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投稿TS小説第132番 そんな、おままごとみたいな……(9)(10)

<9:教会の天使>

「……そして、異教徒は村人たちに捕らえられ、今まさに打ち殺されようとしていました……」

日曜日の朝。クノは教会の礼拝堂で、神の預言を綴ったとされる”伝記書”を朗読していました。それは日曜ミサで司祭に課せられた義務でしたが、昨晩クララに言われたとおり、クノが代わりをすることになったのでした。

「……そして、異教徒を捕らえた役人が言いました。『神の名において、お前に死を賜る!』と。そして大鎚を振り降ろそうとした時の事です。稲妻と雷鳴が3度大地を揺るがし、神が現れて言いました。『お待ちなさい、私を信じる者よ』 神の声に驚いた役人は、ひざまずき、頭をたれました。そして神は言いました。『私は私を信じる者に、祝福を与えましょう。しかし、私を信じない者に、私は如何なるものも与えることはありません。だから私の名を使って、人に死を与えることもなりません』 役人は神の言葉どおりに、異教徒を放しました……」

少女となったクノの澄んだ声は礼拝堂に良く響き、ひんやりとした清浄な空気の振動は、高原を渡る風のように、集まった村人たちの耳に伝わっていきました。穢れのない純白の服に身を包み、白い帽子を被ったクノは、信心深い人たちには、まるで天使の様にも見えました。
朗読を終えたクノに、村人たちが集まり口々にクノを褒め称えました。クノは少し照れながらも、村人に笑顔を振りまいていました。

「うんうん。これなら、何とかなりそうね……」

元気を取り戻したように見えるクノの様子に、クララは満足げに目を細めていました。


その日一日、穏やかに過ごすことのできたクノだったのですが、夕方ぐらいから体がだるく感じ、妙な苛立ちを感じる様になりました。 <10:クノの悩み>

クノの苛立ちは、身近にいるクララに向けられました。クララは普段どおり、クノの狼藉ぶりを軽く受け流し(乱暴な言葉遣いをしたときは棒で叩きましたが)、それがさらにクノを苛立たせました。自分でもイヤになるようなことをクララに言ってみたり、わざとクララの気遣いにも気がつかないフリをしてみたり、一言で言えば情緒不安定。それはクノ自身も自覚していましたが、自分でもどうにも出来ない苛立ちに、さらにストレスを溜め込んでいったのです。

そして、そんなことが数日続いたある日の朝。

「きた、遂に……。 とうとう……アレが」

下腹部に鈍痛を感じて、まさかと思いつつも信じたくないクノでしたが、赤黒く汚れたパジャマとベッドのシーツを見て、この世の終わりのような絶望感に苛まされました。
そして2日の間、家事も役場もサボって、家に引きこもっていましたが、何時までも逃げてばかりはいられませんし、何の解決にもなりません。
クララが畑に出かけたのを見届けてから、クノはそっと村役場へと出勤しました。
(村役場へ行けば……)クノはヘルマなら、何とかしてくれそうな気がしたのです。

「休んで迷惑かけて、ごめんなさい」
「もう、よろしいのですか?」

クノは心配そうなヘルマの顔を見て、さらに罪悪感を感じて落ち込んでしまいました。

「うん、まぁ……」
「良くない病気でも、流行っているのですかね?」
「さぁ……」
「具合が悪くて休んでいたんじゃ、なかったのですか? クララさんはそんなことを言っていましたが」
「クララが?」
「はい」
「……そう」
「……」
「……」
「ねぇ、クノさん?」
「なに?」
「今朝、クララさんが私のところへ来たんですけど……」

ビクンとなるクノ。けれどクノは机に突っ伏して、面倒くさそうに答えました。

「ふうん」
「クノさんは体調が良くないみたいだから、出来れば優しくしてあげてくれって言ってましたよ」
「……」
「それで、もしクノさんに悩み事があるのなら、『私の変わりに聞いてあげて』とも」
「……」
「どうしたんですか? クノさん」
「……なんでもない」
「顔色が悪いですよ。やっぱり風邪でも引いているのでは?」
「……風邪のほうが、まだ良かった」
「どこか痛むのですか? 私、痛み止めなら持ってますよ」
「……お腹」
「食あたりですか?」
「違う」
「お通じが、ないとか?」

顔が少し赤くなって、ふるふると頭を振るクノ。

「……もしかして、女の子の日ですか?」

ばっと起き上がり、ヘルマの顔を見るクノ。

「そうなんですね?」
「……うぅぅぅ」

クノは顔を隠すように、再び机に突っ伏しました。

「やっぱり……。クララさんの話を聞いて、もしかしたらって、ちょっと心配していたんです。何時からですか?」
「おとついから……」
「クララさんか、ドーラおばさまに、このことは?」
「誰にも言ってない。こんなこと、恥ずかしくて言えないよぉ……」
「でも、私には言ってくれたんですね。ちょっと嬉しいです」

ヘルマは机に突っ伏したままのクノの肩を、そっと愛惜しむ様に抱きました。

「で、その……ちゃんと手当てしてます?」
「それは、なんとなく、適当に。今は、ガーゼと包帯で……」

ヘルマは、クノの下半身がどんなことになっているのかを想像すると、ちょっと頭が痛くなりましたが、クノが誰にも打ち明けられず、一人で悩んでいたのかと思うと、気の毒に思えました。

「そうですか。やっぱり買いに行くの、恥ずかしいですものね。私も最初はそうでした」
「……うん」
「私のを分けてあげますよ。でも、いつかは自分でちゃんと買えるようになってくださいね」
「……うん」
「それと、これは生理痛の薬。飲むと楽になりますよ」
「……ありがとう。ヘルマには面倒ばかりかけてるね」
「いいえ、どういたしまして。それになんだか妹が出来たみたいで、嬉しくなっちゃいます」
「妹……?」
「気を悪くしないでくださいね」
「ううん、ここではヘルマが先輩だし、こんなナリだし、お腹痛いし……」
「あんまり落ち込むと、体に障りますよ。いま薬を飲むのに、お水を持ってきますから」
「ありがと……。あ、ヘルマ!」
「なんでしょう?」
「このこと、誰にも……」
「わかっています。安心してください、誰にも言いませんから」
「うん、本当にありがとう」
「どういたしまして」

この一件以来、クノはなにかとヘルマに頼るようになり、衣類やその他もろもろの女の子の買い物は、いつもヘルマを頼るようになったのでした。

<つづく>





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