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美少女になるための学校に無理やり編入される男の子① 作:Kiro キャラデザイン:雪島べま

雪島べま

 地球温暖化、水質汚染、環境破壊。
 それらの結果なのか、それとも生命の進化の果てにきたのか。
 人の世界に小さな変化が生まれ、大きな社会問題へと発展した。
 種の維持に個を殺すのは、果たして正しいのか?
 それを議論しなくなった世界は、もう壊れているのかも知れない。

「わりぃな、無理だ」
 とある高校の一コマ、学校の裏庭に呼び出された男子が苦笑いで呟く。
 ライトベージュの髪に染まった長めの髪は、彼の気の強さを示すように、不規則に毛先を尖らせていた。
 翡翠色の瞳には自信が満ち溢れるのも、眉目秀麗といった顔立ちのおかげだろう。
 目の前に居る少女も、彼に見合った可愛らしさがある。
 ライトブラウンのセミロングヘアに、焦げ茶色の丸い大きな瞳。
 童顔気味ながらも、少女らしい愛らしさのある顔は悲しみに包まれる。
「俺さ、もうちょっと身体が大人っぽくないとグッと来ないんだよね」
 少女の体は発展途上といったところで、胸元は淡い膨らみ程度しかないが、臀部はまだ揉み応えがありそうな発育具合。
 しかし、その青い果実の酸味は嫌いだった。
 そんな…… と、言いたげに開かれた唇を遮るように、彼は踵を返す。
「そういうわけで、じゃあな」
 ひらひらと掌を振って歩き出すと、後ろで少女が崩れ落ちる。
 嗚咽の声も今となっては耳障りで、鬱陶しそうに半目閉ざし、彼は歩き続けた。

「をっ、帰ってきたな。茜ちゃん何だって?」
「あ゛? お付き合いしてくださいだとさ」
 教室の引き戸を開けると、悪友のニヤケ顔の問いが飛び込んだ。
 げんなりと言った様子で即答すると、彼は自分の席に座る。
 それで? と言葉を続ける悪友に、頬杖を付きながらニタリと笑ってみせる。
「振った。ガキくせぇ女は趣味じゃないってな、まぁ、角立たねぇ様に……もうちょいやんわり言ったけどな」
 彼の悪人面に、悪友はくぅっ! と唇を噛み締めながら天井を仰ぐ。
「もったいねぇっ!! 滅茶苦茶可愛いじゃん! お前絶対後悔すんぞ!」
「誰がするかバーカ! 俺はな、もっと胸があって面倒くさくない女が好きなんだよ」
 この自信に満ち溢れた言動も、振る舞いも、彼らしいと言えるものだった。
 朝倉 秋良(あさくら あきら)。
 クラスでも一番の美男子であり、生意気小僧である。
 本気になれないまま付き合い、飽きてきたときが面倒なのだ。
 長い経験から心の中で思うものの、口にすれば友人達には羨ましい悩みだとやっかまれるだけである。
 だからそれらしい理由を並べてあしらい、ただ面白おかしく過ごす。
 青春の合間は火遊びを楽しまねば、その時期を失うのを幼いなりに理解してのことでもあった。
 今日も明日も、このくだらない日常を楽しんでいく。
 それが誤りだとは気付かぬまま……。

「ただいまーっと」
 放課後となり、いつものように帰宅。
 靴の踵をすり合わせるようにして革靴を脱ぐと、そのまま自室へと向かおうとする。
「秋良、ちょっと来なさい」
 リビングから顔をのぞかせた母親が、彼を呼び止める。
 なんだよと悪態をつこうと顔をしかめたが、普段と違って何処か気落ちした表情に声は続かない。
 わかったよと小さく呟くと、そのままリビングへ。
 扉を開くと、そこにはスーツ姿の体躯のいい男が二人。
 学校の教員というよりは、まるで警察からやって来た覆面刑事といった印象。
 それも、こちらへと向けられた眼鏡越しの視線の鋭さに、彼が僅かに萎縮したからだろう。
「君が秋良くんだね、私は聖(セント)ラナンキュラス学園の森崎。こちらは私の部下の山下だ」
 森崎と名乗った男はメガネを掛けた、胸板の広い男だ。
 髪は短くオールバックといった雰囲気に整えられており、やはり学園の男とは見えない。
 傍に居た山下は森崎ほどの厳つさはないものの、やはり体付きはハッキリしている。
「ど、どーも……」
「ははっ、すまないね。唐突の訪問で困惑しているだろう。既に親御さんには話を終えたんだが、君を転校させる必要が出たんだ」
 ぎこちない挨拶に対し、森崎は明朗な人当たりで説明を並べていく。
 転校? と首をかしげる彼へ、森崎は微笑みのまま近づき、書類を差し出す。
 なんだろうかというように首を傾げ、書類を受け取る秋良。
 しかし、そこに記載されていた事実に瞳を大きく見開くのだった。
『第12回 性別均一化政策該当者へのご案内』
 近年、この国だけでなく、色んな国で出生率に大きな変化が発生した。
 子供が少ないというのは、先進国では話は上がるところだが、問題はその割合である。
 男性の割合が多く、女性は毎年二割しか生まれない異常事態が発生しているのだ。
 遺伝子の変化、あるいは種の保存として人間を減らす無意識の本能か。
 どちらにしても、看過できない減少である。
 そこで政府が12年前より開始したのが、この性別均一化政策だ。
「はぁ!? このオレがなんで、美少女になるための学校になんて行かなきゃなんねーんだよ、ふざけんなっ!」
 嘘だというように頭を振り、書類を握りつぶすように丸めて床に叩きつける。
 彼の行動に、森崎は困ったように嘆息を溢しながら口を開く。
「先日の身体検査で血液検査があっただろう? あれで、君の遺伝子に適正があることを確認したんだ」
 脳裏によぎるのは、健康診断の時のことだ。
 血液に異常がないかのチェックということで、全校生徒の採血が行われたのを思い出す。
 痛ってぇよな? なんて言いながら友達と笑いあい、腕を抑えていたあの日。
 まさか、自身の遺伝子を調べられていたとは思いもしなかった。
 この制作の対象者は、まず遺伝子に適正があるかを調べる必要があるのだ。
 適性ありと見つかった、若い少年だけを対象とし、特殊な薬物投与によって変化を促す。
 少年から少女へ、そして女性へ。
 彼は今、男性失格の烙印を押し当てられそうになっているのだ。
「まぁ落ち着いて欲しい、我々も無理強いしに来たわけではない。別の方法で回避も可能なのでね、それの提案も仕事の一つだ」
 わずかに差す希望の光、それに不安に揺れる翡翠の瞳孔が男を見上げる。
 これだというように彼に寄り添うように近づき、書類を見せようとした。
「っ……!? て、めぇ……」
 その瞬間、まるで暗殺術のごとく静かに彼の首筋へ注射針を突き刺す。
 注入された劇物は、強制的に彼の意識を剥ぎ取っていき、深い眠りへと落としていった。
 彼に見せようとした紙は、政策に対するただの説明書き。
 抜け道なんて、存在などしていなかったのだ。

 翌日、彼が目覚めると見知らぬ天井が広がっていた。
 跳ね起きて早々部屋を見渡せば、自室にあった私物の中でも、必要なものが既に運び込まれた後だ。
 視線を彷徨わせ、勉強机の上に置かれた手紙に気づくと、それをひっつかむ。
 自筆の手紙は母からのもので、どうやら部屋の整理は母親が行ったらしい。
 そして、止められない現実を悲しみながらも、無事帰ってきてほしいと祈る一言に虫酸が走る。
(「何が帰りを待ってるだっ! 母親なら止めてくれよっ!!」)
 勝手ばかりだと手紙を投げ捨て、ベッドに身を投げる。
 見知らぬ天井、それを避けるように寝返りをうつと、カーテンの隙間から外をのぞき見た。
「そもそも、俺が女になれるわけねぇだろ……」
 青空に掛かる、新緑の枝。
 甲高く弾む声は、高校に居た頃と変わらぬ響きに感じる。
 こんな男丸出しの性格を、どうやって女にするというのだ。
 顔はイケメンと言われ続けたこともあり、女装すれば似合いそうなんて冗談を宣われたこともある。
 だが、心は男のままだし、身体も細いが引き締まったところもある男性そのもの。
 下世話な自慢だが、同級生の少女を組み伏せてきた息子は自慢できる一品だ。
 サイズも形も、長さも太さだろうと全てに置いて負ける気がしない。
「はっ、不適格って落第して帰ってやるぜ……」
 きっとお眼鏡に適わずして帰るだろう。
 そう思いながら、窓の外へ背を向けた。
 それにしても奇妙な事に、女の声ばかり聞こえる。
 自分のような男しか連れ込まれていないはずなのに――。
 ぞわっと背中に悪寒が走ると、ベッドから飛び跳ねて部屋を飛び出す。
 前の学校の制服姿のまま廊下を翔け抜けると、あても分からぬまま出口を目指す。
 息を切らし、飛び出した先は花畑の甘い香りが広がる彩色の世界。
 歩き回る姿は、学校で見た年頃の少女達と変わらぬ愛らしい顔立ちに、風になびく長い髪。
 何より春風に揺れるスカートは短く、すらっとした白い足も筋張ったラインがなかった。
「何なんだよ、これ……これはよ……っ!?」
 これでは女子校ではないか、そう叫びそうになったところで、両肩に太い掌が重なる。
 勢いよく振り返った先には、あの日現れた森崎が立っていた。
「お目覚めかね。ようこそ、聖ラナンキュラス学園へ……ここが君の新しい学校だよ」
 聖ラナンキュラス学園、表向きは女子校として登録されている公立高等学校。
 その実態は、適正者を集めて数年内に少女へ改造を施す性転換学校だった。

 校内案内やレクリエーションが終わると、早速秋良は授業へと送られることになる。
 授業と言えば聞こえばいいが、様は男から女へ変わるための再教育だ。
「どうかね、新入生の彼は」
 彼の担当となった森崎は、教頭の声に顔を上げる。
 静かな騒がしさに包まれる教員室の中、初老の教頭に苦笑いを見せながら書類を机の上へ放った。
「恐らく一番の跳ねっ返りですね。一部授業はボイコットするわ、脱走を企てるわ……ヤンチャですよ」
 教員室は他の学校に比べると大きく、そして教員の数も多い。
 森崎も教員ではあるが、正確に言うと秋良の面倒を見る個人専用の担任といったところか。
 そんな担任の教師が多く在籍するため、結果として教員の数は他に比べて多い。
 だが、ベテランの森崎も手を焼く秋良は、言葉通りヤンチャ坊主である。
 どれどれと呟きながら、教頭が机から書類を拾い上げた。
 脱走を企てたのも、女装の授業に対する拒絶感から逃げ出したと、本人の告白が記載されている。
「これじゃあまた逃げ出しそうだね」
「えぇ、なので次逃げ出したら手段は一切教えず、常に女装させるぞと脅しておきました」
 教頭の言葉に、真顔のまま返答する森崎。
 その顔に笑みがないのを見れば、教頭の頬に冷や汗が伝い落ちる。
「脅しですがね、ただ流石に堪えたようで……もう少し時間をくれと泣きつきましたよ」
 クツクツと笑う彼の笑みは、どこかそれを楽しんでいる様。
 この男はここ以外に行かなくて正解だったと、この笑みを見る度に教頭は安堵する。
「ですが、授業は進めねばなりません。何か一つ受けろと告げたら、これを選択しました」
 もう一つの書類を手にし、教頭へと差し出す。
 卒業試験演習。
 それの相手役の授業を選んだ答えに、嗚呼と納得の声が溢れた。

「……」
 午前9時から夕方16時まで。
 その合間、卒業予定の生徒とデートし、彼女達の女性らしさに磨きをかける。
 男性役を通して女性らしさを知ることが、この授業の目的だ。
 南側にある花畑の庭には白塗りの噴水広場があり、デートの待ち合わせにはぴったりである。
(「どんなゲテモノがくるんだかな」)
 先日の朝に見た生徒達は、きっと見せかけの奴らに違いない。
 他のはもっと男らしさが残ったままで、イチモツと玉だけ引っこ抜かれるのだろうと思っていた。
 野太い声で呼びかける女子生徒姿……想像するだけで寒気を覚える。
「あの……秋良さんであってますか?」
 背中に掛かる声は少し離れたところから響き、吹き抜ける風に消えてしまいそうなほど小さい。
 何より、甘いソプラノの音は想像を全て叩き潰すかのようだった。
 恐る恐る振り返れば、想像以上の姿が彼を出迎える。
 真っ直ぐな長い黒髪と、眉の上でぱっつりと切られた前髪が可愛らしい。
 薄化粧の似合う清楚な微笑みも、膝丈のスカートも、黒基調のブレザーの制服とよく似合う。
 何より、細い足をしっとりと張り付くように包む黒いタイツが、妙な色香を醸し出す。
 今までみてきた、どんな女子生徒より女子らしいツクリモノがそこにあった。
「あの~……」
 見とれていると、間違っただろうかと問うように小首をかしげる少女。
 それにハッとして、あわわたと顔の前で両手を踊らせた。
「ぇ、あ、わ、わりぃっ。そうだよ、秋良だ」
 まるで初な童貞のような反応をしてしまう秋良だが、対して少女は嬉しそうに笑う。
「楓です、よろしくおねがいしますね?」
 丸めた手を口元に当てて、隠すようにしながら上品に微笑む。
 声の高さもそうだが、振る舞いも仕草も、男という欠片は一切ない。
(「本当にこれで男かよ……」)
 信じられないまま、その姿を呆然と見つめていた。
 だが、秋良も男として、何より女泣かせの男子としての意地がある。
 行こうかと何時もと変わらぬ笑みで近づけば、その手を握っていく。
 しっとりとした白い肌、子供のような細い指。
 手を引き寄せながら、思わず喉を鳴らしてしまった。

②へつづく

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