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【再掲・投稿小説】男に脱がされると女の子になる少年の話

界隈の古株でもあり、弊所にも寄稿頂いておりました城弾さんが令和2年7月12日に急逝されました。
https://churabbs.com/mogisky/33498
謹んでご冥福をお祈りいたします。

作 城弾 http://johdan.a.la9.jp/index.html
イラスト 深夜工場 

 俺の名は松山光輔(まつやま こうすけ)
 ごく普通の男子高校生……の、はずだった。
 九月のあの日、この忌まわしい呪いを思い知らされるまでは。

 あの日は体育の授業でサッカーをしていた。
 月曜の六時間目。
 授業の後半の方でプレイしていたので、まだ汗が引かなかった。
 だから体操着が汗で体に張り付いて上手く脱げない。
 なんとかそれを脱ぐ。
 どうやらそこで「スキ」ができていたらしい。
 同級生の一人というより「悪友」の白坂真太郎(しらさか しんたろう)が後ろから忍び寄っていたと後で知る。
「それっ」
 悪ふざけ以外の何物でもない。
 俺のトランクスをずり下ろしにかかる
「わわっ!?」
 驚いた俺だがさらに驚く。
 なにしろ俺のたわわな胸が盛大に揺れて、髪の毛が一気にケツまで伸びた。
 ウェービーロングというところか。しかもピンク色。
 目の当たりにした真太郎も茫然としている。
「マコ。お前、女だったのかっ?」
 男子一同が俺を見ているが言葉もないようだ。
 真太郎も何とか声を出した。
「誰が女だっ。『まつやま こうすけ』で『ま』と『こ』が続くからって女みたいに『マコ』なんて呼ばれちゃいるが正真正銘の男……なんだよ。この声」
「あ、ああ。川柳で意思疎通をする美少女って感じの声だったぜ」
「でもまるで体内を駆け巡る赤血球のような元気の良さもあったが」
「農業高校の方言丸出し女子というのもありだな」
 な、なんかこいつらの目が怖い。
「同級生の男子」を見る目じゃない。
「親に隠れてエロビデオを見ている」という感じの目だ。
「へ、変な目で見るな……つっ」
 思わず怒鳴った俺だが、その際にむやみにでかい胸がプルンと揺れた。
 そしたら痛みが。
 え? おっぱいって揺れただけで痛いの?
 い、いや。その前に俺ほんとに女になっちゃったのか?
 おそるおそる生まれてからずっと一緒だったものを確認すべく手を伸ばす……までもなかった。
 パンツが下ろされていたから丸見え。
 長年一緒だったものがなくなっていた。
 胸。髪。声。そして股間。
 あらゆる部位が俺の新しい性別を突き付けてくる。
 あ。それを見てこいつらにやけていたのか?
 フルヌードの女…まだ実感わかない。
 俺は最後の悪あがきで更衣室の大鏡を見た。
 そこにはずっと見た俺の姿はなく見知らぬ、それでいて俺の面影を残す美少女が一糸まとわぬ姿で映っていた。

 俺は目の前が真っ暗になった。
 そのまま立ち眩みのように倒れてしまう。
 また胸が揺れたけど、痛みを感じるより気絶が先だった。

深夜工場さん 完成
「……うすけ。こうすけ」
 文字通りの夢見心地の中、よく知る声で俺を呼ぶ者がいた。
 ゆっくりと目を開けると見知った顔が。
「……母さん……」
 俺の母親。松山真紀が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫? 倒れたって聞いたから迎えに来たのよ」
 安堵したのか優しく微笑む。
 40前と言え若々しい。その上細い。
 待て? 誰かに似ている?
「今まで考えたことのない誰か」に似ている……俺だ!
 息子だからじゃない。
 さっきの女になった俺に似ている。

「母さん。俺さっき」
 思わず俺は勢いよく半身を起こした。
「ああ。だめよ。そんな激しく動いちゃ」
「それどころじゃいんだ。俺さっき……」
「女の子になったのね? それで倒れたんなら一安心だわ」
「どうしてそれを?」
 何かを知っている。この秘密を知っている。
 そう思った俺は母さんに詰め寄っていた。
「ここじゃだめよ。他の生徒さんに聞かれないように、おうちに帰ってからにしましょ」
 確かにそうだ。
 はやる気持ちを押さえて俺は服を着始める。
 パンツだけは履かされていた。
 そういやパンツはずり下ろされはしたが立っていたから完全には脱げてなかったか。
 それをもう一度履かせてくれたのか?
 それにあれだけの異常事態で、なんでのんきに保健室で寝かされていたんだ?
 救急車で運ばれていても不思議はないぞ。

 家に帰るころには日がすっかり傾いていた。
 タクシーで下校なんて初めてした。

 夕食にしようとする母さんに俺は詰め寄り、先に話となった。

 夕食の支度をしながら話が始まる。

「光輔。言い伝えによるとご先祖様には戦国時代に小姓を務めていた人がいたらしいの」
 ダイニングテーブルの向かいに座る母さんが切り出す。
「小姓? 織田信長に対する森蘭丸とか?」
 とりあえず話の導入部を受けておく俺。
「そうね。それで小姓というのは殿様の身の回りの世話をしていたのよ」
 話が見えないが遮らず聞いていた。
「それこそエッチのことも」
「は? 男同士で?」
「戦国時代は男色。同性愛はタブーじゃなかったのよ。むしろ『もののふのたしなみ』とまでいわれていたの」
 もののふというのは武士のことだと補足を忘れてない。
「それでね、戦場には男だけしか連れて行かないから、女の人の代わりにならないといけなかったの」
 むむむ。BLのネタになりそうな話があった時代か。
「ご先祖様は一生懸命女の人のようにふるまったらしいの。そうしたら殿様の手で着物を脱がされると本物の女性になれた。そう言い伝えられているわ」
「なんじゃあ? そりゃあ?」
 黙って聞いていたがさすがの超展開に俺は叫んだ。
「百歩譲ってその話を信じるとして。まさか」
「ええ。末代まで受け継がれているらしいわ」
「そういうのを専門用語で『呪い』ってんだよ。男に脱がされると女になるなんて。それにしても母さん。なんでそんな詳しいんだ?」
 言われた母さんはちょっと目が泳いだ。しかしほんのちょっとだった。
「兄さんがその体質だったの」
「おじさんが?」
 母の兄。俺にとってのおじさん。田沼恭一がそんな体質だったとは。
「兄さんは25歳くらいでそれが消えているのに気が付いたらしいわ」
「……そりゃあ他の男に服を脱がせてもらうなんて男はないだろうしなぁ」
「やっぱり悪ふざけだったのよ。実はね、あなたの通う高校は兄さんの母校でもあるの」
 なるほど。合点がいった。
 当時の教員はいなくとも話は聞かされていて、俺もそれを参考に対処されたわけね。
 わかっていたから救急車まではいかなかったと。

「そういやいつの間にか男に戻っていたんだけど?」
 それは重要だ。
「何か解除方法あるの?」
 ズバッと聞いた。
「一つは逆に男性に着せてもらえばいいのよ。なにも脱がせた男子じゃなくても大丈夫よ。そしてもう一つはひと眠りしたら戻れるわ」
 ああ。だから気絶して戻っていたわけね。

「とにかく個人差はあるけどいずれ消えるはずよ」
 それを聞いて安心した。
「だから男の子に脱がされないように気を付けてね」
「はは。今日のは悪ふざけだったが、そうそう男の服を脱がせる男なんて」
 いや待て?
 真太郎やあの場に居合わせたやつらは俺の「呪い」を知っていることに?

 翌日の火曜日、真太郎やあの時居合わせたやつらに探り入れても無反応だった。
 もしかして俺は夢でも見てたんじゃないかと思うほどのリアクションゼロ。

 その翌日、水曜日もなにも反応はない。
 体育があったにもかかわらず何も起きない。
 俺を女にしようとはしない。
 本当に夢だったのか?

 しかし金曜日に動きはあった。
 今度は一時間目。
 すっかり油断した俺は背後から真太郎の接近を許してしまった。
 そして一気にパンツを引きずり下ろされ女になってしまった。
「くっ。俺が女になったの白昼夢でも何でもなかったっ! そして真太郎。当事者のお前も知っていたなっ」
「夢と思っただと? 認識があむぁい! おかしくて腹がよじれる」
「くっそぉーっ。とぼけていのは油断を誘うためかぁ」
「それもある。だがちょっと準備が必要でな」
「準備?」
「話は後だ。とりあえず体操着を着ろよ」
 確かにそうだ。俺はとりあえず体操着を着た。
 う……胸が痛い。女の胸がデリケートとは言うがこの程度の動きで痛みを感じるのかよ?
 こんなので運動なんてできるわけがないぞ。
 つい反射的に着てしまったが。
 そして自分の手で服を着ても戻れないのか。
 一度剥かれたらまずその日は女で過ごすことになるな。
 とりあえず体操着を来た俺を見て真太郎は満足そうに笑う。
「よし。それじゃ次は女子更衣室な」
「は?」
 わけのわからない俺を真太郎は扉まで引っ張り外に出した。
 そこにはクラスメイトの女子が三人。
 体操着姿で待ち構えていた。
「ウソぉ。松山君なのぉ?」
「本当に女の子なんだ?」
「そのおっぱい本物?」
 一人が遠慮なしに俺の胸に手を伸ばす。
 反射的にガードする俺。
「そうよねぇ。ノーブラじゃそんな反応よね」
「そんな松山君にあたしたちからプレゼント」
「じゃーん」
 目の前にブラジャーが広げられた。

 その後は女子更衣室に連れていかれてブラジャーをつけさせられた。
 奴らが言うにはかなりの安物でアンダー65とか70を一本ずつ用意していたとか。
 真太郎の言葉でDカップくらいとあたりをつけて、隙間はパッドで埋めるつもりだったとか。
 ちなみに女になった俺を松山光輔と認識できたのは、スマホのアプリ。
 ある種のシミュレーターで、あらかじめ撮影していた俺の顔を女の顔に変換していたのであれが俺だと分かったらしい。
 そしてブラ。
 最初に試したアンダー65より70が楽だったのでそちらにして、パッドで調節した。
 これはスポーツ用のとかで揺れないらしい。
 確かに落ち着いた。
 ついでに下まで変えさせられた。
 う。今まで盛り上がりのあった部分がぴったり張り付くのって変な気分。

 そのまま体育の授業に出る。

 慣れない女の体。
 胸に水入り風船二つつけた状態での体育は惨憺たるものだった。
 それにしても既に教師にも知られていたとは。
 これは母さんのおかげと後で知る。
 それに直接の関係してない教師でも、この学校には俺のおじさんという前例があると言うし、対処の方法は確立していたようだ。

 体育が終わり女子更衣室に連行される。
 ブラジャーの返却かと思ったらそれはそのままくれるとか。
 くれるのはさらに女子制服一式。
 年季が入っていたが女子の一人の姉からのおさがりとか。
 衣替え前なので夏用の半袖ブラウスとスカート姿に。

 そして二時間目の授業に出て、それが終わると女子が大挙して俺のところに来た。
 この髪をいじりたいというのだ。
 やけに親身と思ったら俺をおもちゃにするつもりだったか。
 断ろうしたが下着までもらった手前強く出れない。
 仕方ないから好きにさせたが、こいつらまでいつの間にか呼び方が『松山君』から『マコ』にシフトしていた。
 そのせいか段々自分がもともと女だった気さえしてきた。

 結局俺はその日はずっと女のまま学校にいた。
 制服姿で女子に髪までいじられたせいか、元が男とは思えないほど女子に溶け込んでいた。

 だからか帰宅時も奇異の目で見られたりはしなかった。
 ただ女子制服姿の俺を見て母さんは目を丸くしていた。
「もしかして、やられちゃったの?」
「……そりゃあもう見事に。女子までグルでこんな格好させられて」
「道理で可愛くなってると思ったわ」
「勘弁してくれよ……」
 父さんがいれば服を着せてもらって男に戻れるがまだ仕事から帰ってきてない。
 だからもう一つの手段をとる。
 俺は男に戻るためにひと眠りする旨を告げて自室に行く。

 鍵をかけて部屋に一人。
 スカートをはずしてブラウスも脱ぐ。
 そして下着も脱ぐ。
 目が覚めた時は男。それで胸にブラジャーあったら最悪だ……ってか、女も寝るときは外すだろうし。
 揺れを抑えてくれるのはいいか窮屈でたまらん。
 下もあらかじめ男物に換えとくことに。
 一糸まとわぬ姿になる。

 その姿が姿見としての大鏡に映ったのを見てしまった。
 白い肌。触れるからわかるが滑らかだ。
 優し気な顔立ちは整っててかなりの美少女だ。
 長い髪が一層可愛く見せている。
 くびれたウエスト。
 男より大きそうな尻、
 そしてまたには何もない。
 俺は生唾を飲んだ。
 エロ本とかでは観たことあるが、生で女の股を観たことはない。
 興味はある。

 俺はその大鏡の前に座り込み大きく足を開いた。
 うわぁ。こうなっているんだ。
 よく敏感とは言うがどんな感じだ?
 俺は股間に左手の指を伸ばして……

 二時間ほどして、俺は帰宅時と同じ状態でダイニングキッチンに。
「あら? 眠らなかったの? 女の子のままじゃない?」
 阿讃が怪訝な表情をする。
「う、うん。今寝てしまうと夜に寝られなくて困るからさ」
「それもそうね。でも何をしていたの? 顔が赤いけど」
「ちょ、ちょっと運動してたんだ。夜眠れるようにさ」
 確かに激しく動いていた。
 自分で自分を絶頂へと導くために。
 話に聞いていたが、女ってあんなスゴイ感じになるのか。
 それに……すごく気持ちよかった。
 おかげでほんのちょっと触っただけが最後まで行ってしまった。

 その後、父さんが帰ってきて俺を男に戻そうとしてくれるが「どうせもう寝るからいい」と断った。
 うん。今度は寝た状態で。

 ベッドの上でだとまるで自分が男に組み敷かれているようで、さらに興奮した。

 翌朝。起きたら男に戻っていた。
 ほっとするより先にため息が出ていた。
 そう。女でなくなったことを残念に感じていた。

 土日は何か「虚無」だった。
 男でしても物足りない。
 またあの感じを味わいたい。

 そう思った俺は次から体育の時にガードをしなくなった。
 あまりにあっさり俺が女になったんで、悪ふざけのつもで俺のパンツをずり下ろした真太郎も拍子抜けだった。

 水曜も三時間目の体育からは女に。
 女子の要求を今度は積極的に受け入れ、髪の毛をいじらせた。
 自撮りした俺は……うん。可愛い。

 金曜は一時間目に体育で女子化。
 今度はこちらから頼んで化粧してもらった。

 そしてもちろん女にしてもらった日は一人エッチに励んでいた。
 絶頂に達するたびに俺の「男」が破壊され、あたしの「女」にと変わっていく。
 そのせいか女子に変身するのは嫌どころか望むようになっていた。

 そして段々一人エッチじゃ物足らなくなり……

 土曜の朝。
 真太郎と約束して話題の映画を観に行った。
 真太郎は「なんでヤロー二人で映画を観に来るかな」とボヤいていた。
 そりゃもっともだ。だから言ってやった。
「だったら女になってやろうか?」
「へ?」
 まさに「鳩が豆鉄砲食らった表情」になった真太郎。

「だれでもトイレ」に二人して入り込む。
 名前の通り男女どちらでも使える。
 また身障者が使いやすくなっているため、その介護でもう一人入っても不思議はない。
 とはいえ長居はできないから、急いで俺はパンツ残して脱いでいく。
 最後の一枚を「さぁ。脱がせてくれよ」と真太郎にゆだねる。
「お、おう」
 と返事した真太郎だがぎこちない。
「なんだよ。いつもはもっと思い切りがいいだろ」
「なんか勝手が違うんだよ」
 それももっとも。
「早くぅ」
 急かされてやっとパンツを下ろしにかかる。
 俺の尻から外れたとたんに俺は女へと変わる。
 そのままパンツが脱がされて一糸まとわぬ姿に。
「さてと」
 俺はバッグから取り出したショーツを履くと、例のもらい物のブラで胸をホールド。
 あとは元の服を着ていく。ズボンのすそは三つくらい折って調整を。
「おい。急げよ。マコ…あ!」
 真太郎はいつもならからかいに使うその名を呼んだが、まさにその名にふさわしい姿に俺がなっていた。
 俺はくすっと笑うと真太郎の左腕を自分の両手でとった。
「お、おい?」
 まるっきり俺が女の子の行動をとって戸惑っている。
「いいよ。元に戻るまでは『マコ』で」
 俺は「にやり」というつもりで笑ったが、鏡に映る笑顔は「にっこり」だった。

 映画の後で食事もする。そのまま公園を歩く。
「んー。いい風。スカートだったら気持ちよかったのになぁ」
 もうすっかりデート気分だ。
 だけど真太郎はそんなじゃないらしい。
「お前……何考えてんだよ?」
「何って?」
 真太郎は怒っているように見える。
「ずっと女でいて、まるでデートみたいに振舞って」
 あ。次のセリフわかっちゃった。
「オレのことをからかってんのかよ。マコ」
 そうだよねえ。そう思うよねえ。
「仕方ない。理由を話すよ」
 順を追って話す。
「実は今日、母さんは夜まで帰って来ない。何でもおじさんのところに行くらしい。俺のこの体のことと思うけどな。そして親父も接待ゴルフなんだ。多分飲んでも来る」
 真太郎は口を真一文字に結んでいる。

「だ、だからさ、うちは夜まで留守だから、その……俺と、やらない?」

「はぁ!!!!!????」
 真太郎の声は視線を集める。
 俺は思わず真太郎の胸に飛び込んでいた。そして至近距離で囁く。
「初めて変身した日にさ、俺は女の体で一人エッチしちゃって。そしたらドはまりしちゃって」
 真太郎の表情が柔らかくなってきた。
「それでお前、二回目からは隙だらけだったのか?」
「だって気持ちいいんだもん」
 完全に女の子。むしろメスの声で告白していた。
「そのうちに一人エッチじゃ物足りなくって」
「それで男が欲しくなって、今日のデートってわけな」
「そんな恥ずかしい言い方はやめて!」
 そしたら無言で俺の唇を唇でふさいできた。
 あ、ああ。本当の唇。「あたし」が待ち望んだものがある。
 男としてより先に女としてファーストキスをしてしまったが、むしろ喪失感より充実感に包まれていた。
「いいぜ。オレでよければ相手になるよ」
「ほんと!?」
「ああ。今のお前、とても普段から知る松山光輔じゃ無かったよ。可愛い女の子だった。びんびんだぜ」
「もう。バカ」
 後はもう迷わない。「あたしたち」は一路「あたし」の家に。

 家に帰ると予定通り誰もいない。
 今度はあたしが真太郎を脱がせ、そして真太郎に脱がせてもらって二人一緒にシャワー。
 真太郎は男らしく腰にバスタオルを巻いていたがこちらまで同じことをしたら興ざめだ。
 あたしは胸と腰を隠すようにバスタオルを巻きつけた。
 真太郎が興奮している。わかる。あたしも本当は男だからこのセクシーさはたまらないとも。

 部屋にそのまま行く。
 そしてキスをしながらベッドになだれ込む。
 バスタオルは自然に外れ、一糸まとわぬ二人は本能のままに絡みあう。





 話には聞いていたけどロストバージンってめちゃくちゃ痛い。
「大丈夫か? マコ」
「正直、痛かったけど……それ以上に気持ちよかった!」
 なんていうの。頭の中真っ白になって、上下感覚なくすほどふわふわして、なのに「浮き上がる」ような感覚で。
 ああ。うまく言葉にできない。
「ねぇ。もう一度しよ」
 受け身な身体構造だからどうしても「お願い」する形になっちゃう。
 甘えた口調に。多分表情も。
 ましてやあたしは「脱がせてもらわないと、女にもなれない」のだからなおさら下から出る。
「それはいいけどさ、今更だけけど生で大丈夫なのか?」
「さすがに朝、女になっていきなり妊娠する状態とは思えないし、ひと眠りすればリセットされるし」
 今の甘い時間は女のままでいたかった。だから「男に戻る」という表現は無意識で避けていた。
「それなら」
 真太郎はあたしのあごを持ち上げてキスをした。
 そこから二回目が始まった。




 二回目も到達してあたしは真太郎の腕を枕にして、真太郎の逞しい胸板に自分の乳房を押し付けるように二人裸のまま寄り添って寝ていた。
 真太郎が髪をなでてくれるけど、それがとても心地よい。
 あたしはいつしか眠っていたらしい。
 ん? 「眠っていた」?
 それでどうして女の子のままなの?
 あたしは……いや。俺は血の気が引いた。
 こ、これはきっとまどろんだ程度だからに違いない。熟睡すれば話は別。
 強引に自分を納得させひとまず安心。
 しかしこの部屋に迫る足音に俺は再び血の気が引いた。
 母さん。今日はもっと遅くなるはずじゃ?
「光輔。入るわよ」
 まずい。留守と思って鍵かけてない。無慈悲に扉は開かれた。
 暗い室内で目を凝らす母さんは俺が女ですっぽんぽんなのまではともかく、隣に生まれたままの姿の真太郎がばつの悪い表情をしているのを見て目を大きく見開いた。
 その隣にはなぜか訪れた先の恭一おじさんがいて、口をあんぐりと開けていた。
 それが烈火のごとく怒る。
「これはどう言うことだ? 恭二」
「え? 恭二? 誰のこと?」
 俺はさらに混乱する。
「遅かったわ……」
 天を仰ぐ母さん。
 まぁ息子が女の子じゃなくて男を連れ込んでりゃもっともか。

「二人とも。話があるわ。服を着て居間まで来てちょうだい」
 そうは言うが母さんもおじさんもその場にいる。
 仕方ないから二人の目の前で元に戻ることにした。
「真太郎。頼むわ」
 最後に脱いだから一番近くにあったパンツを履かせてもらおうと手渡した。
 嫌がるかと思った真太郎だが、思ったより素直に応じてくれた。
 あ。考えて見りゃ女としての下半身をガン見される。
 これは恥ずかしい。
 それに向き合うから真太郎のアレもよく見える。
 さっきまであれが俺の腹の中をひっかきまわしていたのか。あ、思い出すと恥ずかしい。
 だがそんな気分も真太郎がパンツを履かせてくれたのにもかかわらず、女のままなことで吹っ飛んだ
「ど、どうして?」
 青くなった俺は服を全部着せてもらったのに、男に戻れず茫然自発としていた。
 階段も危うげな足取りで降りて、いつの間かダイニングテーブルのいつもの席に着いていた。

 そこからは断片的にしか覚えてない。
 結論から言うと俺は一生女のまま。
 母さんが生き証人。
 母さんの旧姓は田沼だけど「田沼真紀」は元の名ではなく、元々は田沼恭二だったという。
 苗字の最後の「ま」と名前の最初の「き」で「マキ」と呼ばれていたのは俺と同じ。

 松山家でなく田沼家に伝わるこの呪いだが、年上であるおじさんが先に出てきた。
 やはり女性としての性欲に負けて、何人もの男とベッドインしたらしい。
 ところが幸運と言っていいと思うが、揃いも揃って下手はまだしも自分のことか考えなく。
 おじさんはそれで「二度と男とはやるものか」となって呪いをやり過ごした。

 ところが後から出たかあさんはそれで「やっても戻れる」と思い、いきなり同じ相手と二度やった。
 そしたら戻れなくなったと言う。
 お相手は当時同級生だった俺の父さん。

 一度と二度の違いについてはご先祖様は小姓として抱かれたのが一度目。
 しかし二度目は『女として』抱かれ、女としての人生を受けいれた故ではと推測されているらしい。
 小姓が側室になったらしい。

 俺はすべての話を聞くと無言で自室へと戻った。
 そして「女になったベッド」に顔をうずめて盛大に泣いた。
 自分の軽率さを呪って泣いた。
 男を捨てること。そしてこの先を女として生きていかないといけない不安に泣いた。

 俺は日曜も泣き続けたが、泣いている内に気持ちの整理がついた。
 考えてみたら別に死ぬわけじゃないし。
 普通は一生で男女どちらかだけど両方楽しめるし。
 それに…気持ちいいし。

 よし。決めた。どうせ戻れないなら泣いてないで女の子を楽しもう。
 それならまずはリビングの母さんにお願い。
「ママ。あたしに可愛いお洋服買ってくれる?」
 う…踏ん切りつけるとはいえ「ママ」に「あたし」は飛ばしすぎた。
 ううん。それくらいでいいわ。何しろ今まで男だったハンディを埋めないと。
「ええ。まずは可愛い下着からね」
 にっこりと「先輩」は笑った。


 月曜日。真新しい女子制服に身を包んだあたしは、クラスメイトの前で笑って説明していた。
 さすがに真相は話せないから「呪いの悪化で男に戻れなくなった」と学校側にしたのと同じ説明をした。
「だから男子生徒だった俺こと松山光輔は、今日から女子の『松山真子』になります」
 ここでほほ笑む。
「よろしくね」
 あたしは座席の真太郎に向ってウインクをした。
 真太郎は真っ赤になっていた。

 完

20190810初出

コメント

真子の場合ははまっちゃったんですね。
新しい人生に幸あらんことを。

感想、本当にありがとうございます。

TSには中毒性があるのか!ニンゲンノカラダハスバラシイ👱

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