱にサッカー部を応援した。その熱気が伝わったのか、何度かチャンスが訪れる。だが、惜しいところで得点にならない。伍良の目には得点に繋がる位置にいるフォワードの二人の精彩が欠くように思われた。動きにキレがない。
「あっ、あーっ!」
 悲鳴のような声が母校の応援席から流れる。押している展開にも関わらず、相手チームにシュートを決められてしまったのだ。伍良の血が凍ったように冷える。時間がまだ残っているのに、膝から崩れ落ちそうになった。
「まだチャンスはあるよ!」
 水咲に励まされて伍良は平衡感覚を取り戻した。そうだ、祐輔の活躍を信用しないと。伍良は懸命に手足を振って応援を飛ばす。だが、点を取られたことでますますフォワードは焦ったようだ。伍良が監督だったら選手を入れ替えただろう。
「はーっ、はーっ」
「水分補給をしないと倒れるよ」
 声を振り絞ったので、喉が枯れて痛くなっていた。水咲に声をかけられて疲労を認識する。伍良の手足は熱を持って重くなっていた。水咲が心配して水筒からお茶を渡してくれる。お茶を飲んでしまうと疲れで伍良は動けなくなった。
「もう時間がないのに……」
 唇を噛み締めて試合を見守る。刻一刻と時間が過ぎていくが、得点に変化は見られなかった。
(伍良よ、祐輔を勝たせたいのだろう。妾にはこの試合の流れを変える力があるぞ。伍良が望むなら力を貸そう)
 残り時間が僅かになって、瑞穂が静かに声をかけてきた。伍良には神ではなく、悪魔の誘惑に聞こえた。あまりに甘美な誘いだった。
(伍良を男に戻さないならば、妾には十分な力が回復しておる。何度も試合を見たから、不自然ではない形で勝たせることは可能だぞ)
 重ねて瑞穂が伍良に呼びかける。誰も疑問を思わないように勝たせられるなら、それもありかもしれない。
「……駄目だ」
(何故じゃ?)
 誘惑に屈しそうになったが、伍良は掠れた声で答えた。瑞穂が冷静な声で問い返す。
「相手チームだってこの地域の学校だ。文化祭で来てくれた人もいるだろうから、瑞穂の力になっているよ。神様が裏切っちゃ駄目だろ」
(そうかもしれん。だが、妾は伍良を助けたいのじゃ。身近な人を助けたいと思うのは当然であろう)
「それに俺はサッカーから遠ざかったけど、反則はしたくないんだ」
(誰も反則だとわからないのだぞ)
「俺と、それに瑞穂がわかっている。嘘に嘘を重ねるような真似はしたくない。胸を張って祐輔と付き合えなくなるよ」
(そうか、そうじゃな……)
 苦笑が混じった声で瑞穂は引き下がった。瑞穂の誘いを蹴ったことで、伍良は全ての力が抜けそうになる。今からでも助けてくれと叫びたかった。
 無情にもホイッスルの音が鋭くグラウンドに響き渡る。勝敗は決したのだ。

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