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【好評発売中】魅惑の闘技場 作.真城悠 絵.蜂密柑 第二章2

 ノート型にしたのは小さくて安かったからだが、帰ってきて四苦八苦してセッティングしてみると大事なことに気が付いた。
 インターネットに接続していないのだ。
 幸いスマートフォンがあったので調べてみると、まず固定電話を契約し、その上で「ワイファイLANルータ」なるものを購入してやっとまともにインターネットが使い放題になるらしい。LANケーブルでもいいが、固定電話を契約しなくてはならないところは全く同じだ。
 ただ、気になっていたこいつの中身を閲覧することは可能だ。
 先日のウェディングドレス写真が満載されていた封筒の中に入っていたUSBフラッシュメモリだ。
 脇のポートに差し込んでみる。
 一応こんなんでもパソコンは職場の仕事で使っている。買ったばかりなので店頭に置いてあるサンプルと同じく次々に立ち上がるコマーシャルみたいなウィンドウがウザいことこの上ないが、一つ一つ根気良く閉じて行く。
 USBメモリの中身は大したものではなかった。
 例の写真のデータだったのだ。
 次々にめくって行くと気絶して倒れたらしいところまであった。…どうやら印刷された写真よりずっと枚数が多いみたいだ。
 …動画もある。
 思い切ってアイコンをクリックして再生してみた。
 クリアな音声で男口調だか女口調だかよく分からない花嫁コスプレ女が妙なやりとりをしている。
 …自分だ。
 自分が映った写真や映像を見ると妙に気恥ずかしくなったりするが正にそれだった。
 その上、その「自分」は花嫁衣装姿の上、妙に甲高い声で喋っているのである。
 その時、スマートフォンが鳴った。

「また来てくださると確信しておりました」
 時田がうやうやしく出迎えてくれた。ここは「ハウス」である。出迎えの高級車に乗せられてまたやってきた。
「…どうやら支度金を有効活用して頂いているみたいで有難うございます」
 全部把握されているだろうことは予想がついていた。
「封筒をどうも」
「よく撮れていたでしょ?」
「…」
 覗き見の最たるものだ。
「お返事をお聞かせいただけますね?」
「出来たらもう少しだけお話を聞きたいのですが」
 今日は普段着である。
 といってもオレの経済状況なので二本しかない外出用のズボンとチェックのシャツくらいのものだ。ネクタイのスーツは二日に一度は自分でアイロンを掛けている。お金が使えないなら手間と暇を使うしかない。母の教えだ。
「困りましたね。当ハウスの情報はこれ以上は、「入る」と決意されていない方にお見せすることは出来ません」
「なら一般論でいいです」
「一般論ですか」
「ええ。先日は定期的な収入の目安について結局お答えいただけなかったのですが」
「そういうことなら答えは同じです」
「いえ、そうじゃなくてこちらがする質問に答えて頂きたいってことです」
「結構。答えることが出来る質問なら答えます」
「仮に定期的にこちらのハウスで指定された回数戦ったとして、報酬は月払いですか?」
「いえ。その日の内に支払われます。銀行振り込みの場合は残念ながら午後三時を過ぎていた場合、翌日の処理となりますが、「現金」でその場で手渡しする形でのお支払いも可能です」
「そのお金をこちらにお預けすることは可能ですか?」
「…と、いいますと?」
「別に指定銀行とかでも構わないんですが、要するに管理して欲しいんです」
「もう少し具体的にお願いします」
「オレに何らかの形で報酬が発生した場合、月の決められた日に振り込んで下さい。そして仮にその金額が三〇万円を超えていた場合、振り込むのは三〇万円。それ以上の金額はプールして頂きたい」
「ほう…」
「仮に三〇万円に届かなかった場合はプール金より補充してください。プール金以上のお金はいりません」
「…なるほど。実に堅実だ。定期収入の形にしたいということですね」
「そして支払いは、仮にボクがこのハウスを引退したとしてもプール金が尽きるまで続けてください」
「…年金と言う訳ですか」
「ええ。ボクは用心深いのでね。仮に月に一億の収入があったとしても一度に手に入るのは三〇万円」
「遠藤さんはもうすぐ二四歳ですね」
「はい」
「仮に八〇歳まで行きたとしてあと五六年。六七二か月。約二億円です。仮に約二億円以上稼いだとなるとそれ以上については如何なさいます?八〇歳以降にお使いに?」
「それはその時考えます。毎月の月額を少しずつ増やしてもいいだろうし」
「なるほど。…可能か不可能かでいえば問題なく可能です」
「そうですか。…あともう一つ」
「何でしょう」
「時田さんは闘士としてこの闘技場で生き残るコツは決して勝利し続けることだけではないとおっしゃいました」
「…まあ、いいでしょう。似たようなことは言いました」
「ということは、ずっと勝ち続けることは可能ですね?」
「?おっしゃっている意味が分かりかねますが…」
「悪いんですが、ボクはむざむざ負ける気はありません。先日は時田さんに不覚をとりましたけど、あれは何も知らなかったからです」
「…勝ち続ける…というのは?」
「そのまんまです。負けないと」
「不可能ですね」
「そんなことは無いでしょ?」
「あなた将棋はご覧になりますか?」
「いえ…」
「一流棋士の多くは育った地域一円の将棋の腕自慢の大人たちをバッタバッタとなぎ倒してきた天才たちの集まりです。しかしプロとなって戦うのもまた同じような天才たちです。一流棋士の多くは勝率は五割と少しです。六割もあれば伝説的な大天才です」
「…」
「あなたが闘技場において無敗というのは、プロ野球の試合で一年間一敗もしないで優勝すると言うのに等しい。いや、バッターとして投げられた投球全てを安打にすると言っている様なものだ」
 時田は軽くため息をついた。
「余りナメた発言はなさらない方がよろしいでしょうな」
「…もしもこちらで行われているのがガチの対戦だったならそうでしょうね」
「…というと?」
「必ずしも強いから人気がある訳じゃないとおっしゃいましたね」
「ふむ…」
 少し考え込む時田。
「要するにプロレスである…筋書きがあるとおっしゃりたいんですね?」
「一応そうです」
「それ以前にプロレスについて軽くレクチャーして差し上げた方がよさそうだ」
「…はい」
「プロレスの試合をご覧になったことは?」
「それほど熱心にはないです」
「プロレスラーについてどの様なイメージをお持ちですか?」
「そりゃ大きくて猛々しくて逞(たくま)しくて筋肉質で強そうな感じですかね」
 我ながらバカみたいな答えだ。
「まあ、言わんとすることは分かります。概(おおむ)ねそんなイメージでよろしいでしょう」
「はい」
「自分がプロレスラーになったイメージをしてみてください。相手に華麗に技を掛け、投げ飛ばしたり殴り倒したり、蹴り飛ばしたりといった」
「…はい」
「恐らく今も小学校…もしかしたら中学校でも…行われている『プロレスごっこ』においてはそういったイメージでしょう」
「そうですね」
「ただ、それは全体の半分しか活写していません」
「…」
「プロレスラーとは、『技を掛けたり、掛けられたり』する職業なんです」
「?それはそうでしょ」
「プロレスは相手の技を受け、最大限にダメージを受けた演出をし、会場を盛り上げなくてはなりません。単純な技…ボディスラム一つとっても「掛けられる側」の協力なくしては成り立たないのです」
「…お互いに演技しているって話は良く聞きますが」
「いや、あなたは何も分かっていらっしゃいません。どれほど常勝無敗のチャンピオンであったとしても…いや、常勝無敗のチャンピオンであればなおさら、相手の技は最大限に「受ける」ものなのです。というより、「受け」の下手な一流レスラーはいません」
「…」
 益々お芝居みたいだな…と思った。
「あなたは相手の技を全く受けずに勝ち進みたいと言っているのも同じです。そんな自分勝手は許されません」
「…なるほど」
「これでよろしいですか?」
「ハッキリ言ってボクの心はもうほとんど決まっています」
「ほう」
「お願いしたいと思っています」
「参戦して頂けると」
「ですが、そこで時田さんにお願いがあります」
「…何でしょう?」
「時田さんってボクの言ってみればマネージャーみたいな存在なんでしょ?」
「…何故そう思われます?」
「あんまりにも特殊ですからね。どうせ引き入れるなら最初のナビゲーターがその後もお世話した方がいい」
「…」
「それにボクシングやプロレスみたいな競技なんでしょ?」
「…はい」
「プロレスはともかくボクシングには必ずセコンド必要だったはずです。そうですよね?」
「よくご存じで」
「何しろボクは全く右も左も分かりません。時田さんにアドバイスを頂きたいんです」
「…そこまで理解しているんなら、マネージャーが世話をするのは当然…という結論になりませんか?」
「なります。だからボクはアングルを持ち込みたい」
「…もしかしてプロレス用語を学習なさったので?」
「付け焼刃ですけどね」
 アングルとはプロレス用語で「仕掛け」「仕込み」みたいな意味だ。「疑惑の判定」などをわざと演出し、「遺恨試合」として盛り上げたりする。「筋書き」みたいなものである。
「ポっと出以下のあなたにどんなアングルが仕掛けられるんですか?」
「先ほど時田さんは一流レスラーほど相手の技を受けるものだとおっしゃいました」
「いかにも」
「しかし、この闘技場における戦いでは相手の技を受けたら即敗北です。ですよね?」
「…続けて」
「ボクの分析するところだと、この闘いで何より重要なのは『関係性の変化』だと思います」
「ほう」
「単に有象無象の男が女になって女装させられてもそれだけじゃパンチが足らない。そこには必然的に「演出」が必要…そうですよね」
「演出」
「『試合』を観戦している方々が、どちらかの勝敗に賭けている訳ではない…と言う話は既に承りました。要するに観客の皆さんは男が女にされ、女装させられ…場合によってはそれ以上のことをさせられるのを見るのが三度のメシより好きな方々ばかりだ…そうでしょ?」
「…まあ、そうした理解でよろしいでしょう」
「だったらボクが参加する試合は『その様な展開』は間違いなく起こります。観客を退屈させることはありません」
「ほほう…必ず勝つと」
「はい」
「大した自信でいらっしゃるが、その根拠は?このロートルの不意打ちもかわせないあなたにそれだけの素養があるとは到底思えませんが」
「…それを時田さんと一緒に考えて欲しいんです」
「私が?」
「まず、試合そのものは決して退屈はさせません。どちらか一方がその…女にされて女装させられる展開は必ず起こる訳で…。そしてその調子で勝ちまくれば観客は必ずこう思います『いつかこいつが被害に遭うところが見てみたい』ってね」
「ふむ…」
 考え込む時田。
「『全勝対決』煽りってわけですか…なるほど」
「ボクなら一度も負けたことが無い奴が何時(いつ)負けるかには注目して目が離せないと思います。そうでしょ?」
「…どなたかから入れ知恵されたりしましたか?」
「まさか!自分で考えましたよ」
 かなり長時間考え込む時田。
「驚きましたね。アイデアとしては抜群に面白い」
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