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星の海で(9) 「二人のラヴァーズ」  (4)仲違

(4)仲違-------------------------------------------------------

 ラウンジの営業終了後、グレースはヴァイオラに抗議した。 
 グプターの件はもちろん、3年前のわだかまりも残っていた。

「……ゴメン。私知らなかったのよ。彼があなたの恋人候補だって」
「恋人候補なんかじゃないわ。友達よ。でもそうね。性懲りもなくまた私は、心の底で期待してたの。馬鹿だわ私。それにグプターだって、きれいな女のほうが好みよね。それは私にだってわかる。彼があなたの方に興味を持つのは当然だわ」
「彼は私の見かけに、興味を持っただけなのよ」
「私、自分が美人じゃないってわかってる。でも私は好きよ、自分のことが。だって、そうでなきゃ悲しすぎる」
「グリィだって素敵よ。お世辞なんかじゃない。貴女は人間としてとても輝いてる」
「ヴィーはいいわ。美人だから。それだけで私はあなたには、勝てないのよ。それにあなたは誰にでも愛想がよくて、みんな貴女しか見ていないわ。貴女がいるだけで、私なんか……」
「グレース、ちょっと待って!」
「でもね、私の邪魔だけはしないでよ!」

 いつにない、グレースの攻撃的な態度に、ヴァイオラは戸惑っていた。
 グレースの視線を避けるように、萎縮した猫のように肩をすぼめて、下を向いた。

「……オトコは馬鹿なのよ。見た目だけで人を判断しちゃうこともある。そう、確かに私はグレースが言うように美人かもしれない。けれど、私はあなたが羨ましいわ」
「私が?」
「ええ、あなたを愛してくれる人はみんな本気だから。でも私を愛してくれる人は、みんな遊びだわ。本当に私を愛してなんかいないのよ。私はあなたほど性格が良くないし、何か得意なことがあるわけでもない。だから私に飽きたら、みんな離れていってしまうのよ」
「それ、慰めのつもりなの?」
「彼はあなたに好意を持っていると思うわ。でもね」
「何よ。また私にはふさわしくない男だとでも、言うつもり?」
「グリィ、あなた誤解しているわ。私はそんなつもりじゃ……」
「もういいわ! もうたくさんよっ!」

 そういうと、グレースは閉店後のかたづけも途中に、ラウンジを飛び出していった。
 後には、マスターと、ヴァイオラだけが残された。

「いいのですか? 本当のことを言わなくて」
「マスター……。マスターも、私が嘘をついているって思うの?」
「いいえ。でもヴァイオラさんの目が訴えていましたよ。ヴァイオラさんの本当の気持をね」

 ヴァイオラは、心の奥底を見透かすようなマスターの眼差しに躊躇した。

「……私、そんな風に見えた?」
「ええ、そうですね。カン、みたいなものですけど」

 マスターの言いたい事は分かっていた。
 しかし、それはヴァイオラが今までグレースに、言えずにいたことでもあった。

「……届かない、想いだわ」
「自分から動かなければ、グレースさんには届かないのでは、ありませんか?」
「届くと……、届けても良い事だと、思いますか?」
「どうでしょう? 私は若輩者ですから」
「ずるいわ、そんなの」
「すみません。でも、ヴァイオラさんが本当にそう望むのなら、届けても良いと思いますよ」
「それでも、届かなかったら?」
「届くまで、頑張って見てはいかがでしょう?」
「……自信がないわ」

 マスターは、薄めの水割りを少しいれたグラスを、ヴァイオラの前に置いた。

09_2_201601222107271b9.jpg
挿絵:菓子之助 http://pasti.blog81.fc2.com/

「今日は、ずいぶんと珍しい物を見せていただきました。強気ではっきりと自分の意思を言葉にするグレースさんに、おどおどして本心を言葉にできないヴァイオラさん。普段とは逆ですね」
「私は、ラウンジでは道化師なのよ。でもそのことが、グレースを傷つけていたんだわ……」
「道化師ですか。誰のために、演じていたんですか?」
「誰のため? ……そんなこと、考えたこともなかったわ。でも……」
「“でも”?」

 ヴァイオラは目の前に置かれていたグラスを取ると、一口飲んだ。
 しばらく言葉を発せずにグラスを弄んでいたが、やがて小さな声で言った。

「グリィには、見ていて欲しかったのかも。だから、私……」

 ヴァイオラはさらに落ち込んだ様子で、下を向いたまま押し黙ってしまった。

「立ち入ったことを言って、すみませんでした。でも、ラヴァーズの悩みを聞くのも、私の役目なんです。絶対に他言しませんから、なんでも相談に乗りますよ」
「ありがとう、マスター」

 ヴァイオラは無理な笑顔をマスターに向けたが、目尻には涙が滲んでいた。

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