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投稿TS小説第131番 やさしい魔法(19)
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作.うずら
絵.いずみやみその http://honeypoko.fakefur.jp/
用意が済むころになって、母さんが帰って来た。
父さんは残業で遅くなるから、夕食はいらないって連絡があったから問題なし。
「うん、美味しいわぁ。もう私より上手いかも……」
「そ、そんなことないよー」
豚のしょうが焼きをほおばりながら、母さんがため息をついた。
ヒロは俺の様子をチラチラと伺いながら、黙々と食べている。
それにしても、この身体が知識というか経験を蓄積していてくれて助かった。
そうでなかったら、俺が作れる料理なんてたかがしれてる。
「これなら、どこにお嫁に出しても恥ずかしくないわね」
「っ!?」
あ、あぶない。
危うく噴き出すところだった。
むせ返っていたのを、お茶でむりやり落ち着かせる。
「はぁ……もう、いきなり何言うのよっ」
「広海の婿ねぇ」
「誰かいい人いないかしら」
ヤな感じの笑みを浮かべる二人。
ああ、何か裏で企むと俺でも姉貴みたいな顔になるんだ。
っていうか、あの顔は母さん譲りだったんだなぁ……。
おっとり系に見えて、実は黒い、とか?
ぼけっとそんなことを考えていると、更なる爆弾が投下された。
「カズがいるだろ、カズが」
「ああ、和利くんね」
「ぶっ」
二人して、俺に意味深な視線を送ってくる。
ちょ、ちょっと待て、なんだよ、その生暖かい目は!
「なんでここでカズくんが出てくるのよ!」
「だって、なあ、母さん?」
「そうよねぇ……」
何とか言い逃れを考えようと、頭をフル稼働させる。
実は俺は男です。じゃない。
えっと、えっと。
「あんなにコルクボードいっぱいにしておいて、今更しらばっくれるつもり?」
「あ……」
忘れてた。
この世界の俺っていうか、広海はカズにべた惚れだったんだ。
カズ……くん。
今日、恥ずかしいカッコ見られちゃった……。
や、やばい。
意識したら! 意識したら顔が熱い!!
「もう、この娘ったら、真っ赤になっちゃって」
「広海もそうやってると可愛いぞ」
に、にやにや笑うなーっ!
まったく、二人して茶化して……。
後片付けを母さんに任せた俺は、自室に戻って悶々としていた。
ベッドの上で、ごろんと寝返りを打つ。
でっかいぬいぐるみの足に頭を乗せてため息をつく。
「はぁ……」
目に入るのはペタペタと張られたカズの写真。
外しても良いけど、それはそれでつっこまれるよなぁ。
「なあ、どうしたらいいと思う?」
茶色い相棒に問いかけてみる。
ま、最初から答えの期待なんかしてない。
それなのに何となく、本当に何となくだぞ?
好きなものは好きだからしょうがないよ。受け入れてごらん。
そう言っている様に見えた。
「受け入れる、か」
こうなってしまっては、悪く無い考えないのかもしれない。
どうせ姉貴がいない以上、何の手立てもないし。
あまり想像したくない展開だが、男に戻れたとしてもカズのことが気にならないとも限らない。
「カズ、カズくん、カズ……くん」
開き直ってしまうと、カズくんって呼ぶ方がしっくり来る。
あ、何回も呼んでいたら、変な気分になる。
ぽわーって、控えめな胸の辺りが暖かくなってきた。
「カズくん……」
男がするときと一緒だ。
握るものがある、ないという違いはあるけど。
上着をめくり、ズボンをずらす。
ガタンッ
「……え?」
「いや、その、ドア、開いてたから」
「開いてたから、じゃないっ!! とっとと出てけ、馬鹿ーっ!」
枕を投げつけてヒロ……お兄ちゃんを追い払う。
うう、屈辱だ。
カズくんの写真でオナニーしようとしてるところ、見られた。
こうなったら、俺が隠してた秘蔵のエロ本を机の上に広げといてやる。
決行は母さんが部屋の掃除をする土曜日、だな。
少しだけ、憂さ晴らしになりそうだ。
<つづく>
作.うずら
絵.いずみやみその http://honeypoko.fakefur.jp/
用意が済むころになって、母さんが帰って来た。
父さんは残業で遅くなるから、夕食はいらないって連絡があったから問題なし。
「うん、美味しいわぁ。もう私より上手いかも……」
「そ、そんなことないよー」
豚のしょうが焼きをほおばりながら、母さんがため息をついた。
ヒロは俺の様子をチラチラと伺いながら、黙々と食べている。
それにしても、この身体が知識というか経験を蓄積していてくれて助かった。
そうでなかったら、俺が作れる料理なんてたかがしれてる。
「これなら、どこにお嫁に出しても恥ずかしくないわね」
「っ!?」
あ、あぶない。
危うく噴き出すところだった。
むせ返っていたのを、お茶でむりやり落ち着かせる。
「はぁ……もう、いきなり何言うのよっ」
「広海の婿ねぇ」
「誰かいい人いないかしら」
ヤな感じの笑みを浮かべる二人。
ああ、何か裏で企むと俺でも姉貴みたいな顔になるんだ。
っていうか、あの顔は母さん譲りだったんだなぁ……。
おっとり系に見えて、実は黒い、とか?
ぼけっとそんなことを考えていると、更なる爆弾が投下された。
「カズがいるだろ、カズが」
「ああ、和利くんね」
「ぶっ」
二人して、俺に意味深な視線を送ってくる。
ちょ、ちょっと待て、なんだよ、その生暖かい目は!
「なんでここでカズくんが出てくるのよ!」
「だって、なあ、母さん?」
「そうよねぇ……」
何とか言い逃れを考えようと、頭をフル稼働させる。
実は俺は男です。じゃない。
えっと、えっと。
「あんなにコルクボードいっぱいにしておいて、今更しらばっくれるつもり?」
「あ……」
忘れてた。
この世界の俺っていうか、広海はカズにべた惚れだったんだ。
カズ……くん。
今日、恥ずかしいカッコ見られちゃった……。
や、やばい。
意識したら! 意識したら顔が熱い!!
「もう、この娘ったら、真っ赤になっちゃって」
「広海もそうやってると可愛いぞ」
に、にやにや笑うなーっ!
まったく、二人して茶化して……。
後片付けを母さんに任せた俺は、自室に戻って悶々としていた。
ベッドの上で、ごろんと寝返りを打つ。
でっかいぬいぐるみの足に頭を乗せてため息をつく。
「はぁ……」
目に入るのはペタペタと張られたカズの写真。
外しても良いけど、それはそれでつっこまれるよなぁ。
「なあ、どうしたらいいと思う?」
茶色い相棒に問いかけてみる。
ま、最初から答えの期待なんかしてない。
それなのに何となく、本当に何となくだぞ?
好きなものは好きだからしょうがないよ。受け入れてごらん。
そう言っている様に見えた。
「受け入れる、か」
こうなってしまっては、悪く無い考えないのかもしれない。
どうせ姉貴がいない以上、何の手立てもないし。
あまり想像したくない展開だが、男に戻れたとしてもカズのことが気にならないとも限らない。
「カズ、カズくん、カズ……くん」
開き直ってしまうと、カズくんって呼ぶ方がしっくり来る。
あ、何回も呼んでいたら、変な気分になる。
ぽわーって、控えめな胸の辺りが暖かくなってきた。
「カズくん……」
男がするときと一緒だ。
握るものがある、ないという違いはあるけど。
上着をめくり、ズボンをずらす。
ガタンッ
「……え?」
「いや、その、ドア、開いてたから」
「開いてたから、じゃないっ!! とっとと出てけ、馬鹿ーっ!」
枕を投げつけてヒロ……お兄ちゃんを追い払う。
うう、屈辱だ。
カズくんの写真でオナニーしようとしてるところ、見られた。
こうなったら、俺が隠してた秘蔵のエロ本を机の上に広げといてやる。
決行は母さんが部屋の掃除をする土曜日、だな。
少しだけ、憂さ晴らしになりそうだ。
<つづく>
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