FC2ブログ

Latest Entries

投稿TS小説第141番 Blood Line (21禁)

色白な腕に緑の血管が見える。そこに「つっ」と銀色の針が通っていく。針から血液が逆流し、血管に針が刺さっている事を確認して白衣の人物がシリンダーを押し込んでいく。
(ん、……毎回これじゃ痛くて仕方ないよ……)
 この三ヶ月と言うもの、精神統一、そして能力のコントロールという一連の訓練をずっと地下で行ってきた。その度に幹彦の腕から妖しげな薬物が投与されている。度重なる注射によって彼の腕は紫色に変色していた。
 血管注射も巧い医師や看護士であれば、殆ど痛みを感じずに針の抜き差しが可能だ。法律的には医師が行わなければならないが、この国では忙しさからか看護士が注射するのが通常となっていた。その為なのか、たまに医師が注射を行うと下手な事が多い。幹彦が感じている痛みは、その下手さとは違い皮膚が弱くなっている事での痛みだ。
「今日も訓練ですよね? 高野先生」
 幹彦が少し批判めいた声色で尋ねる。それはそうだ。多数の犠牲を出したからといって、三ヶ月も幽閉されるいわれは無い。確かに能力の開発訓練という意味では期待を裏切っているけれど。大体が璃紗に逢えない事でストレスが溜まっていた。
 訓練前の薬物投与には必ずこの施設の責任者である高野が付き添っている。年のころは三十台位。やせぎすだけれど、目だけはやたらとギラギラ光っているのが印象的だった。
 注射器を看護士に手渡し、細い眼鏡を指で押し上げながら、高野は鋭い視線で幹彦に一瞥をくれていた。
「……いや、今日は違います。0106号君、君は自分の価値を知っているかな?」
 言いながら、高野は見慣れないアンプルを取り出し注射器にセットした。補佐役の医師や看護士の顔に緊張の色が出たけれど、幹彦にはそれが読めなかった。
「――価値なんて、あるのかどうか……。モルモット位はあるといいですけれど」
 いつもなら、気の弱い幹彦が所長に向かって嫌味とも取れる言い方などする筈も無かった。しかし璃紗に逢えない焦燥からか、いつもとは違ったのだ。そして「いつもとは違った」のは、所長も同様だった。
「――実はね、この間の突入劇から上の方である議題が上がっていてね。君の『実用化』はまだなのかってね」
 実用化などと言われても幹彦にはどういう意味の「実用化」なのかさっぱり意味が解からない。おぼろげにながら政府に使われる、という位には考えているのだけれど。
 所長は口元に冷笑を浮かべながら先を続ける。
「年間、君だけに数億という金をつぎ込んでるでしょう。費用対効果を考えるとどうしても、ね。で、ついこの間なんだけれど人事異動があって、母体組織の首がすげかわったんだ。それで君の話も出てね」
 話をしながら、高野は正確に幹彦の首筋に注射をしていく。ちくっとした軽い痛みに幹彦の身体がほんの少し動いた。
「その話ってなんだと思う?」
「……なんだったんですか」


「君はね、廃棄処分に決まったんだ」
 高野との会話自体が不毛だと感じていた幹彦にとって、大人たちの話合いなどどうでもいいことだった。だから高野が発した言葉は理解できなかった。
(廃棄処分ね。なんだ、どうってこと……えっ? 捨てるってこと? 僕を?)
 口元だけの笑顔。高野が前から同じような表情をすることを幹彦は知っている。しかし今日の笑顔は、目が違った。まるで瀕死の実験動物を見るような冷たい目。
(! い、今の注射って?!)
 一瞬の逡巡の後、幹彦はベッドから飛び起きようとしていた。しかし、補佐役として来ている数人の医師に両腕を掴まれ押さえつけられてしまった。
「はっ、放しっ、?!!」
「ああ、慌てなくていいよ。毒物じゃないから今の注射は。少しばかり眠っててくれればいいさ。オペも、直ぐって訳じゃないけど君は寝てるだけだから。ちゃんと終わる」
「お、おぺって、しゅ手術? どうしてっどういう事ですかっ」
 次第に手足が痺れ自由が奪われていく。これからどうなるのか、そんな不安からか幹彦の顔面は蒼白になっていく。それとは対極的に高野の頬は上気しだしていた。
 高野は年上だけれど、その嬉々とした表情に幹彦は腹立たしく思ってしまう。せめて抵抗しようと、まだ辛うじて動く胴体部分を揺すってベッドから落ちようと画策した。けれど。
「おいおい、危ないな。――君に年間数億も使うより、もっと発掘に力を入れろって事でね。お金のかかる君は要らない。でも他国に取られる位なら殺そうってことなんだ。端的に言うとね。……ただねぇ、我々としては君の能力を高く評価しててね。君みたいに潜在能力が高い能力者は、もう出ないかも知れない。だから、一計を案じたんだ」
 殆ど動かない身体と、働かない頭。幹彦の朦朧とした意識は、高野が何か重大な事を言いそうだと確信していた。飛びそうになる意識を、唇を噛み締めながら必死で繋ぎ止める。
「これまでの研究では、やはり脳が力を出しているのが解かっててね。ただそあれに女性ホルモンや男性ホルモンが如何に関与しているか、そこが不確かなんだ。そこで、だ。君を死体に仕立て上げて、女性の肉体に脳を移しちゃったらどうか、そんな事になってね。脳移植して君の能力が失せてもそれは仕方ない。廃棄処分に再度すればいいだけのことさ。女一人、どうにでも処理できる。成功したならっ、これまでの男性能力者を全員女性化させる。そうすれば無敵の部隊ができるんだから。君にこれまでかかった経費なんて安いもんだ」
 幹彦の耳に伝わる高野の言葉は、最早音のみだった。意味を理解するにはセンテンスが長すぎた。
 それでも何か抵抗しなければという心理が幹彦に働く。手足を動かした積もりだったが身体の筋肉がどう繋がっているのか解からない。
(……ちくしょ、う……)
 何故悔しいのか、幹彦はそんな感情も解からなくなっていた。
「身体は君が一番気に入るだろうモノを用意したよ……」

つづきはこちら

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://okashi.blog6.fc2.com/tb.php/2734-d21101e5

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

DMMさんの宣伝

 

初めての人はこちら

ts_novel.jpg

 

性の揺らぎに関する作品でお勧めのもの

ts_syouhin_20090318225626.jpg

 

性の揺らぎに関する作品(一般)

ts_syouhinもと

 

ブログ内検索

 

最近のコメント

 

プロフィール

あむぁい

  • Author:あむぁい
  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

全記事表示リンク

ブロとも申請フォーム

月別アーカイブ

 

最近の記事

 

ブロとも一覧


■ ブログ名:M物語(TSF小説)

 

カテゴリー

新メールフォーム

イラスト企画ご案内

20080810semini.jpg

 

リンク

RSSフィード

2020-06