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投稿TS小説第141番 Blood Line (51)(21禁)

* * * 島 * * * * *

 緑一色の大地を海岸線を目指して歩く人影があった。春の風が柔らかく彼女を包み過ぎ去っていく。肩口まで伸びた銀髪が日の光を浴びて美しく煌めいていた。
 一日に一度は海岸まで歩く。最近のリサの日課だった。
 真理がリサや他の能力者達を施設から連れ出してから、既に三ヶ月が経とうとしていた。
当初は大騒ぎしていた能力者達も、高野ら研究者の行為を聞くに連れ自分達が享受していた特権、例えば就労義務がないなど、を諦めるに至っていた。
 リサ達が連れてこられた場所、はっきりと名称は解らないが真理によると『島』だと言う。施設から飛ぶこと三時間。降り立った時は真っ暗で何も見えなかった。そこに着陸灯だけが光っていたのは、リサも覚えていた。ただそれはリサにとっては重要な事では無かったが。
 ヘリコプターの窓を見るともなく眺めていたリサだったが、その脳裏に焼き付いていたのは俊治が殺されたという事実だった。自分にさえ関わらなければ、今も生きてこの場にいたかも知れない友人を思うと、リサは自分が疫病神なんじゃないかと何度と無く自問していた。翻ってみれば、璃紗も死なずにすんだのかも知れない。そんな事ばかりを考えていた。
 島に着いてからも、人恋しさは勿論あるけれど、これまで以上に他人と接する機会を減らしていた。同じ家に住む真理とさえ自分から話しかける事はしなかった。だから、リサの住む場所から往復で二時間かかる海岸への散歩は、少しでも他人と接触しないための手段だった。
 この三ヶ月、肉体的には真理と生活を共にしていた時以上に穏やかな暮らしだった。誰かが身体を求めてくる訳でもない、能力開発など勿論ない。ただ、精神的には、俊治の件が心に黒い染みを作っていた。そして、もう一つ。
 施設にいた当時は、移植手術や能力開発訓練もあって、「女であること」を認識せざるを得なかった。ただそれは、セックスに関する事だけだったし、リサの― 幹彦の―心中では「男である」と思っていた。けれど、島のゆったりとした時間の流れに身を任せていると、仮の身体と思っていた璃紗の肉体が、徐々に「幹彦」に融合していくように思えてしまっていた。便宜上使っていた「リサ」という名前が、その融合した新しい自分になっていく、そんな感じだった。
 璃紗の肉体から出る女性ホルモンが、幹彦の脳を侵食し、思考さえも女性化させていく、そんな夢を何度も見始めていた。そして実生活においても変化が訪れていた。
 ちょっとした事で心を揺さぶられてしまう。可愛いもの、綺麗なものの感じ方が変わってきた。それを如実に表す事が数日前に起こっていた。

「リサちゃん。ちょっといい?」
 夜も更け、そろそろ寝る仕度でもと思っていたリサの部屋に、真理が紙バッグを携えて訪問していた。他の能力者達は、アパートを宛われ個別に生活している。未成年者は、学生寮のように舎監のいる集合住宅住まい。リサの場合、その立場は微妙だ。中身は未成年だけれど、肉体的には違う。能力の高さと不安定さから特別に真理と同居していた。

『……なんですか?』
 一時は肌を合わせた相手だったが、真理がリサという存在の事実を知った時点から、リサは真理と顔を合わせると極端に固くなっていた。ウソがばれた気まずさにも見えたけれど、リサの想いはそんなに単純なものではなかった。
 柔和な笑顔を湛えつつ、ドアから入ってくる真理。視線を床に落とし、なるべく真理の目を見ないようにするリサ。
「元気? 最近、避けられてるような気がするんだけどな」
 八畳ほどの小さな部屋には、ベッドと簡素なテーブル位しかない。実用一点張りのカーテンが、開け放たれた窓から入る風をはらみ広がっていた。およそ年頃の娘の部屋とはかけ離れた室内は、リサの印象からは想像もつかない。ただ、所々に可愛らしい小物が増えつつあった。テーブルの周りにおかれたクッションはその代表だった。真理はそれには座らず、直にフローリングに腰を下ろした。
『別に避けてないです』
 真理の正面に同じように座り、視線を絡ませないように俯く。リサの視線には、真理も寝るところだったのかパジャマの胸元があった。カーッと熱くなる肉体の欲求を押さえつけ、真理の質問をはぐらかすように答えた。
「そお? ならいいんだけど。――そうだ、これね、リサちゃんに似合うかと思って持ってきたのよ」
 淡いブルーの生地が覗き、真理が取り出したのはワンピースだった。決して派手で女の子しているデザインではないけれど、可愛いと思える。そしてリサ自身もまた、そのワンピースを一目見て「あ、かわいい」と思っていた。相手が真理ではなく、リサの思考回路を司る者が男であると知らない人物からの贈り物であれば、もしかしたら甲高い声で叫んでいたかも知れない。
「――可愛いでしょ」
『そうですか? 真理さん、僕は――』
 リサの一瞬の歓喜と感情の抑制の瞬間を真理が掴んだかどうかは解らなかった。リサは平静を装いつつ、頬を朱に染めながら答えた。
「気に入らなかったか……リサちゃん用にって買ったんだけど。仕方ないわね、捨てちゃお」
『ええ? ちょっと待って、捨てるくらいなら貰います』
 いたずらっぽく微笑む真理にしてやられた感はあるけれど、ワンピースの袖を通した自分を想像してしまう。服だけでこんなに気分が高揚することはこれまでには無い経験だった。自分が男であると信じているけれど、男だったらワンピースなど欲しがらないとも思う。
 真理は「また明日ね」とそのままワンピースを入れたバッグを置いて出ていった。リサは緊張から解かれ、ふぅっと息を吐き出し、しばし真理が出ていった扉を見つめていた。
久しぶりに間近で接した真理。リサはその芳しい肉体と肌を合わせた時の事を思い出してしまった。滑らかな肌、柔らかな乳房、吸い付くような蜜壺……。
(ああっ、ダメだダメだ! こんな事考えちゃ。まだまともに戻れてない)

<つづきはこちら>

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