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投稿TS小説第131番 やさしい魔法(7)

作.うずら
絵.いずみやみその http://honeypoko.fakefur.jp/



手桶でざばーっとお湯をかける。
う、肌が敏感になってるのか、ちょっと熱い。
普段使う石鹸を手にとって、ためらってしまった。
父さんも使ってるんだよな。
いや、それより何より、女の子の肌をそんな風に扱っていいんだろうか。
何かないか、と見回していると、ピンク色の容器が目に留まった。
どうやら、姉貴のボディソープみたいだ。
まあ、こうなったのも姉貴のせいだし、ちょっと拝借して。
ノズルを押して、ドロリとした液体を手の平で受ける。
「おおっ」
くどくないベリー系の香りがいい感じだ。
身体にこすり付けて、泡立てる。
すぐに泡だらけになるのが面白い。
「ふふふ~ん♪」
姉貴がお風呂に時間をかける理由、これなのかな。
泡の落ちた箇所が、すべすべになるのが嬉しい。
もっともっと綺麗になれー。何度も泡をつけて、柔らかく洗う。
しばらくそうしていただろうか。
こすり疲れたから、シャワーで流す。
「つるつるだ……」
我に返って良く見てみると、男の頃にあった無駄毛は一切生えていない。
それどころか、産毛もほとんどないみたいだ。
これが女の身体なのか。
「……割れ目も綺麗に洗わないと、だよな?」


そう自分に言い聞かせて、鏡に向かって脚を開く。
今、神秘が俺のものに!
ガチャッ
「ガチャ?」
「やほ、ひ・ろ・み、ちゃん。一緒に入ろー」
「げっ、姉貴!」
慌てて足を閉じる。
見計らったかのようなタイミング。
いや、きっと見計らっていたんだろう。
とりあえず、ごまかそう。
「じ、自分だけタオル巻いて、ずるいぞ!」
「あら、そう?」
いくら俺が今は男じゃないからって、少しぐらい恥じらいを持て!
そう言いたくなるぐらい、姉貴は勢い良くタオルをはだけた。
うわ、今まで気にしたことなかったけど、結構でかいんだ。
「何よ、そんなに胸ばっかり見て。羨ましいのかなぁ?」
「べ、別に……男なんだから当然だろ!」
「男にしては大きくなるものがないけどねぇ」
「ぐ、誰の仕業だ、誰の」
姉貴は俺の文句を無視して、背中にのしかかってきた。
背中に胸が当たって、ぷにぷにとした感触が伝わってくる。
これが姉貴じゃなければ、襲ってるな、きっと。
「それはそうと広海ちゃん」
「……何だよ」
「女の子の大事なところの洗い方、教えてあげないとダメよね?」
せっかくごまかせたと思ったのに。
考えが甘すぎたか。
しかし、何があろうと、ここは断固拒否だ。
「い、いい! 適当にやるから!」
「適当? 今、適当って言った?」
きらん、と鏡越しに姉貴の目が光った。
怖い。そこらのホラー映画なんか、優に超越した怖さだ。
「正しい洗い方で清潔にしておかないと、病気になったりするんだから……」
「ちょ、ちょっと待とう。な?」
「お姉ちゃんが、手取り足取り、身体に教え込んであげるから、ね?」
「えっと、ほら、まだ髪を洗ってないし」
「あんたが気を失った後にでも、私が洗ってあげるわよ」
気を失うこと前提ですか!?
逃げようにも、がっちりとホールドされてほとんど身動きが取れない。
どうなってんだ、これ。
「覚悟決めなさい、男でしょ」
「都合の良い時だけ、男扱いかよ!」
「はい、黙る。下手に口開くと、舌を噛んじゃっても知らないからね」
「待て、何する気だ……っ、んんんんーーーっ」


「はっ!?」
あ、あれ?
いつの間にベッドに。
髪は乾いているし、ちゃんとネグリジェも着ている。
時計を見ると、俺が風呂に入った時間から1時間近くが経過していた。
「たしか、姉貴が乱入してきて、それで……」
うわ、思い出したくない。
本気で気絶するとは思わなかった。
はぁ……どうせ明日もバイトなんだ。もう寝よう。
明かりを消して、初めてケータイが点滅してるのに気づいた。
何だ、メールか?
ベッドの横のライトを付ける。
「カズから、か……」
なんか、見ない方が良い気がする。
でも、見ないわけにも行かないし。
『よう、最近会ってないけど元気か? 俺は特に何も代わり映えのない毎日だ。と思うだろ?』
違うのかよ。
『実はお前のお姉さんと、従妹の広海ちゃんに会ったんだが……あの娘、マジでカワイイな。』
え……?
たしかに、「また会えるか」って聞かれたけど、でも、そんな。
と、とにかく、続きを読もう。
『ちょっとハプニングで胸とか触っちゃって、感触忘れられねーっての。』
俺の、感触……?
そんなに気持ちよかったのかな。
大きいわけでもないのに、カズにとっては嬉しかったんだ……。
『で、成り行きで家まで送ることにしたんだけどさ、ちょっと失敗した。やっぱりいきなり、また会えるかって聞いたのはまずかったなぁ。困った顔されたから、逃げちまったよ。お前から取り成してくれると助かる。んじゃ、また暇なときにでも』
ど、どうしよう。
枕元のクマさんを見上げると、優しげな目で俺に微笑んでくれた。
うん、自信持って、良いんだよね?
えっと……『返事が遅くなってスマン。広海のことならそんなに心配しなくてもいいからな。そんなに気になるなら、「ぴゅあかふぇ」ってメイド喫茶に行ってみろ。バイトしてるらしいから』っと。
こ、これでいいよね。
本気なら、きっとあの店に来てくれる。
よし、寝よう。
ライトを消して、布団に包まる。
ん、やっぱり、クマさんがいないと落ち着かない。
今日も一緒に寝ようね。
おやすみなさい。

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