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TSFのSS Tattoo (1)

るしぃの薄暗い部屋(あむぁいおかし製作所のるしぃさん投稿SSのカテゴリ)
るしぃた(るしぃさんのサイト)

「あ~、ん、あぁあ」
 辺りに嬌声が響き渡る。それが私の声だと認識することが、私の一日の始まりだった。
 かれこれ何日過ぎたのだろう? 何か月? それとも……何年?
 体重を感じながら、いつも思うことは同じだった。心を無にしても身体は感じるんだなと、そんなことを思うのもいつものこと。自分の身体なのに、圧し掛かるこいつの方が今では私の身体を隅々まで知ってるのだろう。
「ん、イクっ」
 身体の中に嫌な粘液の射出を感じた。
(どうして、こうなったんだろう……)

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挿絵:こじか

 私がその遺跡に興味を持ったのは、あいつの影響もあった。あいつは所謂正当な考古学に興味がなく、超文明などという一種の「トンデモ」に傾倒していた。
 荒唐無稽な読み物としては楽しいけれど、それを学問とするのはいかがなものかと、何度も衝突したのもだった。今から考えれば、既にその時からあいつの中ではターゲットは決まっていたのかも知れない。
 ただその遺跡は、いつもの「超」文明とは異なり、正史にも登場しても未発見のものだったから、発掘のために関係各所や大学への働きかけは私が積極的に行った。
 だから、失敗や実績が得られないなどということは容認できなかった。
 自分の助教授としての立場や実績、将来に焦りを感じていたのかもしれない。
 発掘のメンバーは、研究室の学生を中心にあいつと私。そしてアルバイトを雇った。
 遺物が得られたところを中心に掘った。掘り進めた。しかしその時代の地層に到達しても、遺跡は発見に至らなかった。
「俺は、この辺りじゃないと言ったよな」
 何度もあいつと議論して、この場所を決めたというのに、今更あいつの言では、もっと西の山の中腹だという。容易には承服しかねたが、学生の間でも次第に私への不満の声が大きくなっていった。
 そして、ひと月も経つと、私もそれらを無視できないようになっていた。

 それは徐々にあいつに絡めとられていたことを意味していた。けれど、その時の私にはそのことがわかっていなかった。
「どうして何も出ないんだ……」
 苛ついた私は宿舎で当たり散らしていた。それをなだめるためなのか、それとも気を引くためなのか、あいつは自説を披露し始めた。
「――ということなんだ。だから……」
「なら、あの時はっきり主張すべきだろうっ」
 日本酒片手に出来上がりつつあった私は、あいつにクダを巻く。しかしあいつは意に返さない。それどころか興味深い、そして破滅への切符を手に意味ありげな笑みを浮かべた。
「実は、夜な夜なそこに行ってみたんだ。そしてこれを見つけた」
 差し出されたそれは、火焔型土器に近かった。しかし縄文ではなく、絵付けがされている。そしてその絵は、これまで見たことがないリアルな表現がなされている。
 時代的にあり得ないそれには、身体と思しき部分に奇妙な文様が描かれていた。
「こりゃ、お前……」
 渡された土器を手に、声も手も、そして心も震えた。一気に酔いも覚める
「なぁ、これを見てみろよ。この文様は刺青じゃないかと思うんだ。南方系の民族が、この地域にまで来て新たな文化を発展させた証拠じゃないだろうか」
「本物なら、な」
 極めて冷静を装い、反論をした。しかし論より証拠だった。俺は自説にも負け、証拠を前に意気消沈していたのだ。そして、俺の性で自分の目で確かめたいと強く願っていた。それもあいつの罠とも知らずに。だから、あいつの次の言葉は俺を動かすのに十分足りえた。
「今から、行ってみないか。俺の功績なんかどうでもいいさ。君が見つけたことにすればいい。学会もその方が通りやすいし」
 今思えば、自分の手柄を他人に差し出すなどあり得ない。しかしその時の私は、敗北感と期待とアルコールでおかしかったのかも知れない。
「ああ、行ってみよう。案内と運転頼む」
 発掘に必要な道具はいつもすぐに持って出られるようにまとめていた。それを手に立ち上がると、あいつは待ってましたとばかりに満面の笑みを見せた。
「そうこなくっちゃな」

 車を降りて山中を歩く。深夜ともなれば、月が出ていない限りほぼ暗闇の世界だ。その中で躊躇せず歩みを進めるあいつの後ろを、私はこわごわ進んでいた。少しでも物音がすれば心臓がバクバクとなり、どうにも誰かに見られているような気がして絶えず後ろを振り返っていた。
 日付が変わる頃、目的の場所へと着いた。
「ここかい? 伊邪那美でもでてきそうだな」
 山の斜面にぽっかりと穿たれた裂け目は、まるで黄泉平坂への門のように見えた。
「この奥に数十メートルいくと、俺が見つけた土器が散らばってる場所になる」
 ヘルメットとライト、そしてデジカメと簡単な発掘道具を持った私は、逸る気持ちを抑えきれなかった。早く行けと、私とは対照的に大きな荷物を担いだあいつを促し、足早に門をくぐる。
 内部は人が一人入ればぎりぎりの横幅と高さで、ぬめぬめと足元は悪く、何やらすえた臭いが奥から漂っていた。
 暫く無言のまま歩くと、少しばかり広い場所に出た。入ってくる前の伊邪那美云々から、それまで歩いてきたところが産道でたどり着いたところはさながら子宮のように思い始めていた。根拠などなかったけれど。
 足元を照らせばあいつが見せてくれた土器と同じようなものの破片が転がっていた。
「実はな、この左手に石組みの壁があって、前回それを壊してしまったんだ。まだ中へは入ってないんだが」
「なにしてるんだ。中に何かあったら風化してしまうじゃないか」
 あいつを静かに罵倒しながらも、私は新たな何かを見つけられるかもしれないという、子供じみた興奮の最中にいた。
 とにかく、「何か」を見つけたかった。たとえあいつが発見した場所でも、あいつより先に。
 足早に崩れた石組みに取り付くと、あいつが制止するのも聞かず、強引に侵入を果たした。後ろからあいつがついてきた。
「おおっ」
 ライトに浮かぶ壁一面に、極彩色の女人図が飛び込んできた。それを前にしたら、学者としてしてはいけないことなど、極些末な事としか思えなくなり、興奮は歓喜を呼びあいつがどこにいるのかさえ失念していた。
「見ろよ。この女人図。みんな同じように背中、いや、首の下か? 同じような刺青があるな。お前の言ってた通りかもしれん」
「そうだな。ところでこれを見てくれないか。これだけ同じ刺青をしているのに、絵柄的には男性に見えないか?」
「ん~? ……もしここの壁画が絵巻物のように物語性をもっているなら、確かに繋がりがおかしいな。この崩れたところにヒントがあるのかも」
「ああ、やはりそこに至るか。そりゃそうか」
 そこには男が女に変身したように見えた。崩れた絵の部分には、その要因が描かれていたように思えた。そしてその要因に思い至った。それを口にしようとした瞬間。
 意志とは無関係に身体が脱力し、昏倒していた。
 冷たい、ぬめっとした土と石が、「学者としての私」の最期の感触だった。
 
 最初に感じたのは、背中の、首の下、肩甲骨の間の、痛痒さだった。
 不透明な水底にいるような視界に視線を漂わせ、そこを触ろうとしたが私の手はうまく動かなかった。痺れとか痛みとかそんなものではなくて、もっと物理的に。手首を縛られているとわかったのは、あいつの声を聞いてからだった。
「だめだめ、触っちゃ。彫ったばかりなんだから。我ながらうまくできたよ」
 瞬時には状況が掴めず、言葉もでない。目の前にいるあいつの誇らしげでどこか人を小ばかにした笑顔は、鬱陶しい黒髪で御簾が降りているようだった。
「どういう……?!」
 問いただそうとした私の声は、それまでとは違い女のように高い。まるで壁を彩る女人図が話しているように思えた。その違和感に再び口を噤むと、視界を遮る髪を両手で何本も抜けるほど引っ張り、許せる範囲で自身の身体を弄った。
 柔らかい肉の感触は、それが自分のものでなければ何時まででも触っていたいほど。しかしその事実に私は驚愕し、上体を起こしながらあいつを見据えた。
「驚くのも無理はないさ。ここは本当は、一年も前から見つけていてね。ほとんど調査し終わっているんだよ。――ああ、余計なことはいいか。今の君に必要なことを言おう。ここに描かれているのは、古の文明が残した秘術を記している」
 話しながら近づくあいつの目には、狂気が宿っていた。仰向けにした手が、徐に私の上着の胸元を掴んだ。繋がった自らの腕でその手を払いのけようとした。けれど私の腕とあいつの腕が並んだとき、その大きさに、腕の太さに、畏怖の念が渦巻いた。
「そう、例えばあの絵。ほとんど獣人だよ。向こうは小人。そうなった要因は」
「! あっ」
 言いつつ、あいつは掴んだ腕を左右に広げた。豊かな白い乳房がまろび出た。その行為は羞恥からでたのか、それとも他にあったのかわからないが、私は必至であいつの目から隠そうとした。
「そう。君が触ろうとした、刺青だよ。特定の部位に特定の文様を彫れば、人を変え、そして意のままに操れる。俺は神にも等しい力を手に入れたんだ」
「……そして、私は女にしたのか? お前、どういう料簡なんだ? 私がお前なんぞの言いなりになるとでも?!」
「うぐっ」
 両手の親指であいつの喉を思い切り突くと、あいつは意外なほど簡単にひっくり返った。
 私はその隙に逃げれば良かったんだ。あの一瞬が、運命を決定していた。
 あいつと私はほとんど体格差が無かった。男の頃は。学問でも、スポーツでも、すべての面で私は優位だと思っていた。それが禍したんだ。
 ひっくり返ったあいつに蹴りを入れ、憂さを晴らし、そのあと元に戻る方法を聞き出す、そう思って放った私の蹴りは、あいつには効かなかった。痛みなどないかのように立ち上がり、十回以上蹴っても構わず近づいてきた。
「ぎゃっ!?」
 お返しとばかり、両足を刈り取られるように蹴られ、地面に頭を打ち付けられてから始めて蹴られたことに気付いていた。
「――苦しいじゃないか」
「あ、うっ」
 平手で打たれたのに、目の前がチカチカして、何度も何度も打たれ続けた。
「いつまでも、偉そうに、してんじゃ、ないっ」
「! あ、つっあぅ」
 私の腕など、あいつの暴力の前では役に立たなかった。力を半減させるとか、痛みを少しでもなくそうとか、そんな努力は無意味で、打たれ続ける理不尽さに憤るが、この身は動かなかった。
 そのうち平手から拳に代わると、思うことは二つしかなかった。
 あいつへの、怖さ。そして、どうしたら終わってくれるのか、と。
「や、もう、やめ、くだ――」
「はぁっ、はっ、さ、最初から、言うとおりにして、いればいいんだよ。何もできないくせに、功名心だけ肥大したくそが。今回の発掘も、結局なにも出なかっただろう。いいか、君はな、俺がいなけりゃ、学者なんぞにもなれない、出来損ないだ。俺が常にヒントを与え、それを元にしなけりゃなんにもできない。はっ、エサがなけりゃ死んじまう家畜だ。そうさ、俺の家畜なんだよ。素直に飼われてろ」
「……うぅ……」
 暴力の、身体の痛みが終わったと思っていたところへ、私自信を否定され、臍を噛むしかなかった。
「ああ、家畜にはいらないな」
 言うが早いか、服をはぎ取られ丸裸にされた私は、あいつに腹を蹴られ、言葉もなく蹲るしかできなかった。
「暫く頭でも冷やせ」
「? あっ待っ」
 そう言うと、あいつは身を翻し穴から出ると、外から石を組み出口を塞いでしまった。
 私の細い指と腕ではどうにも動かせない石組みを前に、冷たい地面に倒れこんでしまった。
 何回かの睡眠の後には、痛みと冷えと空腹が絶えず私を襲った。
 死の恐怖が見え隠れし始める頃には、力なくあいつを呼んだ。称えた。そして懇願した。「出してくれさえすれば」から、「顔を見るだけでも」、それが「声だけでも」になるのは早かった。
 寒さをしのぐために膝を抱え座った。そうすると、自分の身体が女であることに気付く。大腿でひしゃげた乳房を見ると、なぜだか涙が出ていた。
 そして、更に数日が経ったように思えた。
 助けて。許して。なんでも言うとおりにする。そう思う事が、私のできることだった。

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