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投稿TS小説第141番 Blood Line (52)(21禁)

 髪を振り乱し首を振る。くらくらして身体がふらついたのをテーブルに手を着きそれを支えた。荒れた息を整えながら目を転じると、真理が置いていった紙バッグが視線に絡んだ。
(――気に、ならないよ)
 研究所にいた頃、鹿島にも指摘されたが鏡の前で以前真理から貰った服を身体にあて、見ていたこともあった。ただそれは、「自分」が着るためにというより、「璃紗」が着たらどうだったのか、という第三者的な視点に立っていた。それに、幹彦だった時には、生活環境からか、何事にも感動は薄い方だった。まして服などどれも一緒にしか思えなかった。それがどうだろう、真理の置いていったワンピースは女物であるにも関わらず、可愛いと思いちょっと試してみたいとさえ心の隅で考えている。
(可愛い、けど……可愛いよね、うん)
 横目で見ながらちょっとずつ近づいて行く。紙バッグを開けワンピースを摘み出した。胸に当てそして鏡に姿を映す。
(うん、いいじゃん)
「リサちゃん、後でねぇ――あら。邪魔しちゃった?」
 いきなりドアを開けた真理が、服を合わせていたリサの姿をマジマジと見、微笑んで顔を引っ込めていった。リサはまるで裸体を見られたように真っ赤になって硬直していた。

 その心の動きは服だけに留まらなかった。動物でも植物でも風景でも、不思議な程心が揺れる。無垢な子どもは、時として聞きたくない事も尋ねてくる。幹彦だった頃は、能力者として親にも地域でも疎まれていた。その理由をずけずけと聞いてきたりされた。その意味では、子どもは幹彦にとって愛すべきものではなく、避けたい存在だった。しかし、島に来てからのリサは違っていた。
 島には数人の子どもがいたが、遊ぶ姿を見ると心が和んだ。疎ましいと思った存在が、だ。道ばたで遊ぶ仕草が微笑ましく、可愛らしく感じてしまった。走っていれば転ばないかと心配してしまった。そして、赤ちゃんを見た時、抱いてみたいと思った時、それが「母性」ではないかと、自分には「母性」が目覚め始めていると初めて思い知っていた。
 女性の身体に男性の脳。女性特有の分泌物が男性を侵し変化させていた。考え方、感じ方が根本から変わっていく。言ってみれば心が身体に引きずられている。身体を盗られただけでなく、幹彦からリサに塗り替えられ始めている。自分が徐々に違う自分になっていくのは恐怖でしかないけれど、自分では無くなる事より男でなくなる事の方が重大事象だった。
 誰かに相談したくとも、通り一遍の慰めにしかならないのは目に見えていたし、それを解決することなど到底無理なことであるのは、リサにも理解できた。生きている以上、受け容れなくてはならないのだから。ただ、その恐怖と孤独は図り知れず、他の能力者がのびのびと明るい表情を見せているのと対照的に、リサの表情は暗く沈みがちになり、一人でいることが多くなっていった。
 真理もリサの変化には薄々気づいていたのか、リサとの会話を多くしようと事ある毎に接触していたけれど、悩みを解消するには至らなかった。

(深い、蒼。吸い込まれそう)
 砂浜から切り立つ崖の上から下を覗いた。リサを縛り付ける様々なイヤな事だけを吸い込み、綺麗に洗い流してくれる、そんな気になってしまう。実際には高さと波が作り出す海風が作り出す幻想に過ぎないのは、リサにも解っているけれど。
 柵に掴まりつつ、上体をグッと前に突き出すと、下からの風がリサの髪を持ち上げた。日の光が銀髪一本一本に絡め取られ光り輝く。
「危ないわよ、そんなに乗り出しちゃ」
 聞き慣れた声にリサが振り返ると、真理が疲れた表情にも関わらず微笑んでいた。
『大丈夫です。真理さん、どうかしたんですか?』
「ん~、まぁね」
 就労しなくても生きていける、ただそこにいればいい。そんな生活を一度でもすると、仕事をする事などばかばかしくなってしまうのは自明の理だ。殆どの能力者は島に来てその事を痛感していた。にも関わらず、未だに仕事をしようとする者は殆どいなかった。勿論、島である為に仕事の絶対量が少ないこともあるが、農業をし自給自足生活する事はできる筈だった。真理にしても、父親のルートを使い社会復帰したい能力者に対してはその道を用意していたのだ。けれど、殆どは「ただ生きている」という状況にあった。
 だから、能力者に対して就労斡旋をしていた真理だったが、最近では「働け」としか言わなくなっていた。能力者らも次第に真理を疎ましく思いつつあった。
「楽することばっかりだと、人間てダメになるのよね。みんなその典型例だわ」
 リサを前に、時折溜息を吐きながら真理が本音を漏らす。そこまで怠惰になれる理由が、真理には理解できなかった。彼女自身は、医師のいない島で診療にあたっていた。
『すみません、僕も働いてないし……』
 リサは柵を背もたれ代わりにして地面を見つめる。
「ああ、リサちゃんはいいのよ、リサちゃんは。働いたこともあるような人たちがウダウダ言ってるのが嫌になるだけ」
 深い溜息を吐き真理は高い空を見上げた。何が見えるのか一点をじっと見つめていた。と、徐にリサの方へとにじり寄った。
「あのね、リサちゃんの耳に入れておきたい事があったの」
『何ですか?』
 訝しむリサに真理が一拍おいて口を開いた。
「守さんが、いえ、高野がこの間の機動隊突入から行方不明になってるの」
『行方不明? 逃げたの?』
 高野が逃げたのなら、もしかしたら追ってくるかも知れない。リサは暖かい筈の気温が急に寒くなる気がして、思わず自分の身体を抱きしめていた。
「逃げたのかどうなのか……。森の中でヘリコプターが二機墜落してたらしいわ」
 海風で絡む髪を手で梳かしながら、リサを見ずに真理が言葉を発した。その表情は憂いているのか、それとも普段通りの顔なのか、リサには解らなかった。
(なんだ、あいつ死んだんだ。――あんなのでも一応恋人だって言ってたし――やっぱり真理さん、辛いのかな)
 触れたくない人物の話でも、気になってしまう。リサは心のどこかで真理が付き合っていた高野に嫉妬していた。

<つづきはこちら>





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