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特別捜査官間藤衛次の受難 1-1

作.黒い枕
挿絵:れいとうみかん

<1-1>

――『運命の日』とは、誰にでも存在する。
あるひとりの捜査官にとっては、今日だった。


時刻は、午後二時を過ぎた頃。
表通りから追い出されたように古いビルが密集する地帯。
人通りも都心とは思えないほど少ない裏路地に……黒い車が止まった。
「……ここだな。いいか油断する!」
部下三名と共に、間藤衛次(まどう えいじ)は問題の建物を見上げた。
『はいっ』
重々しい声で、部下たちが応じた。振り返らず、衛次は歩を進める。
一際、破損が目立つビルだった。
壁は至る所で剥がれ落ち、地上からでもくっきりと分かるほど大きな罅が入っている窓ガラスまであった。
全く持って出来過ぎた――いかくに、悪党が潜伏しそうな――有様だった。
目的地は三階。
そこに今回の容疑者〈ターゲット〉が隠れていた。
(今回の男を確保できれば……例の組織に大打撃を与えられる!)
髪は短く、鋭く尖った瞳。
――そして、まるで獲物を静かに狙う大鷲のような雰囲気。
衛次は、刑事だった。
それも、ただの刑事ではなかった。
近年、ますます多様化し、国際的にも増加する組織犯罪に対抗するべく、集められたエリートで構成された特別捜査官だ。
新人警官とは違い、浮き足を立てず、だが、素早く階段を上がる。
「…………」
事前の情報通りに建物に侵入して、数分後。
目の前、ドアが現れた。
固唾を呑み、そして、ノックする。
(……しかし、運が良かった。組織に関わる人間から保護を求められるなんてっ……)
組織の金に手を付け、裏切りがバレてしまった売人自らが、連絡して来たのだ。
期待に手が微かに、震えていた。……が。
「……まてっ。何だか……様子がおかしいぞ」
返事がない。一刻も早く保護されたい筈なのに。
「……どうします?」
「直に警部に連絡をいれろ。他は僕と一緒に――突入する!」
ばんっ!
部下への指示と行動が、同時に起きた。
衛次の脚が、ドアを破り、連絡係り以外が部屋に踏み込んだ。
「…………」
目を見開く。
アルコールの缶。灰皿いっぱいのたばこ。
机に大きく積み重なったゴミ山の臭気と、嫌な……死の腐臭が、鼻孔を貫く。
男は……通報者は、死んでいた。
背もたれが壊れかけた椅子に、鎮座。
額には、赤い穴。
そこより溢れ出た死の川が下へと流れ、男の顔を横断していたのだ。
「そんな……遅かったなんて!」
「くそ……助けられなかった。折角……あいつらの情報を得られると思っていたのに!」
「…………」
後ろから悲壮な響きで、部下が漏らす。
場数を踏み、優秀であったとしても、人間の死はそう簡単には受け止められない。
まして、長い間捜査していても中々尻尾を出さなかった犯罪組織の情報を得られる機会を失ったのだから、その失意は大きい。
だが、衛次だけは違った。
人の死よりも、貴重な情報源の消失よりも――もっと大きな違和感が、理性を急き立てる。
(なんだっ?……何かが、おかしい?)
山積みの缶を崩さぬように、歩み寄る。
氷のように固まった肥満気味の体。
凝固したまま動かない血。
そして、気力を削り取る、どうしようもないほど深く、濃厚な――死の香り。
死後硬直は、死んでから一日以上だと推測できる。
けれども、通報は……一時間も経っていない。
ぞっと、悪寒が背骨から脳天へと突き抜けた。
「……っ!や、やばい!」
叫び、振り返る。だが、手遅れだった。
パン、パン……パンっ!
「うぐっ……!」
「がっ……!!」
乾いた音が連発し、部下が血を噴いて倒れる。
突如現れた、覆面の男の前で。
その最中――。
「くうっ……おっ、おおォォ!!」
銃を抜き出し、神業とも思える速度で安全装置を外し、狙いを定め……衛次も、反撃した。
バンッ!
重厚な炸裂音に相応しく、一発で……襲撃者の額が、赤く弾けた。
力なく崩れ落ち、サイレンサー付きの拳銃が、くるくる、と回転しながら地面に落ちる。
「はあっ……はあっ、くそ……くそぉぉ!!」
通報は罠だった。
駆け付けた捜査官を始末しようと、暗殺者が牙を剥いていたのだ。
(そ、捜査官まで狙うなんて……!やはり相当、凶悪な組織だ!……それに……僕たちの――警部の懸念は、もう間違いないッ!)
後悔しながら、倒れた部下に駆け寄る。
だが、しかし……
「片岡っ!田尻っ!しっかりしろ……だめだ!し、死ぬな……っくそたれぇ!」
二人とも反応はしなかった。
息も、瞬きも、もう出来ない――二人は死んだ。呆気ないほど簡単に。
そして、暗殺者が部屋に踏み込んだと言うことは連絡係として廊下に残っていた一人も……既に、この世にはいないだろう。
(はぁ、はあ……くう……はやく、れっ、連絡を――!くぅううっ……!)
激しい痛みが、込み上がった。
脇腹に触れる。
どろりっと血が溢れ、手を赤く染めた。
いち早く襲撃に気付き、熟練の動作で反撃しようとも、無傷では済まなかった。
懐から携帯を取り出しつつ、壁を背凭れに崩れ落ちる。
「はぁ、はあ……くぅうっ!」
連絡先に『警部』と表示され、通話をしようと試みる。が……。
「……これは少し予想外だ。……まさか、返り討ちに合うなんて……使えない奴だなぁ」
「……っ!だ、誰だっ……ぐぅう!」
更なる侵入者が、死と血に満たされた空間に現れた。
歳は、二十代後半ほど。
漆のような艶やかな黒が、結わえられた長髪に染み込んでいる。
恐ろしいほど美麗な顔立ちと合さって、夢物語の世界から飛び出したような貴公子の風勢。
……右目が、黒い眼帯に隠されてなければ。
「お前は……な、なんだ……組織の殺し屋のひとり――なのかっ!」
苦し気に身を捩じりながら、問い掛ける。
握り締めたままの拳銃を向けて。
「殺し屋?まぁ、そう思うのが普通だろうが……違うね。名前こそ教えないが……私はボスだよ。……お前たちが探している組織の」
「くっ、はっ…………こっ、こんなところに……はぁっ、はぁっ。そんな大物が来るはずがないだろ……っ」
「うん、私も出て来るつもりはなかったよ。けど――まさか殺し屋の腕を確認しに来ただけなのに、こんな風に働かせられるとは……やっぱり実際に見てみないと優秀か、無能かは判断付かないなぁ。その点お前は……まだ利用価値がありそうだ」
粘っこい視線に、衛次は圧迫感を覚えた。
まるで蛇に呑み込まれるような恐ろしさが、男の瞳に宿っている。
「はぁ、はあ……何をいって?――ぐふぅ!!」
直後、強烈な衝撃が顎を打ち貫く。
油断していた訳では無い。
けれども、想像以上の蹴りの速度に対応が遅れた。
いや、そもそも……腹に受けた銃弾の傷が、思ったよりも深かったのだ。
意識が、霞のように消えていく。
(…………彩香さんっ!!)
最後に思い浮かべたのは、愛する女性の顔――その姿を意識に焼き付けながら、衛次は昏倒した。


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