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投稿TS小説第132番 そんな、おままごとみたいな……(20)
<20:実感をください>
それから、慌しい毎日が過ぎて、あっという間に1週間が過ぎました。結婚式の準備やら、刈り入れの準備やらで二人が一緒に寝たのは、結局あの晩一度きり。
でもその晩以来、クノの仕種や言葉遣いから、男っぽさがすっかりと消え、クララも意識して若い青年らしい立ち居振る舞いをするようになりました。村人たちもまもなく誕生する若い夫婦の未来に、すっかり安心しきっていました。
明日の結婚式で使う指輪を、街まで取りにいった帰り道。クノはなんとなく他人事のように、クララに尋ねました。
「ええと、私たち、結婚するんだよね?」
「そうだよ。……やっぱり、嫌なのかい?」
「嫌とか、そういうんじゃなくて……、自信ないなぁ」
「どうして?」
「だって、こんなだし……」
クノは両手を広げて、小さくて頼りない自分の姿をクララに向けました。
「別に。かわいいお嫁さんで、自慢できるよ」
「クララの足手まといばっかりだし……」
「これからは、僕がもっと支えてあげるよ。教会の秘伝書だってあるしね」
「なんか実感、わかないし……」
クララは足を止めて、うつむいて歩いていたクノをすっと抱き上げて、道端の柵の上に座らせました。
そして、不安そうな表情のクノの頤に手を当てて、軽くキスをしました。
「実感、わいた?」
突然で自然なクララの行動に、一瞬固まりかけたクノでしたが、胸にじんわりと暖かいものが生まれてくるのを、感じていました。
クララのとても優しい笑顔が、クノの心にこびり付いていた不安を溶かしてくれているかのようです。
クノはクララから注がれてくる暖かさが、胸から全身に広がり、体全体を染めていくのを感じました。
「……もう一度、してよ」
クララは今度はしっかりとクノを抱きしめ、深くキスをしました。
クララに抱かれながら、クノは自分が本当に女の子になってしまったんだなぁ、と感じていました。
焦れる様な不安も、クララに優しく抱きしめられることで癒される……。
クノは一人よりも二人で生きていくことの意味と喜びを、初めて理解したような気がしました。
<つづく>
それから、慌しい毎日が過ぎて、あっという間に1週間が過ぎました。結婚式の準備やら、刈り入れの準備やらで二人が一緒に寝たのは、結局あの晩一度きり。
でもその晩以来、クノの仕種や言葉遣いから、男っぽさがすっかりと消え、クララも意識して若い青年らしい立ち居振る舞いをするようになりました。村人たちもまもなく誕生する若い夫婦の未来に、すっかり安心しきっていました。
明日の結婚式で使う指輪を、街まで取りにいった帰り道。クノはなんとなく他人事のように、クララに尋ねました。
「ええと、私たち、結婚するんだよね?」
「そうだよ。……やっぱり、嫌なのかい?」
「嫌とか、そういうんじゃなくて……、自信ないなぁ」
「どうして?」
「だって、こんなだし……」
クノは両手を広げて、小さくて頼りない自分の姿をクララに向けました。
「別に。かわいいお嫁さんで、自慢できるよ」
「クララの足手まといばっかりだし……」
「これからは、僕がもっと支えてあげるよ。教会の秘伝書だってあるしね」
「なんか実感、わかないし……」
クララは足を止めて、うつむいて歩いていたクノをすっと抱き上げて、道端の柵の上に座らせました。
そして、不安そうな表情のクノの頤に手を当てて、軽くキスをしました。
「実感、わいた?」
突然で自然なクララの行動に、一瞬固まりかけたクノでしたが、胸にじんわりと暖かいものが生まれてくるのを、感じていました。
クララのとても優しい笑顔が、クノの心にこびり付いていた不安を溶かしてくれているかのようです。
クノはクララから注がれてくる暖かさが、胸から全身に広がり、体全体を染めていくのを感じました。
「……もう一度、してよ」
クララは今度はしっかりとクノを抱きしめ、深くキスをしました。
クララに抱かれながら、クノは自分が本当に女の子になってしまったんだなぁ、と感じていました。
焦れる様な不安も、クララに優しく抱きしめられることで癒される……。
クノは一人よりも二人で生きていくことの意味と喜びを、初めて理解したような気がしました。
<つづく>
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