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投稿TS小説第131番 やさしい魔法(15)
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作.うずら
絵.いずみやみその http://honeypoko.fakefur.jp/
そんなわけで、俺は決意した。
授業が終わったらすぐに逃げることを。
いちいちこの質問攻めに付き合っていたら、身が持たない。
HRの後、脱兎のごとく駆け出す。
お嬢様学校の生徒たちは、こんなことをするとは予想外だったらしい。
そのまま誰の制止も受けずに、校門を飛び出す。
キィィイッ
「へ?」
――ドンッ
「っ、たぁ……」
道路には飛び出すものじゃない。
自転車だったから転んだだけで済んだけど、これが車だったら……。
と言っても、自転車でも骨折ぐらいは普通らしい。
それを考えると、手の平を擦りむいた程度じゃ無傷と変わらない。
「ごめんなさい! 大丈夫ですか?」
「あ、はい。鞄がクッションになってくれて」
運転していた男が駆け寄ってきた。
自分も転んでいたのに自転車を放り出してまで……。
差し出された手を取って、少しよろけながら立ち上がる。
スカートの汚れをはたいて、相手を見る。
か……ず?
「本当に、ケガはないですか? 急いでいたので……」
違う。
背格好や髪型は似てるけど、別人だ。
にも関わらず、俺の頭の中はカズでいっぱいになってしまう。
顔に血が上っていくのが感じられる。
「へ、平気です。あの、急いでるんでしたら、私に構わないでください」
「そう、ですか? 本当にすみませんでした!」
頭を下げながら、それでも時計を見て自転車にまたがる。
曲がり角に差し掛かるまで、何度も振り返りながらその男性は去っていった。
「……はぁ」
カズじゃないって分かってるのに。
胸が苦しい。
まだ心臓が暴走して、大きな脈を打っている。
「カズの馬鹿野郎……」
俺にばっかり、こんな思いさせんじゃねぇっての。
家に帰る道中、なんだか気分が晴れなかった。
コンビニで立ち読みした少年誌も、全然面白くない。
朝は嬉しかった快晴が、今はわずらわしく感じる。
なんだよ、もう。
それもこれも、クラスメイトたちが俺に『彼氏』の存在を意識させるからだ。
過剰なまでの好奇心。俺はそんなものを満たすために存在してるんじゃない。
いないという事実をありのまま言ったのに、まるで隠しているかのように疑って。
イライラする。
鍵をドアに刺して回す。
空回り。誰かいるのかって、姉貴しかありえないな。この時間じゃ。
「おかえりー」
リビングからいつもどおりの、そしていつになく癇に障る声が聞こえた。
ただいま、と返す気にもならず、直接部屋に向かう。
「ちょっとぉ、ただいまぐらい言いなさいよ」
無視。断固無視。
これ以上、ストレスにさらされてたまるか。
とんとんとん、と軽くなった身体で階段を上がって、部屋の戸を開ける。
「あ、れ……?」
今朝と一緒のはずなのに、明らかに違う。
クマさんがベッドにちょこんって腰掛けてる。
「ほ、本物?」
抱きついて、感触を確かめる。
ふわふわな触り心地。確かにそこに在る、という安心感。
本物だ。私のクマさんだ。
「えへへー、クマさーん♪」
ぎゅーって思い切り抱きしめる。
そしたら、どうしたのって、優しい目で問いかけてくれる。
いつもどおりの、包容力のある笑顔。
「何でもないよー」
本当は嫌なことがあったんだよ。
でも、クマさんがいてくれるだけで幸せ。
さっきまでイライラしてたのが馬鹿みたい。
んふー、クマさん、大好き。
昨日、あまり寝れなかったせいかな。
太くて温かい腕の中にいると、だんだん眠たくなってきた。
寝ても良いんだよって背中を撫でてくれる。。
うん、おやすみなさい、大好き、だよ。
つづきはこちら
作.うずら
絵.いずみやみその http://honeypoko.fakefur.jp/
そんなわけで、俺は決意した。
授業が終わったらすぐに逃げることを。
いちいちこの質問攻めに付き合っていたら、身が持たない。
HRの後、脱兎のごとく駆け出す。
お嬢様学校の生徒たちは、こんなことをするとは予想外だったらしい。
そのまま誰の制止も受けずに、校門を飛び出す。
キィィイッ
「へ?」
――ドンッ
「っ、たぁ……」
道路には飛び出すものじゃない。
自転車だったから転んだだけで済んだけど、これが車だったら……。
と言っても、自転車でも骨折ぐらいは普通らしい。
それを考えると、手の平を擦りむいた程度じゃ無傷と変わらない。
「ごめんなさい! 大丈夫ですか?」
「あ、はい。鞄がクッションになってくれて」
運転していた男が駆け寄ってきた。
自分も転んでいたのに自転車を放り出してまで……。
差し出された手を取って、少しよろけながら立ち上がる。
スカートの汚れをはたいて、相手を見る。
か……ず?
「本当に、ケガはないですか? 急いでいたので……」
違う。
背格好や髪型は似てるけど、別人だ。
にも関わらず、俺の頭の中はカズでいっぱいになってしまう。
顔に血が上っていくのが感じられる。
「へ、平気です。あの、急いでるんでしたら、私に構わないでください」
「そう、ですか? 本当にすみませんでした!」
頭を下げながら、それでも時計を見て自転車にまたがる。
曲がり角に差し掛かるまで、何度も振り返りながらその男性は去っていった。
「……はぁ」
カズじゃないって分かってるのに。
胸が苦しい。
まだ心臓が暴走して、大きな脈を打っている。
「カズの馬鹿野郎……」
俺にばっかり、こんな思いさせんじゃねぇっての。
家に帰る道中、なんだか気分が晴れなかった。
コンビニで立ち読みした少年誌も、全然面白くない。
朝は嬉しかった快晴が、今はわずらわしく感じる。
なんだよ、もう。
それもこれも、クラスメイトたちが俺に『彼氏』の存在を意識させるからだ。
過剰なまでの好奇心。俺はそんなものを満たすために存在してるんじゃない。
いないという事実をありのまま言ったのに、まるで隠しているかのように疑って。
イライラする。
鍵をドアに刺して回す。
空回り。誰かいるのかって、姉貴しかありえないな。この時間じゃ。
「おかえりー」
リビングからいつもどおりの、そしていつになく癇に障る声が聞こえた。
ただいま、と返す気にもならず、直接部屋に向かう。
「ちょっとぉ、ただいまぐらい言いなさいよ」
無視。断固無視。
これ以上、ストレスにさらされてたまるか。
とんとんとん、と軽くなった身体で階段を上がって、部屋の戸を開ける。
「あ、れ……?」
今朝と一緒のはずなのに、明らかに違う。
クマさんがベッドにちょこんって腰掛けてる。
「ほ、本物?」
抱きついて、感触を確かめる。
ふわふわな触り心地。確かにそこに在る、という安心感。
本物だ。私のクマさんだ。
「えへへー、クマさーん♪」
ぎゅーって思い切り抱きしめる。
そしたら、どうしたのって、優しい目で問いかけてくれる。
いつもどおりの、包容力のある笑顔。
「何でもないよー」
本当は嫌なことがあったんだよ。
でも、クマさんがいてくれるだけで幸せ。
さっきまでイライラしてたのが馬鹿みたい。
んふー、クマさん、大好き。
昨日、あまり寝れなかったせいかな。
太くて温かい腕の中にいると、だんだん眠たくなってきた。
寝ても良いんだよって背中を撫でてくれる。。
うん、おやすみなさい、大好き、だよ。
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