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投稿TS小説第141番 Blood Line (4)(21禁)

(ずっと、ずっとこのまま? 女のまま、生きて……)
「その顔自体は凄く好きなんだよ、前の中身はアレだったが。なかなかそそられるよ、その泣き顔は。さて、君の今の身体、誰のだと思う? ん?」
 真剣なのかからかっているのか、高野は面白そうに尋ねてくる。しかし幹彦はそれどころではなかった。
(そんなの知るかっ。声も出ないのに! 藪医者っ!)
 涙にくれる瞳を高野から逸らし心拍モニターらしきものを見た。起きたときより波形が大きくなっている気がする。
「……解らんかな。君の愛情ってのは、そんな程度だったのかねぇ」
(あいじょう? そんなの、誰に対しても)
 幹彦はふと、夢を思い出していた。あの優しい微笑みを。
「ほら、ここ、この輸液バッグには何て書いてあるかな? 看護士は何か言ってなかったかな?」
 幼稚園児に尋ねるように高い声色を使い高野が聞いてくる。一見滑稽だけれど、裏には悪意しか存在していないのだが。
 幹彦の左腕から伸びる管の先に輸液バッグが下がっている。取り違えが起きないようバッグ表面には名前や番号を書く欄が設けられている。幹彦はちらっとそこを見た。
(0087号……僕は0106なのに。間違って……じゃないっ、0087て彼女の?! いや、だって、え? 看護士さんは、0087号って。そんな、じゃぁ、この身体は)
「うんうん、答えが解ったかい。ちょっと遅いな。そう、君の身体は0087号のモノだよ。彼女ねぇ、『もう能力開発なんて嫌ですっ、協力しません』って言ってね。自分で心臓止めちゃったんだな」
 芝居がかった大仰な所作で説明をしている高野。しかしその目はいつもと違い笑っている。そして更に説明を加える。
「彼女の死がきっかけでね、この計画を思いついた訳だ。君の身体に0087号の脳を入れて、あ、もう消却されたかな、上の奴らはそれを手に入れた。そして我々は君という無限大の能力者とその入れ物を手に入れたって訳だね。双方とも過不足無い。いや、我々の方がちょっといい目をみてるのか」
(璃紗さんが、死んだ? 僕の身体と一緒に……)
 気分が悪くなるような話というのは存在する。それを幹彦は思い知った。あの優しかった、幹彦の心の支えでもあった璃紗がもういない。目を瞑ると声や仕草が思い出されていた。年下の少年だと自分でも解っていた。しかしせめて一言、相談くらいして欲しかったのに。
 声を出して泣きたいのに声が出ない。璃紗の身体なら声を出せば璃紗の声が聞こえる筈なのに、出ない。悲しさも幹彦にはある。しかし高野に対する憎悪がどんどん大きく膨らんでいく。モニターの波形はより大きく振幅しだしている。
「まぁ、これから実験や訓練は君に引き継いで貰うし、身体が動くようになるまではPKの訓練でもしようか。あ、そうそう、声だけれどね」
 ちらっとモニターを一瞥し、高野が口元に笑みを浮かべた。
「能力開発の時にあんまり0087号が罵詈雑言吐くからね、オペで声帯取ってたんだよ。こっちも忙しくてね忘れていたんだ。君にはちょっとばかり辛いかも知れんけど、テレパスの訓練だと思ってくれ、な?」
(せ、声帯を取った? 声を出さないように? ひどいっひどすぎるっ! お前ら、僕たちのことヒトなんて思ってないんだなっ?!)
 璃紗が受けた屈辱を思うと身体中から力が溢れそうになっていた。幹彦の感情の高ぶりがそのまま下腹部へと集まる感覚。過去に一度だけこれに近いものがあったけれど、今日ほど大きな渦のように力が集まった事は無かった。その力を高野に向かって放出しようとした。その時。
(ぎっっああああああ! 痛いっ痛いいいい! あたま割れるうううっ!)
 眉根を寄せ、きつく閉じた瞼から、先ほどとは違った意味の涙が流れてきた。歯を食いしばらないと口から痛みが入ってきてしまうと言わんばかりに。幹彦の顔が苦痛に歪む。痛みというのは人間のリミッターを外す作用があるのか、それとも緊急時だからこそなのか、まだ繋がりきっていない筈の腕の神経を通って頭を抱えるという脳からの電気信号で幹彦の腕が動いていた。
「おおっ、早速能力を出せるようになったか。しかも繋げて間もないのに腕も動かせるとはっ! やはり私の考えは当たってたんだな!」
 高野は幹彦とモニターを交互に見ながら歓喜の表情を浮かべていた。このモニターは心拍モニターではなく、能力の値を計測する為の装置だった。
「君にはね。移植ついでにリミッターをつけたんだ。もし能力全開でこられたら、こっちの身が持たないだろ。あまりにでかい力を使うと、痛覚神経に直接信号送るから、死ななくても狂うかも知れない。あまりして欲しくないね」
 高野本人が取り付けたと言うのにまるで人ごとのように言っている。幹彦は涙目で高野を睨んだ。
「さて、状況説明も終わったし、そろそろお暇しよう。あ、そうそう。君と彼女は生体適合が高かったんだが、完全じゃない。そんなのあり得ないからね。今、我々が開発した新規の免疫抑制剤使ってるから死ぬことはない。ただ。ここから逃げ出したらその薬剤も手に入らない。解るだろう。これは我々の保健なのさ。あと一日くらいで身体は動かせるようになるだろ。じゃあ」
 幹彦からすれば高野は勝手にやってきて勝手に帰っていったようなものだった。物が掴めるなら投げつけてやりたい。けれどそれも出来ない。虚空を見つめながらひとつ息を吐いた。
(この目も、白い手も、舌先で感じる歯も唇も、みんな璃紗さんのなんだ。なんで死んじゃったんだよぅ……)
 自分の身体が女になったことより、璃紗が死んだ事の方がショックだった。悲しかった。幹彦に出来ることと言ったら、泣くこと位だった。声も出さずに。

<つづく>

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