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エル(1) by luci.  <21禁>

”エル”はリレーTS小説第140番 鶉谷くんインデンジャー (18禁)のキャラクター、エルのスピンアウト作品です。同じく、スピンアウト作品の鶉谷くん、インデンジャー外伝 奇譚 「Zaubermedizin」 (by.ありす)ともどもよろしくお願いします。


「ふふ、この口紅はね、上唇に塗れば上半身が、下唇に塗れば下半身が変化するんだよ。だからこうすると――」
 わたしは我が目を疑った。呆然としながら見守る中で、テイレシアスの口紅を塗られたあずみの身体は大きく変化していった。そしてそれが、唯一わたしが信じていたものを根底から揺るがしていた。
 だって、センセは言ったんだもの。あの時。『もう、元に戻る方法はない』って。だからわたしは……。

 冬場は雪が降り、大抵の生徒達は冬休みにスキー場で過ごすような街、俺はそんな北国で生まれた。
 暗く閉鎖された社会は、俺のように違った容姿を持った人間にはキツイ場所だった。
 俺の容姿は、親父とお袋に貰ったものだったけど、外国人のお袋からその殆どを受け継いだから、幼少期は生粋の外国人と同じようだった。しかしそれを意識しだしたのはお袋が死んでから三年後、小学校に上がってからだった。
「留萌って顔も名前も変だよな」
 同じ場所で産まれ日本語を喋っているのに、ちょっと「違う」という事だけで謂われのないイジメに会う。「なんでそんな事で」と幼い頭で考えても理不尽だった。自分より弱者を作って優越感に浸る、人間の心の闇に触れた最初だったのかも知れない。
 顔つきが人形のように可愛らしく、お袋の顔を色濃く受け継いでいたから周りからは「オカマ」なんていう風になにかと騒がれたし、その趣味を持つ大人達にはイタズラもされた。
 友達らしい友達がいなかった俺は、小学校の低学年から一人で登下校していた。家に帰っても残された父親は仕事に行っていて不在にしていたから、家に帰るのも詰まらなかった。一人で田圃に行ったり山に行ったり、そんな事をしていると大抵辺りは暗くなっていた。
 ある時、一人の男に声を掛けられた。「お母さんが病気になったから迎えに来たよ」そんな事を言っていたように思う。それがウソだと俺にも解っていたけれど、どうせ一人で遊ぶしかない俺は「何か楽しい事があるかも」と、のこのこついていった。男は田圃にある小屋へ俺を連れていくと、ズボンとパンツを脱げと言った。楽しい遊びをするからと。
 小学生にだって羞恥心はあるし、一応ウソだと解っていてもお袋の事も気になっていた。三歳から三年間写真でしか会っていないお袋。死んだのだから当たり前だが、その時にはもしかしたら生き返ったのかも、なんて幼稚な考えもあったのだ。だから男に「お母さんは?」と聞いた。
 男の答えはパンツ脱いだら教えてやるという一言だった。尚も躊躇しているとそいつは無言で俺の身体に触り始め、その気持ち悪さに俺は泣いていた。
 その声が届いたのか、裸に剥かれている最中、小屋の扉が開き誰かが入って来た。俺の記憶はそこで終わっていて、その後、男がどうなったのか、今もって知らない。
 この件でより鮮明に覚えているのは、親父が帰ってきたのが遅かったこと、蔑んだ目で親父が俺を見て「お前ってヤツは……あいつと同じように面倒おこしやがる」という言葉だった。

 俺の顔を見ればお袋を思い出すと言い、一度として俺のことを抱き締めたりしなかった親父は、翌月から帰ってこなくなった。未だに消息は不明だ。
 実の親にも見向きもされない俺は、自分が「いらない」存在だとしか思えなくなっていた。
 その後は、お定まりのコースを順当に歩んできた。俺を前にして、誰が俺を引き取るのか話し合いが行われた。結局、親父の直ぐ上の兄の所に厄介になる事になった。
 叔父の家は、比較的裕福だった。小学生が一人くらい増えても十分に暮らせる位に。しかし、何かにつけて「施し」を受けている事を思い出されるように、引き取った事を言い出すのには閉口していた。
 叔父には娘がいた。俺の従姉妹だ。三つ四つ年上の彼女たちは表面上は普通に接してくれていたけれど、俺を見てはぼそぼそと話をしくすくすと笑う、そんな事をしたり、時には彼女たちの友達と連れ回されお医者さんごっこに参加させられた。一度など、叔父の家で「解剖」された俺は、それを叔父に見つかりこっぴどく叱られた。しかも彼女たちは泣きながら俺に誘われたから、等と言って。
 それでも俺は他人から「いらない」という言葉も態度も欲しくなかった。だから、どんなに理不尽な事でも、相手が俺を必要であるなら喜んでついていった。たとえそれが「俺の中身」を見たのではなく、「俺の外側」だけ必要であったとしても。
 中学に上がると、次第に状況は変化していた。「違う」という事が疎ましく思われないようになっていた。男っぽく変化していく俺の容姿に、女の子達は遠巻きに、時には面と向かって鑑賞するようになっていた。告白される事もあったし、つき合う事もあった。ただ長続きはしなかった。
 俺の女性観は、お袋がベースになっていた。それも俺が「作り上げた偶像」の。優しく俺を慈しみ、常に俺だけを見てくれる。言葉も必要なく、ただ側にいるだけで温かくなる存在。俺が求めている女性はそうだった。
 つき合った娘にもそれを当てはめていたのかも知れない。振られる時は大抵、「ツマラナイ」「マザコン」と言われていた。
 高校の受験を前に、俺は叔父の家から出された。思春期の男がいるのは好ましくないと言う理由だった。四畳半のアパートは冷え冷えとして、まるで俺の心を見透かしたように感じていた。その寂しさを紛らわせる為に、俺は勉強するしかなかった。
 地域の公立高校は比較的レベルも高く、東京の有名大学にも毎年合格者を出していた。俺は奨学生として入学する事が出来た。
 それが良かったのか、それとも悪かったのか、今となっては解らない。あそこでセンセと遭ったんだ。
 
「君、留萌君、だったよね? ちょっとお願いしたい事があるんだけど」
 入学してから暫くして、臨時講師に呼び止められた俺は、何の疑いもなく彼についていった。今から思えば、面識がほとんど無い生徒に何を頼もうと言うのか疑うべきだったのかも知れない。でも当時の俺は誰かの役に立つ事が嬉しかったから、やっぱり着いて行った。
 その講師は化学担当で、何故か自分の化学室を持っていた。先導役のように講師が入室し、俺も後に続いた。

「センセ、俺は何をしたら……?!」
 いきなりだった。あとから思えばあれはテーザーだったんだろうと想像できる。笑顔で振り向いた講師を見た途端、痛いような激しいショックが全身を貫いていき、目の前が真っ暗になっていった。
「うん、良い素材だよ、君は。僕の一番のオ……に、ふさ……い」
 薄れていく意識の中で、講師が何か言っていたようだったが、俺には最早理解出来なかった。

 寒い、と思うのと肩と腕が痛いと思うのが殆ど同時だった。何があったのか、目覚めた時には解らなかったし、状況が全く掴めなかった。
 目の前には明るい茶系の絨毯が敷きつめられていた。そこに俺は膝立ちの状態だった。混乱しつつも立ち上がろうとして手でバランスを取ろうとした時、両腕の自由が利かない事に気づいた。
(なんだ? これ、鎖?!)
 両手首に固そうな革ベルトとそれに繋がった太い鎖。それが天井の梁に繋がっていた。手を広げた状態で中途半端にぶら下がっていた。鎖を掴み立ち上がって力の限り引っ張ってみる。しかしじゃらじゃらと鎖自体の音がする割りには、繋ぎ目はびくともしなかった。
 何か、唇が粘つく気がしたから、動く範囲で肩で口を擦っていた。その肩に赤い物が付着していた。
(なんだよ、口紅? どうして俺ハダカ……新手のイジメかよって、口紅はまだしも、ハダカは酷すぎるだろ)
 妙に冷静に突っ込みを入れながら状況判断しようと思っていた。この時はまだ、余裕があった。しかし次に目に入ったモノの為に、俺は混乱の極みに達していた。
 さっきは起きたばかりで解っていなかったんだろう。肩に栗色の柔らかそうな髪が掛かっていた。それも胸の方まで。元々、髪は短くは無かったが、これ程長くしてもいなかった。それが伸びたのか? 普通は鬘だと思うんだろう。けれど、唇に引っかかった髪は、俺の頭皮も引っ張っていた。
 これだけでも驚きだったのに、問題はそこじゃなかった。自分の髪なのかどうか頭を振っていた時、胸を隠していた髪が移動していった。そして現れたモノに、俺は頭がヘンになったんだと思った。
(え? え? えええ? む、むね? え? これ、なんで? ちょっ、どうなってんだ?)
 イジメなら冷静に対処しよう、そう思っていた俺の心は、一瞬の内にパニックに陥っていた。あるはずの無いモノが俺の身体に付いている。それも、俺の時間の中では瞬く間に。声を出す事も忘れ、鎖で届かない手を振り回し、身体を捩り、貼りつけられていると思っていたそれらを落とそうと必死で暴れていた。
「ふっふざけっ、ちくしょおっ、なんっ、これっ」
 何分そうしていたのか、それとも数秒だったのか。取れないモノに、その状況に、そして何も出来ない自分に対して、ついに俺は声を出していた。頬に悔し涙を流して。そしてそれが新たなショックを俺に与えていた。

 自らの鼓膜を震わせる声は、俺の声じゃなく、女の声だった。
「うわーっちっ違うっ、俺じゃないっ! これ、違うっ、夢だっ夢だっ! わぁああああ!」
 実際、信じられなかった。何がどうして男から女に換わる事があるのか。ちょっと寝ていただけの筈なのに。そう考えれば「夢落ち」だと思うのが一番しっくりしていた。しかし、手首が擦れて血が出て痛いし、長時間ぶら下がっていたのか肩の痛みもあった。現実と夢の狭間で、俺は自分の考えた事に腑に落ちない点を発見していた。
(……あ、寝てたんじゃない。俺、あの臨時講師に……)
「やぁ、留萌くん。いや、留萌さん、かな。随分可愛らしく変身しただろう。流石、僕の見る眼は違うよ」
 突然の声は俺の背後からだった。恥ずかしくも泣き顔のまま振り返ると、そこには薄笑いを浮かべた臨時講師の姿があった。
「先生っ、これっ、俺はっ、どうしてっ?!」
 口をついて出る言葉は、本当に単語だけで文章にはならなかった。何かを言おうと思えば高い声が出ている事実に愕然としてしまう。でも、聞かないではいられない。その焦りが頭に浮かぶ言葉の最初のイメージだけを掴み取り口から発せられる、そんな事の繰り返しだった。
「はいはい、大丈夫だから。ほら、深呼吸してみよう……吸ってぇ、吐いてぇ……そう、どうかね。落ち着いたかな?」
 慌てる子どもをあやすように、背中をさすりながら落ち着かせようとした。それが落ち着かせようと言う行為では無かった事は、後になって解ったけれど。
「……先生、これ取ってください。早く! こんな格好してるけど、俺留萌です。誰かが、何か……」
 誰が俺に何をしたと言えばいいんだろう? 身体を覗き込むようにみれば、見事なおっぱいが呼吸の度にあばらと一緒に動いていた。それを見た途端、頭に血が上っていた。
 相当混乱していたんだと思う。直前に腑に落ちない事があったというのに、その本人が目の前に現れたらホッとして助けを求めようなんて。けれど、自分のおっぱいを見て、その恥ずかしさに耐えきれなくて上げた視線の先にあった講師の目を見た時、俺はこの講師が「何か」をしたと確信していた。
 目が、笑っていなかった。それに現れた時、俺の名前を二度も呼んでいた事を思いだしていた。姿が変わっているのに俺だと解るのは、それに関わっているからに違いなかった。俺は当然の要求をした。外して自由にしろと。しかし。
「まぁ、待ちなさい。僕はね、偶然にも神に等しい力を持つものを手に入れたんだ。これを使えば理想の女性たちを作って愛しあえる。素晴らしいだろう? でも、効果の程が解らなくてね。だから前々から狙っていた君に実験台となって貰ったんだよ」
 神に等しい、その言葉を聞いて俺はもの凄く不安になっていた。こんな事を言い出すヤツはまともじゃない。なるべく刺激しないように、なんとかここから抜け出せるように、このオカシナ講師と会話をしようとした。
「じ、実験台ってなんですか? 取りあえず腕も痛いし話しもしづらいから、コレ、外して貰えませんか?」
「実験ていうのは、解ってないのかな? 男を女にするんだよ、コレでね」

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