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投稿TS小説第132番 そんな、おままごとみたいな……(22)<最終回>

作.ありす
挿絵.霞彩ゆきは http://www.geocities.co.jp/shiro_shocora/


<22:大団円?>

ヘルマの弾くオルガンの音にあわせ、花婿と花嫁、その後に続いて媒酌人であるローレンツ夫妻が、静々と会場のバージンロードを行進していきます。

万雷の拍手に迎えられ、クノもクララも少し照れながら、ゆっくりとにわか司祭のアレク村長のいる祭壇を目指します。

「ほら、みんな祝福してくれている。結婚式やって、よかっただろう?」

クララがクノにそっと耳打ちします。

「うん、そうだね……。でもなんかみんな笑っているような……? やっぱり腕組むの、無理があるんじゃないのか?」

ヴェールを被り、俯いて歩いているクノには、来賓である村人たちの顔ははっきりとは見えません。しかし、自分の半分ぐらいの身長しかない花嫁を従えた田舎王子には、明らかに祝福以外のニュアンスを含んだ、村人たちの笑顔が見て取れます。いまひとつぱっとしない田舎王子と、腕を組んでいるというよりは”ぶら下がっている”といったほうが正しい小さな花嫁の姿は、端から見ればまるで子供の遊びみたいでしたから。しかし、ここで本当のことをクノに言えば、”やっぱりやめた!”と言いかねません。

「手をつないで歩いたんじゃ、結婚式に見えないだろ? これでいいんだよ」

二人が祭壇の前まで来ると、にわか司祭のアレク村長が、こちらもやはりこみ上げてくる笑いを必死に抑えている様子です。しかしそのにわか司祭も体に合う司祭服がなく、パン屋から借りたコック服に適当な飾りをつけただけの、おかしな服装です。隣でオルガンを弾いていたヘルマも、同じパン屋から借りたウェイトレスの服をちょっとアレンジしただけです。本来であれば隣町あたりから、正式の司祭か修道女なり修道士に来てもらって式次第を執り行うのですが、何しろ大急ぎで準備をしたため都合がつかず、間に合わなかったのです。まともな服装をしているのは媒酌人であるローレンツ夫妻ぐらいのものです。かくして祭壇には、変なコックとなりそこないメイド、田舎王子に桃色パンダという四人が並ぶことになりました。
怪しげなキャストで贈る寸劇を、今か今かと村人たちが囃し立てます。


シーン2 おままごと

「あhy-」

変なテンションで盛り上がる村人たちを前に、声の裏返った村長をドーラが嗜めます。

「落ち着きなさい、村長。あなたが結婚するわけじゃないでしょ」
「えー、こほん! あー、コンラート・シュタインベルガー、汝はクララ・アインテッセを妻……いや、夫とし、生涯……」
「おぅ、ちょっと待った」

一刻も早く既成事実を成立させたい、クララとドーラの意図に反して、ウォルフが間延びした声で遮りました。

「な、なんじゃ? ウォルフ! 神聖な式の途中じゃぞ?」
「いや、何時までも男の名前じゃ、おかしいだろ? この際、名前も変えたらどうかなって……」

ウォルフの提案に、村人たちもざわつき始めました。

「まぁ確かに、コンラートというのは男の名前だし、クララというのも女の名前だよねぇ」
「そうだね。この機会に名前も変えたら?」
「でも、今から新しい名前を考えるのかい?」

再び教会を、ざわめきが埋め尽くします。

「……そうだわ! お互いの名前を交換してはどうでしょうか?」
「おお、それは名案だな、ヘルマ」
「確かに、それなら俺たちも覚えやすいし」
「そうだ、それがいい!」

村人たちも賛成します。
花嫁と花婿は、お互いの顔を見つめあいました。

「僕はいいけど、君はどう?」
「ええ、あなたがよければ……」
「では、改めて宣誓を。指輪と名前の交換を」
「「はい」」
「私、コンラート・アインテッセは……」
「私、クララ・シュタインベルガーは……」
「「互いを無二の伴侶とし、生涯添い遂げることを、誓います」」

だが、緊張していたせいか、花嫁は動きにくいウェディングドレスに腕をとられたのか、指輪を取り落としてしまいました。
幸いにもにわか司祭の足元で、指輪は止まりましたが、あたふたと指輪を拾う花嫁の姿に、またもやもやくすくす笑いが広がりました。
せっかくの感動的なシーンが台無しです。
名実ともに男となった花婿は、落ち着いた笑顔を花嫁に向けていましたが、花嫁のほうはパニックになりかけています。

「ほら、落ち着いて。大丈夫だから」
「あ、ああ。……うん」

何とか指輪を交換したものの、次の司祭の言葉が二人に更なる緊張を強います。

「では、誓いのキスを」

花嫁の緊張が伝染ったのか、花婿は腰に下げた装飾剣が邪魔になってうまく屈めません。一方、花嫁の方は精一杯背伸びをしますが、花婿の顔までは、まだだいぶ距離があります。何とか互いにキスをしようと、四苦八苦する二人に、会場に3度目の失笑がわき始める頃には、花婿も花嫁も完全に気が動転していました。
これではいけないと焦った花婿は、花嫁をひょいと抱き上げて、祭壇の上に座らせました。それまでずっとヴェール越しか、後ろ姿しか見えなかった桃色パンダの姿がはっきりと村人たちの目に映ります。会場は一瞬の静寂の後に、失笑が爆笑へと変わるのに、そう時間はかかりませんでした。
一方、突然視界が回転し、ますます混乱した花嫁の目に、腹を抱えている村人たちの姿が目に入ります。

「や、やっぱやめたっ!」
「ええ? どうしたんだよ、そんないまさら……」
「こんなの恥ずかしすぎる。結婚なんてまだ早い!」
「僕が、嫌いになったのかい?」
「そうじゃなくて! とにかくこの場は、逃げる!」

花嫁は祭壇から飛び降り、被っていたヴェールを司祭の隣にいたヘルマに手渡すと、長いスカートを引きずりながら、教会の外へと走り出しました。
花婿は一瞬の後に気を取り直し、花嫁の後を追いかけます。

「あ、待って!」
「おい花嫁が逃げるぞ!」
「と、言うことは、ボクにもまだ望みはあるのかなー? ノイエ・クララおねーちゃん!」
「掴まえるんだ、今度こそ決着を付けさせろ! 次がいつになるかわからんぞ!!」
「追いかけろ!子供の足なら、すぐに追いつくはずだ!」
「おー!」
「引導を渡してやれ!」
「ほれ、ノイエ・コンラート! 根性を見せんかい!」
「おい、誰か投網持ってこいよ!」
「面白くなってきたー!!」
「祭りだ祭りだー!」

教会はもはや大騒ぎ。後に残されたにわか司祭のアレク村長と、いい加減二人の面倒を見るのにも疲れたドーラが、ため息をついて顔を見合わせました。

「まったく、神聖な儀式をなんだと……」
「本当だよ! 子供の遊びじゃないのに! 先が思いやられるねぇ」

ヘルマがこれ以上はないといった笑顔で、腹を抱えながら言いました。

「でも、いいんじゃないんですか? そんな、おままごとみたいな二人がいても……」

確かに若い二人は子供っぽいところがあるかもしれません。でも一度は豊富な(?)人生経験を積んでいるのです。
それに教会の秘伝書に導かれて営む彼らの畑は、村のどの畑よりも豊かで、その後も幸せに暮らせたことに、間違いないのです。

(DAS ENDE)





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コメント

一個あげました。
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もう新作の方は次の連休あたりにあげる予定です。

感想ありがとうございます。

あ、ありすのアレね。ちょいこの連休忙しく準備できてないけど、なるべく早めにー。

喬さん
感想ありがとうございます。クノとクララの話はまた書きたいですね。

この話とは別の話ですが、もうすぐ(?)ワタシの旧作+新作がまた、こちらで読めるようになります。楽しんでいただけると嬉しいです。

 こんな感じの二人が居ても良いと思います。
 クノが可愛くてたまらないですね。桃色パンダの表現に吹き出しました。

ありすさん、ありがとうございました。
陵辱モノもまたそのうち、ねw

可愛いありすのためならいつでも場所や絵師さんを用意しますよ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
発表の場と、イラスト提供の申し出をしていただいた あむぁい さんと、ややこしい注文に応えてかわいらしいイラストを描いてくださった 霞彩ゆきは さんにも、この場をお借りしてお礼申し上げます。

「300万ヒット記念に学園陵辱モノを」というリクエストだったのですが、出来上がってみたらまったくお題と離れた内容で、さぞかしあむぁいさんは面食らってしまったことだろうと思います(^_^;)。
もちろん並行して、お題に沿うものも書きかけていたのですがさっぱり進まず、こちらの方が先にプロットともどもできあがってしまい、タイミングの関係もあってこちらの話で進めさせていただきました。
「おとぎばなし風の話」というのを一度書いてみたかったのですが、うまく書けたどうかは、いまひとつ自信がありません。

>うずらさん
早速の感想ありがとうございます。

>意外にもすっきりとした終わり方

んんん、確かにいつも、いつでも続きが書けるような終わりかた、してるしなぁw

でもおとぎばなしは、メデタシメデタシで終わるものなんですよ。
と、いいつつこの話も、まだどうとでも続きが書けるような気もしますけど。


では、また。

意外にもすっきりとした終わり方で、少し驚きでしたー。
もっと続くものだと……。
や、クノが可愛くて良かったです、はい。
初夜のシーンとかが特に。

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