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【投稿小説】第2型ライフ ①

作:旅わんこ https://twitter.com/Bul_let
イメージキャラデザイン:ささみ https://skima.jp/profile?id=16473

①はこちら ②はこちら ③はこちら ④はこちら サブエピソード ~プリモアモーレ・ディ・キノット 1~はこちら  サブエピソード ~プリモアモーレ・ディ・キノット 2~はこちら
 ⑤はこちら ⑥はこちら

完成(水泳部)

《プロローグ》

「くそっ! なんで男の時のように早く泳げねーんだよ!」
 俺はプールサイドのはしごをのぼりながら毒づいた。
 プールサイドにキャップを叩きつけ、オレンジ色の髪をかき乱す。そこに、声をかけてくる奴がいた。
「そうカッカするな。ほれ」
 そちらを向くと、俺の視界は白く染まった。それがタオルと分かると、俺は俺よりも自由に空中を泳ぐタオルをえぐるようにつかんだ。
「!? あぁ、柚木。ありがとな」
 同級生で同じ水泳部の遊佐柚木(ゆさ ゆずき)だった。
「おう。ま、あまり無理するんじゃねぇぞ」
「はん。ここで無理しなきゃいつ無理しろって。少なくともお前との決着つけるうちは水泳やめるわけにゃいかねぇんだよ」
 柚木の言葉を鼻で笑い飛ばしたが、笑える余裕なんてこれっぽっちもなかった。



《エピソード1》

 空気さえ焦がすほどの夏の日差し。
 手を伸ばせば食べられそうな白い綿雲。
 汗が止まらなくなるほどの蒸し暑さ。
 小うるさいくらいが丁度いいセミの鳴き声。
 夏。それはプールの季節。
 水泳部にとっては数少ない活躍の季節。

 ……けど。
 俺にとって、それは過去の話。
 俺はもう、あの時のように思い切り泳げない。
 俺は女になってしまった。
 しかも今では、胸が泳ぐのに邪魔なほど大きくなってしまったのだ。

 15か月前、季節は春。
 相模湾に面する町、神奈川県南部、詩の月(うたのつき)町。
 総合詩の月厚生病院。
 そこで医者が俺に言った病名と言うのが。
「……はい? んなバカな。俺が女になるって言うんですか?」
「そうだ、湯河原蜜柑(ゆがわら みかん)くん」
 カルテから俺の方に向き直り、その医者は続けた。
「きみの病名は、『第2型ウイルス性性別転換症』。男性に多く発症する傾向にあり、第1型と違って発症したら元の体に戻ることなく、そのまま症状は進行し続け、体は完全に反対の性別になってしまいます。きみの場合は間違いなく、女性のものになるでしょう」
「第2型、性転換……? ちょっと待ってください。んなの無理ですよ。今までずっと男として育ってきたのに!」
「きみをもとの体に戻す治療法はありません。しかし一度落ち着いてください」
 医者は立ち上がりかけた俺の方をやんわりと押して、再び椅子に座らせた。
 俺は大人しく椅子に座った。いや、たぶん大人しくじゃない。
 あとから気付いたけど、俺の両手の掌には四本の指の爪の先が食い込んで赤くなっている跡があった。その時は気づかなかっただけで。
 少し落ち着いたと言う自覚はあった。そして俺は、医者に言われた病気に関する症例を思い出し、それを医者に確認するように尋ねた。
「通称『2型TS病』。元々北アメリカ大陸にあった第1型の変異型、1620年にイギリスからやってきたピルグリム・ファーザーズが持ち込んだ病原体と反応を起こして第2型へと突然変異し、感染力も症状も強くなった。しかもそれにかかった人はたいてい、その…… いやらしくなる」
 医者はうなずいた。
「よく分かっていますね」
「当たり前です。この前も性教育と一緒に学校で習ったんですから。でも嫌ですよ! 俺、今度の夏の水泳大会で優勝したいんですから!」
「それはカウンセラーと一緒に学校側と話し合っていただきたいとしか、僕の方からは言えないんです。それにきみは中学2年生。もっと年を取って中途半端な外見のまま変身が終わってしまう事もないでしょう。気休めかも知れませんが、どうか気を強く持ってください」
「…………」
 気を強くなど持てるわけがなかった。

 その3か月後、つまり今から1年前。
 季節は夏。
 女として初めての夏でもあった。
 詩の月中学校、2年A組。担任でもある女性の先生、立花日乃(たちばな ひの)先生、通称ひのちゃん先生が、俺を黒板の前に立たせていった。
「はーい注目!」
 クラスメイトは、俺の方を向く。
 だが向いたのはひのちゃん先生に言われたからではなく、俺の服装に注目していたからだ。
「さて諸君。きみたちのクラスメイトの湯河原蜜柑くんだが、今日のプールの授業から女子生徒と一緒に授業を受けてもらうこととなった。男子は冷やかさないように、女子は寛大に受け入れるように。もしも湯河原をさらし者にしたり村八分にしたりするようなことがあれば、連帯責任として全員の授業態度を問答無用でE評価にする。当事者の湯河原も例外ではない。それが嫌なら、分かっているよな?」
 俺の服装、それは詩の月中学校指定の女子制服。
 上は襟と袖に青いラインが2本ずつある白いセーラー服、下は前面にボタンが4つある青いスカート。TS病と診断されたあたりからか急速に伸び始めたオレンジ色の髪は背中にまで届き、親のアドバイスで制服のスカートの色に合わせて青いリボンで結っている。
 クラスメイト達はひのちゃん先生の台詞に戦慄しながら、まるで赤べこが首を揺らすようにうなずいていた。

 ところ変わって、プール女子更衣室。
 俺が筒状の水着袋を前にして固まっていると、クラスメイトの女子が声をかけてくれた。
「どうしたのさ、湯河原くん。さっさと着替えちゃいなよ」
「そうそう、時間もないんだし。たぶんだけど男子よりも着替えに時間かかるよ?」
「それに今の湯河原くんなら、あたしたちに変なことしないだろうし」
「っちゅーわけで、いつまでも着替えに戸惑ってるくらいならうちらに任しとき!」
 そう言って勝手に俺の水着袋を開けて、タオルの奥にしまわれていた学校指定の水着を取り出した。カラーは紺色、背中では白い紐が交差しているタイプ。それをひとりの女子生徒が広げている間に、別の女子が俺のセーラー服を脱がしにかかってきた。
「おい、やめろ! やめろったらぁ!」
 女になってからもそれなりに体力は維持してきたつもりだが、セーラー服の構造については女子の方が俺なんかよりも知っている。あっという間に脱がされ、下着まで脱がされ、終(つい)にはタオルにすら守られていないすっぽんぽんの姿をさらされた。
「うっわー! 湯河原くんの肌すべすべ―!」
「胸は…… 今んとこあたしの方が勝ってる。よっし!」
「成る程、オケケはなしと。TS病になったら全身の毛根の構造がリセットされるらしいけど」
「つるつるは今しか味わえない。ボクたちももうこの時代には戻れない! 今のうちに堪能させてもらってもいいよね!?」
 着替えさせてるはずが俺の裸体を撫でまわし、いじくりまわし、そしてとうとう女子がひとりも出てこないことに疑問を抱いたらしい体育の先生が女子更衣室のドアを開いたのは、俺が『身体検査』と称されたあれこれをやりつくされ、思考力を失って痙攣しながら床に這いつくばっている時だった。

 言うまでもないけど。
 プールの授業デビューの日に、まともにプールの授業を受けられるわけがなかった。

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