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投稿TS小説第141番 Blood Line (21)(21禁)

 まだ新しいエレベータの中で、手持ちぶさたな幹彦は横目でちらちらと真理の表情を窺っていた。

 真理の部屋は、豪華というより綺麗に纏まっているという印象だった。新築のマンションだから当たり前だけれど、壁紙も淡いベージュで汚れ一つ無く、フローリングの床はゴミ一つ落ちていない。
「先に足を洗おっか。綺麗にしてから消毒した方がいいからね」
 半身浴が可能なバスタブの縁に幹彦を座らせ、真理は上着を脱いだ。胸元を大きく開けたブラウスを上から覗くような形になり、幹彦は思わず真っ赤になって顔を背けていた。ノズルを取ってお湯の温度を調節しながら幹彦の足の汚れをおとしていく真理には、その様子は見えない。
 末梢の血管が集まる足を温めると身体全体がほかほかとしてくる。一通り汚れと付着した血液を洗い終わる頃には、幹彦の身体も暖まっていた。
 乾いていた傷口が少し開いたのか、血が滲んでいた。真理は浴室で消毒と薬剤塗布をすませた。
 既に夜半を回っている時刻になって、遅い夕食を採る。と言っても冷凍食品を解凍しただけの質素なもの。しかし、幹彦にとっては久しぶりに味わう外界での食事だった。
 食事中、真理に何か尋ねられるかと思っていた幹彦だったが、真理はテレビを見ながら食べていた。
 何かを尋ねられても、どう説明したらいいのか。リネン業者の車が停まって逃げだした幹彦だったが、追ってくる男から逃れる最中、ふと、どこに逃げればいいのかと思ってしまったのだ。たとえ家に帰ったとしても、璃紗の姿になっている幹彦では両親とも幹彦だと解る筈がない。これまで自身に起こった事を伝えたとしても、信用されるとは思えなかった。
 そして、それは今目の前にいる女性にしてもそうだと感じていた。声を使って話をしても、その違和感からこの場所から叩き出されるかも知れない。都合のいい話ではあるけれど、今日だけはゆっくりしたい、そういう思いからも真理に対し声を使う事をためらっていた。


 ただ、いつまでも押し黙っている事もできない。筆談と身振り手振りで伝える事を考えていた。

「それじゃ、こっちを使ってね。夜中に何かあったら起こしてくれていいから。とにかくゆっくり休息をとって。明日になったら気分も変わるだろうから、話したい事があったらまた明日ね」
 幹彦はゲスト用の部屋に通されていた。ちょっとだけ、一緒に寝ることになったらどうしようと、一人でドキドキしていたのが馬鹿みたいに感じていた。
 真理が幹彦のベッドサイドに来て、掛け布団を優しく掛けていく。璃紗に感じた親近感や安心感とは違ったときめきが、幹彦の心の中に沸き上がっていた。
(あ……、まだ……)
 部屋から出ていく真理の横顔に、まだ一緒にいて欲しいと伝えそうになっていた。他人から無条件で親切にして貰ったことなど一度もない幹彦は、心の奥底で真理は何か企んでいるのではと勘ぐりつつも、自分の中で真理の人物像を作り上げていた。

(ふぅ。さて、と。守さんに断りの電話しておかないと)
 同じ研究所内にいるというのに、恋人がどんな研究をしているかも解らないし、スケジュールさえ不明なのだ。しかし久しぶりのデートを断るのだから、メールで済ませる訳にもいかなかった。
 数度、携帯電話にかけてみるが、直ぐに留守電に切り替わってしまう。
「もう。夜中に何やってるのよ。研究ばっかりじゃ身体悪くするわよ」
 仕方なく、留守電にメッセージを入れようと、音声が切り替わる間、小声で悪態を吐く。そして録音に切り替わった。
「真理です。明後日のゴルフ、キャンセルね。用事できちゃったから。また連絡して頂戴ね」
 居丈高に聞こえる内容だけれど、実際には嫌みを込めただけだ。つき合い始める前は電話もメールも頻繁にやり取りしていたが、お互い忙しい身になってからは大分頻度が落ちていた。最近では、守から連絡してくることなど滅多にない。その事で口論になる事もあった。良家の子女としてちやほやされてきた真理としては、その扱いは不当とも言える。その意味では、明後日のゴルフは重要な位置づけでもあった。
 しかし、お嬢様特有の持たざるモノへの博愛が、守よりも目の前に現れた白い少女へと興味を向けさせていた。幹彦は無条件の親切だと感じていた真理の対応も、実は守の気を引く道具だったし、ゴシップ的な興味も手伝っていた事は否定できない事実だった。けれど、それを真理が幹彦に伝える事は無いし、幹彦が知る事もない。
(守さんへはこれでいいとして。警察に届けるべきかしら……)
 バレッタを外し、豊かなウェーブの髪が流れる。それをときほぐしながら、鏡の前で自問自答していた。
 何をどう考えても犯罪の匂いが漂ってくるのだ。インナーも身につけずスモック一枚のみで靴さえ履いていない。改めて幹彦にシャワーを浴びさせた時、衣類を洗濯してしまおうと見た時に気付いた事だった。勿論ブラジャーをしていないのは直ぐに解ったけれど。
 手首の痕にしてもそうだ。細い切れにくい何かで縛られ、それを強引に解こうとした痕にしか見えない。
 臨床現場では時として妙な患者と会う事もある。SM嗜好が行き過ぎた者など、同じような傷跡を持っていた。その時は、肛門に瓶を突っ込んだまま出てこなくなった、と訴えてきた男性だったが。
 とにかく、あの白い少女が裸同然で拘束され、幸運にも逃げてきた、という答えしか導き出せない。
(何があったか、なんて考えなくても解るわよね……。やだなぁ、あんな綺麗な娘が、なんて)
 想像の範疇を出ないというのに、真理はベッドに入りながら肩を抱き「ぶるっ」と身震いしていた。自らの身に起こったとしたら、屈辱と羞恥で堪えられないと思ってしまう。
(話さない、じゃくて、話せない、かな。トラウマで失語症になることもあるし。ま、少しづつ慣れて貰って、話ができるようになればいいか。警察関係はお父様にお願いすればいいし)
 とにかく明日。真理はそう思いながら瞼を閉じていた。

 布団にくるまりながら、幹彦は悶々としていた。今日という日はこれまでの彼の人生の中でも長い一日だった。前半部分はあまり考えたくないが、後半、特に車中から逃げる時には、研究施設から脱出する時と同じ位緊張した。今になって考えれば、よくあれだけ穴の開いた計画で脱出できたと思っていた。そして後悔もあった。
(関係ない人だったのに……でも、仕方ない、よな)

 リネン業者の車が自動販売機前で停まった時、運転席のドアの閉まる音で目が覚めたのだ。息を殺し周囲を見渡すとまだ山道の途中だった。恐らく寝ていたのは数分程度だったのだろう。
 自販機の前で男がポケットに手を突っ込んでいるのが見えた。サイフを取り出しコインを投入し缶コーヒーが大きな音とともに取り出し口のプラスチックを叩いた。
(……逃げなきゃ!)
 寝起きでどんよりした思考が次第に覚醒し、何をすべきかを考える。後部のドアを開けるにしても、大きく跳ね上がればそれだけで男は不審に思うだろう。幹彦は声で男の気を引く作戦に出た。
『お兄さん、手を貸して下さい』
 ぎこちなさの残る声が、リネン業者の耳に入っていた。一瞬、驚き身体が跳ねた男は、不審そうな顔つきで周囲を見渡していた。幹彦は再度声を作った。
『こっち、右の方。動けないの。助けて』
 右手に向かい、恐る恐る歩き出す男を見ながら、幹彦はバンの後方に移動し、ドアの取っ手を掴んだ。
「――誰だ? どこにいるんだ?」
 震えがちな男の声は、暗く茂った森の中へと消えていった。しかし身体は森の中に入らなかった。
『もっと、奥。出られないの』
 暗くなった山道。しかも森の中に若い女が動けずにいる。誰が聞いても不審だった。男は逡巡しながらも、ガードレールを乗り越えた。
 バンの後部ドアと男の距離は六メートル程。男はバンの前方付近から森へ足を踏み入れたから、後部の様子はよく見えない筈だった。幹彦はゆっくりドアを開けた時「ガチャ」っと音がした。
(! やばい!)
 這い蹲り転がり出た幹彦が振り返ると、既に路上に上がってきた男の姿があった。細身で今風に髪を染め、どこに股間があるのか解らないほど下げたズボン。見るからに風体のよろしくない男の視線は、じっとりと舐めるように幹彦の身体を、下半身を見ていた。
 幹彦はその視線に気付き自らの身体に目をやる。と、転がり出た拍子にスモックの裾が捲れ白い腿と臀部が露わになっていた。さっと右手で裾を戻し男に視線を移した時には、走り寄る影が目の前に迫っていた。
(! あ!?)
 立ち上がって走り去ろうとする前に、男は幹彦に馬乗りになりその行動を抑えつけてしまった。
「こんな時間にパンツも穿かないで何してんだ? さっきの声もお前かよ」
 缶コーヒーの甘ったるい匂いを漂わせ、幹彦に話し掛けるが、手は幹彦の白い下半身をまさぐろうと動き回る。
 折角陵辱の檻から抜け出したというのに、その直後に犯されたくはなかった。幹彦は両拳で男の顔と言わず胸と言わず叩く。しかし男にとっては鬱陶しい程度で痛くはないようだった。
「なんだよ、さっきは誘っておいてこれかよ。いやよいやよも好きのうち、だろ」
 勝手なことを言いつつ、手は動き回る。その嫌悪感を煽る感触に、幹彦は力を使って抗った。鹿島に使ったのと同じ手だ。睾丸を持つようにして、グリッと捻った。
「?!?!?!? ぎゃああ!」
 股間を押さえながら、顔から道路に崩れ落ちる男。それを後目に、幹彦は立ち上がり森の中へ走り込んでいた。
「てめっ、くそっ、戻ってこいっ。ふざけんな、くそアマっ!」
 背後で自分を罵る声がしていたが、坂道を転げ落ちんばかりに走っている内にその声も聞こえなくなっていた。
 どこをどう走ったのか幹彦は聞かれても答えられないだろう。気付いたときには幹線道路の脇まで下っていたのだった。
 走り続け体力は尽き、能力の使い過ぎで精神力も限界に達していた。無我夢中で走っていた時には感じなかったけれど、裸足の足もずくずくと痛み出していた。取りあえず身を隠せ、休む場所として探してたどり着いたのが、真理の住むこのマンションだった。

 多少なりとも研究施設と関わりがある男だった。しかし、鹿島と違い「まだ」犯された訳でもなく、リネン業者のバンがあったからこそ、脱出できたのだ。恩を徒で返した形になってしまい、幹彦は少しだけ申し訳ないと思っていた。しかし身を守る為には仕方がない。
(これからどうしよ……。だめだ……眠ぃ。――寝て、起きたら……)
 度重なる緊張と不安から、ひとまず解き放たれた幹彦は、闇の中へと意識を沈めていった。


<つづきはこちら>

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