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投稿TS小説第146番 サッカー部へようこそ(2) by.うずら

ああ、神様。俺はなぜこんなところにいるのでしょうか。
二人で吉沢から逃げ続けること、3日。
運命の土曜日がやってきていた。
午前10時。約束の時間だ。
駅前のマックでポテトとコーラをつまみながら、俺は直が来ないかと入り口を見張っていた。
今この瞬間にも、トイレかどこかで皮を脱いで家に帰りたい気分だ。
カップルやらグループやらの中、俺は一人きり。
しかもセーラー服。泣きたい。
「はぁ……」
今、自分の服の中を考えるだけでも、鬱になる。
下はパンツも靴下もお袋のをこっそり拝借したから、まだマシだ。
ブラジャーは全然サイズが合わなかったせいでノーブラ。
何とかなるか、とその状態で服を着たら、胸の先が大変なことになってしまった。
今は常備していた絆創膏で乳首だけを覆っている。
パッと見る限りエロチックだが、なんとか快感には流されなくなった。
歩くだけで揺れまくるのは勘弁して欲しいけどな……。
男どもの飢えた視線はうっとうしいわ、女性の嫉妬の目は痛いわ。
俺は男だ、とどれだけ言いたかったことか。
……本気で涙が出そうだ。
時計を見ると、5分を過ぎていた。
まったくいつも時間にルーズなんだ、あいつは。
仕方なく、電話をかけてみる。
留守電につながりやがった。
くっ、ストレスで俺の胃に穴でも開ける気か!
「ねーねー、キミ、暇?」
「すごい可愛いよねぇ、一人?」
「…………あ?」
我ながら、今の反応はないと思った。
でも、仕方ないだろう?
考え事してたし、今は見た目が女だってこと失念してたし。
え、えーっと。なるべく女子高生らしく。
「ごめん、人、待ってるから」
「でも、さっきから誰も来る気配ないじゃん」
「遅刻するようなヤツ放ってさ。俺たちと遊ぼーよ!」
こいつらも俺に無駄なストレスかけるつもりか。
って、腕を掴むな!
振り払おうとしても、すごい力で……。
「痛っ!」
「はい、カーットッ!」
ナンパ男たちの後ろから、見覚えのある顔が覗いた。
俺と二人の間に割って入ってくる。
まったく、遅すぎる。10分の遅刻だ。
「あ?」
「なんだよ、アンタ」
「え、俺? この娘の彼氏」
馬鹿だ馬鹿だと思ってたが……言い切った。言い切りやがった。
無駄にカッコイイ。
背景までキラキラしている。
前の試合でハットトリックを決めたときより輝いてないか、こいつ?
仕方ない、あわせてやるか。
「もーっ、遅いっ! おかげで変な人に絡まれちゃったじゃない」
「ははっ、悪ぃ。服選んでたら予定の時間過ぎちまってさ」
直の腕に抱きつくようにして立ち上がる。
あ、息は切れてないけど、走ってきたのか。
体温が高いのが分かる。
ついでに少しだけ汗のにおい。
だけど、何でだろう。意外に嫌じゃない。
あ、今まで全然気づかなかったけど、コイツ、俺と同じ制汗剤使ってる……。
おかしい。顔が熱い。
まるで直の体温が移ってきたみたいだ。
体温が……直から、俺に……。
って、何を恥ずかしいこと考えてるんだ、俺はっ!!
「ね、ねぇ、もう行こ?」
「ん? おお。とりあえず良い店聞いてきたから、任せとけ」
これ以上ひっついてると、おかしくなってしまいそうだ。
慌てて直から離れ、トレイを持って出口付近のゴミ箱に向かう。
軽い調子で、俺の後を直がついてくる。
人の気も知らずに……。
「おい、無視すンなよ!」
そのさらに後ろから、二人が追いすがってきた。
同じ男として、いい加減、みっともない。
それにいつまでも付きまとわれたら、うっとうしいだけだ。
色々考えていたら、だんだん腹がたってきた。
睨むように相手を見つめる。
「あ?」
「女が嫌だって言ってるんだ! 本気かどうかぐらい、見極めろ!!」
怒鳴ってから、すぐに失態だと悟った。
今まで騒がしかった店内が静まり返っている。
二人組みはおろか、客、店員の別なくすべての視線が俺に集まっていた。
こっそりと様子を伺うと、直も呆れたように首を振っていた。
どうする、どうする。落ち着け。
一つ手はある。
あるが……や、やるしかない、か。
「って、彼に叱られちゃうぞっ☆」
手を腰に当てて、ぷくーっと頬をふくらませる。
ああ、俺、今、すっごい馬鹿に見えるんだろうなぁ。
直、笑うなら笑え。
頼むから……そんな哀れみの目で俺を見るなっ!

「くっくっ、将ちゃん、最高だったぞ」
「ううう、うるさい! それ以上言ったら、帰るからなっ」
店を少し離れてから、直がヤらしい笑顔を浮かべた。
これには直の扱いが上手いと言われる俺でも、ムッときた。
そもそも、誰のせいであんなことになったと思っているのか。
俺がきびすを返すと、素早く直の腕が伸びてきた。
「ちょ、何だよ!」
「俺は彼氏。将は彼女。OK?」
それはあくまで設定だ。
表情から言いたいことを察したのだろう。
チッチッと、キザったらしく指を顔の前で振る。
「甘いねぇ、将は」
「……何だよ」
「良く考えてみろよ。今は不特定多数の人の前にいるわけだ。だったら、自然に振舞っておかないと変だろ?」
「それも、そう、か?」
「ああ。ついでに、いつ吉沢に見られても良いように、恋人のフリぐらいしないとな」
言われてみると一理あるようだ。
それならそれで、最初に言って欲しいが。
「分かった。ただ、あんまりベタつくな。暑苦しいから」
変な気分になるからだ、とはとても言えない。
直は仕方ないなと呟いて、軽く手を握ってきた。
「本当は腕を組んで、その胸の感触を味わいたいんだけどな」
「黙れ、エロ猿」
「ほらほら。ちゃんと女の子っぽく」
「くっ……もう、うるさいわよ、エロ猿」
「彼氏にそんなこと言うなよ。はい、テイク2」
「もう、うるさいわよ、ばか」
いちいち女の言葉遣いにダメ出しする男って、傍から見たら相当怪しいけどな。


そんな感じで逐一修正をかけられながら、店に到着した。
「ここ?」
「おう」
たしかに女友達が多い直が調査しただけあって、なかなか可愛らしい店構えだ。
ただ、本来は男である俺が入るにしては、可愛すぎやしないか?
「さて……」
直が持っていた紙袋から、薄いピンクの財布を取り出した。
ついでに同じ色のバッグも。
そのまま俺に渡してくる。
たしかに女物だし、今は直より俺が持ってる方が自然だけどな。
「な、なんだ……なによ」
「将へのってのは変だから、そうだなぁ、あ、同じ読みで木偏のってなかったっけ?」
「こずえだ、こずえかな?」
「ああ、それそれ。じゃ、その二つは俺からこずえちゃんへのプレゼント」
そして、小さな声で、「お礼は?」とつけたしてくる。
良く見るとこれ、誰でも知ってるようなブランドモノの……。
二つあわせたら10万じゃ足りなくないか?
「おい、これっ」
「女言葉」
ここでまで強要してくる気か!?
仕方ない。
「ねえ、これ、高いんじゃないの?」
「そうでもないよ。こずえちゃんの喜ぶ顔が見たかっただけさ」
つまり、喜んでみせろ、と。
俺自身にとっては、必要ないんだがな……。
「さんきゅー」
「心がこもってないなぁ」
どうやってこめろと言うんだ。
それにしても、女の子の喜び方、か。
付き合ったことなんてないしなぁ……。
ん?
腕を組んで道を歩いているバカップルに、直の目が奪われている。
男がうさぎの耳が飛び出した紙袋を持っている。
ということは、彼女にぬいぐるみでも買ってあげたんだろう。
「えへへ、カズくんっ、ありがとーっ」
「広海ちゃんが喜んでくれるなら、これぐらいどうってことないよ」
「でも嬉しんだもん!」
うお、道端でキスまで……。
最近の性風俗はどうなってるんだ。
って、もしかして、ああいうのが良いのか、こいつ?
それを俺にやれと?
恥ずか死ぬぞ?
でも、そんな期待のこもった目で見られたら、なぁ。
「え、えへへっ、直君、ありがとねっ!」
少しアレンジして、さっきの娘の様に、弾む感じで。
口にした途端、怖気が走った。
我ながらキモチワルイ。
でも、直は一気に相好崩しやがった。
いつもの爽やかは感じは消え去り、緩みきった笑みだ。
「やればできるんだ、こずえちゃんも」
「もぉ、うるさいっ」
お。
今のは我ながら女の子っぽいぞ。
さっきの『お礼』のおかげか、羞恥心が空の彼方にでも飛んでいった気分だ。
うれしいことではないが。
「あ、そうそう。その財布の中にお金は入ってるから、自由に使っていいぞ。足りない分は立て替えといてくれれば後で払うからな」
「う、うん」
まくし立てるような口調。
嫌な予感がした。
こういう場合、大抵俺が悲惨な目に遭うんだ。
「じゃ、そういうことで。可愛い服買って来いよな!」
シュタッと手をあげると、自慢の俊足を活かし走り去ってしまった。
おいおい。
ってことは、何か。
この店に俺一人で入るのか?
勘弁してくれよ……。
ぼぉっと看板を見つめて呆けていると、中から店員らしき女性が出てきた。
って、俺の方に向かってきてるのか?
「ねえ、あなた、今の人彼氏よね」
「え?」
「あ、違うんだ?」
な、何なんだ。
良く分からない展開になってきてるぞ。
とりあえず、ここは彼氏だと言っておくか。
どうせこの『こずえ』って娘は実在しないんだし。
「ちが、いませんけど」
「やっぱりー。カッコイイじゃん。羨ましいナ」
「はぁ、ありがとうございます」
「で! ウチに服買いに来たんだよね? そのバッグに合う様なのがいいかナ?」
逃がさないわよと言わんばかりに、俺の手を掴んでくる。
失敗した。
相手をせずに、さっさと逃げるべきだったんだ。
店へと強制連行される俺の頭には、ドナドナが流れていた。
ああ、子牛に同情して涙が出そうだ……。

<つづきはこちら>





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