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星の海で(10)  「Be My Lover」 (6)フランチェスカ~嫉妬と恋と

(6)フランチェスカ~嫉妬と恋と-------------------------------------------------------

 フランチェスカは胸の中にもやもやとしたものを感じながらも、平静を装うようにカウンターに腰掛け、自分も軽い飲み物をマスターに注文した。
 そこへもう一人の当番である、メリッサが来て話しかけた。

「フランチェスカさん、いいんですか? あれ……」
「何が?」
「何がって、提督ですよ」
「別に、リッカルドが誰と何をしようと、私には関係ないわ」
「……」
「何?」
「いえ、その……なんでもありません」
「そんなことより、今日はメリッサもずいぶん派手なのね」
「え? ええ、フランチェスカさんも、エミリアさんも今日は気合が入っていると聞いていましたので……」
「そう……。私は“似合わない”ってダメ出しされたけどね」
「気にされてるんですか?」
「誰が! 失礼な奴だと思っただけよ」

 メリッサも、リッカルドと意見は同じではあった。
 フランチェスカには、こんな服は似合わない。
 初日に着ていた様な、小さなお姫様を思わせるような、可愛らしい姿のほうが彼女には相応しいと思っていた。
 しかしそれを今言うのは、フランチェスカの機嫌を更に悪くするだけだと思い、それ以上は何も言えなかった。
 メリッサは、エミリア達の計画をこの時点ではまだ知らされていなかったため、フランチェスカの事が心配ではあったが、馴染みの別の士官からお呼びがかかり、そちらのほうへ行かざるを得なかった。

 リッカルドは時折、フランチェスカの方を見てはいたが、当の本人はこちらに背を向けたまま、カウンターに座っていたため、その表情を窺うことはできなかった。
 エミリアはそんな様子のリッカルドに気づいていた。

「気になりますか?」
「何がです?」
「フランチェスカさんですよ」
「……別に」
「お好きなんでしょう? フランチェスカさんのこと」

 リッカルドは、ぶほっ! と思わずむせた。その拍子に、手に持っていた飲みかけのグラスを少し、膝にこぼしてしまった。

「あらあら、大変。ちょっとこちらへ……」
「い、いや、大丈夫だ、この程度」
「ズボンに染みができてしまいますわよ。さ、遠慮なく」

 半ば強引に、エミリアに腕を引っ張られ、リッカルドはラウンジに隣接する、プライベートボックス席へと、リッカルドを連れて行った。
 その様子を目撃したメリッサは、談笑していた士官を放ったらかして、直ぐにカウンター席のフランチェスカの元に駆け寄った。

「フランチェスカさん!」
「どうしたのよ、メリッサ。大声だして」

 メリッサは自分が注目を浴びているのに気がついて、フランチェスカの耳元に口を寄せて、小声で言った。

「今提督とエミリアさんが、プライベートボックスに……」
「ふーん」
「“ふーん”って……、いいんですか?」
「何が?」
「“何が”って、提督の浮気を放って置くんですか?」
「浮気って何よ。別にリッカルドが誰と付き合おうと、関係ないわ」
「“関係ない”って……。提督はラウンジに来られるのも滅多に無いことですし、フランチェスカさんに気を使ってずっと、誰にも“お誘い”なんてしていなかったのに……」
「だからそれがどうしたの? リッカルドだって男なんだから、付き合いたい女性ぐらいできたとしても、不思議じゃないわ」
「そんな意地張って……」
「意地なんて張っていないわ。それより、メリッサ。あっちはいいの? もし良ければ、私も同席してもいいかな?」

 フランチェスカは、さっきまでメリッサが居た席で、こちらを怪訝そうに窺っている士官の方を向きながら言った。

「は、はぁ……。で、でも……」
「一人で飲んでいてもつまらないわ。お願い。いいでしょ?」

 メリッサは、プライベートボックスに消えて行った二人のことが心配になったが、フランチェスカが気にしていないと言い張る以上、どうしようもなかった。
 フランチェスカは表面上は平静を装いつつも、、リッカルドのことが気になってはいたが、自分から何かしようという気持ちにはならなかった。
 
 『ラヴァーズのエミリアが、幕僚幹部の、それもかなり高位の人物と恋仲になっている』と、噂が流れるようになったのは、その翌日からであった。
 そして、リッカルドがエミリアを分艦隊司令の副官補佐に任命し、頻繁にピエンツァに伴って行っていることも、囁かれていた.

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


 一日おいた夕刻。フランチェスカは、5回目の当番をダニエラと勤めていた。
 二人はいつもどおり、開店準備のため、早めにラウンジに来て、掃除や軽食の準備をしていた。

「ダニエラは楽しそうね。いつもそんな感じ?」
「え? あたい? そりゃぁ、憧れのジナステラ大尉と一緒に当番なんて、嬉しくって。今日は特別ですよぉ」
「憧れ? 私が? そういえば、ダニエラとはあまり話をしたことがなかったわね」
「あたいみたいに、階級待遇の低いラヴァーズにとっちゃ、大尉は雲の上の人だもんね」
「そんな……。あ、フランチェスカでいいわよ。今は、あなたと同じラヴァーズだから」
「じゃぁ、フランチェスカさん。ひとつ聞いてもいい?」
「何?」
「ガルバルディ提督とケンカなさってるって、ホントですか?」
「誰に聞いたのよ。そもそもリッカルドとは、何でもないわよ」
「ふぅーん。じゃ、あの噂って、やっぱりフランチェスカさんのことじゃ、なかったのかなぁ?」
「噂って?」
「ガルバルディ提督と、とあるラヴァーズが婚約したって言う話」
「そ、それはは、初耳ね」
「何でも将来を誓っていて、この訓練航海が終わったら、結婚するんだとか」
「け、結婚っ!?」
「でもそれって、死亡フラグですよね。あはは」

 ダニエラ屈託の無い笑い声に、フランチェスカは少し引きつった笑いで調子を合わせた。

「そ、そうね。でも何処からそんな話?」
「さぁ? 私もラウンジに来るお客さんから聞いた話ですから」
「そう? もっとも、リッカルドが誰と結婚しようが、か、関係ないけどね」
「ふーん……」
「な、何よ?」
「フランチェスカさん、提督のことファーストネームで呼んでるってことは、ただの上司と部下の関係じゃないって、思っていたんですけど……」
「士官学校時代からの腐れ縁だから、ファーストネームで呼ぶ癖が治らないだけよ」
「ふぅーん。それじゃその件はいいです。それで、提督の事は本当になんとも思っていないんですか?」
「どうもこうもないわ。なんでもないって言ったでしょ。どうしてみんな同じことを聞くのかしら?」
「そりゃあ気になりますよ。艦内の恋愛関係ってラヴァーズにとっちゃ、水や食料の補給よりも、大切な関心事よ?」
「そう言うもんかしら?」
「もち!」
「それなら、私もあなたに質問するわ」
「どうぞ」
「ダニエラには、好きな人がいるの?」
「えへへ~、いますよ」
「誰? 教えてもらってもいい?」
「フランチェスカさんも知っている人ですよ」
「誰よ! まさか……?」

 フランチェスカは、少し慌てた様子で身を乗り出し、ダニエラに聞き返した。
 フランチェスカの意外な反応にダニエラは一瞬固まったが、直ぐに合点がいったのか、微笑を浮かべてから、言った。

「フェルナンド中尉」
「フェルナンド中尉って、第2空戦隊の?」
「はい」
「え? あ、そ、そうだったんだ。ごめん! この前、私……」
「ええ、知ってますよ。彼が話してくれましたもん」
「フェル……いえ、中尉が!?」
「はい」

 フランチェスカは、筋金入りの朴念仁だと思っていた後席に、そんな相手がいるとは思ってもいなかった。

「あ、あのね、中尉とは何もなかったから、その……」
「ええ、分かってます。そんなに気を使わないで下さい。彼、隠し事が嫌いみたいで、何でもあたいには正直に話してくれるんですよ」
「ふーん、あの口下手がねぇ……。ってことは、彼もダニエラの事が?」
「うーん、どうだろうねぇ? そのあたりはあたいにもちょっと……」
「それでも、好きなんだ?」
「うん」

 フランチェスカはちょっと考え込む仕草をしてから、今までずっと疑問に思っていたことを質問した。

「ねぇ、ラヴァーズってその……。元男なのに、男が好きになったりするのかしら?」
「うーん、あたいたちは自分が男だった時の事なんて良く覚えて無いし、人が人を好きになるのって、そんなにおかしいことじゃないと思うけど」
「あ、ごめん。そう言う意味じゃなくって、元男だって判っていて、恋愛対象になるのかって事」
「ああ、そう言うこと? でも、ラヴァーズにプロポースして、結婚した人だってたくさんいるでしょ?」
「それはまぁ、そうだけど」
「それじゃあ逆に聞きますけど、フランチェスカさんは誰か“特定の人”、好きになったりしないの?」
「私が? まさか」
「どうして?」
「どうしてって、いちいち誰かを好きになっていたら、ラヴァーズなんか勤まらないでしょう?」
「そうですかね?」
「だって、不特定多数の男と仕事とは言え、その……いろんなことしなきゃいけないのよ。男としては、そう言うのって嫌じゃない?」
「そうですねぇ。じゃあ、ガルバルディ提督のご不満も、そこにあるんじゃないですか?」
「ぶっ! だからなんでそこでリッカルドが出てくるのよ!」
「だって、提督はフランチェスカさんを独り占めしたいのに、それができないから、不機嫌なんでしょ?」
「そんなワガママが通るはず無いでしょう! リッカルドが不機嫌なのは……」
「不機嫌なのは?」
「……そ、そんなこと知らないわよ!」

 子供のように顔を赤くしてぷっとむくれたフランチェスカを、ダニエラはかわいいと思った。

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