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特別捜査官間藤衛次の受難 3-2

<3-2>

(二年前の……あの悪夢は忘れたくても、忘れられない。もしあのまま調教を受け続けていたら、きっと僕は……心が壊れていたっ!)
女の口調と仕草を洗脳によって植え付けられた円香――だが、それでも、微かな正気を保ち続け、心だけで抗った。
それが組織のボス……あの黒髪を結わえた眼帯の男の何かに触れたのだろう。
窒息死に追い詰めながらも、止めを刺さず、完璧な性奴隷になるまで監禁し続けたのだ。
「……キミの気持ちは……その。……分かる。部下を、仲間を失い――そんな姿にされたんだ。早く例の組織と男を掴まえたいのは……私も同じだ。けれども……何度も言うように、キミは以前とは違う。そのことを忘れるなっ!」
過去を思い出していた女体化の捜査官を現実へと引き戻したのは、警部の声だった。
何度も同じことを言うのは、つまり、それだけ心配されていると言う事だ。
それが分からないほど、円香は疎くはなかった。
「はい……私は……峰円香です。少なくとも今は……ふっ、婦警の円香として――精一杯、皆のために働きたいと思います!」
姿形を変えられた無様な刑事を再び採用してくれた――それもかなり強引に推薦してくれた――、一ノ瀬警部や、病院でお世話になった医師たち。
そして、何よりも……。
(そうだ。落ち込んでいる場合じゃない……自分で決めたことだ。一刻も早く――僕は元の姿に戻って見せるっ。……彩香さんのためにもっ!!)
今でも自分を支える、ひとりの女性を思いながら『衛次』は……否。
峰円香は、びしっ、と敬礼した。
たぷるん、ぷるん。
(うわっ、わああっ!で、でも……これ以上、大きなサイズはなかったのか!?おっぱいで、婦警の制服がやっ――破れるっ、っ!?)
制服のボタンが弾け飛ばしそうなほど、巨乳房が波打った。
「うあっ……うぅっ。はぅううっ……」
その情けない姿に気恥ずかしさを覚え、円香の頬はほのかに赤らんだ。




「はぁ……お酒が飲みたい……」
ごくんっ。
乾く喉を、アルコールで癒したい欲求に駆られた。
(でも……お酒はダメって言われているし……はぁああ)
謎の薬品によって肉体は性別を変え、脳さえも悦楽の虜に成りつつあった。
懸命のリハビリで、日常生活は送れる。
定期的な検診は欠かせず、アルコールやたばこは無論の事――過度な運動も控えられた。
「はぁあぁっ。でも……飲みたい――すごく飲みたいの……わ、私っ」
喉から悩ましい響きの声が漏れる。
円香は、ぐったりと、ソファに倒れた。
(辛いけど、頑張らないと……僕が……自分で決めたことなんだ。これ以上……何もしないでいるのは嫌だっ!!)
救助されてから円香は、捜査に加われなかった。
ごく一部の人にしか、彼女の正体は知られていない。本来の自分――『間藤衛次』は殉職扱いである。
犯罪組織から助け出された、ただの哀れな娘に、捜査権が与えられる訳もない。
事情を知る人たちも、まるで本当の箱入り娘のように、円香を扱った。
守り……可愛がった。
だが、それが何よりも彼女を苦しめたのである。
(――僕は……絶対に戻って見せる。僕自身に……間藤衛次という人間に――その為なら、どんなことでもする覚悟はあるんだ!)
ある時、円香は医師に言われた。
希望とも、可能性とも言えない未来を。
『元の体に戻る薬品が、あるかもしれない』。
『体を変えた薬品を手に入れられたら……あるいは――』
諦めるな、と言う言葉ではない。
“諦めた方が、楽になれる“――と医師は、言い放ったのだ。
(警部のお蔭で、組織には大打撃を与えられた。けど、肝心のボスには逃げられて、あの妖しい薬や道具も……ほとんど見つけられなかった。……けど、あれら実物や関連データを手に入れれば……可能性は……あるんだっ!ある……筈なんだ!!)
理屈では分かっている。
無駄だと、理性が叫んでいる。
だが、それでも円香にとって――『間藤衛次』は自分自身なのだ。
捨てたくない。見捨てたくない。
絶対に……。
「わたし……わたしっ、ぼっ……くぅ……ふぅ!」
熱く激しい決意を胸に秘めながら、円香は暗い顔を上げた。
頬を強張らせ、満面を苦渋の色に染めながら、言葉を吐こうとする。
「……ぼっ、ぼぉ――わ、わたし……あっ、あぅ。やっぱりで、出来ないっ!」
結果は、失敗。大失敗だ。
『僕』というたった一つの言葉も使えず、失望を露わにして、円香はソファに崩れた。
「……はぁあ」
漏れる吐息が、妙に色っぽい。
二年前の調教は、今尚も彼女の体を支配していた。
「わたしっ……本当は男なのに……っ」
仕草も、口調も、強制的に女らしくなる。その事実に涙が、ぽろり、と瞳から溢れた。
(ダメだ……ひとりだと暗くなる。……それでなくとも今日は散々だったんだから……)
同僚の男たちのイヤらしい視線。破廉恥極まりない過度な接触。
帰宅途中の電車でも、痴漢にも襲われた。
性犯罪者に目を付けられ、体を揉み回されたのは――今月で三回目だ。
う、ううっ、と悔しそうな顔で、円香は涙ぐむ。
「だめっ。も……もう嫌っ――!」
盛大に乳房を波打たせ、円香は立ち上がる。
健康も、言いつけも、頭の中には存在しない――ただアルコールの力に頼ろうと、冷蔵庫の中を開けた。
「…………っ」
瞳を細め、冷えたビールの缶を見詰める。
押し黙ったまま、数秒が経過した。
(これぐらい――いいよね?)
女体化の苦しみを紛らわせようと、嫋やかな指が缶を開けた。
プシュッ。
こぷこぷ……シュワァアア!
グラスの中で輝く黄金の液体、麦酒<ビール>。
アルコールの香りが、鼻孔を誘惑する。
「……よ、よし!」
ごくり、と物欲しげに喉を鳴らす。グラスを傾け、円香は唇を開けた。
その直後――。
「……ただいま、衛次くん!」
玄関から轟いた、透き通るように甲高い声。
期待と背徳に心臓をときめかせていた体が、一瞬で凍った。
極寒地獄に堕ちてしまったかの如く、ゾクゾクと背中が粟立つ。
「……衛次くん?いないの?」
「あっ、だめ――さやっ!」
同居人の名を叫び前に、リビングの扉が動いた。
「…………」
洋服が似合う、日本人離れした長い手足を誇る絶世の美女。
艶やかに光りを反射する髪を腰よりも下に引っ提げ、片目を隠している。
胸では目立って極まりない――それでも、円香よりは小ぶりな――美乳が震えていた。
ミステリー小説から飛び出したような、どこか妖しげな美貌であった。
「……うふっ、ふふ……衛次くん?それは――なに?」
ただでさえ切れ長の瞳を、さらに細め、笑みを浮かべた。
世の男どもを瞬く間に堕落させてしまうような、蠱惑的すぎる魔笑。
それが絶対零度を宿している。
ぐさり、と視線が体に突き刺さり、ますます円香は固まった。
「あ、あの……これ――これは、その……」
「……円香ちゃん」
赤点のテスト用紙を見つけられた子供のように、慌てふためく円香を、女性は冷ややかに……呼び直す。
怒っている。かなり、滅茶苦茶に。
呼び直しているのが、その証拠だ。
「…………」
「まずは、手に持っている物を置きなさい」
「はい」
「……お仕置き、覚悟できているわよね?」
「はい。……彩香さん」
ミステリアスな美貌を振り撒く女――峰彩香は、微笑んだ。
許しの、慈悲の、類ではない。
「うふ、ふふ。……復帰して早々にイケないことをする人には……きついお仕置きが必要のようね!」
加虐の悦に、満ち満ちた貌。彩香が、実に嬉しそうに近づく。
(た、頼むから!お、お手柔らかに頼む――頼むよォ!さ、彩香さんっ!!)
借りて来た猫のように震える円香の顔が、彩香の胸元に抱き寄せられた。

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