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美少女になるための学校に無理やり編入される男の子② 作:Kiro キャラデザイン:雪島べま

 男女として過ごす練習ということもあって、校外への外出も許可されている。
「どこに行きたい?」
 舵取りの最初は女性へ渡し、特になければ相手に合わせた最適な場所へ導く。
 普段と変わらぬデートの切り出し方をしているが、それだけ彼が楓を少女として扱っている証拠だ。
 ある意味、ツクリモノと言われる存在を紛い物と言えない現実は怖いもの。
 微笑み合う二人は、お互いを本物だと信じているのと変わりないのだから。
「カラオケに行きたいです。こうしてお話できた時に備えて、たくさん頑張ったんですよ?」
 何を頑張ったのか、はてと首をかしげるもご要望とあらば進むのみ。
 そのままありふれたカラオケ店のビルに向かうと、2時間ほど確保して部屋へ。
「~♪」
「……ははっ、マジか」 
 女性向けの歌謡曲、流行りの歌の中でも彼女が歌唱するのは甲高い声が必須となるもの。
 膝を揃えて座ったまま、胸元でマイクを握ったままモニターの歌詞を見つめる。
 薄桜色のリップが塗られた唇が艷やかに開く度に、甘い甘い声がメロディとなっていく。
 彼が驚きの声を溢したのは、その違和感の無さと上手さだ。
 歌い方の仕草一つとっても御令嬢そのもので、ちょこんと座った姿から崩れることはない。
 裏声ではなく、はっきりと地声のように響く少女声の歌も音程とリズムが保たれる。
 声出すだけではなく、声を自分のものにした証拠とも言える姿。
「――いつまでも、そこにいてね?」
 最後の歌詞、愛する人に再び会う事を明るく誓うフレーズ。
 微笑みながら軽く首を傾げ、人差し指を斜めに傾けてウィンクをする。
 彼女ものめり込んでいたのか、PVで見せる本人と同じ仕草だ。
 きゅぅっと胸の奥が締め付けられるような心地と共に、瞳孔が僅か絞られる。
「――っ、ご、ごめんなさい。忘れてくださいっ」
 そのポーズのままでいた彼女だが、数秒後に爆発するように羞恥が込み上がったようだ。
 みるみるうちに耳まで真っ赤になる。
 マイクに素っ頓狂な声をぶつけながらソファーに倒れると、顔を押し付けて隠していく。
 嗚呼、可愛い。
 男がこうも女になれるものだろうかと思いつつも、思わずにニヤけているのに秋良は気付かなかった。
 他愛も無い会話と、歌を交えながら時が過ぎ、15分程の中途半端な時間が空いてしまう。
 少し息切れ気味に肩を揺らして息をする楓に、一休みしようかと声をかけたのは秋良だった。
「しかし……どこからどう見ても、もう女の子だよ。楓は」
「ふふっ、良かったです。安心しました」
 上品な微笑みも、まるでイヤミがない。
 時折電車から見下ろした先にいる、お嬢様女子校の少女達と何ら変わらない。
 だが、よくよく見ると小さな違和感が一つだけある。
 胸元の小ささ、だがそれはスレンダーだと言えばいいのだろうか?
 何となく視線がその辺りに向かっていたのか、楓の頬が徐々に朱色に染まる。
「あまり……そんなに見られると……」
「ぇ、あっ、わ、わりぃ……! そうじゃねぇんだ、その、あー……」
 胸元を抱くように隠す彼女から、バッと顔ごと視線をそらす秋良。
 どんだけ初な男になっているのだと、己を叱りつける脳内。
 だが、その行動の理由は考えずとも明らかだった。
 少しずつ開く唇は、ためらいがちに声を絞り出す。
「……信じられねぇんだ、楓が男だって」
 そろりと視線を向けると、まだ頬の熱が引かぬ楓の顔がみえる。
 さらりと流れる黒髪が、ぱっちりとした焦げ茶色の瞳を隠していく。
 白と黒のコントラストが艷やかで、上品なのに何処か子供っぽい一面も併せ持つ。
 なのにツクリモノ、自分と同じ同性だというのだ。
 色んな奴らがグルになって、自分を騙そうとしているのではないか?
 信じられないという気持ちが強く、膝の上に乗せた掌がスラックスに皺を寄せる。
「素直ですね、秋良さんって……それに優しいです」
「何だよそれ、答えになってねぇし」
 安堵の微笑みを浮かべながら俯く楓に、拗ねたように呟きながらそっぽをむく。
 いきなり大人びた答えを掛ける彼女。
 それがまるで、自身の先を行くかのようで男のちっぽけなプライドに傷がつく。
「……確かめ、ますか?」
 震える声に、へっ? と間抜けな声を上げてしまう秋良。
 再び彼女を見つめると恥じらいに頬は上気し、彼の視線から逃げるように濡れた瞳を逸らす。
「……男の人の、あるかどうか……触ればわかりますよね」
 黒いスカートの下、その下も厚めの黒タイツが素肌を隠し、厳重に白を守る。
 そこへの侵入を許す声に、秋良の鼓動はどんどん加速した。
 なんと言えばいい、何と答えればいい。
 そんな事を考えるのも、答えるのも野暮な気がした。
 無言のまま身を乗り出すと、細い方を抱き寄せながら秋良はスカートの中へ手を忍ばせる。
「あ……っ」
 触り心地のいいタイツの上を掌が滑り、太腿をなで上げながら禁忌へと近づく。
「……ちっちぇ」
 ビキニラインを通り抜け、とうとう中央へと指が届く。
 ふにゅりと感触を押し返すのは、たしかに雄の印だった。
 けれど、まるで赤子のように小さく、そして固さもなくて柔らかなそれは、妙な興奮を煽る。
 呟きながら、何度か指で突っつくように撫で回すと、腕の中で楓の身体が跳ねていく。
(「何だよこれ、すげぇ可愛い……」)
 瞳をギュッと閉ざしながら、曲げた右手の人差し指を唇に押し当てながら、必死に声を堪える。
 クリトリスと同じなのだろう。
 亀頭の辺りを優しく突っつくだけでも、腰が大きく震えていた。
「ひっ……んぁ、あっ……あ…っ」
 その波がどんどん大きくなり、こそばゆい声が次第に唇から溢れる。
 もっと聞きたい、もっと溢れさせたい、崩したい、溶かしたい。
 いつもの相手を征服するという、雄の欲とは全く違う気持ち。
 この綺麗で可愛い彼女の平常を崩して、溶かしてしまいたい。
 無言のまま、ぎゅっと肩を抱き寄せながら指のタップは加速する。
「ひんっ、ぁ駄目っ、だ、駄目っ、い、ぅぅっ、イ……く、ぅぅ――っ、ぁ、ぁぁ」
 くんと仰け反っていく白い喉に、僅かに出っ張りが見える。
 総身が壊れた玩具のように激しく震えると、甲高い声を抑えるように掌を唇に押し当てていた。
 何度も痙攣を繰り返しながら、大きな波が過ぎ去る。
 ぱたりと彼の方に寄り掛かりながら、荒い息が胸板をくすぐった。
「……意地悪、です」
 翡翠色を見上げる焦げ茶の瞳は、一瞬だけ視線を重ねた後、直ぐにそらされる。
 濡れた瞳から僅かに涙がこぼれ落ちるも、それは快楽に溢れた甘露なもの。
 可愛いと改めて思うも、今更ながらにハッとなにかに気づいた。
「わりぃっ! パンツの中、汚しちまって……」
 男の絶頂にはつきものの白濁が、ショーツの中で暴れているはず。
 いきなり相手の服を汚させるのは、なかなかにNGな行為。
 最初からマズイ行動をしてしまったと慌てふためくも、淡い噛み跡の残る人差し指が彼の唇に添えられた。
「女の子……に、なりたいから、もう白いのはそんなに出ません。あと、ナプキン、付けてたので」
 気分を高めるためにと、小さく呟く声と共に俯く。
 確かにタイツやショーツとは異なる分厚い何かを感じていたが、それだったとは思いもせず。
 何度か瞳を瞬かせると、クツクツと笑いながら改めて楓を抱き寄せる。
 そんな甘い雰囲気を切り裂く、5分前のコールが鬱陶しかった。

 その日の夜、自室で見慣れてきた天井を見上げていた。
 そのまま一緒に夕食を食べた後、学校へと戻ってそれぞれの寮へ戻ったのは数時間前。
 今日のことを思い出しながら、次の授業の事を考えていた。
(「あんなになれるなんてな、男が」)
 楓は元からあんなお淑やかな子だったのだろうか?
 自分のような跳ねっ返りで、ヤンチャな少年だったとは思えない。
 きっと、図書館で本の虫になりながら、穏やかに微笑む優しい少年だったのではないか?
 彼女がどうしてああなったのか、それが気になったのが一つ。
(「楓と……誰かがデートすんのか」)
 次のデート、その時に自分以外の男が手をのばすのだろうか。
 そう思うと、嫉妬に似た感情が胸に去来し、チクチクと奥底を痛めつける。
 男が男に嫉妬するなんて馬鹿馬鹿しい、同性同士ではないか。
 けれど、カラオケボックスの最後の一コマは同性だなんて忘れていた。
 悔しいが、学校の理念たる少女にするという集大成に心奪われた結果とも言えよう。
「……続けりゃ、フザケたことしなくて済むんだ」
 まるで己に言い聞かせるようにつぶやき、秋良は起き上がる。
 傍らに放り投げていた携帯電話を手に取ると、森崎の番号を呼び出す。
「……俺だよ、朝倉。好きにやっていいんだろ、じゃあ今日と同じ奴ならやってやるよ。あと、相手はあの娘……楓なら許す」
 上から目線の言葉だが、素直ではないお強請り。
 それに電話の向こうの森崎は、満面の笑みを浮かべて承諾していった。

「楓はなんでそこまで出来んだ?」
 要望通り楓とだけデートを繰り返す秋良だったが、日を重ねる毎に抱く想いはそれだった。
 今日は私服姿で喫茶店にある二人の姿は、傍から見ればデートにしか見えないだろう。
 黒いシンプルなベアトップなワンピース部分と、そこから繋がった白レースのボレロ風の襟元や袖。
 きゅっと腹部を引き締める細いベルトと、シンプルな黒いリボンが飾られたデザイン。
 普段より透け感のある黒いタイツに、黒のパンプスと相変わらず上品な仕上がりである。
「……何で、ですか」
 質問を投げかける秋良の向かいに座る楓は、カップをゆっくりと置きながら瞳を伏せる。
 学校と違い、黒髪には白いレースの髪留めがあしらわれていた。
 黒色と白色、極端な二色がそれぞれを際立たせ、彼女の清らかさを引き立てていく。
 それも全て、彼が言う通りそこまで女として出来上がったからに他ならない。
「最初は……嫌でした、私は男性で、女性を大切にする人になるんだって思っていましたから」
 おかしいですよねと言いたげに、苦笑いを浮かべて秋良を見つめる。
 その言葉から、元から紳士で温和な性格だったのだろうと秋良は思う。
 しかし、それが少女に転ずるにはあまりに溝が大きい。
「沢山、綺麗な方や、可愛らしい方を見て……少しずつ、好みのタイプというのが出来ました。黒髪も、本当は染めたほうがいいと何度も言われました」
 何故そうなるのか、その理由は秋良には分からない。
 彼女を知りたくとも、彼女を構成する色んな物を自分は知らなさすぎた。
 女を口説くのに、相手の事を知らないのは愚の骨頂だと分かっていながらの暴挙である。
(「仕方ねぇだろ」)
 言い訳じみた声を、心の中で零す。
 それはつまり、自身から望んで少女へ近づいていくということだ。
 知りたいから、その一心だけでは……あまりにも難しい。
「でも、卒業する方の中に、とても大人っぽくて黒髪の綺麗な方がいたんです。あんなに大人な女性にはなれないけど、黒髪は……真似したかったんです。とっても綺麗で、ずっと触っていたい。そんな髪が」
 憧れ、それが徐々に彼を彼女へと押し上げた。
 身体を女らしく絞っていき、柔らかさを蓄え。
 黒髪を映えさせるメイクとファッション、そして肌の白さを保つこと。
 仕草も振る舞いも全て、それを一つの作品として仕上げるために。
「……そっか、俺、そんな楓の髪……一度も触ってなかったな。わりぃ」
 まるで彼女を理解できていない、その驕りが顔色を曇らせる。
 俯く彼に対して、薄っすらと苦笑いを浮かべたまま楓は頭を振った。
 髪に染み込ませた、甘く心地よい香水の香りがほんのりと広がっていく。
「秋良さんは優しいから触らなかったんですよ。だって、女の子の髪は大切なものって、分かってる筈ですから」
 女らしさを、少女らしさを保つための大きなファクター。
 無意識ながら彼もそれは理解しており、女の髪に触れるのは抱ける時としていた。
 それだけ髪は、心に近い場所だと経験から感じ取っていたのだろう。
 そうか? なんて苦笑いを浮かべながら秋良は笑うも、楓は迷いなく小さく頷く。
「私を仕上げてくれた人が、秋良さんで……幸せでした」
 今日、この夕日が沈んだら……彼女は最後のステップを踏む。
 男性器を完全に失い、クローン技術で培養された彼女の遺伝子を持つ女性器を埋め込まれる。
 その瞬間、戸籍の表記は女と代わり、完全な彼女となれるのだ。
 だがそれは、自分との別れでもある。
「……楓、無茶なお願いいうけどいいか?」
 胸が苦しい。
 俯きながら胸板に掌をあて、チェック柄のシャツを握り込む。
 まるで初恋をしたような甘い痺れは、彼も戸惑うが理性的になんて考えられない。
 意を決して顔をあげると、きょとんと首を傾げる楓が彼を見つめる。
 無言のまま頷けば、秋良はすっと息を吸い込む。
「ここを出ていく時、俺はどうなってるか分からねぇ。だけど、楓と一緒になりたい。だから、誰のものにもならずに待ってて欲しい」
 翡翠の瞳が徐々にそらされていき、恥じらいに赤く頬を染め上げた。
 楓は両手をゆっくりと口元に運び、掌で唇を覆っていく。
 焦げ茶色の瞳孔が何度も震え、瞬き、雫が伝い落ちる。
 穏やかな微笑みのまま、楓は瞳を閉ざしていった。
「やっぱり幸せものですね、私は」
 肯定、その答えに秋良は顔を上げる。
 嬉しさのあまりに溢れる感情は、もう一筋、左の頬を濡らしていくのが見えた。
「待ってますね。秋良さんであっても、秋良ちゃんになってても」
 嗚呼と頷く秋良は、秋良さんであるとは答えられなかった。
 彼女を見る度に思う気持ちは、もう一つ膨れていく。
 それが己だけの要因で生み出されたとは、知る由もなかった。

③へつづく

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