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投稿TS小説第141番 Blood Line (31)(21禁)

 足下に落ちたボードを拾い上げ、大きく「ヤ・ダ!!」と書かれたボードを見ながら真理は大きく溜息を吐いていた。彼女にしても、このままで良いとは決して思っていなかった。確かに保護欲と愛欲に負けてリサを抱き、リサに抱かれたけれど。
(別に、一緒にいたくない訳じゃないけど……)
 何かのきっかけで、少しだけ距離を置きたい、そんな心境だった。同じ研究施設にいながらすれ違いがちの彼が来るというのは、ある意味渡りに船だったのだ。
 化粧もそこそこにリサが閉じこもった部屋の前に来ると、躊躇いがちにノックした。
「リサちゃん。別に恰好はどうでもいいから。他の人と会うと世界が広がるでしょ? 来たら呼ぶから、出てきてね」

 真理の声を聞きながら、リサは膝を抱え床を凝視していた。自分という存在の曖昧さが身にしみる。
(真理さんが好きになる位だから、きっと凄くいい人なんだろうな。僕なんか――)
 社会的にも人間的にも劣る、そう思ってしまう。大体男ではないのだから、始めから勝負になっていない。そんな事を考えると悲しいやら怒りやら複雑な想いがリサの心をかき乱していた。
 リサも真理が言ってる事は解っているのだ、頭では。ただ心がついていかない。それでも真理が望むならと、少々自己犠牲的な心境を美化しながら重い腰を上げた。
 ゲストルームは六畳弱程の広さがあり、そこに洋服ダンスが置かれている。真理が選んだ服がぎっしりと詰まっている。リサは気恥ずかしさからデニムパンツやカーゴパンツしか穿いていないが、スカートもかなりあった。その中の一着を手に取る。
(寒いし、こんなのでいいのかな)
 膝丈のチェックのプリーツスカート。生地がウールだから暖かい筈だ。赤地のチェックは白い肌にも映える。リサはデニムのパンツを脱ぎ、スカートに足を通した。少し手が震える。
 研究施設に閉じ込められていた時はスモックしか着用していなかった。真理に保護されてからも、スカートなど穿いていない。これが初めての「女装」だと思うと自然に緊張してしまう。しかも男に見せる為なのだから。
(はぁ。やだな……でも真理さんの為だし)
 璃紗と会った時も、璃紗はスモックだった。綺麗な彼女が普通に女の装いをしたらより綺麗だろうと、幹彦だった頃も何度も思っていた。それを自分がするのだ。「女装」に対する嫌悪や緊張も勿論あったが、片隅にちょっとした好奇心もあった。リサは「真理の為」という口実で己の複雑な心理を肯定しようとしていた。
 鏡の中の璃紗は、見た事も無い程「女」になっていた。というよりピンクのセーターとチェックのスカートという出で立ちが子どもっぽく見え、幹彦と同じ位の年齢の少女然としていた。
(璃紗さん、可愛いな。見たかったな)
 頬を染めた璃紗が鏡に映っていたのはほんの数秒だった。リサが見る璃紗は、大粒の涙を流していた。
 頬を染めた璃紗が鏡に映っていたのはほんの数秒だった。リサが見る璃紗は、大粒の涙を流していた。

 来客を伝えるチャイムがインターフォンを通して流れると、真理はいそいそとモニターの前に行った。モニター上にはスーツ姿の男性が映っている。
『おはよう、かな。開けてくれるか』
「早かったじゃない。今開けるから」
 真理のマンションはロビー手前に扉があり、室内から開錠しないと入れない。インターフォンとドアロックなどが一度に管理されている操作パネルのボタンを押し、真理は男を迎え入れた。
 エレベータを昇ってくる間にほんの少し時間がある。それを利用して真理がリサに声を掛けた。その声に呼応するように涙を拭い、リサは俯きながらドアまで歩いていった。
「わ、可愛いじゃない。やっぱり素材が良いと服も引き立つわよね」
 まるで我が事のように目を細める真理の笑顔が、リサには痛かった。リサの身体はリサにあらず、そして心はどう取り繕っても幹彦のまま璃紗になる事はないのだから。
 俯くリサをはにかんでいるだけだと思っている真理は、リサの心の奥底に踏み込む事は無かった。
 そして、玄関のチャイムが鳴った。
「いらっしゃい。先に紹介しちゃおうかな。守さん、この娘、同居してるリサちゃん」
 真理がリサの両肩を持ちながら話しを始めた。女装に自信の持てないリサは下を向いたまま。リサの視線の先には、玄関から入ってきた男の靴があった。黒い磨き上げられたウィングチップの靴はちょっと気障に見える。返事の無い男に向かって真理が紹介すると、今度は守の紹介に移った。
「リサちゃん、この人が守さん。学会じゃちょっとは知れたドクター高野ね」
(え? 高野?)
 聞き覚えのある名前にリサは顔を上げ、目の前の男の顔を注視した。
「――くくっ、リサ? そう名乗ってるのか。まんざらでも無かったんだねぇ」
 逃れられたと安心していた心の隙を突かれ、リサはその場で硬直していた。脳裏に浮かぶ数々の陵辱の中心にいた人物。自分をモルモットのように扱い、璃紗を死に追いやった男が目の前にいた。
「なに? 知り合い? ――リサちゃん、どうしたの?」
 硬直が解け、リサの全身に震えが走る。恐怖と怒りが綯い交ぜになった感情が膨らんでいた。
 高野は真理の腕を掴み自分の隣りへと引き寄せた。冷笑をたたえたその顔を、白い肌が紅く染めながらリサが睨め付ける。
「真理。こいつは、女の姿をしてるけれど」
『言うなっ!』
 重大な、真理には絶対に隠して置きたい事実を言いそうな高野に、リサは『声』を使って抑止した。直接鼓膜に能力を使われた高野は、少しだけ表情を歪めた。二人の関係が理解出来ない真理は、双方の顔を代わる代わる見つめる。
「ちょっと、どうしたって言うの? 知り合いなの? どうなってるのよ!」

<つづきはこちら>

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