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白と黒の羽 by.伊達ん子 (3)

暴れる俺の頬には汗で付いた長い髪があった。近づく弟の姿が正面に見えたとき、俺は俺の胸が膨らんでいることに気づいた。これは一体なんだっていうんだ?

頭の中で言葉のイメージが踊り狂い、的確な判断ができなくなっていた。俺の踊る視線は、弟が自身のペニスに唾液を塗っている場面も認識できていなかった。

灼熱。そんな言葉が瞬間浮かび上がり、消えた。何が起こったのか想像も難くない筈なのに、俺の身に起きる筈のない出来事を想像することすらできなかった。

やめろ、そう叫んでも弟には届かなかった。身を引き裂くという形容詞はこんなとき使うんだと、初めて知った。これまで経験の無い痛みが全身を貫く。涙がこぼれ落ち頬を濡らす。それが髪に絡み益々頬に髪がついた。

おお、すげぇ締まるっ。聞きたくない言葉。それが次から次へと浴びせかけられる。痛みの渦の中で、俺は俺の身体があの人外のモノと等しくなった事を受け容れざるを得なかった。

乾いた音と、弟の息遣いと、男達の嚥下の音。そして俺の口元以上には出ない叫び。ガランとした室内にそれが響いていた。俺に腰を打ち付ける弟の姿など視たくもなく、まして喜悦の表情で口をだらしなく開いてる顔など反吐が出そうだった。涙に濡れる睫毛を閉じ今だけでも耐えようとした。

おら、見て見ろよ。髪を乱暴に掴まれ下を向かされ、俺の身体にしっかりと突き刺さった部分を見るように促された。

鮮血。それが肉棒を赤く染め、ぬらぬらと光っていた。抽送が繰り返されると痛みと同時に心の底に何かが沸き上がっていた。否定したくても否定できない、それに戸惑いを覚えた。
2007/4/17(火)18:49
男の身体。生理現象。それは良く判っていた。裂けている股間も、限界まで開かれた関節も痛かった。もう終わって欲しいと願っていた。やがて、弟の身体がブルっと震える。

身体の中で脈動を繰り返すペニス。呻きながら恍惚の表情を見せる弟。注ぎ込まれている筈の精。全てが夢なんだと思いたかった。緊張していた身体が脱力していく。弟が俺に対して何事か言ったけれど、俺の耳は聞くことを拒否していた。あの、似非天使に遭ったことを、天使では無くても運がいいと思った自分に腹が立ち、俺を犯して悦に入っている弟が憎らしくなっていた。そして、自分を見直そうと一人になろうと思ったことを悔いていた。

よかったぞ、耳元で囁く弟の声に我にかえった俺は、涙で歪む視界に映る弟を睨んだ。そこに俺を拘束している男達が声をあげた。弟だけで済むと思っていた俺が馬鹿だった。肉欲に駆られた男達がまだ控えていたのに。この集団が全て肉の満足を得るまで、俺は解放されないんだ。

乳房を握られ、乳首を舌先で刺激され、俺は背筋にこれまでと違う信号が流れていくのを感じていた。ざりっと舐められるとゾクゾクした。けれど、それも肉塊が俺の身体を蹂躙し始めると飛びさって行った。

入れ替わり立ち替わり、何度も何度も俺の中に欲望を吐き出していく男達を見て、同類の筈の俺はそれがとても汚らしい行為に思えていた。俺の新しい器官は、次第に男達の抜き差しに耐えられなくなり悲鳴を上げていた。耐えられない程の激痛は、やがて痺れに転じた。二周目の男が腰を振り始めた時、俺の心は意識を閉ざす選択をしていた。

寒い、そう思ったからか、突然目が覚めていた。だらしなく開かれた下肢が見え、その手前には仰向けにも関わらず、形の崩れない乳房があった。そうか、夢じゃなかったんだ。俺は……。

関節を無理に開いていたからか、腕を使わないと閉じられなかった。起きあがろうと力を込めると、どろりとした白濁の液体が体内から流れ出し閉口した。

帰らなくちゃ、当たり前の言葉が浮かぶ。けれど、どこに? まして全裸ではビルからすら出られない。ふと、弟とその仲間がいない事に気づく。どういう訳か弟たちが来ていた筈の服が方々に散らばっていた。

その服がごそごそと動きだし、俺は冷水を浴びせられたように鳥肌が立っていた。視線を外したくても外せない。事の成り行きをじっと見据えていた。
2007/4/17(火)18:50

闇の中から二つの光が放たれ、それが明滅しながら弟の服の首回りから出てきた。不貞不貞しい面構えの三毛猫は、俺の顔を見つめ、視線を俺の後ろへと転じて総毛立った。暫くそうしながら、三毛猫は諦めたように威嚇を止め俺の膝元へやって来た。他の服からもコウモリやトカゲ、蜘蛛や名も知らない節足動物が現れた。

こいつら。まさか。信じられない事が次から次へと起こって、不可思議なことに麻痺してしまっていたのかも知れない。俺は立ち上がり迷わず弟の服を着始めた。正直言って自分を犯したヤツの服など着たく無かった。けれど、ここで丸裸でいても仕方ないのも事実だった。輪姦した男達から比べれば、まだ弟の服がましだ。

下着を付けずに着たせいか、あちこち擦れて痛かった。閉ざされた部屋の扉まで行き開けようとしたけれど、後ろからぞろぞろと三毛猫や他の生物どもがついてくる。俺の予想が正しいなら、こいつらはさっきの男達の筈。野放しにしたくなかった。この場所で野垂れ死ねばいい。

憎悪に燃え滾った心。俺以外を外に出さないように、蹴りつけながら扉を開け、外に出た。ビルの外へ出ようと暗い廊下を歩き始めた俺の耳に、扉を引っ掻く音と三毛猫の鳴き声。在りし日の、俺を追いかけていた頃の弟の姿が脳裏に浮かび俺の足を止めた。

扉を開けると、コウモリもトカゲも、全てが一斉に外へ出て闇の中に吸い込まれていった。ただ、三毛猫だけが扉の前で座って待っている。

……おいで。自分でも驚く程可愛らしい声が室内に響くと、腰を下ろした俺の胸元に猫が飛び込んでいた。

あの、天使のようなモノは、孤独を俺にくれると言ったけれど、そうはならなかったようだ。俺はこれからの生活をなるべく考えないように、痛みで歩きづらい身体を揺らしながら、ビルから出ていった。
2007/4/17(火)18:51

アパートまでの道は街灯や自販機の明かりが灯り、所々を照らしていた。誰にも会わなかったにも関わらず、たとえ誰かに会ったとしても俺だと気づかれる筈もないのに、こそこそと隠れるように早足で歩いた。

部屋の前に着き、はたと気づいた。アパートの鍵は俺の服に入っていたんだ。無駄と判っていてもノブを回すと、軽い音が聞こえドアは開いた。訝しみながら漆黒の闇が出迎える室内に入った。しんと静まり返った室内には特に人の気配も無かった。抱いていた猫が胸から飛び降りた。

室内の明かりを点けると、見慣れた俺の部屋。机の下から猫が顔を覗かせていた。鍵を閉めて出ていったのに、どうして開いたんだろう。疑問を抱きながらも、俺は弟の服を脱ぎユニットバスの扉を開いた。

あの似非天使が目の前にいる、そんな錯覚が生じて息苦しくなってくる。しかしそれは鏡に映った自分の姿。ビルの中でされた事も、人外のモノがいた事も事実以上でも以下でも無かった。頭では理解していたつもりだったのに、自分という存在が消え、違うモノになっていることに鏡の中の女は嗚咽を漏らし泣き始めていた。

あっち行け! 猫が一声鳴いて足下に擦り寄っていたけれど、それを蹴りつけ浴室から追い出した。そのまま足下がぐらぐらと揺れる気がしながら、床に座り込み一頻り泣いた。どうして俺が? なんで? 様々な感情と疑問が渦巻き、心から離れなかった。

それでも男達の唾液の匂いが俺をゆっくりと動かした。立ち上がり鏡を見ると泣きはらした赤い目で見つめる似非天使の姿を再び認めた。じっと見ていると、似非天使と目の前の女は細部が違っていた。

金に近い琥珀色の瞳が俺を射抜く。青だの赤だのに変化していた瞳とは違うのは判っていても、似非天使に見られている気分になって急いでシャワーを浴び始めた。

女は知っているけれど、体内の残磋をどうやって洗い流せばいいのか判らず、徐に股間にシャワーを当てた。思わず叫びそうになる程浸みて痛みが走った。
2007/4/18(水)17:58

<つづく>

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