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虹のしずく ①② 文:巫夏希 キャラデザ:ミュシャ

文:巫夏希 https://skima.jp/request/offer?id=14274



 酒場のカウンターにて、一人の少女が水を飲んでいた。年齢的には酒も飲めないから仕方ないのかもしれないが、ぶつくさ文句を垂れている様子だった。
「それでよ、マスター。聞いてくれよ。私の仕事がそれで全部ぱあ! 帰ったら親方にどやされちまうし、大家に家を追い出されちまうんだよ~」
「ここで飯を食わなければ、払えるんじゃねえのか? 金は」
「でも食わないとだめってどこかのお偉いさんも言ってたじゃねえかよ」
 乱暴な言葉遣いではあったが、彼女は立派な盗賊だ……と言われれば、納得する人も出てくるであろう。彼女としては、今金欠で大ビンチ。しかし食べれば食べるほどお金が減っていくのも常。どうしたものかと葛藤に苛まれていたのだった。
「ちょいと、そこの嬢ちゃん。……今、仕事無いんだって?」
 少し離れたテーブルに居た、ローブを被った女性がそう言った。
 それを聞いてざわついていた酒場の空気が一瞬にして凍り付く。
「嬢ちゃんじゃねえよ、私にはマリー・クランベリーという立派な名前が……。何だよ、夕闇の魔女じゃねえか……。なんでこんなところに……!?」
「なあに、別に取って食おうとはしないよ。ここにはご飯を食べに来てるんだ。分かる? 魔女だって人間だって、腹が減ったら食事を取るのは当たり前。だからここに来ているわけだけれど……」
 ずいと近づいて、彼女の目を見る。
 燃え上がるような、真っ赤な盗賊の目を。
 突然魔女に近づかれて何をされるのかと思ったが、普通に見つめてきただけなので彼女は驚いていた。というか少し緊張していた。あまり人にじろじろ見られるのが嫌いだからかもしれない。あまりそういう経験が無いから、嫌いだと言っただけなのかもしれない。
「な、何だよ。人の顔をじろじろ見つめて……」
「いいねえ、面白い顔をしている。あんた、私の依頼を受けないかい? 値段はそのまま、あんたがぽかした仕事の分出してやるよ」
「私は仕事にケチをつけたことは一度だって……え? いいのか?」
「その代わり、私の依頼は難易度ダブルエスだ。並の盗賊じゃ、やりたがらないことだよ。それでもいいのならね」
「ありがてえ! それでも全然構わねえぜ!」
 その言葉を聞き、笑みを浮かべる魔女。
 そして、魔女はこう言った。
「その言葉、忘れないことね」




「虹のしずく?」
「そう。かつて魔王が復活したときに、魔王の住まう島に橋を架けたというおとぎ話は聞いたことがあるでしょう?」
「あー。まあ、聞いただけだが」
 王城の中を歩く夕闇の魔女と盗賊マリー。
 とはいえ今は、魔女の魔法を使って、彼女たち以外の存在にはそれがオブジェか何かにしか見えていない。或いは視認していない。だからこそこうやって自由に行動できるというのだが。
「それを使えばどうなるんだ? まさか魔王の城まで向かうなんてことは無いよな?」
「そんなこと、あるわけがないわ! あれには大量の魔力が封じ込められていて、『どんなことだって思うがまま』なのよ。逆に、そのエキスを浴びた物は副作用を得るとも言われているけれど」
「どんな?」
「さあ? 流石にそこまでは知らないわ。ま、おとぎ話の範疇だしね。実際やってみないと分からないでしょ。それとも、あなた、それを試してみる価値もあるけれど、どう?」
「嫌だね。流石にそこまではやりたくないよ。……で、どこにあるのさ、その虹のしずくとやらは」
「ええと、それは確か……地下の宝物庫にあるはずなのだけれど、その宝物庫へ続く道が見当たらないのよねえ」
「魔法で爆発させちまえばいいじゃん。或いは、兵士から情報を盗み取るか」
「それが出来るなら苦労しないわよ。それに、爆発させたところで音に気づかれてお終いよ。あくまでこの魔法は人に私たちを認識させづらくする能力なのであって、その条件が満たされない限りは……」
「ああ、もういいわよ。あんたの魔法うんちく。或いは魔法知識? どうだって良いけれど、これ、報酬のこと忘れないでおいてよ」
「分かっているわよ。あんたも抜け目がないわね」
「当然でしょう? 生命がかかっているのよ! 一人のか弱き乙女のね!」
「はいはい、か弱き乙女ねー」
「あ、今馬鹿にした! 馬鹿にしましたね!」
 そんなことを言いながら魔女と盗賊は城内をくまなく捜索し続けた。
 しかし、問題の宝物庫へと向かう入り口がまったくもって見つからないのだった。
「こんな様子じゃ、日が暮れますよー。流石に夜になると出入りも厳しくなるような……」
「五月蠅いわね! それくらい、わかっているわよ。それより、あなたも探しているんでしょうね?」
「探してるよ、それくらい……」
 しかし、流石に疲れたのか壁に寄りかかりながらあたりを見渡すマリー。
 すると、マリーの寄りかかった壁がゆっくりと後ろに移動し始めた。
「うわっとっと。……何よ、これ!」
「成る程……隠し扉ってことね」
 先程まで壁があった場所は、その壁がなくなり、地下へと深く続く階段が伸びていた。
 明かりも付いていないからか、その先は完全な漆黒。入るには少し躊躇してしまうくらいだ。
「でかしたわよっ! きっとこの先に宝物庫か何かの類いがあるはず……」
「報酬のこと、忘れないでおいてよね!」
「もっちろーん」
 そう言いながら、鼻歌交じりに降りていく魔女。
 本当にお金を払ってくれるんだろうか……? そんなことを思いながら地下へと降りていくのだった。


 そして、それを唯一見ていた人間がいた。
 夜の見回りをしていた騎士だった。彼の名前はルーク・カズン。突然壁が前に動いたかと思いきや、そこには階段が広がっていた――というのだから驚きだ。
 勝手に動いたのだろうか?
 否、そんなことはあり得ないだろう。
「まさか、誰かが透明化魔法を使って侵入してきた……?」
 だとすれば一大事である。その階段の向こうに何があるのかははっきりと分からないが、しかし賊の可能性もある。もしそうであるなら、賊を見逃した彼が咎められる危険性があった。
「それだけは……それだけはあってはならない!」
 それは正義感によるものか。
 それは罪悪感に駆られたものなのか。
 いずれにせよ、ルークもまた階段を、音を立てることなく、ゆっくりと降りていくのだった。

③④につづく

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