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【投稿小説】”男”を奪われた果てに ⑩ <最終回>

作:Haseyan http://mypage.syosetu.com/486829/
挿絵:そらねこ https://skima.jp/profile?id=23496

①はこちら


「真紀、持ってきたよ」

「ありがとう。そこに置いておいて」

 重たい資料と本の山を両手で抱える。ふらふらとしそうになる足腰に懸命に力を込め、どうにか真紀の座る机の隅にそれを下ろした。
 昔ならこのぐらい簡単だったのになと、楓は懐かしみながら汗を拭う。その腕は白く細い女性のそれだった。

「……どうした?」

「いや、もうすっかり女の子で馴染んじゃったなって」

「三年もこの体でいたらね」

 結局、あの日の夜に男へ戻る手段を失った楓は、女性として生きることを余儀なくされた。真紀の魔法で身近な人々の記憶を改竄し、両親のコネとやらで戸籍の性別欄まで女性に修正され、完全に楓は女性になったのだ。
 とは言え、当時は冷静になったあとで酷く落ち込んだりもした。確かにあの瞬間は楓の意思で、もう戻らなくてもいいかもと答えたものの、その場の幸福感やら何やらで流された部分も大きい。

 男として生きてきた十九年間が消え去り、ありもしない女の子としての記録に塗り替えられた時には涙を抑えられなかった。しかし、真紀に色々な意味で慰められて、今ではもう吹っ切れている。

 入学したときとは反対の性別で大学を無事に卒業したあとは、こうして魔法の研究の助手として真紀の家に住み込んでいた。ちなみに表向きは真紀の父親の企業に就職していることになっている。
 それも一般には薬品開発と偽って、魔法の研究に勤しんでいると聞いているが。楓の戸籍を書き換えたりと、彼はどれほどの権力を持っているのか。底が知れない。

「ふーん……ちょっとは解るようになってきたけど、やっぱり俺には何してるのか……」

「魔法ってそういう血筋じゃないと扱えないから、無理もないよ 」

「こう身近にあると興味湧くんだけどね。……『生物の限定的な性転換について』?」

 覗き込んだタイトルにハッとなって顔をあげる。そのまま真意を問うように真紀の横顔へ静かに視線を向けた。
 疑念をぶつける楓の前でも真紀はあくまでも自然体で、こちらに振り返る。

「そのさ、色々とあれから道具使ってたよね? 女の子同士に、なっちゃったから。使い捨ての魔法の触媒にその辺の人から“男らしさ”を盗んでくるのは楓くんは嫌だっていうし……あの時、私が奪ったちゃった人たちに返して回るのは大変だったよ」

「それはさすがに、さ……」

 遠回しに口にされた夜の営みのことに顔を赤く染めながら答える。実は本当の意味で愛し合ったのは楓が男を失ったあの夜だけだ。
 あの時、真紀に生えたのはあくまで楓の“男らしさ”を無理やり吸収して、使い捨てにしたからできたこと。好きなときに性器だけ男にするなんてことは本来できない。

 その代わりに道具を利用して擬似的な行為に及ぶのがいつもの二人のやり方だった。それでも十分に楓は満たされているので不満はないのだが。

「でね、ようやくできたんだ」

「……俺、もう今さら戻っても」

「ごめん違うの。やっぱり無条件で女の子から男の子にするのは無理でね。その、あそこだけ……一時的に男の子のものにする魔法理論で……」

 しかし、それも昨日までのことらしい。真紀はいつの間にかそんな魔法を研究していたのか。

「一回のために何日も準備しなきゃだし、あくまで似たようなものに変化させるだけだから、その……出てくるのは見た目だけのただの液体で、赤ちゃんとかはまだ作れないけど……」

「あ、赤ちゃんってそんな……考えたこともなかったし……! “まだ”いいよ!」

 とんでもない単語が飛び出し、ついつい恥ずかしさを誤魔化すように声を荒らげた。楓の体にだって月のものは来ているのだ。
 その気になれば、子供を宿すことだってできてしまう。パートナーが真紀である以上、それはあり得ないと考えていたのだが。

「“まだ”、ね。確かに今すぐできないことを考えても仕方ないからね。それよりもさ、実はその魔法の一回目の準備はできてるんだけど……楓くんは“する”のと“される”のとどっちがいい?」

「え、えぇ……いや、それは……その」

 すっかり女の子に染まってしまっても、口調は未だに男っぽさが抜けないし、根本的なところでは男だと自負している。
 でも、それでも、ベッドの上で真紀と二人きりの時、どっちの立場がいいのかと問われてしまえば、

「される方が、いいかな……」

挿絵3

 普段から主導権を握れることはなくて、何より真紀に散々愛され尽くした体はもう、彼女には逆らえないように仕込まれてしまっていて。
 それが嫌ではないと自覚してしまっている以上、そう答えるのは当然の結論だった。

「ふふ。じゃあ、早速だけど実地試験ってことで」

「え、ま、真紀!? ダメだって、こんな昼間か……ひゃぁ……っ!」

「久しぶりに一緒になれるんだから。いつも以上に、可愛がってあげる」

 僅かに真紀の方が背は高く、何より本心から抵抗する気の無い楓はあっという間にベッドへ連行される。

 小さな町の大きな屋敷の中で、夜遅くまで愛し合う声が響き渡る。あの日を境に変わり切ってしまった人生だけど。それでも、結果的に楓は幸せだ。
 愛しい彼女のパートナーとしてその片腕となり、寄り添い続ける。ときには喧嘩をすることもあるだろうけども。この新しい人生で真紀と最期まで共に過ごすのが、楓の願いで。その望みが叶う明るい未来が約束されているかのように、今日も魔女の屋敷の不思議な日常は緩やかに流れていた。

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内容もイラストもよかった!ブラボー!

完結お疲れさまです!

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