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投稿TS小説第132番 そんな、おままごとみたいな……(21)
<21:控え室にて>
結婚式当日。クララは式場である教会の控え室で、ドーラに花婿衣装を調えてもらっていました。
「おかしいねぇ……。アンタ、もうちょっと男前だと思っていたんだけどねぇ」
「だから言ったじゃないですか。礼服なんて似合わないって」
「礼服を着ていない花婿なんて、どこの世界にいるんだい? オールバックにしてるのがいけないのかねぇ?」
ドーラは花婿の髪型を、いつものようにくしゃくしゃにすると、まぁ何とかおかしくは無い様に見えないこともありません。
「見慣れた髪型が一番なのかねぇ?」
「もうこれでいいですよ」
「じゃあ、これ下げて。ベルトをしたら、鞘についている紐で、ぶらぶらしないように足にくくるんだよ」
「剣? こんなの下げるんですか? 軍人でもないのに?」
「飾りだよ。クワよりも格好がつくだろ! つべこべ言わない」
「動きにくいなぁ……。ところで、クノの方は?」
「そろそろあっちもできているころだろう。いってみようか?」
ノックをして、花嫁の控えの間に入った二人は、初々しい花嫁の後姿に、しばし見とれました。
「そっちもできたのかい? こっちを向いておくれよ」
ドーラの声に、クノが振り返りました。
「「………………」」
「どう? おかしくないかなぁ?」
クノのうしろでは、メイクをしていたヘルマが、すまなそうに手を合わせてこちらを見ています。
「いや……、い、いいんじゃない、かなぁ? かわいい、と思う」
クララはここでダメ出しをしたら、クノがへそを曲げるような気がして、あえて問題ないという風に答えました。
「そう? クララもかっこいいよ」
((これがぁ?)) とドーラもヘルマも、今ひとつぱっとしない花婿を舐めるように見ます。
ドーラはヘルマに近づき、小さな声で耳打ちしました。
「ちょっと! どうなってんだい。もうちょっとマシにできなかったのかい? あれじゃ、子供がいたずらで塗りたくったみたいじゃないかい」
「ドーラおばさまだって。クララのあの格好、どこの田舎王子かと思いましたよ」
ドーラとヘルマは、なにやら楽しそうに話している二人を見ましたが、どうもこのままではいけないような気がしました。
「ま、田舎王子はともかく、桃色パンダは何とかする必要があるね」
ドーラはメイク道具を手に取り、クノを呼びました。
「クノ、ちょっとこっちへおいで。お化粧を直すから」
「えー? まだやるんですかぁ?」
「一生に一度しかない晴れ舞台だからね。念入りにしないと」
「めんどくさいなぁ。化粧がこんなに手間がかかるものだとは、思わなかったわ」
むくれるクノをなだめすかしながら、メイクをやり直しますが、どうやってもうまく行きません。
そもそも化粧など必要のない年頃の少女にしか見えないクノに、花嫁風のメイクをしたところで似合うわけはなかったのですが、ヘルマもドーラもそれには気がついていなかったのでした。
「ま、ヴェールを被るから、お化粧なんてたいした問題ではありませんよ」
「そうそう、もういいじゃない」
あくまでもにこやかな田舎王子の言葉に、いい加減うんざりしていた桃色パンダも同調しました。
<つづく>
結婚式当日。クララは式場である教会の控え室で、ドーラに花婿衣装を調えてもらっていました。
「おかしいねぇ……。アンタ、もうちょっと男前だと思っていたんだけどねぇ」
「だから言ったじゃないですか。礼服なんて似合わないって」
「礼服を着ていない花婿なんて、どこの世界にいるんだい? オールバックにしてるのがいけないのかねぇ?」
ドーラは花婿の髪型を、いつものようにくしゃくしゃにすると、まぁ何とかおかしくは無い様に見えないこともありません。
「見慣れた髪型が一番なのかねぇ?」
「もうこれでいいですよ」
「じゃあ、これ下げて。ベルトをしたら、鞘についている紐で、ぶらぶらしないように足にくくるんだよ」
「剣? こんなの下げるんですか? 軍人でもないのに?」
「飾りだよ。クワよりも格好がつくだろ! つべこべ言わない」
「動きにくいなぁ……。ところで、クノの方は?」
「そろそろあっちもできているころだろう。いってみようか?」
ノックをして、花嫁の控えの間に入った二人は、初々しい花嫁の後姿に、しばし見とれました。
「そっちもできたのかい? こっちを向いておくれよ」
ドーラの声に、クノが振り返りました。
「「………………」」
「どう? おかしくないかなぁ?」
クノのうしろでは、メイクをしていたヘルマが、すまなそうに手を合わせてこちらを見ています。
「いや……、い、いいんじゃない、かなぁ? かわいい、と思う」
クララはここでダメ出しをしたら、クノがへそを曲げるような気がして、あえて問題ないという風に答えました。
「そう? クララもかっこいいよ」
((これがぁ?)) とドーラもヘルマも、今ひとつぱっとしない花婿を舐めるように見ます。
ドーラはヘルマに近づき、小さな声で耳打ちしました。
「ちょっと! どうなってんだい。もうちょっとマシにできなかったのかい? あれじゃ、子供がいたずらで塗りたくったみたいじゃないかい」
「ドーラおばさまだって。クララのあの格好、どこの田舎王子かと思いましたよ」
ドーラとヘルマは、なにやら楽しそうに話している二人を見ましたが、どうもこのままではいけないような気がしました。
「ま、田舎王子はともかく、桃色パンダは何とかする必要があるね」
ドーラはメイク道具を手に取り、クノを呼びました。
「クノ、ちょっとこっちへおいで。お化粧を直すから」
「えー? まだやるんですかぁ?」
「一生に一度しかない晴れ舞台だからね。念入りにしないと」
「めんどくさいなぁ。化粧がこんなに手間がかかるものだとは、思わなかったわ」
むくれるクノをなだめすかしながら、メイクをやり直しますが、どうやってもうまく行きません。
そもそも化粧など必要のない年頃の少女にしか見えないクノに、花嫁風のメイクをしたところで似合うわけはなかったのですが、ヘルマもドーラもそれには気がついていなかったのでした。
「ま、ヴェールを被るから、お化粧なんてたいした問題ではありませんよ」
「そうそう、もういいじゃない」
あくまでもにこやかな田舎王子の言葉に、いい加減うんざりしていた桃色パンダも同調しました。
<つづく>
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