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投稿TS小説第131番 やさしい魔法(9)

作.うずら
絵.いずみやみその http://honeypoko.fakefur.jp/


慣れないブーツの歩き難さにげんなりしながら、更衣室でメイド服に着替える。
店内用のパンプスに履き替えると、随分楽になった。
良くあんなので街中を闊歩できるなあ。
「さ、お昼時だから忙しいわよー。基本的に広海ちゃんのお仕事は昨日と一緒ね」
「はい、分かりました」
コクリと頷いてみせる。
忙しいと言っても、出来ることはたかが知れている。
だから、それを考えてシフトが組んであるはず。うん、きっと大丈夫。
「どうしたの、もう成りきちゃって?」
「この服着てたらそんな気分になっちゃって……だ、ダメですか?」
「ううん、そんなことない。無愛想なヒロのままより断然良いわ!」
うわ、姉貴ってこんな優しい笑顔も出来るんだ。
いつも俺には暗黒面しか見せないくせに。何かズルい。
「それじゃ、行きましょ」



そこは文字通り戦場だった。ほとんど満席。
と言っても、店自体が大きくないから、ファミレスに比べたらマシだと思う。
千円近いパスタやオムライスが結構な量注文されていたみたいだ。
俺もわたわたと慣れないながらも頑張った。
「お疲れ様、お昼休憩行って来て」
その声がかかったのは、1時半を過ぎた頃だった。
姉貴の説明どおり、キッチンでまかないを受け取って更衣室へ。
はぁ、お腹空いたー。
椅子に寄りかかりながら、サンドイッチに手を伸ばす。
うーん……まあ、こんなものなのかなぁ。
この手の店で、味に期待する方がおかしいのかも。
でも、ココアはおいしいから満足♪
食事をしていたら、休憩時間の20分なんてすぐに経ってしまう。
フロアに戻ってみると、もうほとんどお客さんはいなくなっていた。
夕方にはまた増えるんだろうな。
「休憩終わったよ」
「それじゃ、今度は私が行って来るから。何かあったら、すぐにあそこのメイさんに聞きなさい」
「ああ、わかった」
姉貴を見送っていると、ドアについている鐘が鳴った。
すかさずメイさんが出迎える。
「「おかえりなさいませ、ご主人様」」
案内されてるのは……か、カズ!?
ど、どうしよう。忙しくてすっかり忘れてたけど、店の名前教えちゃってたんだ。
水。うん、とにかく水を持って行かないと。
その前に変なところがないか、チェックして……よしっ。
「し、失礼いたします」
「あ、どうも」
若干困惑している風情で、こっちを見る。
目が……あった。
きゅんって胸が苦しくなって、顔も熱くなってしまう。
カズも、ううん。呼び捨てなんてダメだよね。
カズくんもじっとしたまま動かない。
やがて、ゆっくりと口を開いた。
「広海、ちゃん?」
「ぇ、ぁっ」
カズくんの口から私の名前が出てきたのが嬉しくて、声が出なくなる。
でも、それが困っているように見えたのだろう。
メイさんが慌ててやってくる。
色々客とトラブルがあるのか、結構な剣幕だ。
「ご主人様、どうかなさいましたか?」
「あ、いえ、この娘、知り合いなものですから」
そうなの、と目で聞いてくる。
こくりと頷いて、大丈夫だと返す。
「そうでしたか、申し訳ございませんでした」
「ああ、いえ……気にしないでください。あ。えっとコーヒーください」
店員に深々と頭を下げられて、カズくんもどうしたものかと困惑している。
間をもたせるためにその場で注文。
メイさんが伝票を書いている間に、お辞儀をしてその場を離れる。
「き、緊張したぁ……」
おかげでいらない心配をさせてしまった。
注文をキッチンに伝えたメイさんが寄って来る。
「ねえねえ、あの人誰? カッコイイじゃない」
「わ、私の従兄の、お友達です」
カッコイイ。メイさんもそう言うってことは、やっぱり贔屓目じゃなかったんだ。
うん、カズくんはカッコイイ。
背もすらっと高いし、かといってひ弱な感じはしない。
髪だって短髪で、どことなくさわやかなスポーツマンってタイプ。
「へえ、そうなんだ。ってことは、やっぱり広海ちゃん目当てかぁ」
「え、ええっ!? そんなことないですよ!」
「あるある。だってほら、今だってちらちら気にしてるもの」
言われてカズくんの方を見ると、たしかにこっちを伺ったりしている。
でも、そんな……本気、なのかな。
だって、私、見た目はともかく、中身は男だし。
ああ、クマさんがいないから、相談も出来ないよぅ。
「もう、顔を真っ赤にしちゃって、初心ねぇ」
「か、からかわないでくださいよぉ」
俺が情けないと自分でも思う声を出したとき、またドアが鳴った。
と、同時にコーヒーを持っていってくれと、キッチンから声がかかる。
「おかえりなさいませ、ご主人様。コーヒーぐらいなら、持っていけるわよね? 私はご案内してくるから」
「え、えっと、はい。おかえりなさいませ、ご主人様」
カウンターに置いてあるトレイを持って、こぼさないようにゆっくりゆっくり。
体力も筋力もないし、運動は苦手だけど平衡感覚は悪くないみたい。
おかげで、こぼさずに運ぶことが出来た。
「お、お待たせいたふぃっ、いたしました」
「あ、うん、ありがとう」
か、噛んだーっ。
カズくんの前でこんなのって……恥ずかしいよぉ。
でも、失敗したのに笑ったりしない。そんなとこも素敵。
「その、さ。昨日はいきなりあんなこと言って、ごめん。ヒロにここで働いてるからって聞いて、我慢できなくなって、きちゃったよ」
「……嬉しい、です」
昨日の今日で、来てくれるとは思っていなかったから。
それ以前に、メイド喫茶ってことで、引かれなくてよかった。
「もし良かったら、今日も送っていいかな」
「え、あ、はい。3時になったら、上がりですから、その、お願いします」
「うん」
また一緒に帰れるんだ。
そう思うと、顔が自然とほころんでしまう。
でも、他にも言うことがあるよね、カズくん?
じっと見つめてみる。
だんだん恥ずかしくなってきて、爆発しちゃいそうだけど。
「な、何かな?」
「もう、何か言うことがあるんじゃないですか?」
「あ、えっと、あっ! 可愛いよ。その服、すごく似合ってる」
「えへへ、ありがとうございます」
取ってつけたような言い方だけど、やっぱり嬉しい。
くるっと一回転してみせる。
小首をかしげて、ぺこりとお辞儀。
「それじゃあ、お仕事がありますから」
「ああ、うん。がんばって」
ふふふ~、帰り道で告白、とかあるのかな? きゃーっ!
浮かれてる私を、ちょいちょいとメイさんが手招きした。
何だろう? お姉ちゃんみたいな、イヤらしい笑み。
わざわざ耳に口を寄せて囁く。
「さっきの、パンツ見えてたわよ」
「っっっ!!」
も、もしかして、か、カズくんにも見られた!?
や、やだ、どうしよう。クマさん助けて……。

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