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子供の神様 (48) by.アイニス

(48)

 準優勝でも快挙には違いない。祐輔が戻ってきたら笑顔で出迎えるつもりだった。
「あれ、おかしいな」
「……約束を守れなくて、ごめん」
 笑うつもりだったのに、祐輔の顔を見た途端に涙が溢れてきた。手で押し留めても、ポロポロ流れ落ちてくる。本当に無念なのは祐輔のはずなのに涙が止まらない。
「本当にごめん」
「あっ!」
 伍良の泣き顔に耐えられなくなって、祐輔は逃げるように走り去った。まるで伍良に責められたように感じたのだろう。敗者に鞭打つような真似をしてしまった。
 涙を拭いて伍良は祐輔を追いかけたが、喫茶店のマスターに家に入れてもらえなかった。
「ごめんね、伍良ちゃん。今日はそっとしておいてもらえるかな」
「……わかりました」
 マスターに説得されて一応は引き下がったが、それで諦めるような伍良ではなかった。
「瑞穂、力を貸してもらえるか」
(構わぬぞ。恋の成就も妾の仕事じゃ)
 瑞穂に協力を確約してもらってから、伍良は暗くなるのを待った。裏手から壁を這い登って、屋根伝いに祐輔の部屋を目指す。
「窓のロックを外して、音が外に漏れないよう頼むよ。マスターに気づかれたくないからさ」
(それくらいお安い御用じゃ)
 祐輔の部屋は薄暗いままだった。晩秋の弱い夕日が窓から入るだけだ。ベッドには膝を丸めて俯く祐輔の姿がある。伍良の存在にはまだ気づかないらしい。忍び足で部屋に入ると、伍良は照明のスイッチを押した。
「えっ、伍良?」
 照明の光に気づいて祐輔は顔を上げた。伍良がいることに驚いている。
「今日はお疲れ様。それに準優勝おめでとう。本当に頑張ったな」
「あんなに応援してくれたのにすまなかった。約束を守れないんじゃ彼氏失格だな」
 伍良は励ますような声を出したのだが、祐輔の顔色は沈んで暗いままだった。沈鬱な声をしている。
「もう謝るなよ。それに謝らなくちゃいけないことなら俺にだってある」
「伍良が謝るようなことなんてないだろ」
「俺の事情で祐輔に無闇なプレッシャーを与えてしまった。それが原因で動きに精彩を欠いただろ。悪かったよ」
「決勝戦だからプレッシャーがかかるのは当然だ。伍良が気に病む必要はないよ」
 落ちこんでいるにも関わらず祐輔は優しい。だが、これからする話を聞いたら祐輔の態度が変わるかもしれない。それが怖くはあったが、ずっと隠したままでは祐輔と向き合えないと思った。
「それとさ、本当は俺の方が彼女失格なんだよ。祐輔を騙している、いや、隠していることがあるんだ」
 伍良の声が硬くなった。緊張で体が震えてきそうだ。伍良の変化を感じ取って、祐輔が怪訝な顔をする。
「伍良は気立てが良くて可愛くて行動力もある女性だよ。正直俺にはもったいないくらいだ。それに人間なら隠し事の一つや二つくらいはあるよ」
「あまり褒め殺すなよ。決意が鈍るじゃないか」
 べた褒めされた伍良は少し苦笑した。大きく息をしてためらいを吹き飛ばす。
「俺は優しくて男前な祐輔が好きだ。約束なんて関係なしに付き合いたい。でも、俺の過去を知ったら、祐輔は敬遠すると思う」
「そんなことない。どんな事情があっても俺は伍良が好きだ。その気持ちに偽りはないよ」
「ありがとう。でも、これからする話を聞いて結論を出して欲しい」
 緊迫した伍良の表情を見て、祐輔は真剣な顔になった。一言一句も聞き逃さないよう集中している。
「俺はさ、本当はこの姿じゃなかったんだよ」
「それは美容整形でもしたってことか。そんな覚えはないけどなぁ」
「いや、そもそも俺は女の子じゃなかったんだよ」
「は? 確かに昔から伍良はやんちゃで男の子っぽかったけどね。まぎれもなく女の子だった」
 祐輔の記憶は改変されているので、伍良は最初から女の子だったことになっている。伍良の言葉に戸惑うのは当然だ。
「俺が男だったから、子供の頃から祐輔と泥塗れ、草塗れになって一緒に遊んでいたと考える方が自然じゃないか。それに女の子なら俺の名前は変だろ。疑問に思わなかったか?」
「えっ……言われてみると確かに。指摘されるまでおかしいと思ってなかった。あれ、伍良って男の名前だよな。で、でも、子供は名前を選べないだろ」
 祐輔は動揺して納得のいく理由を探していたが、説得力のある答えを見つけられずにいた。
「俺は罰当たりなことをして神様に呪われたんだ。何とか仲直りはしたけど。これから神様に頼んで俺に関する記憶を戻してもらうよ。俺の話だけじゃ半信半疑だろうからさ」
「わ、わかった」
(ほ、本気か? 話すだけにして、伍良の元の姿まで思い出させなくてもよかろうに)
 伍良の頼みを聞いて、瑞穂が頭の中で大声を出す。呆気に取られたようだ。
「頼むよ。そうでなければ、俺は前に進めそうにない」
(仕方ないのぉ。正直というか、馬鹿というか。やれやれじゃわい)
 呆れたように笑って、瑞穂は伍良の頼みを承諾してくれた。伍良も自分のことが馬鹿だなと思う。でも、恋人には偽ったままでいたくない。
(では、祐輔の記憶だけ戻そう)
「驚くなとは言わないけど、慌てないでくれ」
「努力はするよ」
 祐輔は不安そうな顔で頷く。瑞穂が力を放つと祐輔は眠気に襲われたように頭を左右に振った。目蓋がゆっくり閉じられてベッドに倒れていく。祐輔は眠っているようだった。
「大丈夫なのか?」
(すぐに目を覚ます。多少は記憶の混乱があるだろうがなぁ)
 祐輔が目を覚ますまでの時間がやけに長く感じられた。手に汗が滲んでいる。心臓が激しく鼓動していた。
「う、ううっ……」
 瑞穂の言葉通り、五分も経たないうちに祐輔は目を覚ました。夢を見ていたかのようにぼんやりとした顔をしている。伍良はじっと祐輔の意識が覚醒するのを待った。
「……伍良だよな?」
「そうだ」
 多少は混乱しているようだが、祐輔は落ち着いているように見えた。
「記憶が戻ったよ。どうして記憶違いをしていたのか不思議だ」
「それが神様の力ってことだな」
「神様の力、呪いで伍良は女の子になったわけか」
「ああ、俺は元々男だったわけさ。男だったのに女の振りなんかしてさ。気味が悪いだろ」
 伍良は自嘲気味に笑った。女の立場を利用して、喫茶店でバイトをした。サッカー部の連中の好意を利用して材料を集めた。男だったにも関わらず、男を好きになってしまった。どれも気味が悪い話だろう。
「そうかな。どんな状況でも伍良が頑張っていたのはわかるよ。伍良が喫茶店のバイトをしてくれたお陰でうちの家族は助けられたんだ」
「で、でも、俺は男だったんだぞ」
 思ったよりも祐輔が冷静だったので、逆に伍良が感情的になってしまった。何か文句でも言ってくれた方が落ちつけた。
「今の伍良は女の子だよね。それでいいじゃないか」
「よくない。記憶が戻ったなら、俺が男だった頃の姿も思い出しただろ」
「そうだね。姿だけじゃなくて合宿で一緒に風呂に入ったこととか、キャンプで立ち小便をしたこととか、色々思いだしたよ」
「わ、わざわざそんなことまで口にしなくてもいい。それならなおのこと、俺のことが気色悪いだろ」
 祐輔と一緒にした行為を思い出して、伍良の顔は羞恥に染まった。
「伍良の性格が変わったわけじゃないからなぁ。それに男だった頃から伍良のことは好きだったよ」
「えっ」
「変な意味じゃないから。友人として好意を持っていたという意味だよ」
 伍良が引きつった顔をしたのを見て、祐輔が慌てて説明を加える。祐輔が男好きだったかと勘違いしそうになった。
「だから何も変わらない。伍良が元男であっても好きだよ」
「気の迷いや同情じゃないよな?」
「うーん、どうやったら信用してもらえるかな」
「俺も祐輔のことは好きだ。もっと好きになりたいと思う。だからこんな男女でも構わなければ抱いて欲しい」
 伍良がおずおずしながら伏し目がちに祐輔を見る。頬が熱くなっていた。
「それが証明になるならそうする。でも、初めてだから下手なのは勘弁してよ」
「うん、祐輔との絆が欲しい」
 どちらからともなく唇を近づける。祐輔と唇が触れ合った瞬間、伍良の体が甘く痺れた。唇が触れるだけの初心なキスだが、伍良は陶酔感に包まれていた。

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