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【投稿小説】第2型ライフ ③

①はこちら ②はこちら ③はこちら ④はこちら サブエピソード ~プリモアモーレ・ディ・キノット 1~はこちら  サブエピソード ~プリモアモーレ・ディ・キノット 2~はこちら
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作:旅わんこ https://twitter.com/Bul_let
イメージキャラデザイン:ささみ https://skima.jp/profile?id=16473

《エピソード3》

 その日の部活終わり。
 プールサイドからさらに奥まった、コンクリート製のひな壇。
 同級生で部長の女子、八重山直(やえやま すぐ)がバインダーを持って俺たちに言った。
「えー、諸君。来月行われる『全日本中学生水泳競技大会』のメンバーを発表する。
 男子。本栖大地(もとす だいち)、河内夏文(かわち なつふみ)、遊佐柚木。
 女子。須田千秋(すだち あき)、小松伊代(こまつ いよ)、キノット・サンペレグリノ。
 男女各3名の、合わせて6名となる。
 日程は8月第2金曜・土曜・日曜の3日間にかけて行われる。各自それまで以上に練習に励むように。選抜されなかった各部員たちも、それぞれにできることをしっかりこなすように。以上、本日は解散!」

 下校後。
 中学校そばのコンビニ。
 他にも同じ中学校の生徒が群がる中に、俺とキノットもいた。それぞれ、オレンジジュースと炭酸水を呑みながら。
 柚木は部長とすることがあるとかで、今日の帰り道は一緒ではない。
 俺は小さくつぶやいた。
「分かっちゃいたけど、こうして選考に落ちたってのはさすがに堪(こた)えるよな……」
「そう落ち込まない。たぶん部長も、ミカンと同じ気持ちだよ」
 キノットはそう励ましてくれる。
 選ばれたやつの励ましはあまり心に届かないと思ってた。
 けど八重山部長のことを考えれば、俺ばかりひねくれてばかりもいられない。
 キノットは続ける。
「部長も…… スグちゃんもあたしたちと同じ中3。それに今年の優勝を期待されて部長になったんだもん。でも、この前の交通事故で……」
「あぁ。入院レベルじゃなかったけどあれで右肩壊しちまって……」
 口に出せばそれだけ、やるせなくなる。
 このままブルーな感情に浸り続けるのは、俺にとってもよくないし八重山部長にも悪い。俺はつとめて声を高くして言った。
「だからキノット。俺の想いを柚木とお前に託す。部長やその他選ばれなかった連中の分も、がんばってきてくれ」
「もちろんだよ。任せといて!」
 そう言ってキノットは、俺の前に右拳を掲げる。
「キノット…… あぁ、そうだな」
 俺も持っていたボトルを右手から左手に持ち替えてキノットの拳を右拳で叩き、改めて思いを託した。
「認めたくない。今でも思い切り泳ぎたい。でも、俺にはもうお前たちに頑張ってもらうしかねぇんだ」
「でもミカンは何も悪くない。全部2型TS病が悪いんだよ。ミカンはそんな病気で女の子になっちゃって、ほかの女の子がうらやむくらいにお胸が大きくなっちゃって、泳ぎにくい体になって言ってもがんばってきた。誰よりもがんばってきた、それはあたしが知ってる。だからミカン、もう悔まなくていいよ。自分を責めなくたっていいんだよ」
 ぶつけていた俺の右手を、キノットは自分の右手で、そして両手でやさしく包んでくれた。
「……ありがとな。けど情けねぇな、女の子に励まされるなんて」
「今はミカンも女の子だよ」

 コンビニ外のゴミ箱に空っぽのペットボトルを捨て、俺はキノットに言った。
「悪い、女子更衣室にちょっと忘れ物しちゃったみたいなんだ。取りに行くけど、キノットはどうする、先に帰る?」
「ううん、一緒に行くよ。お互い、女の子がひとりでいるのはヤバいでしょ?」
「そっか。じゃあ一緒に来てくれ」
 キノットは炭酸水を一気に飲み干してペットボトルをゴミ箱に捨て、先に歩き出していた俺に追いつく。コンビニは中学校の本当に目の前なので、戻ると言うほど距離は歩かない。
「ミカン、ところで何を忘れちゃったの?」
「水筒。更衣室のロッカーまで持ってきたまではいいんだけど、あのあとまた胸のことでからかわれてさー」
「なるほど。ミカンのおっぱいって格好のセクハラ材料だもんねー」
「女子にしてみりゃスキンシップのつもりかも知れないけど、ありゃいくら何でも……」
 校舎の裏、体育館の前を通り、プールまで戻ってきた。
「よかった、まだ部長は帰ってねぇみてぇだ」
 当然だが、プールは高いフェンスに囲まれ、出入り口もフェンスと同じ格子状の扉となっている。もちろん錠前も設置されている。
 俺はまだ施錠されていない扉を開いて女子更衣室に足を向ける。だが。
「ん?」
 俺のブレザー(もちろん女子用)が引っ張られる感触を覚えた。
 キノットだ。
「どったよ、キノット?」
「み、ミカン…… あれ、見てよ……」
 左手を口元に充て、声を押し殺すように俺に言う。
 そんなキノットの顔は、リンゴのように赤く染まり、まぶたは半閉じになっている。心成しか声も震えているようだ。キノットの視線は俺ではなく、プールと隣接している体育館の方を向いている。
 俺はキノットの視線の先、体育館の方を見やった。
 すると。
「……? う、嘘だろ……!?」
 俺の目に飛び込んできた光景。
 それは、目の当たりにしてもなお信じられないものだった。
 体育館の柱の陰になっているところで、想像もしていない出来事が起こっていた。
「ミカン……!」
「キノット。あれ、何なんだ……?」

 そう言えば柚木は言っていた。
 ――「悪い、ミカン、キノット。俺、部長とやんなきゃいけないことがあるんだ。データの編集とか備品の整理とかいろいろ」
 そう言っていたはずなのに。
「こりゃどういうこったよ!」
「あたしに聞かれても分かるわけないでしょ!?」

 八重山部長と柚木が、体育館の柱の陰でキスをしていた。それも。
 まるで欲望に任せてむさぼるような濃いキスを。
 キスだけではない。八重山部長も柚木も相手の腰に手を回し、しかもその様子は「抱き寄せる」と言うよりは「撫でている」ようだった。
 間違いなく、ふたりは好き合っている。
 そこに俺の親友としての柚木の顔はなかった。そこにいつもの凛とした部長としての八重山直の顔はなかった。ふたりとも、まるでトーストされたばかりの食パンの上に落とされたバターのようにとろけきっていた。
 俺はまるで脳みそがぐちゃぐちゃにかき回されたような感覚を覚え、何も考えられなくなった。
 キノットが言う。
「うっわぁ~。中3なのにテレビドラマの最終回でやるようなことやっちゃってるよ。ねぇねぇミカン。あれ色々とまずいんじゃない?  ……って、ミカン?」
「ふぇっ?」
 俺は口がぽかんと開いていてまともに返事もできなくなっていたのを自覚した。
 その様子に、キノットは叫ぶように言う。
「あんたどうしたの!? 具合悪いの!? とっ…… とにかくこっち!」
 そう言ってキノットは俺の手を引っ張り、プールの扉をくぐって滑り止めのスロープを駆け下り、そして女子更衣室に飛び込むなり乱暴に鍵をかけた。
「ミカン、大丈夫? いくらユズキとスグちゃんのあんなシーン見たからって息切れしたり目を回したりする!? とにかく深呼吸、落ち着いて、はい落ち着いて……」
「ダメなんだ。キノット、こうなったら俺ダメなんだよ」
「どういうこと?」
 キノットの質問にまともに答えられない俺は、スカートのままだろうと濡れたままの床に座り、膝を抱えて縮こまった。
「……2型TS病のせいなんだよ」
「えっ? どういうこと?」
「2型が1型と違うところは感染力が強くなったことや感染したら元の体に戻らないだけじゃない、とてもエッチな感情が強くなるんだって」
「えっ…… えぇぇっ!? それって!?」
「うん」
 そのうち胸と言い背中と言い、全身がカタカタと震えてきた。寒くないのに、まるで寒気に襲われたような感じに。
「クラスメイトが持ち込んだマンガ雑誌のグラビアなんか見たらもうその日の授業に集中できなくてさ、そういう色っぽいものとは距離を置くようにしてたんだ。でもラブストーリーもののテレビドラマやお色気全開のアニメ見ちゃってエッチな気分になったら、自分の部屋でまぁ、その…… ひとりで発散することもあって。
 でも! でも今みたいに動けなくなるほどひどいのは今日が初めてだよ。こんな感じ初めてなんだ。どうしよう、キノット? 俺、このままエロいことしか考えられないド変態になっちゃうのかな? なぁ!?」
「落ち着いて! ミカン、とりあえず落ち着いて!」
「無理だよ…… もう、無理だよ……!」
 俺はもうパニックだった。体の奥からどんどんあふれてくるエロい感情をもう抑えられなかった。
 そんな俺を。
「落ち着いて!」
 キノットが抱きしめてくれた。
「キノット……?」
「大丈夫、ミカンはド変態なんかじゃない。病気のせいなんだからしょうがない。ミカンは何も悪くない、だからネガティブに考えないで。もしミカンがどうしようもないドスケベになっちゃっても、あたしだけはミカンを助けてあげるから。ずっと味方であげるから。ね?」
 するとキノットは、俺の右足の膝に手を重ねるとそのまま太ももの内側を滑らせてゆく。まるで、指先を血管で逆撫でするように。
「ひうぅ!?」
 それだけで体全体に電気が走ったような感触を覚える。
 何も考えられなくなり、言葉を失う。
「はわわ、うおあ……」
「大丈夫、任せて」
 そしてキノットの指はやがて鼠径(そけい)部に到達し、

 そこで俺の意識は途切れた。
《登場人物紹介》

八重山直(やえやま すぐ)
 水泳部部長の女子。
 名前の由来は、沖縄県八重山列島とシークワーサー。
 シークワーサーの由来が、「酸を食わせる(酸で硬い芭蕉布を柔らかくする)」ことから。

本栖大地(もとす だいち)
 名前の由来は、ポン酢とその材料であるダイダイ。

河内夏文(かわち なつふみ)
 名前の由来は、河内晩柑とその別名・夏文旦。

須田千秋(すだ ちあき)
 名前の由来は、スダチ。

小松伊代
 名前の由来は、伊予柑と小松藩(のちの愛知県の一部)。

余談:八重山部長以外、特に本編には関わらない。

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