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【依頼小説】男子高校生がスーパーヒロインになるやつ

テキスト 四季 https://skima.jp/profile?id=128287
イメージイラスト:いちこ https://skima.jp/profile?id=45042

山田太一は男子高校生。
 皆からは爽やか系イケメンと呼ばれており、女子からの人気もそこそこ高い。
 世界で一番かっこいいというほどではないが、それなりに整った目鼻立ちをしており、橙寄りの金髪は艶がある質の良いもの。また、黒髪の者が多い街中では、その独特の髪色が注目の的となることも珍しくはない。
 ただ、本人はいたって普通の男子高校生であり、今日も何事もなかったかのように道を歩いていた。
 白い半袖シャツを着て、斜め掛けの鞄を肩に掛け、手にはスポーツ飲料が入ったペットボトルを持っている。
 先ほど学校の前で友人や女子生徒と別れた時の格好のままだ。
 太一は少しばかり疲れていた。今日も女子生徒にやたらと絡まれたから。彼はそこらにいる普通の女子生徒たちには興味がない。それゆえ、ちやほやされてもちっとも嬉しくないし、疲れるばかりなのだ。ただ、愛想のよい性格ゆえに、いつも爽やかに接してしまうのだが。
「帰ったら何をしようか……」
 空はまだ青い。夜が来るまでにはまだ時間がある。太一はただひたすらに、帰宅してから何をするかを考えていた。
 刹那、突如強い風が吹き抜けた。
 考え事に勤しんでいた太一は、強風に煽られうっかり転倒してしまう。
「いっててて……」
 前に向かって転んだことと咄嗟に手をつけたこともあって、体に強い痛みはなかった。ただ、膝を擦ってしまっていたのか少しばかり足に痛みがある。手で痛む場所に触れようとして——彼は気づく。
 己の身に、理解不能な異変が起きていることに。
「えっ……!?」
 最初に感じた異変は、太ももの周囲の感触。
 いつもより触り心地がふんわりしているような気がした。
 不自然さを感じ太一は自分の体を見下ろす。刹那、雷が落ちたかのような衝撃が脳に走る。着ていたはずの白い半袖シャツがなくなっていて、しかも、胸元が女性のそれのようになっていたのだ。

いちこ

「ウソ……だろ……!?」
 太一はすぐに状況を理解することはできなかった。ただ、風に煽られ転倒する前と後で自分の姿が変化したのだということは、漠然と掴めた気もする。とはいえ、何がどうなってこうなったのか、詳しいところまでは把握できていない。
「なっ……何だよ、この衣装……!?」
 金の縁がついたピンクのマントがいつの間にか装着されていた。シルクのような滑らかな生地で、風で僅かに揺れている。
 また、着ているのは紺色の艶のあるワンピースで、こちらにも金の縁取りが施されている。黄金のベルトはヒーローのようで心なしかかっこよさも感じられるが、太一は妙に短いスカート丈の方が気になった。
 ワンピースの丈はかなり短く、太ももが見えてしまっている。
 また、防ぐものが何もないため、風が吹くたび冷たさが内側に入ってくる。
「え、えええ……」
 ワンピースと同じ色みの指先なし手袋をはめた手で、スカートがめくれ上がらないように押さえる。
 スカートなんてはいたことがないので、太一にはこのくらいのことしかできなかった。中が見えてしまわないようにするので精一杯。
 いきない女性になる、なんてことが、人通りが多い場所で起こらなかっただけ良かった——思いつつ、太一はこれからどうするかを考える。
 このまま誰にも見つからないように家に帰る?
 もう一度転倒してみる?
 色々なパターンを考えていた太一は、ふと、後頭部に触れるものがあることに気づいた。
「ウソだろ、髪も……?」
 元々野球部員のような坊主頭や超短髪ではなかった。ただ、数秒前に後頭部に触れた髪のようなものは、明らかに今までとは違っていた。
 そう、まるでポニーテールでもしているかのような……。
 太一は恐る恐る手を頭の方へと動かす。
 そして、意を決して頭部に触れた。
「やっぱり!」
 髪質や髪色は変化していない。しかし長さは明らかに変わっていた。男子だった時より伸びている。ロングとまではいかないが、後頭部で一つに結べるくらいの長さはある。しかも、既に一つに結ばれている。
 さらにそこからもう少し触ってみると、髪の結び目についているのはリボンであることが判明した。
 もっとも、それはどうでもいいようなことなのだが。
「信じられない……何があったんだ」
 太一が己の外見が変わり果てたことに落ち込んでいると、どこかから耳にしたことのない声が聞こえてきた。
『キミは今日からスーパーヒーロ……じゃなかった、スーパーヒロインだよ!この世界のため、敵と戦ってね!』
 謎の声が太一にさらなる謎を突きつける。
「いや待って、何を言っているのか分からな——」
『男の子に戻りたかったら、敵を全部倒すんだよ!でないと、ずっと女の子のままだよ!』
 青い空の下、ひんやりした風が駆け抜ける。そのたびに足に寒さを感じ、半ば無意識のうちに短いスカートを手で押さえてしまう。そうしていないと体の芯まで冷えきってしまいそうな気がして。
「敵?倒す?もっと分かりやすく話してくれよ!」
『もっと分かりやすくって、キミはちょーっと頭が弱いのかな?ボクは丁寧に説明しているつもりなんだけど』
 髪やらワンピースの裾やらマントやら、あちらこちらが風で揺らされることにはまだ慣れない。
『これからキミにはスーパーヒロインとして活躍してもらうよ!』
 謎の声は無邪気に言うが、太一は声と一緒に盛り上がれる気分ではなかった。
 こんな格好をしていては恥を晒すばかり。道を歩くことすらまともにできない。もし知り合いに会って正体に気づかれたりしたら、と想像するだけでも、全身の毛穴から大量の汗が出てきそうだ。
 そんな状態なのに、この格好のまま敵と戦うなど無理な話である。
「敵とうんぬんはいいから、早く男に戻してくれ!」
『あぁそれは無理なんだ。ごめんね』
「無理とかそういうことは聞いてない!元々男だっただろ、その状態に戻すだけでいい!」
『いやぁ、それは無理なんだってばー。それに、敵を片付けたら男の子にさくっと戻れるよ?』
 謎の声は嫌になるくらい呑気で、太一は話す気を失ってしまった。
 彼の胸のうちにあるのは、もはや恥じらいと悲しさだけだ。
「これから、どうしよう……」
 敵を速やかに倒して元に戻してもらうということも一つの選択肢ではある。しかし、敵なんてものを倒せる気がしない。太一はその敵というものがどういうものか知らないが、少なくとも一人では勝てる気はしなかった。
 非現実的な戦いで命を落とすくらいなら、女子として生きてゆく方がまだしも良いのかもしれない——もうそこまで考えてしまっている部分もある。
 太一は戸惑うと同時に揺れていた。
 どの道を選ぶことが最善なのか、分からなくて。

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