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投稿TS小説第132番 そんな、おままごとみたいな……(1)(2)
作.ありす
<1:コンラートとクララ>
あるところに、二人の男女がいました。男の名はコンラート。隣の教会に住んでいるクララとは、生まれたときからの幼馴染でしたが、二人には浮いた話ひとつありませんでした。
実直で生真面目な二人は、なかば天然、なかば意識的に互いに恋愛関係になることを避けたまま、時は流れました。
いえ、どちらかというと、クララのほうはそれとなくコンラートに好意を寄せていて、遠まわしなアプローチもしていたのですが、コンラートのほうは完全に天然ボケで、ほとんど通じていなかったのです。
とはいえ、コンラートのほうも実はクララのことが気になっていたのですが、それが行動に結びつくことは……まぁ、あったとしても、それが彼女に通じることもなかったのです。
クララは村の教会に勤める世襲の司祭であり、色恋沙汰の相手として考えることは、恐れ多いと考えていたのです。農業を営む彼にとっては、教会の教えと作柄に関する啓示は、神聖かつ重要だったからです。
二人が若い頃は周りが何とか縁を結ぼうとして、おせっかいを焼く人たちもいましたが、いまではそんな人もいなくなりました。
<2:魔法使いと助手>
さて、村はずれの森にある研究所では、今日もインチキ魔法使いと、その助手が怪しげな発明をしていました。
いえ、助手は巻き込まれているだけの不幸な人間なのですけどね。なにしろ彼は―――と、それはまた別の機会に。
「さ、出来たぞ! 『ランダム若返り薬』ー!!」
「なんですか? その『ランダム』ってのは?」
「うむ。これを飲むと若返るんじゃよ」
「若返るのは、僕にもなんとなくわかります」
「おお、すごいな。流石はワシの助手じゃ!」
「(アホか、このおっさん)いや、そうじゃなくて、『ランダム』ってのはどういうことですか?」
「うむ、若返るのは若返るのじゃが、どうなるかは飲んでみてのお楽しみ。元気いっぱいの少年になるか、それとも絶世の美少女になるかは、その時次第。もしかしたら赤ん坊にまで若返るかもしれんしなぁ、わははは」
「要するに、失敗ってコトじゃないですかっ!」
「そんなことはないぞ。まぁ、飲んでみなさい。運試しじゃ!」
「誰がこんなもの飲みますか!」
「そんな事いわずに、ホレ!」
「こんなもの!」
助手は魔法使いの差し出した小瓶を、窓の外へ投げ捨てました。
「あー! なんてことを……もったいない。若返りの薬は大変貴重なものでだな……」
「失敗作でしょう! 素直に認めたらどうですか?」
ちょうどその時、森を散歩していた”自称”お助け妖精のそばに、偶然にもその小瓶が落ちて来ました。
妖精がその瓶を拾い上げて見ると、ラベルにはどこかで見たような、怪しいマークが付いています。
「ははーん、これって……」
妖精は持ち主に心当たりが着いたので、研究所の開かれた窓から中をうかがいました。
「あー、まったくもったいない。せっかくの若返りの薬を!」
「まだ言ってる。あんなもの何の役にも立ちませんよ。要りません!」
(ふーん、若返りの薬かぁ……。それはとてもすごい薬だよね。でも助手さんは要らないって……つまり、ワタシがコレを貰っても、いいってことだよね?)
そう考えた妖精は、その瓶を持って帰ることにしました。
<つづく>
<1:コンラートとクララ>
あるところに、二人の男女がいました。男の名はコンラート。隣の教会に住んでいるクララとは、生まれたときからの幼馴染でしたが、二人には浮いた話ひとつありませんでした。
実直で生真面目な二人は、なかば天然、なかば意識的に互いに恋愛関係になることを避けたまま、時は流れました。
いえ、どちらかというと、クララのほうはそれとなくコンラートに好意を寄せていて、遠まわしなアプローチもしていたのですが、コンラートのほうは完全に天然ボケで、ほとんど通じていなかったのです。
とはいえ、コンラートのほうも実はクララのことが気になっていたのですが、それが行動に結びつくことは……まぁ、あったとしても、それが彼女に通じることもなかったのです。
クララは村の教会に勤める世襲の司祭であり、色恋沙汰の相手として考えることは、恐れ多いと考えていたのです。農業を営む彼にとっては、教会の教えと作柄に関する啓示は、神聖かつ重要だったからです。
二人が若い頃は周りが何とか縁を結ぼうとして、おせっかいを焼く人たちもいましたが、いまではそんな人もいなくなりました。
<2:魔法使いと助手>
さて、村はずれの森にある研究所では、今日もインチキ魔法使いと、その助手が怪しげな発明をしていました。
いえ、助手は巻き込まれているだけの不幸な人間なのですけどね。なにしろ彼は―――と、それはまた別の機会に。
「さ、出来たぞ! 『ランダム若返り薬』ー!!」
「なんですか? その『ランダム』ってのは?」
「うむ。これを飲むと若返るんじゃよ」
「若返るのは、僕にもなんとなくわかります」
「おお、すごいな。流石はワシの助手じゃ!」
「(アホか、このおっさん)いや、そうじゃなくて、『ランダム』ってのはどういうことですか?」
「うむ、若返るのは若返るのじゃが、どうなるかは飲んでみてのお楽しみ。元気いっぱいの少年になるか、それとも絶世の美少女になるかは、その時次第。もしかしたら赤ん坊にまで若返るかもしれんしなぁ、わははは」
「要するに、失敗ってコトじゃないですかっ!」
「そんなことはないぞ。まぁ、飲んでみなさい。運試しじゃ!」
「誰がこんなもの飲みますか!」
「そんな事いわずに、ホレ!」
「こんなもの!」
助手は魔法使いの差し出した小瓶を、窓の外へ投げ捨てました。
「あー! なんてことを……もったいない。若返りの薬は大変貴重なものでだな……」
「失敗作でしょう! 素直に認めたらどうですか?」
ちょうどその時、森を散歩していた”自称”お助け妖精のそばに、偶然にもその小瓶が落ちて来ました。
妖精がその瓶を拾い上げて見ると、ラベルにはどこかで見たような、怪しいマークが付いています。
「ははーん、これって……」
妖精は持ち主に心当たりが着いたので、研究所の開かれた窓から中をうかがいました。
「あー、まったくもったいない。せっかくの若返りの薬を!」
「まだ言ってる。あんなもの何の役にも立ちませんよ。要りません!」
(ふーん、若返りの薬かぁ……。それはとてもすごい薬だよね。でも助手さんは要らないって……つまり、ワタシがコレを貰っても、いいってことだよね?)
そう考えた妖精は、その瓶を持って帰ることにしました。
<つづく>
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