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投稿TS小説第148番 鶉谷くん、インデンジャー外伝 奇譚 「Zaubermedizin」(5) (by.ありす)

暫くして女は部屋に戻ってきた。椎田の前に、小箱と2つの薬瓶を並べた。

「どれがその薬なんだ、3つともか?」
「ひとつはこれよ」

小箱から出したのは、昼間、椎田を女に変身させた口紅だった。

「それはもういい。俺が欲しいのは若返りの薬なんだ」
「あわてないで、順番があるのよ」
「順番?」
「若返りの薬には副作用があるのよ。まずはこれを塗って」
「口紅をか? どうして?」
「いいから、早く塗って」

椎田はしぶしぶ口紅をつけ、女の姿になった。

「……やっぱり、良く似ているわ」
「昼間もそんなことを言っていたな。女になった俺は、誰かに似ているのか?」
「少しだけ、抱きしめさせてもらえないかしら?」
「はぁ? お前、そういう趣味があるのか?」

女は黙ったまま答えず、女性化した椎田を抱きしめた。性的なものを感じさせない、まるで何かを懐かしむかのように、椎田のことを抱きしめた。
つくづく変な女だ……と椎田は思った。椎田も女の背中に手を回すと、逆にもっと強い力で抱きしめられた。椎田には窺い知ることも出来無かったが、女の様子から何か、個人的な意味のあることなんだろうと思った。

「おい……。 ……アーデルハイト、もういいだろう?」
「違うわ」
「え?」
「違うの。『ありす、もういいわよ』って言って」

女は椎田のことを抱きしめたまま、くぐもった声で言った。

(そういえば“アーデルハイト”ってのは確か、“アリス” の別名だったよな。やはり、この国の人間ではないのか……)

椎田は、出来るだけ女性っぽい口調を真似て言った。

「『アリス、もういいわよ』」

女の体が一瞬ぴくんっとなって、子供が駄々をこねるときのように抱きしめられた。

「…………」
「何か、言ったか?」
「…………」
「この姿を、あの小娘にも見せてやらなくていいのか?」

この女にとって特別な人物ならば、あの小娘にだってそうに違いない。だからそう言ってみたのだが、女の反応は違っていた。

「いいえ、あの子は嫌っていたから……。ごめんなさい、もういいわ」
「よくわからんが、小娘が俺を避けようとするのは、その誰かに似ているからなのか?」
「そうかもね」
「まぁいい。そんなことより、次はどうするんだ? まさかその誰だかの姿が見たくて、俺を女にしたわけじゃないだろうな?」
「若返りの薬には副作用があって、性別が変わってしまうのよ。だからその口紅で女になってから若返りの薬を飲まなければ、若い男の姿にはならないわ」
「なんだ、そういうことか。それなら最初からそう言えよ」
「でもね……」
「なんだ、まだあるのか?」
「そのままのほうが、いいと思うの」
「おい、何度言えば判るんだ。おれはただ若返ればいいって訳じゃない、女になりたくは無いんだよ」
「でも……。いえ、なんでもないわ」
「さぁ、早く若返りの薬をくれ」
「これを、1錠だけ噛み砕いて飲んで」

そういって女は2本ある薬瓶のうちの一本を椎田に渡した。

椎田は女の言うとおりに瓶から1錠をとって、手のひらに乗せた。

「これは、お前が作ったのか?」
「そうよ」
「大丈夫、なんだろうな?」
「いやだと思ったら、飲まなければいいわ」
「ここまで来て止められるか!」

椎田は意を決して錠剤を口に含み、噛み砕いた。

「どう?」
「別に……何も」
「体が熱くなったりとかは?」
「全然」

ベッド脇の開いた窓からは、“ほうほう” という、ふくろうの鳴き声が聞こえていた。
女は目を閉じて、その鳴き声の回数を数えるように、微かに何度かうなづいてから言った。

「まだ、何も変化はなし?」
「ああ、騙したんじゃないだろうな?」
「もう一粒飲んで」
「わかった」

そんなことを何回か繰り返しているうちに、やがて瓶の中身は空になってしまった。

「おい、もう無くなったぞ。何も変化が無いが、これでいいのか?」
「そうね……」
「そうねって、おい!」
「じゃあ、今度はこっちを飲んで。同じように」

そう言ってもう一方の瓶を差し出した。古そうな瓶にはラベルが付いていたが、ぼろぼろになっていて読み取ることはできなかった。

「1錠だけよ」
「まさか、俺を実験台か何かにしているんじゃないだろうな?」
「私を信じられないのならばいいわ。そのままでいれば?」
「飲むよ! いつまでもこんな姿のままでいられるか!」

椎田は膨らんだ自分の胸を指差していった。

「そのままのほうが、素敵だと思うんだけどなぁ」
「言っただろう! 俺は男のまま、若返りたいんだ!」

椎田はぼろぼろになりかけている薬瓶のコルクを抜くと、中から出てきた錠剤を1錠噛み砕いた。

「何も起こらないじゃないか!」
「即効性よ。すぐに効いてくる筈だわ」

そういわれるや否や、椎田の体に変化が現れた。

「ぐ、体が、熱い……」
「一時的なものよ。すぐにおさまるわ」
「くっ、本当……だろうな?」
「もう変化が始まっているのよ。つらいのなら、ベッドに横になれば?」
「いや、このままでいい」

10分ほどだろうか、椎田は全身が燃えるような熱さを感じて床にうずくまっていたが、やがて収まった。椎田は自分の体を確かめた。

「……は、はは、元に戻っている。男に戻ったぞ。それに全身に力がみなぎってくるようだ」
「鏡を見るといいわ」

椎田は女の差し出した手鏡をとった。

「若返っている。20代、いや10代後半ぐらいの俺だ! やった、やったぞ! 俺はついに望みをかなえた!」
「そう……。良かったわね」
「ははは、もう俺は薬に頼らなくても生きていけるんだ。若返った肺と心臓で、俺はまた人生をやり直せるんだ! こんなものに頼らなくてもな!」

そういうと、椎田は持っていた自分の薬をピルケースごと、窓の外へ投げ捨てた。

「あっ!」
「ん? どうした、欲しかったのか?」
「いえ、そうじゃないわ」
「ふん、おかしなやつだな。いや、礼を言うぞ。お前のおかげで、俺はこうしてまた元気になれた」
「そう?」
「この薬はもらっていくぞ。さっきの口紅もだ。何年かして年をとったら、また必要になる。そうして俺は何度も若返って、永遠に生きていくんだ」
「長生きするのが、そんなにいいことだとは思えないわ」
「何を言ってるんだ。お前だってそうしてその若い女の姿のまま、生き続けているんだろう?」
「……そうね」

女は目を伏せて、寂しそうに答えた。

「あの小娘もか?」
「そうよ」
「ふん、まぁいい」
「ねぇ」
「なんだ?」
「最後だから、もう一度抱いてくれない?」

そういうと、女は窓を閉じてカーテンを引き、服を脱いだ。

<つづきはこちら>

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あれ? リンク切れかな?
続きが見られないですけどー?

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