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理系魔女育成計画 <中編> 作 月雪 キャラデザイン シガハナコ

作 月雪 https://skima.jp/profile/?id=31227
キャラデザイン シガハナコ http://lwhana.blog49.fc2.com/

シガハナコ

部屋の隅で、かわいくもない大学のマスコットキャラクター、矢じり君のぬいぐるみを抱きしめていた。「女性だとぬいぐるみも似合うなあ」慰めようとしきりに冗談を口にしてくるが、今の僕には大変逆効果だった。
「何でこんなことになったんだろう」部屋にぽつりと声が落ちた。それから一分後くらいに、流亜が重い口を開いて、「保健室の、なんだったの?」
「あ、そうだ。中野さん。中野先生なら知っているかもしれない」
保健室でのことを説明すると流亜は、予防注射?と怪訝そうに唸った。
「そういえば、一生男性病にかからない為の予防って、」
「じゃあ、中野さんに会おう」
勢いよく流亜が僕の手を取った。ぐっと顔が近づいて、顔が熱くなる。流亜の顔も赤くなって、ああ、女性になってしまったのか、と余計に落ち込んだ。

翌日、保健室に中野さんはおらず、大学職員に尋ねると、退職した、と告げられた。
僕は途方に暮れて、フードをより一層深く被る。女性の体になったなんて、ばれたくなかった。
「なあ、イイコト思いついた」
「何?イイコトじゃなかったら、怒る」
「聞きこむの。中野さんって、女性に人気だったから、誰か知っているかも」
「それいいな」賛同すると、流亜はだろ?と得意げな顔をした。
本当に良い案だ。中野さんの居場所を知っている人がいるかもしれない。そうしたら、真相も、戻る方法もわかるはずだ。

「うーん、知らないなあ」何度目か数えるのも嫌になるくらい誰も、中野さんの個人情報を知らなかった。ちょっと異様。
「あ、でも」他の誰とも違う答えに僕は「何?」と急かした。直ぐに急かし事を恥じたけれど、彼女は気にしていない様子で、「そういえば、生徒の中に親戚の子がいるよ」と軽々と重大な言葉を発した。
「「誰?」」思わず、僕らの声も重なる。
「中野 小鳥って子だよ。中野さんに似て美人だから直ぐ分かると思うなあ」
「連絡は取れたりしないのかな?」少し食い下がってみる。
「ううん、連絡先知らないから」数回しか話したことないんだ、と彼女がいったので、小鳥という女性の特徴だけ教えて貰い、別れた。

聞き込みを統計すると、小鳥という女性は、ラムネ教授の講義に出没するらしい。ラムネ教授と言うのは、ラムネばかり食べている教授の名前だ。
講義が終わるのを待っている間、「心理学を専攻してるんだな」と流亜が呟いた。
「みたいだね。優しい子だと助かるなあ」耳に女性的な声が届いて、口を閉じる。意識的に声を低くしないと、前よりも、高くなってしまう。「別にいいのに」何が?と聞いても、流亜はしぃと小指を立てて「もうすぐ終わるな」と言うだけだった。

「小鳥さん」呼びかけると、ぎろり、と睨まれた。思わず立ち竦むと、流亜がすかさず一歩前に出て、話を続ける。
「中野さんを探しているんだけど、知らないかな」
「私も中野」
「それは……ごめん。保健医の中野さんだよ」
「知らない」
「連絡先とかは」
「繋がらないと思うけど。かける?」
いや……と流亜が言葉を濁す。「本当に繋がらない?」
「何で探しているかにもよる」
まるで遊ばれているみたいだった。まともに答える気がないのか、答えられないのか。
「信じられないかもしれないけど、僕は男なんだ」
小鳥さんは分かりづらく驚いた。無表情なのではなく、感情を消していただけらしい。少し、親近感が湧いた。
「ああ、そう。成程ね。」小鳥さんはにっと強気に笑い、「でも連絡は繋がらない」
「どうして繋がらないんだ?」流亜が問いかけると、小鳥さんは嫌そうな顔をした。
「家が蛻の殻だったから。彼はマトモじゃない。実験の犬よ、犬」
「なあ、何時家に行ったんだ?」
「今日。預けておいた兎を取り行ったの。オスがメスになってて笑っちゃう」
「ってことは合鍵あるのか?」
ああ、あるけど。とポケットからしゃらりと、鍵を取り出し、僕に放り投げた。「どうなっても知らないから」無愛想な顔でそういうと、小鳥さんはさっさと何処かへ行ってしまった。
「気分屋だな、彼女」
投げられた鍵を眺めながら、僕は静かに頷いた。嵐のような人だったな。

ガチャリ、と鍵が開く音がして、流亜と僕の間に緊張が走る。「なんか泥棒してるみたいだな」「不安にさせるようなこといわないでくれよ」扉がぎい、と開く。人の気配は、ない。
玄関には女性ものの靴……恐らく小鳥さんの靴と、中野さんの靴が一足だけあった。
「おじゃましまあす」堂々とすればいいのに、そろりそろりと部屋に入り込み、靴を脱ぐ。綺麗な冷蔵庫、綺麗な台所、綺麗な食器、綺麗好きというより、生活感がない。
キッチンスペースには何も無さそうなので奥の襖を開けた。
ほんわりと、アロマの匂いが広がる。積みあがった本に、書類の束、たまに女性向けの品物が散らばっているが、小鳥さんのものかもしれない。
「見ろよ、これ」
床からつまみ上げたのは、写真だった。写真の中に映る女の子は「小鳥さん?」「みたいだな」「へえ、こんな風に笑うんだな」「仲がいいのかもな」ふふ、と微笑ましい気持ちになる。けれどもすぐに我に返り、「元に戻る方法を見つけないと」
その言葉を着に流亜も僕も、部屋の中を探し始めた。

「あ、これ」流亜が唐突に、声をあげた。覗き込むと、紙の束に埋まって、理系女子計画と題された書類があった。「これじゃないか?」僕は、そうだと思う、と頷く。
「開いて」
呼びかけると、流亜は書類をぺらりと捲った。「……国家プロジェクト?」
異世界の魔女達に劣る我々は、魔女に打ち勝つ必要がある。その為、魔法科学を用い、優秀な男性を女性に変えしてまおう、要約すると、こんな感じだった。
僕は喉に声が突っかかり、しばらく口を開けなかった。

国家が相手じゃ、僕は二度と男性には戻れないのかもしれない。そんな事をずっと繰り返し考えている。もう、何十回目だろう。頭は不安で堪らず、動かない。
最適な言葉が見つからない。僕は泣きべそをかきながら、やはり部屋の隅に蹲る。
「魔法科学は遠い話だと、思っていたんだ」僕が呟くと流亜はそうだよな、と背中を擦った。その手は暖かく、不覚にも、安心した。
最初からずっと流亜が隣に居て孤独じゃない分、僕はまだましなのかもしれない。
「どうしようもない」
何度だって、口を開くけど、暗い言葉しか出ては来ない。もし、何かがわかればどうにかなるなんて考えは甘くて、僕には到底、手が届かない。
「柚乃、大丈夫だって」
「何を根拠に」
 流亜の手が僕の頭に置かれて、僕は開いていた口を閉ざす。安心させるように、ぽんぽんと手が動く。
 心臓の奥がどっとして、息が少し苦しくなった。これがなんなのか、頭の隅で理解しながら、払拭するように弱々しく笑う。
 気づいたら、僕が女性になった事を認めてしまう事になる。
 「大丈夫だから今日はもう寝た方がいいよ」
 その言葉に頷いて、僕はベッドにもぐるべく、立ち上がった。


後編につづく

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