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投稿TS小説第141番 Blood Line(1)(21禁)

By.luci

prologue

 能力者はこの時代でも珍しい存在だった。なぜ能力を発現しうるのか、研究者の間では環境問題に起因するという説や人類の進化とする説、果ては神の御技という突拍子もない意見まで出されていたが、本当のところは解っていない。
 ただ理由は不明だったが女性に多いという統計データが得られていた。およそ10:1の比率で女性の能力発現が多い。女性と男性の能力を比較すると、女性は能力の出力は小さいがある程度コントロール出来ている。他方、男性は能力の出力は大きいがコントロールが出来ない。
 この能力の出力差異は、研究により性的な興奮度が密接に関連していると発表され、各国の研究団体は独自の能力開発プログラムを組むに至った。幹彦やその他の能力者が入所した研究所も開発プログラムを持っている。男性は精神集中の為の修行のようなものだったが、女性にとってのプログラムは男性と違い性的で屈辱的なプログラムだった。
 彼、武石幹彦(たけいしみきひこ)がその施設にやって来たのは中学入学と同時だった。彼のある能力に目を付けた政府機関が、専用の研究施設への入所を彼の両親に打診したとき、彼らは飛び上がらんばかりに喜んだのだ。これでやっかい払いが出来る、まとまった金が手に入る、と。
 幹彦にとっての両親とは、機嫌が悪いときには暴力を振るい、機嫌のいいときでも言葉で彼を詰る、そんな存在でしかなかった。幹彦にしてみてもその両親と離れられるという機会はありがたい反面、その施設に送られる事で余計に自分は他の人間とは違う存在であるという思いを強くさせた。
 人間とは違う存在、彼の能力に起因するもの。一般に超能力とかESPとか言われている力を持った人間。文化人類学上ではホモ・サピエンスであることに違いはないのに、この能力があるために幹彦は好奇の目に晒された。曰く「化け物」、曰く「鬼っ子」と。
 情緒不安定な時分なのだ、感情が爆発するときのみ能力が開放される。言ってみれば何時爆発するのか解らない爆弾を抱えているようなもの。子どもによっては周囲の子どもを巻き込んで能力による「事故」を起こすこともある。
 幹彦もご多分に漏れず情緒不安定で能力のコントロールなど出来ない一人だった。ただ他の能力者と違ったのは、その潜在能力が桁外れに大きかった点だ。幼いときには自動車をひっくり返したこともあった。
 自分達とは違うものを、或いは力がありすぎるものを仲間はずれにしたり、蔑んだり、所謂いじめというのはどこでも起こりうる。幹彦は格好のターゲットになっていた。考えられない事故を起こし、周囲に迷惑をかける存在は、小さな町では疎まれる存在でしかない。そしてそれは親でさえそうだったのだ。仕事がうまく行かないと幹彦を殴り、気分がむしゃくしゃすれば蹴り、いつも彼の体中は痣だらけだった。今でも誰かが俺のそばで手を上げると、身が竦んで動けなくなってしまう。
 鮮やかに晴れ渡った二年前の春の日。空の蒼と桜のピンクが妙に映えていたのを幹彦は覚えている。そして両親の最後の言葉も。
「初めて役に立ったな」
 施設に子どもを入所させるには、一切の親権の放棄をする必要があった。そしてそれまでの養育費を支払われる。普通ならば子どもを売る親などいないだろう。しかし能力を持っている子どもの親は大抵「売って」しまう。理解不可能な力を、コントロール出来ないのだから、ある意味畏怖の念を持つのも無理はなかった。


 そんな幹彦も、やっと居場所を得たと思っていた。ただ、現実はそんなに甘くはない。特別な存在には変わりなかったのだ。
 入所時の幹彦は注目の的だった。彼の潜在能力は国内で最高値をマークしていた。各国も注目する程に。しかし、それも束の間だった。殆どの能力者は女なのだ。出力値は小さくてもある程度使いこなせる。まして能力開発訓練を受けているのだから。幹彦にその能力を見せつけ、あざ笑う。「潜在能力があっても使いこなせないなんてね」そんな言葉を幹彦に投げかけ冷笑する。たとえそれが見目麗しい女性であっても、他人を蹴落としエリート然とした存在でいたい、自分より下の存在を作り常に自分を上に見せるという、人間の浅ましさを見せていた。
 なんのことは無い、仲間がいると思っていた場所も「外」の世界と同じなのだ。多感な少年期の入り口でそんな態度を取られたら女性への嫌悪で一杯になってしまう。ところがここに例外がいた。
 初めて幹彦が彼女を見たとき、周囲との差がそのまま彼女の心を現している、そんな気がしていた。銀色に輝く頭髪は長く軽やかに伸び、背中まで達している。肌は透き通るように白く、一種病的でもあった。背格好は幹彦が百七十センチちょっとだから、それよりも低い。しかし殆ど同じ位と言っても良かった。切れ長の目は白い睫毛が添えられている。最大の特徴は愁いを帯びた彼女の瞳だ。ワインのように紅い目。そう、彼女はアルビノだった。
 周囲から浮いている存在同士だったからなのか、それとも他に理由があったのか、何か引力のような特別な繋がりのようなものが二人の間には存在したのかも知れない。幹彦と白い彼女、皆川璃紗(みながわりさ)が打ち解けるまでは早かった。
 璃紗は口数は少ないけれど、話を的確に噛み砕いて説明するのに長け面白かった。自分の事については殆ど話さず、何時頃入所したのかとか、両親はどうしているのか、幹彦がそんな事を尋ねた時には決まって寂しそうな笑みを浮かべるだけだった。ただ話の内容から幹彦よりも三つ四つは年上である事だけは理解できていた。
 璃紗は見かけは儚げでありながらも芯のしっかりした女性だった。自らの能力を何に使われるか解からないこの施設での訓練に、徹底して拒否の態度を貫いていた。女性である自分には訓練自体耐えられないと。
 璃紗は定期的にセックスを強要される事を嫌がっていた。しかし完全に管理されている、言い換えれば「売られてきた」能力者に拒否権などないのだ。彼女は自分の能力を強引に閉じ込め、そして人形のように耐えていた。
 年上の女性に対する憧れが、仄かな恋に昇華されるのに多くの時間はかからない。幹彦は自分の中に璃紗に対して特別な感情がある事に気づいていた。けれど、彼女がそんな訓練を受けているなどとは露ほども知らなかった。それに自分の心を言い出す機会はついに訪れなかった。
 研究所での生活は、基本的に男女混合だが能力開発訓練以外にも学業を行わなければならない。年の違う二人は必然的に離れる時間が多かったし、能力によってもグループ分けされていたから余計に逢う機会は少なくなっていた。
 事件が起こったのは幹彦が入所してから一年程経った時だ。彼の能力が各国の研究所で扱われている奴らより、数段高いレベルだと分った時、争奪戦が繰り広げられた。どこの国かは判別されなかったが、特殊部隊が突入し研究所を破壊していった。研究対象で重要人物ともなっていた幹彦は地下の別室へ連れて行かれたのだが、そこにも突入してきたのだ。首に鋭い痛みを感じると直ぐに昏倒した。事のあらましを知ったのは救出された後。所員から聞かされたのは、その後彼を奪還するために多くの血が流れたという事だった。
 それからの幹彦の生活は一変した。地下深くに隔離され、様々な薬物を投与されながら訓練が行われる毎日へ。厳しい訓練にも関わらず、幹彦の能力は一向に開花しなかった。
 当然璃紗と逢えない日々が続いた。

<つづく>

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