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投稿TS小説第141番 Blood Line (33)(21禁)

 * * * もう一人の能力者 * * * * *

 能力がある、と高校二年生の冬の最中検査の結果が出て以来、佐野俊治(さのとしはる)は憂鬱な気分になっていた。近所に住んでいた年下の少年は、彼が住んでいた地域でも有名な能力者だったけれど、その事はその少年に災いしかもたらさなかったのを俊治自身も知っていた。町内では腫れ物を触るように扱われ、小学校でもいじめの対象にされていたのも見てきた。だから、自分が能力者であると解った時、俊治は少年が受けていた扱いを自分もされるのだと思っていた。
 そして案の定、彼を取り巻く環境は激変したのだ。誰も彼も、親友だと思っていた友人も、家族でさえも掌を返したように遠巻きに近づく事は無かった。SF小説やマンガのように触れただけで自分の考えが解ってしまう、それを畏れていた結果だった。
(ったく、そんな便利な能力なんてあるわけねーだろ)
 高校生にもなってそんな事も解らない友人とは、それきり縁を切った。勿論、両親や兄弟とも研究施設へ移る際に決別していた。寂しいというより、どれだけの嘘を自分に対して持っていたのか、そんな憤りしか感じていなかった。
 研究施設に来れば、少なくとも同じ悩みを抱えた仲間がいるだろうと思っていたが、人間の本質はどこに行っても変わることは無かった。自分達より能力が低ければ馬鹿にするし、高ければ高い程、今度は妬みで孤独な生活を強いられる。二週間もすると、そんな人間関係に少々うんざりしてきていた。それに加えて、能力開発の退屈な事と言ったら。来る日も来る日も瞑想をする。まるで坊主を修行としているようだった。
 しかしどんな生活にも潤いはあるものだ。俊治は昼食もそこそこに、陽は照っているとは言え、寒風の吹く中庭のベンチで腰掛けていた。
「……今日は遅いな……はぁ」
 コートを着込み前屈みになりながら、掌に息を吹きかける。白い息が風で流れて余計冷えてきた。
 今日こそは声を掛けようと朝から緊張していたのに、毎日同じ時間に中庭に出てくる人物が現れない。一週間も同じサイクルで行動していたのに、今日に限って現れないのだろうか。そんな不安も心に過ぎっていた。
 俯く彼女を俊治が見かけたのは、丁度一週間前の昼休みだった。「能力開発訓練」があまりにもアホらしくて、我が身を憂い中庭を訪れた。真冬の寒さからか、人っ子一人いなかったけれど、煩わしさはなかった。ベンチに腰掛けていると、施設の建物からスモックだけを着た少女が出てきた。その姿を一瞬見ただけで俊治の心は彼女に釘付けになってしまった。染めているのか肩口まである髪は銀色。その色に負けない位白い肌。あまりにも現実とはかけ離れた風体に、そこだけ世界が違うのではと思ってしまった。
 暫くよたよたと歩き、時々止まってはじっと一点を見つめる、そんな事を繰り返してその日は建物へと吸い込まれていった。それ以後、昼時に遠目から彼女を見つめる事が俊治の楽しみになっていた。
 同じ研究施設にいる筈なのに、どの職員も能力者も情報は教えてくれない謎の人物。能力者番号「0087号」としか教えて貰えない。断片的な情報を持てば持つほど、「0087号」への感情、思慕が大きくなっていった。

(あっちに行ってみるか)
 俊治が住む棟とは中庭を挟んで反対側にあるビルが彼女の住んでいる所だと思っていた。もう目の前の扉に手が届く所まで来たとき、高級マンションの入口のような木彫の扉が開いた。
「あっ、す、すみませ……」
 息を呑む、と言う言葉はこういう時に使うんだ、と関係ないことを思わず考えてしまった。目の前にはほんのりと頬を赤くした少女がいた。遠目には解らなかったけれど、瞳が紅い。真っ直ぐにしかしぼんやりと見つめてくる目が次第にはっきりとした意識を持っていくのが、俊治にも解った。
 その目が驚きの色を帯び、少女は踵を返して建物の奥へ立ち去ろうとした。
「ちょっちょっと待って」
 三メートル程の所で俊治に背中を向けて立ち止まる少女に、改めて声を発した。
「あ、あの、最近よく、一人でいるよね。なんか寒そうだし大丈夫かなって思ってたんだ。イヤ、別にずっと見てたって訳じゃなくて、えー、あ、俺も一人だし話し相手いないから、なんだったら昼の時間に話しでもできないかなーって。別に下心っていうかそう言うのは無いんだけど……」
 緊張で早口になっている言葉が届いているのか、少女が俊治を遠慮がちに見つめてくる。
「えーっと、どうだろ?」
 静かなエントランスホールに俊治の声が響く。周囲を気にするように少女が辺りを見回す。
(ダメ、か? っていうか、俺に何か言ってくれてもいいんじゃねーかな)
 多少強引に外に連れ出そうかと、一歩前に出ると同じように一歩身体をひく。
「ガキぃ、最重要人物のストーカーかあ? 色気づきやがってよ」
 俊治も見上げる巨漢が、のそっと暗闇から姿を現した。全身から自分とは違う「やばそう」な雰囲気を醸し出す巨漢に気圧され、盛り上がっていた心が少し萎んでいた。
「あの、その彼女と話しでもと……」
「彼女? ああ、『0087号』とか。ほぉ、話、ねぇ……。いいぞ、行って来い」
 巨漢の言葉が意外だったのか、0087号と呼ばれた少女はしばし巨漢と俊治を交互に見つめていた。
「ああ、『声』使っていいんだぜ。――ガキ、このお方はな、しゃべれねぇけど『声』が出せんだ。上級の能力ってのを教えて貰いな」
(しゃべれないけど声が出せる? なんだそりゃ?)
 それが何なのか解らないまま、俊治は巨漢に追い立てられるように0087号と共に中庭に出されていた。
「ああ、お前には『続ける』けどな。楽しめよ」
 続けると言われた瞬間、0087号は巨漢を振り返った。しかしニヤつくその顔を見て唇を噛み締め諦めたように歩き始めた。

<つづきはこちら>

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